2011-01-01(土) [長年日記]
■ 新年
去年はグスタフだったので、今年はドーラで。ちゃんと干支ネタにしたぞ。
昨年はまさかの多頭飼いになってしまったが、今年、三頭目は避けたい(主に適切な名前がないという理由で)。というのを本年の抱負にさせていただきます。
■ のんびり元旦
昼ごろのんびり起きだして、天皇杯を見ながらおせちをつつく。元旦から国立競技場まで出かけなくていいというのは、寒くなくて良いですね(棒
刺身を猫たちにあげてみたら、去年はそもそも刺身を食べ物として認識できなかったグスタフが、手を近づけると怒って「グルル」と唸るほど喜んで食べていた(ドーラは言うまでもなくガツガツ食べる)。おお、ドーラの影響か、好き嫌いがなくなったのかな?
2011-01-02(日) [長年日記]
■ 初詣: 寒川神社、江ノ島神社
今日は例年のとおり寒川神社に初詣、ついでに足を伸ばして江ノ島まで行こうということに。やっと14-150mmズームの出番だぜ。ちなみに↑は、出かける前に自宅で撮った今年の正月飾り。
寒川神社
寒川神社は例年と同じ程度の込み具合か。干支ねぶたのテーマは「かぐや姫と月の兎」……って、フィクションかよ! 右の男性は誰だかわからず。たぶんかぐや姫への求婚者だと思うけど。
江ノ島
江ノ島に着いたら遊覧船に乗って島の裏側、岩屋の方に出てから神社巡り。途中、「名物・海苔羊羹」を食べてみたけど、普通に甘い羊羹に、焼きそばを思わせる青のりが少量混ぜてある程度で、なんというかビミョウな味。これが塩味ベースにしてもっとたっぷり海苔が入っていたらいいんじゃないかなー。
島を横断しながら神社をまわり、久しぶりにこま犬たちに会って写真を更新したり(たぶん前回来たときに持っていたのはDimageVではないかと)、猫を撮ったり。最後はちょうど夕暮れで、橋からいい感じの夕焼けが見えた。
2011-01-03(月) [長年日記]
■ Programming Day
「休暇の最終日はプログラミングする日にするぞ」宣言をしていたので、そのとおりに。
tDiary
溜まっていたパッチをあてたり、新しいプラグインをcontribに登録したり……って、自分では何も書いてないじゃまいか。せいぜいCSRF対策キーの生成を自動にしたくらいか。
本当はテスト環境をRack上に構築するつもりだったんだけど、新しいことをするには気力が不足していた(主に血中アルコール濃度が原因)。第一tDiary.Netも新しいサーバに引っ越したいんだけど、これはDebian Squeezeが出るのを待ったほうがいいかな。
自炊用Rakefile
こないだ始めた作業の続き。
けっきょく動的タスク生成を使って依存関係を細かく指定することで、なんとか動くものができたような気がする。が、新しい素材がないのでテストはまた今度かな。同じようなタスク分割のニーズから、sasasinさんの元スクリプトも3分割されたようだ。pngよりjpgの方がきれい、という指摘は試してみないといけないね。
Parabolic Antenna Lovers!!
1件更新。ってこれはプログラミングじゃないか。
Facebookのファンページに寄せられた「ファン」からの写真を使ったページ第一弾。こんな感じで世界中のパラボラアンテナを収集できたらいいなぁ。あと、同じしかけで「こま犬ライブラリ」も復活させないと……。
2011-01-04(火) [長年日記]
■ 日経電子版をスクレイピングしてKindle向けmobiファイルを作る
日経電子版は家族でアカウントを使い回してよいという先日の調査結果を受け、それなら新聞を読む生活に戻れるかも知れないねということで、Kindleで読むための準備を開始。「準備」というのは、まだ電子版の有料会員に申し込んでないからなんだけど……。
とりあえず、トップページに載っているトップニュースと主要カテゴリへのリンクを拾って、個々の記事を持ってくるという簡単なスクリプトを書いてみた(→nikkei-scraper.rb)。ついでにKindle向けのmobiにするための各種ファイルも生成するので、あとはkindlegenを実行するだけでmobiができる。
全面的にちゃんとCMSで生成されているだけあって、非常にスクレイピングしやすいサイトだというのはわかった。ただニュースだけじゃつまらないので、コラムなんかも拾ってくるようにしたいな。というか「私の履歴書」はどこ……?
それからこのコードはやっつけすぎるのでもうちょっとなんとか……。あと、生成したmobiファイルをメールでKindleに送るようにすればカンペキなんだが、添付ファイルつきメールをRubyで送るには、今だったら何を使えばいいんだっけ? まだTMail?
それにしてもKindle向けのデザインは難しい。HTML+CSSとはいえ、解釈が独特というか中途半端なので、どういうスタイルが期待通りに適用されるのか、ちゃんとベンチマークしてやらないとまともにレイアウトできそうにない。まぁ、ニュースや小説を読むだけなら、単純素朴なCSSでいいのだけれど、それすらも苦労する。OnDeckはすごいなぁ(というかそれを変換したcalibreがすごいんだろうけど)。
2011-01-05(水) [長年日記]
■ ようやく「まおゆう」を読み終えた
先月21日にPDF化した「まおゆう」こと「魔王『この我のものとなれ、勇者よ!』勇者『断る!』」、やっと読み終えた。いやー、長かった。面白かったけど。先日出た書籍もけっこう売れているようで、よかったですな。
骨格は「ドラえもん」のバリエーションというか、SF的に言えば「未来の外挿」タイプ。おなじみの「剣と魔法」世界に、(現実の)未来のテクノロジーを無邪気に投入したらどうなるかというシミュレーションが前半。「経済」というキーワードで語られることが多いけど、経済も含めたテクノロジーの話だと思うよ。
うってかわって後半は骨太の「物語」で、新旧テクノロジー、魔法と科学が入り乱れる戦争描写がメイン。前半に仕込んだタネがいっせいに芽吹いて葉を広げ、けっこう感動的なラストへ。この大長編で読者を飽きさせないストーリーテリングは素晴らしい。こんなに思い切って「ファンタジー」を否定してしまって大丈夫かいなと思いながら読んでいたけど、むしろそこがウケているのかも。
ただ後半になると誤字が急増していかにも「書き飛ばした」感が強まるし、登場人物が入り乱れて前半にくらべて格段にわかりにくい。このあたりはおそらく書籍版では直っていると思うので、気になるなら本を買った方がいいだろう。ちなみに手元ではできるだけ誤字を修正、縦書きでも読みやすいように英数字を置き換えた青空文庫フォーマットのテキストがあるんだけど、これって配ったらまずいんだろうなぁ。ライセンスが明示されてない著作物って面倒デスネ。
あと、登場人物には固有名詞がなくて役柄(ロール)名しか与えられていないため、会話中でもロールで相手を特定するんだよね。しかもなぜか代名詞がほとんど使われないので、めっちゃ不自然。これが作者の作文技術のなさゆえなのか、特定フォーマットを模すためにわざとやっているのかわからないけど、読んでて白けるのが難点。人間はこんなふうに会話しません。
そういえば、少し前に書籍のフォーマットに関していろいろ文句を言っている人がいるのを知ったのだけど(たとえばTogetterだとこのあたり)、書籍を神格化しちゃっててなんだかなーと感じた。2chが原典で、最初の編集物がまとめサイトだとすれば、書籍なんて三次メディアに過ぎないわけで、それだけ後発ならいろいろ手を入れて工夫するのはむしろ当たり前。原典にあたりたい人はネットを探せばいいわけで(いつでもタダで読めてしかもコピーがとれる!)、いまどき「最初の書籍化」なんてものに原典的な価値を求めてどうすんのかと。
だいたい、ト書きすらない、セリフとオノマトペのみで構成されているこの作品は、一般的には「戯曲」の一種なのだろうが、むしろ(マンガの)「ネーム」と呼ぶほうがふさわしい(本来のネームはそういうものじゃないけど)。なんせ「ばさりっ」なんてオノマトペが説明抜きで登場するんだから(状況からしてたぶんこれは「天幕をめくって人が入ってきた様子」)、あとはコマ割りをして絵を入れればマンガになる。
だとすれば最初の書籍を小説の体裁で出すなんて保守的発想もいいところで、むしろ最初から少年ジャンプあたりで連載した方がよかったんじゃないの。この国ならむしろコミックスの方が後世に残るでしょ。書店で入手できなくなってもマン喫で一気読みできるし、絶版になったらJコミに置けばいいわけでさ。そういう観点で今回の書籍化を「残念」というならわからんでもない。もっと冒険したっていいだろうに(いや無茶を承知で書いてるけどさ)。
2011-01-07(金) [長年日記]
■ Kindle3向けdot by dotな自炊PDFを(真面目に)作成する
ePUB 3.0が、縦書きやルビをサポートしてそろそろ仕様確定するそうで、それはそれでめでたいんだけど、各種デバイスがいつサポートするのかもわからんし、出版サイドにノウハウがつくのにも時間がいるだろうし、普及にはしばらくかかるだろう。
いっぽう、大長編「まおゆう」を自作したPDFで読んだり、最近高橋さんが作っているSONY Reader向けの青空文庫PDFをKindleに入れてみた経験からすると、電子書籍は必ずしもリフローできるフォーマットである必要はないんじゃないかとも思い始めている。世に出回っている電子書籍端末は、3~4インチ(スマートフォン)、5~6インチ(KindleやSONY Reader)、10インチ前後(いわゆるタブレット)の3種類。だったらこれらに合わせて最低3種類のPDFを選択可能にしてくれればそれで十分じゃないのか? 字の大きさのバリエーションを2種類作ってもせいぜい6種類。これで大多数の人が使えるなら、ePUBじゃなくてもいいわな。
いずれにせよ、現時点でePUBが読めないKindleがePUB 3.0をサポートするかというと怪しいと思うので、自分にとって自炊本がソースである期間はまだしばらく続きそうだ。
というわけでベストプラクティス宣言後も、シェルスクリプトのRakefile化と並行してチマチマと最適化をしていたりして。なにせ、字がまだ汚いのだ。ちなみに最新のRakefileはGitHubで公開してある。
最近の発見(?)は、pdftoppmが吐き出す画像ファイルのデフォルトの解像度が150dpiだったこと。えーと、たしかおれ、600dpiでスキャンしてたよね? 150dpiつったら、Kindleそのものの解像度より小さいわけで、そんな画像を拡大表示してたら汚くてあたりまえだ……。というわけで「-r 300」をつけて大きめの画像を抽出するようにした(「-r 600」ならなお良いが、300でも十分な解像度である)。
それから、これをトリミングしたあとで、Kindleの画面にぴったりフィットするようにあらかじめリサイズする。けっきょくこれが一番確実なのがわかった。そのために、真っ黒な画像を使ったPDFを作り、Kindle上でどれくらいの大きさに表示されるのかチェック(ググればわかるように他の人も似たようなことをしているけど、みんな微妙に数字が違うので自分だけを信じることにした[笑])。
まず文庫や新書向けの縦持ち(ポートレイト)の場合、560x735がPDFの表示エリア。紙の書籍を画像化した場合は縦がつっかえるので、高さ735に最適化すれば良い。ImageMagicには「-resize x735」を指定する。できたPDFのスクリーンショットがこんな感じ。ちょっとノイズが乗っているけど、実際にKindle上で読んでいれば気づかない程度:
続いて大型の技術書を横持ち(ランドスケープ)で読む場合、722x535が表示エリア。こんどは横だけフィットすれば良いので、ImageMagicのオプション指定は「-resize 722」になる。これで最適化するとこんな感じ:
これならmobiな書籍と比べても遜色の無い美しさだよ。満足だ。長かったけどこれで最適化の旅はたぶんおしまい。あとはファイルサイズ削減のためにもうちょっと圧縮率を上げられないかトライするかも。
◆ sasasin [pdftoppmはノーマークでした。150dpiがデフォとは。画期的だし嬉しいのですが、画質面はこれで開拓しつくしち..]
◆ ただただし [わからなくもないですw > 寂しい]
◆ imudak [最近Kindleを手に入れて、自炊本を読むのに重宝しています。ありがとうございます。 自分の自炊ファイルではちょっと..]
◆ ただただし [ありがとうございます、拝見しました。私はスキャンの時点で白紙を飛ばしているので、そういうメにはあってないんですねw ..]
◆ imudak [白紙飛ばすと印刷のページ番号とずれちゃってどうにも気持ち悪かったのでそのままにしてたんですが、思わぬ落とし穴でした…..]
◆ ただただし [まぁこの世界、古くからmkmfのようなプログラムが存在するわけで(今ならAutoconf?)、アプローチとしては間違..]
2011-01-08(土) [長年日記]
■ 「ひとりぼっちのプログラマ」に読んで欲しい、『 プログラマが知るべき97のこと』
オライリーの高さんから献本いただいた。いつもありがとうございます。
この本はねぇ、「ひとりぼっちのプログラマ」にぜひ読んで欲しいなぁ。
ここでいう「ひとりぼっち」にはふたつの意味があって、ひとつは「ひとりでがんばっているプログラマ」。
Twitterやブログを読んでいると、仕事でいろんなことにチャレンジしたり、業務を改善したりしたいと思っているのに、職場の文化が壁になったり、上司の理解が得られなくて歯がゆい思いをしている若いプログラマの叫びが、それはもう、かなり頻繁に聞こえてくる。10年前ならいざしらず、今ならさっさと転職してしまうのが正しい道だろうけど、そうもいかない事情を抱えている、でも現状をなんとかしたい……そう感じているひとりぼっちのプログラマにとって、本書はいい味方になってくれると思う。というか、モチベーションを失って旧弊な企業文化に飲み込まれるまえに読むべき。
本書にエッセイを寄せている数十人のベテランプログラマたちは、おそらく今は恵まれた環境で仕事をしていると思うけれど、けっこうな人数が若い頃の失敗や挫折についてかなり赤裸々に語っている。そうそう、あちこちに「達人プログラマ」への言及も目立つのも特徴的。彼らとて、Daveら「達人」に憧れて、失敗を繰り返しながら今の地位にのぼりつめ、達人の一人になったんだよね。
我々日本人からすると青々とした芝生に見えていた英語圏のプログラマたちだって、さまざまな壁にひとりぼっちで立ち向かわなければいけなかった時はあるし、それでも「達人プログラマ」を目標に歯を食いしばって努力を続けたから、英語圏を代表する数十人のプログラマの一人としてエッセイを書くまでになれたのだ。
エッセイの内容は「えっ」と思うほど初歩的なことも多い。でも彼らがそこに至るまでには、きっとひとりでがんばっている時期があって、それが血となり肉となっているから、どんなに初歩的な内容であってもここに載る価値を持ったのだ。だから、いま、ひとりぼっちでがんばっているプログラマは、同じ境遇の「仲間」と「目標」を得る意味で本書を手に取るといいんじゃないかなぁと思う。
もうひとつは「孤立したプログラマ」という意味での「ひとりぼっち」。これは自覚しにくいけど、日頃から「自分以外のプログラマはバカばっか」と考えていたり、テスターや上司(ときには顧客まで)を敵だと感じることが多いなら、本書を読むべきだ。
上で書いたような「ひとりでがんばる」ことをやりすぎた結果、職場で孤立してしまう弊害について書かれたエッセイもまた、本書で大きな割合を占めている。というか、純粋に技術的なエッセイを除けばほとんどが「一人で仕事してると思うなよ」という戒めがテーマになっていると言っても過言ではない。それは、プロダクトに関わる他の人々のことであったり、(自分を含む)未来のメンテナのことであったりさまざまだけれど、自分勝手で独りよがりなプログラマはプロではないという意見が、手をかえ品をかえて登場している。
もし自分が職場で孤立していると感じているプログラマがいたら、これもまた一度手にとってなぜいま自分は孤立しているのかを振り返るきっかけにしてみてはどうかと思う。とはいえ、こっちの「ひとりぼっち」は、たいてい自覚症状がないからなぁ。
プログラマが知るべき97のこと
オライリージャパン
¥2,090
蛇足: ほんとはだいぶ前に読み終えていたんだけど、Amazonの在庫がぜんぜん復活しないのでちょっと待っていたのだ。読みたいと思ってもらえてもその場で買えないんじゃ紹介する意味がないし。まぁ年末年始を跨いでるからしょうがないね……と思っていたが、年があけて一週間待ってもまだ入荷しないし、あんまり時間があくと内容を忘れてしまうので(笑)、しょうがない。リアル店舗では買えるみたいなので。
ホント、こういうのを見ると紙の本なんてとっととなくして、デフォルトで電子書籍になって欲しいと思うよ。まぁ、オライリージャパンのPDFは制限キツくて評判悪いみたいだけど。
2011-01-09(日) [長年日記]
■ ABC2011w (Android Bazaar and Conference 2011 Winter)に行ってきた
6月のABC2010sに続いて、Android Bazaar and Conferenceに行ってきた。前回は東大駒場キャンパスだったけど、今回は本郷、メイン会場は安田講堂である。……と言っても前夜、急な謎の吐き気に襲われて*1、10時間もぶっ通しで寝てしまったので、午前中の基調講演を聞き逃したばかりか、午後から行ってみたら予定していたセッションはすでに満席で入ることもできなかったという。何しに行ったんだオレ。
事前情報で参加申し込みが3,000人(!)というのを聞いていたので、こういう状況は予想できたことではあるが、混雑が苦手な人間にはつらいイベントになってしまったなぁ。まぁそれはそれとして、Androidが盛り上がっていることはたいへん喜ばしい。アメリカでVerizonがiPhoneを売るようになったことからしても、AppleがAndroidに相当危機感を持っていることがわかるわけで*2、やはり対抗馬がしっかりしていないと健全な市場は形成されないからねー。
で、そんなAndroid一色のセッション(同時7トラック!)を尻目に、電子出版のセッションを聴いたりしていたのだが(ホント、何しに行ったんだ。いや、村田真さんがしゃべるというので)。EPUB3.0の話題だったのだけど、縦書き、ルビ、縦中横などの実装は先行してWebkit上で行われていて(ここだけがAndroidとの接点)、現在はほぼ問題なく表示できているとのこと。逆に言えばEPUB 3.0の仕様を満たすにはほぼフルスペックのWebブラウザを作らなくてはいけないわけで、なかなかハードルの高い話だ*3。そんな最新のWebkitがAndroidに取り込まれて各端末に配備されるのはだいぶ先になるはずで、普及までにはしばらくかかりそうだなぁ。
最後は(せっかくなので)安田講堂でシャープの話を聴くなど。主に夏・秋モデルの話だったので新しいことは多くなかったのだけど、「開発用に端末貸し出しはないのか」という質問に「キャリアを通して出荷しているものだから難しい」と回答していたのが印象的だった。そうか、せっかくメーカーが開発者とうまくやっていきたいと思っていても、キャリアが足かせになってるのか。だったらさぁ、「つぎのNexus」をシャープから提供するように画策してみたらいいんじゃねーの、と思った。「Nexus SH」とか。せっかくの国産Android端末、ドメスティックな機能を盛り込むことばかりに注力してないで、世界標準の端末作るという方向はどうよ?
2011-01-10(月) [長年日記]
■ 本当は怖い『キック・アス』
映画『キック・アス』を観てきた@TOHOシネマズ川崎。観測範囲では観てきた人みんな大絶賛で、最初は4館から始まった上映館も増えてきているみたいだし、これは観ておかなくちゃね、ということで。
ヒーローもののエンターテイメントとしてはまさしく素晴らしい出来で、派手なアクションは痛快この上ないし、他のヒーローもののオマージュは盛りだくさんだわで*1、笑いどころも多くて全編飽きるところがない。キック・アスのキョドった目付きや、ヒット・ガールのワルそうな唇含め、わざとらしい演出もいいですねー。あ、あと、ケイティの友だち役の人がかわいいので、思わずFacebookのファンページに入ってしまった(けど公式かどうかわかんない)*2。
ただ、立ち止まってよく考えてみるとこの映画、えらく怖い話だよなぁ。通常こういうヒーローものは「これはフィクションですよ」というポイントが必ずあって、現実との境界線をきちんと引くものだけど、『キック・アス』は徹頭徹尾、「現実」から軸足を外そうとしない。主人公はたやすくぶちのめされて大怪我するし、本当に人が死ぬし。(以降ネタバレ注意)悪役は警察を買収している麻薬組織だし、洗脳されて育った11歳の女の子は倫理観ゼロの殺人鬼だし、最後は復讐の連鎖までできあがるのだから、まったくもって救いがない。
てぇことは、一見ヒーローものに見せかけているけど、実はぜんぜんそんなつもりはないんじゃないのかね、この作品。まぁ、これ以上は深読みのし過ぎかもしれないから書かないけど、単にスカッと爽快なエンタメじゃなくて、なんだかずっしり重いものを受け取ってしまったような、居心地の悪さがある。
2011-01-12(水) [長年日記]
■ Wikisourceで(ちょっとした)編集合戦を体験した
こないだ紹介した『プログラマが知るべき97のこと』、いつまでたってもAmazonに入荷しないのでグチっていたら、中尾さんに指摘された:
@tdtds かの本のXIIページによると、エッセイは CC-BY 3.0 US とのことなので、テキストデータ化して毎日一エッセイ表示するアプリをつくって流通させてしまいましょう。
— NS(id) (@32nm) January 9, 2011
なるほど! 読み飛ばしていたが、たしかにCCだって書いてある。原書がCCであるにも関わらず、翻訳されると(意図的かどうかわからないが)なぜかライセンスが抜け落ちてしまう書籍が多い中、素晴らしいことであります。
で、さっそく(中尾さんが)Wikisourceに目次ページを用意したので、試しに5つほどページを起こしてみた。なにしろこっちは自炊済み、OCRがテキスト化してくれたPDFファイルがあるので、事実上コピペするだけである。
それが日曜夜のこと。
翌朝、ページをリロードしてみると、早くも削除対象になっていた(笑)。仕事はえぇ。
いや、CCなんだから不当な削除なんだけど、明らかに書籍をもとにした文章を何の断りもなくコピーしたのだから、むしろしっかり自警がされているということで、Wikisource的には好ましいのではないかと思う。ザルよりは少しくらい過剰な方が良い場合もある。
で、ちゃんとライセンス的に問題ない旨をノートに書いて復活。そんでもって翌日にみてみたら、また削除されてるの(笑)。
その後の展開は削除依頼のページを見ればわかるように、ちゃんと誤解が解けた上に、適切な書き方まで指導してもらい、おまけに目次には最初の5つばかりか、なぜか残りの100あまりの項目まで並んでいる(←いまここ)。
今回のは「編集合戦」と呼ぶほどのものではないけれど、ライセンスがはっきりしたものしか載らない/載せないWikisourceだからいいものの、Wikipediaでこういうことが起きたらたしかに収拾がつかなくなるのもわかるわなぁ。
ちなみにオライリーの営業妨害をするつもりはないので*1、おれは(少なくとも十分に時間がたつまで)これ以上の追加はしないけど、ライセンス上の問題はまったくないので、残りの100項目あまりの追加はご自由にどうぞ。
*1 だから早くAmazonで買えるようにして下さい。
2011-01-14(金) [長年日記]
■ 9784488699017
SFよ、私は帰ってきた!
……いやね、こないだ本屋に入ってハヤカワ文庫の棚を見たらさ、高さの異なる新旧の本が凸凹に並んでて実に悲しい気分になったんだけど、ちょうど自炊本のクオリティが不満のないレベルになってきた頃だったので「全部自炊しちゃえば高さの違いなんて気にならないじゃん!」と思ったので新刊を買ったのよ。創元文庫だけど(え?)。
で、本書がそうなんだけど、いやぁ、かなり面白かった。
ペストが猛威をふるう中世ヨーロッパ*1に異星人の宇宙船が座礁(?)したところから始まるファーストコンタクトもの。科学技術が発達した現代ではなく、キリスト教が支配する時代にファーストコンタクトがおきたらどうなるか。これだけで勝ったも同然の設定なんだけど、これに、数少ない資料から当時のようすを再構築するという現代視点のストーリーがからむ。
上下巻の上巻は、異星人と人類の交流をじっくり描く。じっくりすぎてジリジリするほどだし、現代パートが絡んでるんだか絡んでないんだかよくわからない。正直「失敗したかな」と思った。が、ファンタジー耐性の低い異星人たちが次々とキリスト教に帰依し始める中盤から、がぜん面白くなってくる。といってもギャグに走ることなく、そして言うまでもなくペストが登場することでむしろシリアス極まりない展開になり、最後は中世と現代の間で別々に展開していた物語がカチリとはまる。ああ、これがSFの快感というものですよ。
なんかね、いろいろなものが実にバランスよく配置されているのがいい。圧倒的な科学力を持つ異星人と数で勝る人類の力関係が醸しだす緊張感、インテリで自由な思想の神父と真面目で敬虔すぎる修道士の関係、理論物理学者と歴史研究者のカップル。水と油のような組み合わせが反発しつつ引き合って、物語に深みを与えている。
ひさびさに手にとったSFが「当たり」でよかったなぁ。
9784488699017
異星人の郷 下 (創元SF文庫) (創元SF文庫)
東京創元社
¥118
*1 SFに登場する中世ヨーロッパと言えばペストです。
2011-01-15(土) [長年日記]
■ 無印良品の「猫草栽培セット」を使ってみた
昨年末、無印良品の店で「猫草栽培セット」というのを見かけたので買ってみた。サイトの説明によるとずいぶん以前からある商品みたいだなぁ。ぜんぜん知らなかった。
毛玉取りには専用のゼリーを舐めさせているから猫草はいらないと思うんだけど、グスタフは散歩に出ると道端の草をかならずかじるので、草を食べたい気分のときもあるんだろう、ということで試しに買ってみたのだった。
年明け、3日あたりに開けたので、食べごろになるまで10~12日くらい。寒いせいもあると思うけど、けっこうかかる。
今日になっていい感じに伸びていたので二匹に見せてみたら、そろって駆け寄ってきて、興味津々な感じで匂いをかいでる。で、グスタフはそれっきり口もつけずに去っていき(お前のために買ったんだぞ!)、ドーラはばりばり食べ始めた。この差はなんなんだ。
もっとも、食いちぎろうとすると紙の容器まで持ち上がってしまってうまく口に入らないらしく、ちょっと食べづらそうだ。容器を固定してやらないといけないのかもなぁ。ツメが甘いぞ、無印良品。
■ 「プログラマが知るべき97のこと」のトークセッションに行ってきた
先日紹介した『プログラマが知るべき97のこと』のトークセッションがあるというので、ジュンク堂書店池袋本店に行ってきた。なにしろ登壇者が、監訳者のt-wadaに加え、プログラマとしてのスキルの出発点がtDiaryだったことを公言するsecondlifeと、現役のtDiaryユーザであるomoとあっては、行かないわけにはいくまいよ。
なにげに池袋店は始めてだったりするのだけど、会場の4F喫茶に行ってみると池袋店に常駐しているtakahashimがいるのはまぁ当然として、「ジュンク堂RubyKaigi店長」でおなじみの長田さんが出迎えてくれ、UstreamはsuzukiがKaigiFreaksテクノロジーを投入、おまけに見回すと半分くらい(←ややおおげさ)は見知った顔……という「なにこのミニRubyKaigi」状態。そんなことでいいのか!
セッションの内容はUstreamの録画とハッシュタグ97prog_jaで追えるのでそちらで。基本的に書籍の内容にはほとんど触れずに、二人が「よいプログラマになるためにしていること」を紹介していくという流れで、たった2ページで1トピックを語る本書のスタイルとは違った、けっこう突っ込んだ話が聞けて面白かった。というか、レビューの話ばっかりしていた気もするが。
その後はなんとなく懇親会についていき、担当編集者の高さんに「オライリーは真面目に電子出版して下さいよ」的な話をしたり、「プログラマ35歳定年説は本当だよ」などと言って若者を怖がらせたりしていた。あと、先日話題になったJavaプログラミング能力認定試験がひどいという話、日本の現場は本当にあんな感じだという証言を聞いたり*1。怖いでデスネー。
そうそう、せっかくなので登壇者の三人にサインをしてもらったのだった。といっても書籍はとっくに断裁済みなので、サインをしてもらうページだけ抜き取って持っていったのだが。サインしてもらうために重い本を持ち歩かなくていいという、自炊の新たなメリットが!(笑)
で、帰宅してからそのページだけ再度スキャンして、PDFの該当ページを差し替え、Kindleに転送。EPUBな書籍にサインをもらう話は以前takahashimが書いていたが、これはその自炊版である。
そんな「97きのこ本」、せっかくトークセッションまでやったのにまだAmazonの在庫がない! と思ったが、メッセージが「そろそろ入荷するよ」的なものに変わってるようだ。もうじき普通に買えるかも?:
プログラマが知るべき97のこと
オライリージャパン
¥2,090
*1 言語がCOBOLからJavaに変わってついていけなくなった「高齢者」が、偉くなったふりをして設計だけしているからああなるのだそうだ。なるほど、これも一種の老害というわけだ。
2011-01-16(日) [長年日記]
■ はやぶさ、そうまでして君は〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話(川口 淳一郎)
「はやぶさ」本、通算4冊目。いよいよ真打ち登場、川口プロマネ自身による書籍である。山根一眞、的川泰宣と筆の立つ人たちの本を読んできて、さすがにもう新しいことはないだろうと思っていたけれど、やはり立場によって突っ込んで書くポイントが違うんだよな、面白い。
例によって(笑)打ち上げまでの話で4割くらい。ホント、日本に限らずプロジェクトが認められて打上げに到るまでで苦労の半分くらいは済んでしまうのが宇宙探査の実態なわけで、ここのところがもうちょっとなんとかならんものかと思う。もっとも「はやぶさ」は打ち上げたあとの苦労も成果も前人未到だったわけだが。
川口さんはメディアに登場するときはいつも冷静沈着で、クールで頼れるプロジェクトマネージャという雰囲気だったのだけど、本書では終盤になるにしたがって今まで聞いたこともないほどエモーショナルな文章が増えてくる。ああ、やっぱり彼も人の子だったのだ、こういう心情は、すべてが終わったいまだから書けるんだろうなぁと思うと、またもやジワっとくるものがあります。
それにしても、イトカワ上空で奇跡の復活をとげたとき、リチウムイオン電池が生き残っていた理由がいまだにわかっていないという話は既知だったっけ? おれは知らなかったんだけど、まさかこんなオカルトじみた話が出てくるとは、現場が神頼みをしたくなるのもわからんでもない。ただ、その神頼みにしたって、本当に人事を尽くしたあとの話なのがよーくわかる。そういう点がすごくしっかり描かれているのが、本書最大の魅力だろう。やはり現場で指揮をとっていた人の話は重みが違う。
もう一冊出ている新書の方も評判いいので読んでみたい……けどまた在庫切れだよ、いいかげん出版社は本気で電子書籍に(ry
はやぶさ、そうまでして君は〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話
宝島社
¥20
9784121020895
2011-01-18(火) [長年日記]
■ KindleのためにInstapaperを使い始めた
先日のトークセッションの懇親会で、「Kindleユーザならinstapaperが便利」と教わったので、さっそく使い始めてみたのだ。
Instapaperはいわゆる「あとで読む系ブックマークサービス」の一種。「長すぎてあとで読みたいなー」という記事をスクラップしておいて、いろんな形で読みやすくしてくれる。「Kindleユーザ必携」的な理由は以下の2点かな:
- Webページから「本文」だけをうまいこと抽出してくれる(ナビゲーションやサイドメニューなどの領域をカットしてくれる)
- Kindleに毎日まとめて送りつけてくれる
本文抽出はたまに失敗してくれるけど(そもそもWebページなんてものはたいして構造化されていないので、HTML5時代が来ない限りこれを完璧にこなすのは不可能だ)、けっこういい感じで抜き出してくれる。長い文章はよけいなものがなくなるので、それだけでずいぶん読みやすくなる。
そうしてスクラップしておいた長文記事を、毎日まとめてmobiファイルにし、(登録しておいたメールアドレスを経由して)Kindleに転送しておいてくれるというのが、今回の話のキモである。なるほど、これは便利。
試しに自分の日記の記事をいくつかみつくろって登録し、Kindleへの転送トリガを手動で起動してみたら、ほどなくKindleの書籍一覧に登場した。
これ、普通のmobiじゃなくて、「Section List」なんて機能がついた、ちょっと特殊なフォーマットらしい。たしか新聞や雑誌の定期購読向けのフォーマットで、なんとかって名前がついてたはずだ(ど忘れ)。もっとも肝心のSection Listは日本語が化け化けで、正直使い物にならない。ただ、5 Way Keyで記事単位のジャンプができるので、記事がたくさんあるような場面では拾い読みができていい。なるほど、新聞向けだ。こないだ作った日経電子版のスクレイピング、あれはそのままこっちに置き換えてもいいかも知れない(日本語の問題が解消されてばの話だが)。APIもあるし。
というわけで、新聞にはイマイチながら、いわゆる「あとで読む」向けにはけっこうよさそうだ。しばらく使ってみよう。
2011-01-19(水) [長年日記]
■ 『 プログラマが知るべき97のこと』が電子書籍になった
先日紹介した『 プログラマが知るべき97のこと』、Amazonに入荷しない状態がいまだに続いているわけだが、しびれを切らした(?)オライリー・ジャパン本家から電子書籍版が登場した。ひとづてに聞いたところでは、この日記でグダグタ言ったり、電子書籍の必要性を熱く語ったりしたのが効いたとか。本当なら嬉しいことだ。言ってみるもんだね。
オライリーに限らず、ソフトウェア技術者を相手にしている出版社は、積極的に電子展開を進めるべきだと思う。我々技術者は電子書籍にさほど抵抗がなく、読みたい本はすぐにでも手に入れたいタチなのだ。こんなにいい客、そうそういないよ? 売れすぎて入手困難なんてのは特殊な希少本にのみ意味があるステータスなのであって、旬な技術の本においては単なる販売機会の喪失にすぎない。
日本は、たくさんの技術書を(英語でない)母国語で読めるという世界的にも珍しい市場が成立している国なのだ*1。我々は(少なくともおれは)この特殊な市場がこれからも栄えて欲しい。もっとたくさん、そしてすぐに本が読みたいし、そのためにも「買うチャンス」はもっともっと拡大して欲しいと思う。
この調子で、新刊は発売と同時に電子版を用意してもらいたいし(もちろん電子版が先行でもいいのよ)、アフィリエイトもできるともっといいし、できればちょっとでも紙より安いと嬉しいですねぃ。
*1 今回のことをFacebookで紹介したら、海外在住の日本人技術者が即座に買っていた。電子書籍は海外に住む人にとっても福音だ。
■ 『Facebookをスマートに使いこなす基本&活用ワザ150』の第一章が電子書籍化されたのでさっそくKindlize
↑みたいに今後PDFで売られる書籍が増えてくると、買ったその場ですばやくKindle向けに加工できないといろいろ困る。自炊の場合は断裁して、スキャンして……という手間がかかるのははなから覚悟の上だからいいけど、最初からPDFになっている場合はやはりスピードが命。
というわけで今日、『Facebookをスマートに使いこなす基本&活用ワザ150』の第一章が電子書籍化というニュースを見たので、さっそくKindlize*1。最近はImageMagickの扱いにも慣れてきたので、スピード重視で中間画像ファイルなしの手法を編み出してみた。元のPDFを「src.pdf」として、convertコマンドのみで余白をトリミングした「dest.pdf」ができる:
% convert -density 300 src.pdf -fuzz 50% -trim -type GrayScale -resize x735 dest.pdf
#これは縦持ちにできる小型の書籍向けの設定なので、ターゲットが大型本で横持ちにしたい場合は「-resize 722」にする。
キモはsrc.pdf指定の「前」に置いた「-density 300」で、これは300dpiで画像化する指定だ。ソースになるファイル指定の前に置くことで「これから処理するファイルを300dpiで扱え」という指示になるみたい。なるほど、convertコマンドがコマンドパラメタを愚直なまでに順番に処理している様子がうかがえますな。これをやらないと悲しいくらいショボい画質になる。この手法がわかったので、自炊でもpdftoppmを使わずに中間フェーズを削減できるかも。
ノンブルをカットしたりといった細かい調整はできないけど、すぐにでも読みたい場合はこれで十分だ。元がテキストなので、紙をスキャンしたものに比べて格段にきれいでヨイです。
あとでメタデータをいじればScanSnapの付属ソフトでOCRにかけることもできるはずなので、DRMがかかってコピペ不可なPDFなんかもけっこう救えるんじゃないかと思う。あとでオライリーのPDFを何か買ってみよう。
*1 「Kindle向けに加工する」の意。ググってみたらすでに使ってる人がいた。
2011-01-20(木) [長年日記]
■ 9784150117559
いや、ちゃんとハヤカワ文庫も買ったんですよ? すぐに断裁されて、今は段ボール箱に放りこまれてるけど。だってトールサイズは本棚に入らないし。
ナンシー・クレス作品の読後感には、満足と不満がちょうど半々くらいで同居している(←褒めてない気がするけどいちおう褒めてる)。そのあたりの理由については本書解説で冬樹蛉が実にうまいこと説明しているのであえてここでは書かないが、長くSFを読んでいる読者には物足りなさがあると思う。特にイーガンあたりを喜んで読む向きには、ヌルくてお話にならないかもね。
でも、小説としての完成度というか、読書体験としては上質だし、解説にもあるけれど手垢のついたテーマやアイデアだけど実装方法に味があるので、これはこれで価値がある。特に本書はクレスが得意とする中短編集なので、だらだら続いてかったるい長編と違ってどれも面白い。
そんなわけで、けっこう立て続けに翻訳が出て嬉しいんだけど、でもハヤカワ文庫を読むようなSFファンは先鋭化する一方だと思うので、こういうのはあんまり売れないんじゃないですかね。とか余計なお世話だろうけど。
■ 『言語設計者たちが考えること』電子版を買ったその場でKindlize
上の本は出張の行きの新幹線で読み終えてしまったのだが、もう未読の本がKindleに入っていない*1。帰りの新幹線が暇なのは困るので、その場でオライリーから『言語設計者たちが考えること』の電子版を購入。紙よりちょっと安い……とはいえ3,024円。いいお値段だなーと思ったら500ページ以上あるのな。こりゃ読み応えあるわ。
しかし、大型本で500ページなんて、ぜったい持ち歩く気にならないよ。電子版があってよかった。もっとも、オライリーの大型本は、Kindleで読むにはちょっと大きすぎるんだけどね。横持ちの場合は幅15cmくらいまでがちょうどいい。
とはいえ読めないってほどでもないので、すぐに昨日の手法でKindlizeしようと思ったら、画像化の時点でconvertがエラー吐いて死ぬのですよ。
オライリー本家の電子版がPDFやEPUBなど複数フォーマットでしかもDRMフリーなのに対して、オライリー・ジャパンのそれはPDFのみで印刷・コピペなどがいっさい禁止された非常に不自由なフォーマット。「やべー、読めない本を3000円も出して買っちゃったか?」と焦ったが*2、なんのことはない、pdftoppmでは普通に抜き出せたのでいつものRakefileであっさりKindlizeできた。
ちなみに原本にはメタ情報すら入っていない(!)ので、他の書籍のメタ情報ファイルを書き換えて使用した*3。当然この流用したメタ情報はScanSnapが入れたものなので、ScanSnap Organizerを使うことでOCRにかけられる。
かくして、印刷もコピペもできない原本から、印刷もコピペもできておまけにKindleでも読めるPDFができたことになる。ファイルサイズは30倍くらいになったけど(笑)。
とまぁ、この程度のDRM(?)なんてちょっとわかってる人なら簡単に回避できてしまうのだから、(特に技術者向けの書籍を作ってる出版社は)下手なDRMをかけるのは無駄というか、単に客の生産性を落としてるだけだということに気づいて欲しいものです。購入者のメールアドレスが埋め込んであるんだから、それだけで十分でしょ?
9784873114712
2011-01-23(日) [長年日記]
■ 「川崎フロンターレ新体制発表会見」に行ってきた
フロンターレ新体制発表会見に応募したらチケットが当たってしまったので、ミューザ川崎まで行ってきた。15:00~18:00のイベントなのに、朝11時から並んだよ。ことサッカーのことになるとよく並ぶな! おかげでなかなか良い席が取れたけど。
フロンターレというチームは、スタジアムでのいろいろなイベントを他球団が見学に来ることからもわかるように、こういうイベントにはやたらと力をいれるというか、サポーターを喜ばせる(というか一緒に楽しむ)ことにかけてはこだわりがあるので、たいへん楽しいイベントだった。
イベントそのものがミューザ川崎を本拠地とする東京交響楽団とのコラボで、音響が素晴らしいことで評価の高いミューザ川崎のシンフォニーホールでブラスアンサンブルが聴ける。東京交響楽団はホームでの勝利時にかかるテーマ曲を提供してもらったりと、これまでもいろいろ関係があるので自然なコラボ。もちろん演奏会の最後にはこのテーマで盛り上がるわけだ。
その他にも、今年のキーワード「挑」の書を、わざわざ岡本太郎記念館から借り受けてきたり、それをユニフォームにプリントしたり、おまけに今年からユニフォームのサプライヤになったPUMA(スタッフが全員川崎にゆかりがある)から巨大なユニフォーム型のビッグフラッグ贈呈があったり。最後はサポーターから贈られた巨大な青いダルマに、相馬新監督が目玉を書き入れてタイトル奪取を誓う。隅から隅まで考えぬかれたエンターテイメントで、実にすばらしい。ここまでやられたら、今年も応援せざるを得ないよなぁ。
とはいえ、発表になったチームメンバの中にブラジル人がジュニーニョしかいないとか、DF強化というわりには森勇介がいないとか(勇介が右サイドにいないフロンターレなんてなぁ……)、もちろん監督業2年目の新監督とか、いろいろ不安はある。逆に、ケンゴは海外移籍を取りやめたし、山瀬の加入はそうとうなパワーアップだし、プラス要素もあるわけで、期待と不安がいり混じってはいるのだけれど。まぁ、今年も引き続き、なにかやってくれそうな面白いチームではあります。
◆ やまざき [個人的には右サイドは吉田にがんばって欲しいっす あと・・・杉浦が愛媛で10番背負ってますね(^^)]
2011-01-24(月) [長年日記]
■ ドーラ、水をいやがらない
朝、ドーラの姿が見えないので、今度はどこに新しい隠れ家を作ったのかと思いつつ探しまわったら、排水が終わったばかりの食器洗い機の中にいた。前からやたらと食器洗い機に興味を持っていたけど、まさかびしょ濡れの中に入り込むとは。
写真のとおりのご満悦な表情を見ればわかるように、ドーラはなぜか水をぜんぜん嫌がらない。風呂場に入り込んでも*1、一歩踏み出すごとに足をプルプルさせて水をいやがるグスタフを尻目に平気で歩きまわるし、トイレの水を流すと便器に飛び込みそうなくらい真剣に覗き込むし、流れる水道水にじゃれつこうとして蛇口の下に頭を突っ込むし(そして頭から水をかぶる)。猫って水を嫌がるのが普通だと思っていたんだが。
まぁ、グスタフも毎日散歩に出たがるし、どんな猫にも「猫らしくない変な趣味」があるってことなんでしょう。
*1 二匹とも人間と一緒に入浴するのが大好きである。といっても猫たちは湯船の上に渡した蓋の上でぬくぬくしながら人間を観察するだけ。
2011-01-25(火) [長年日記]
■ 『 WebSite Expert #34』の特集に寄稿した
去年の9月初頭からFacebookでファンページを作ったりなんだかんだしていたら目にとまったらしく、声をかけていただいたのでほんの2ページだが記事を書いた。雑誌に書くのは久しぶりだなー。
内容はファンページについてで、担当はパーソナルユース。編集者は当初、うちの猫たちのファンページを念頭おいて依頼してきたようだけど、それだとあんまり面白くないのでパラボラアンテナのファンページの方をネタにした。こっちならFacebookの外にあるサイトとの連携があるしね。
というわけで、よかったら読んでやって下さい。かなり最近のネタも含め、ここ数ヶ月の「Facebook騒動」に関わってる人が書いていたりするので、面白いです(といっても技術者向けの雑誌ではないので、開発方面の情報じゃないけど)。こういう特集をするには秋ごろの盛り上がりをうけてすぐに行動をおこさないといけないわけで、そうとうアクション早かったと思うんだけど、こうして形になるのは1月なんだよなぁ。紙媒体は難しいね。
ところでネタにするのはやめた猫のファンページだが、ひそかに実験していた結果が目に見えてきた。実験ってほどのものではないけど。
ウチの二匹の猫それぞれにファンページを作ってあるのだけど(グスタフとドーラ)、運用方針を変えてある。両者とも基本的に写真だけを掲載するのは同じだが、グスタフの方は(できるだけ)英語でコメントをいれつつ、Facebook上でのみ活動する。一方ドーラは日本語でコメントするがそのエントリをTwitter上のドーラのアカウントにも流す。グスタフにもTwitterアカウントはあるが、こっちはFacebookとは独立している(どちらもプロフィールにはFacebookのファンページURLを載せてある)。
ファンページ開設はグスタフの方が早く、かなりすぐにファン100人に達したが、プロモーションがFacebook内に閉じているせいでその後伸び悩み、現在のファン数は138人:
一方ドーラのファンページは開設こそ遅れたものの、Twitter上の写真をクリックするとFacebookのアルバムに飛ぶことから、写真を投稿するたびにファン数が増え、現在334人まで成長している:
まだまだ子猫らしさの残るドーラの方がかわいらしく見えるから人気が出たという側面もあるだろうが、実は両者の(Facebook上での)インプレッション数にまだこれほどの開きはない(このへんはまだ未分析)。ドーラはTwitterからのトラフィックがファン数の増大を招き、それがバイラルで広がっているようだ。最近は英語ベースのグスタフを尻目に、ドーラの方が外国人のファンを獲得しているようで、これはおそらくFacebook上でのバイラルを引き寄せられるくらいに成長したせい(最近低下傾向なのは写真掲載をさぼっていたからである)。
けっきょく、ブランド価値が低いうちはFacebook単体ではあまり広がりが出せなくて、外部のサイトからのトラフィック誘導がかなり有効ということだ。ブランドが確立していればFacebookだけで勝負できるが、それも日本人だけを相手するのはまだ難しいのではないかと思う。いや、この結果は見えていたんだけど、ここまで開きが出るとは思わなかったねぇ……と、自分の記事の結論部分を補強してみたり(笑)。
2011-01-28(金) [長年日記]
■ 2A対応のUSB充電器を買ってみたもののDesireは急速充電モードにならなかった
出先では昔ながらのUSB充電器を使ってDesireを充電しているんだけど(スマートフォンの常として、いつでも充電できる体制が必須なわけですよ)、USB経由の充電だと遅くて遅くて、ちょっとした空き時間にコンセントにつないでもたいして充電されなかったりする。
最近は2A給電してくれる充電器も出まわっているので、これを使えば急速充電モードになるんじゃないかと思って買ってみた。「iPhone/iPad対応」としか書いてないけど。
で、さっそく手持ちのmicroUSBケーブルをつないでみたんだけど、Desire上の表示は「USB」のまま。たしか2Aで給電すると「AC」って表示されるんじゃなかったっけ? てことはもしかして、ケーブルもそれ用のヤツにしないとダメなんだっけ?
たしかに「急速充電用」と銘打ったケーブルを売っているのは知っていたが。うーん、面倒な世界だなぁ。というか、急速充電用でかつ巻き取り式のケーブルって、あんまりないんだよなー。
2011-01-31(月) [長年日記]
■ Jコミの『交通事故鑑定人 環倫一郎』をKindleで読んでる
Jコミのβテスト第三弾、『交通事故鑑定人 環倫一郎』を読んでる。あ、いや、もちろん第二弾の『放課後ウエディング』も読んだけどさ……相変わらず新條まゆ作品は評価が難しいよな、いろんな意味で!
で、「環倫」はもう、存在すら知らなかったんだけど、意外と面白い。車の話ばっかりかと思ったら、けっこうバイクも出てくるし(まぁみんな事故って大破するわけだが)。「懐かしい絶版マンガが読める」だけじゃなくて、こういう「ぜんぜん知らなかったマンガ 」にも出会えるのはいいね。全18巻なので先は長いんだけど……。
Kindleには画像ファイル(主にJPEG)をzipで固めたものを読むモードがあって、PDFやmobiは上下左右に空白が入るのに対してzipにはフルスクリーン表示ができるため、これがまさにマンガに最適。というわけで、Kindleで快適に読むには入手したPDFを加工する必要がある*1。ついでにdot by dotサイズに変換した上で(フルスクリーンなので800x600フルに使える)、ちょっとコントラストをいじってやると読みやすい:
#!/usr/bin/zsh # pdf/の下に全PDFファイルを入れてから実行する。 # いつもの自炊系ツールに加えて、zipコマンドが必要。 mkdir pgm jpg zip for pdf in pdf/*.pdf; do echo $pdf base=`basename $pdf _hq.pdf` pdftoppm -r 300 -gray $pdf pgm/${base} for pgm in pgm/${base}*.pgm; do echo " ${pgm}" convert $pgm -resize x800 -level '0%,100%,0.5' jpg/`basename ${pgm} .pgm`.jpg done zip zip/${base}.zip jpg/${base}*.jpg done
Kindleのフルスクリーンモードにはひどいバグがあって、いったん電源を切ったりホームにもどると、モードを忘れてしまう(でもメニュー上はフルスクリーンモードにいることになってる)。ただこのモードはAlt+[F]キーで簡単に切り替えられるので、電源を入れてからAlt+[F]を2回押せばふたたびフルスクリーンで読むことができる。
それでもまだ字が小さいんだけど、まぁ文庫化を意識して描かれたマンガなんてめったにないだろうし、こればっかりはしょうがないねー。
*1 加工自体は私的利用の範囲で自由なのは言うまでもない。もちろん、気になる広告があったら元のPDFからクリックすること!
◆ みの [新年明けましておめでとうございます。 今年も、よろしくお願い申し上げます。 http:://mino.net/]