2010-01-01(金) [長年日記]
■ 新年
新年早々ダジャレでいいのかと。
昨年はなんだか(主に仕事上で)新しいことが盛りだくさんで、それをかわすだけで精一杯だったけど(かわすなよ)、今年はもうちょっとうまい具合に自分のものにできたらいいなぁ……ということで、前向き・上向きのグスタフ画像にしてみたよ。トラ年でよかった。
2010-01-02(土) [長年日記]
■ IA100 —ユーザーエクスペリエンスデザインのための情報アーキテクチャ設計(長谷川 敦士)
休み中に読もうと思って持ち帰った本が、まだ1冊も読めてない件。いや、さっき1冊読み終わったのがコレ。
Webサイト設計における情報アーキテクチャ(IA:Information Architecture)に関するトピックを100個、並べた本。情報アーキテクチャの定義、考え方から上流設計を経て、最後はワイヤーフレームまで網羅的におさえてあるので、WebのIAについて俯瞰したい人にはいいと思う。
もちろん、大型本とはいえたかだか200ページなので、深い話はいっさいない(できない)が、そういうのは個々の話題に関する書籍があるわけで、こういう総括的な本は価値があるね。単に(狭義の)IAにとどまらず、ユーザエクスペリエンス(UX)まで視野に入れているあたりも現代的だし。
もっとも、「はじめに」で100個の「パターン」を集めたとあり、文中にもアレグザンダーへの言及があったりするので、「IAに関するパターンカタログ」かと期待してしまうが、その予想は大外れだった。先にも書いたようにIAに関する全プロセスを扱っているので、パターンとして扱うには粒度がバラバラすぎる。でも本人はカタログ作ってるつもりだったんだろうなぁ。
どうもこの著者、パターンについてあまり知らないんじゃなかろうか。いちおう見開きで1トピックにして体裁は全要素で揃えてあるように見えるが、実際は階層構造を分割しているだけだったりして、個々の要素の関連が見えない*1。左ページに図表、右ページに解説という書き方もパターンカタログを意識しているように見えるが、解説パートは構造化されてない(もしくはトピック独自の構造を持つ)から、全部読まないと意味がわからない。
結局、カタログっぽい拾い読みはできなくて、通して読んで全貌を頭に入れないと理解できない。こういうのは「パターンを集めた」とは言わない。書いてる側は全貌が頭に入ってるから、トピックごとに読んでも意味が通ると思っちゃったんだろうねー。情報アーキテクチャの専門家が自書のIA設計に失敗しているという、なかなか興味深い構造である。IAに携わる人は反面教師としても読めるという、ある意味1冊で2度おいしい本だ。
*1 いちおう右肩にそれっぽい情報が付加されているが、説明はないしわかりにくい。
■ 寒川神社へ初詣
今年も初詣は寒川神社。毎年、門の上に掲げられる、干支を題材にしたねぶたが楽しみである。今年のは……なんだか「絶滅の危機に瀕している虎を守る人」みたいだ。
なお、毎年「ないかなー」と探している「揚げたいやき」は、今年も発見できず。どうも完全にやめてしまったようだ。このたいやきブームに乗らないなんて、なんて商売下手な……。
2010-01-03(日) [長年日記]
■ プレゼンテーションzen(Garr Reynolds)
高橋メソッドのプレゼン資料が全部載ってるということで半年位前に話題になった本。読んだあとの付箋の数が多すぎず少なすぎずなので、これはきっと良い本!*1 でもちょっと電波強度が強いので注意(笑)。
Ruby/アジャイル界隈の人には「角谷風プレゼン」、そうでない人には「(Appleの)ジョブズ風プレゼン」と言えばだいたいわかってもらえる、イメージ重視で文字が極端に少ないプレゼンをするための本。……というよりは、箇条書きと細かい図表ばかりのクソつまらないプレゼンをやめようぜ、と訴える本、かな。
書いてあることはどれももっともで、基本的にはごく当たり前のことばかりだと思う。言いたいことをひとつに絞れとか、よく練習しろとか、発表資料と別に配布資料を用意しろとかね。スライドいっぱいの画像を使う手法も常識はずれのように思えるかも知れないが、高解像度の写真を多量に入手できて、それを処理できるマシンというサポートがある現代ならやって当然だろう。それ以前から広告代理店のプレゼンなんてそういうものだったはずだし*2。
かといって、みんながみんなこの本のとおりに真似をしても面白くないので、そこに至った過程や考え方を読み取って、自分独自のプレゼン手法を編み出したいところだ。そういう意味で、異色ながらも高橋メソッドが取り上げられてるのは重要だね。
しかし、この考え方(特にスライドと話者は一体で不可分という考え方)が浸透すると、Slideshareがまったく役に立たなくなるねぇ。いまでも、角谷さんのプレゼン資料は単体で見てもさっぱりわからないしなぁ。今後、講演動画の重要性がますます高まるんじゃないか。
あと、書名だけでなく禅を参考にしたり随所に日本ヨイショ的な話題が出てくるが、あくまで著者のインスピレーションの源泉がそこにあるというだけで、こういう考え方に至る文化は日本に限らないという点には、(特にわれわれ日本人は)注意しながら読む必要があるだろう。少なくともわれわれの遺伝子に禅やらわびさびやらが刻み込まれているわけではないことは肝に銘じておかないと。でなければ日本国内にも箇条書きプレゼンが溢れているわけがない。
2010-01-06(水) [長年日記]
■ Google GearsでWebアプリケーションを独立ウィンドウにした
Windows7になってタスクバーがすっきりしたので、ウィンドウをたくさん立ち上げておいてもあんまり邪魔になった感じがしない。そこで、常用しているWebアプリケーションを、Google Gearsでアプリケーション化してしまうことにした。具体的にはRemember The Milk、Gmail、Google Calendarの3つ*1。あと、たまに使うGoogle Waveも。
これらは(主にJavaScript実行速度の面で)Google Chrome上で使っているので、ページメニューから「アプリケーションのショートカットを作成」を選ぶだけでアプリ化できる。ご覧のようにタスクバーにずらりと並ぶさまはなかなか壮観。
そう言えば、ノートPCをアップグレードしたのはFirefox上のRTMが遅いからという理由だったはずだが、N8でも遅いままなのだった。スマートリストを開くのに5秒以上待たされる。FirefoxのJavaScriptエンジンの弱点をピンポイントでつくようなコードなんだろうなぁ。
*1 livedoor ReaderなんかはFirefoxのウィンドウ内にあった方が便利なのでそのまま。
2010-01-08(金) [長年日記]
■ Debian lenny上のrubygemsを1.3.5にする
Twitterを操作したいと思って「gem install twitter」をしたら、rubygemsが1.3.5以上じゃないと入れられないgemがでてきた(Debian lennyのrubygemsは1.2.0)。いつもだったら野良ビルドするんだけど、なんとなくシステムのをアップデートしたくなってしまったので、ちょっとググったら、experimental版のパッケージを入れる方法の他に、むりやり最新版で上書きしてしまう方法の2種類があるのがわかった。
常識的に考えて前者を選択すべきだが、なんとなく気分で後者を選択した(ぉ 参考にしたのは「DebianのRubyGemsをアップデート」の記事。で、1.3.5にするにはいったん1.3.1にするのがポイントらしい。念のため手法を転記しておく:
% sudo gem install rubygems-update -v 1.3.1 % sudo /var/lib/gems/1.8/bin/update_rubygems
gemの名前とコマンド名が違うのが混乱する。これでgemが1.3.1になったので、同じように1.3.5にあげる:
% sudo gem install rubygems-update % sudo update_rubygems
2010-01-09(土) [長年日記]
■ More Joel on Software(Joel Spolsky)
積読消化月間は続く。
4年前に出た「Joel on Software」の続編……なんだけど、「ソフトウェア開発者採用ガイド」とかなり内容がかぶっているような。これはちょっとないんじゃない?
とはいえ、まぁそれなりに楽しんで読んだわけだけど。半分は示唆に富んだソフトウェア開発エッセイとして、半分はファンタジーとして。
ファンタジーというのは、やっぱ少し現実から乖離してるよなぁ……と思うからで、特にJoelのキャリアのかなりの部分がパッケージソフトウェアの開発であって、そうとう偏っているのがひとつ(おそらく彼は受託開発の楽しさ・面白さを知らない)。さらに彼の求める「優秀なソフトウェア開発者」だけでは、社会が求めるソフトウェアをすべて作れないことに起因している*1。そういう、彼の体験に根ざした部分は面白いが、知らない部分や関与しない(する気のない)部分に関してはバイアスがかかっていてリアリティに欠ける、つまりファンタジーなのである。
ファンタジーならファンタジーとして楽しめばいいんだけど、これを読んだ「普通のプログラマ」が変に影響受けちゃって、マネージャをコケにしたり、他の職種の人を見下したりしないといいなぁと思う。いや、若い人が感化されて、Joelのお眼鏡にかなうレベルの開発者を目指すっていうなら、それは素晴らしいことだけど。
*1 本当に作れないかどうかは議論の余地がある。
2010-01-11(月) [長年日記]
■ パスワード管理にKeePass Password Safeを使い始めた
記憶に頼るパスワード管理が破綻する運命にあることが指摘されてもう長いですが、勤務先のセキュリティポリシーには「ブラウザにパスワードを覚えさせてはいけない」という条文があります。おかげでみんな超覚えやすいパスワードしかつけてないわけで……かえって危ないだろ、それ!
それはさておき、先日のTwitter DNSハイジャック事件の結果、Twitterのパスワードを変更しないとまずくなったわけだが(まぁ別に変えなくてもほとんど問題ないと思うけど)、もう歳を取りすぎて新しいパスワードを考えるのがおっくうになってしまったので、KeePass Password Safeを導入し、機械生成した強固なパスワードをPCに覚えさせて使うことにした。
どういう風に使うのが効率的なのかまだ試行錯誤中なので、まだ一部サービスのパスワードを置き換えてみた状況。エントリを選んでCtrl+Cすると一定時間だけパスワードがクリップボードに入るからそれをコピペして使うのが基本だと思うけど、「自動入力」とかいう設定があって、どう使うのかまだよくわからん。
さらに、パスワードDBをDropboxに置いておくという技を知ったので、これで複数マシンでの運用も楽になった。ただ、iPhone用のアプリがある……と知って導入したのに、iKeePass in AppStore (USA and Canada)って! 例の輸出規制か! KeePassはフリーソフトウェアだぞ、もー、アホかい。
なお、最初「KeyPass」だと思っていたので、インストールディレクトリ名が「keypass」になっちゃったのはナイショ。
◆ こっそり [エントリのタイトル=自動入力するターゲットにするウィンドウになっています。 Ctrl+Alt+Aで自動入力を実行。 ..]
◆ ただただし [あー、続報書いてなくてすみません。自動入力は活用できるようになってます。 エントリの「自動入力」タブでウィンドウタイ..]
◆ jun.o [iPhone用のmykeepassというのがデータを共有できるようです。]
◆ ただただし [本当だ! 前に探したときはなかったのに……と思ったらつい最近リリースされたものみたいですね。 MyKeePass作者..]
◆ jun.o [確かにこのテのソフトウェアはソースが公開されないと心配ですよね。と、思ったら公開されてました。 http://myk..]
2010-01-12(火) [長年日記]
■ Sleep Cycleの代わりに猫アラームを導入しました
iPhoneで気持ちの良い目覚めを約束してくれるSleep Cyleを導入してから、1ヶ月が経過した……というか、年が変わってからは一回も使ってないんだけど(笑)。というのもグスタフを寝室に入れるようになってからというもの、目覚ましよりも猫に起こされるようになったからである。
この猫アラームがまた、じつに絶妙でありましてな。
夜中に寝てる間はだいたい、掛け布団の上で丸くなっているんけど、おれが起きる予定のおよそ30分前くらいに起きだして、おれの頭のあたりをうろうろし始める。そこで布団をちょっとめくってやると入ってきて、ゴロゴロ喉をならしながらしばらく大人しくしている(おれも半睡状態)。その後、腹が減ってまた活動し始めるのが約30分後……ということで、ちょうど目覚ましが鳴るあたりのタイミングで起こされるのである。
これぞSleep Cycleに期待された動作そのもの。というわけで、Sleep Cycleが不要になってしまった。というか、Sleep Cycleが期待どおりに動作したことなんてないんだけど。
もっともこの猫アラーム、寝る前にひと騒ぎあるというのが難点なんだが。なんで猫って夜行性なんですかね……。
2010-01-13(水) [長年日記]
■ Windows7からiPhoneへ、Bluetoothでメモを送ろうとして挫折した
先日導入したKeePass Password Safe、自動入力をマスターしたらなかなか快適で、あらゆるパスワードを移行しているところ(ただしDropboxのパスワードだけは管理してはいけない)。
もっとも、Windows PCで使ってる分にはいいんだが、iPhoneで困る。Macな人は1Passwordがあるが、KeePassのiPhoneアプリは輸出規制にひっかかってアメリカでしか買えない。なんで似たような1Passwordは大丈夫なのかさっぱりわからないが……。
で、なんとか手軽かつセキュアな形でパスワードをWindowsからiPhoneに送る方法がないかと考えて、Bluetoothはどうかとあたりをつけた。ちょうど新しく買ったLetsnote N8はBluetooth内蔵してるし。ただ、iPhone側で持っているプロファイルは数が少なくて、単純なテキストファイルのようなものを送る方法はなさそうだ。
そこでvCard形式の情報をiPhoneどうしでやりとりできるというアプリを使い、電話帳データのふりをしたテキストを送ってはどうかと考えた。おあつらえ向きに無料のアプリがひとつ見つかったのでインストール、受信状態にしてWindows側で送信させる。Windows7になって改善したらしいが、あいかわらずWindowsのBluetooth設定はわけがわからない。たぶん「オブジェクト交換」だろうとあたりを付けて、サンプルのvCardを送ってみたが、エラーでダメ。
いろいろ調べてみると、iPhone側のプロファイルは「PBAP (Phone Book Access Profile)」で電話帳を送るための規格。いっぽうWindowsがvCardを送るのに使っているのは「OPP (Object Push Profile)」でもっと汎用的なファイル転送の規格(?)らしい。プロファイルが一致しなきゃ、送れるわけないよなぁ。なんでこんな、似たようなプロファイルが並立してるんだよ! というか、WindowsはなんでPBAPサポートしてないの。
というわけで、iPhoneにさくっとパスワードを送りつける計画は頓挫中。いや、普通にiTunesで同期すればいいんだけど、それだと自宅の母艦でしか使えなくなっちゃうからさー。なにかいい方法はないかねぇ。
◆ (´・ω・`) [USBの無線LANアダプタを持っていれば、サーバーとして立ち上げられるので、一々設定を変える必要もなく便利ですよ。仮..]
◆ hb [WriteRoomとの通信をキャプチャしてみましたが,暗号化はされていませんでした.アクセスするためにパスワードの設..]
◆ ただただし [おお、わざわざありがとうございました。そうですよねー、単にメモを同期させる程度なら暗号化なんてしませんねぇ。 WiF..]
◆ kdmsnr [iKeePass を自分(or 誰かMac持ってる人に頼んで)でビルド?]
◆ ただただし [あ、そうか、そうだよなぁ、フリーソフトなんだもんなぁ。 iPhoneアプリって、Macユーザなら、誰に頼んでもビルド..]
◆ kdmsnr [実機にインストールするためのビルドを行うには iPhone の開発者として登録(有料)しないといけないみたいでした。..]
2010-01-16(土) [長年日記]
■ 総務省の「地デジ説明・相談会」が年寄りしか相手にしてない件
今日、総務省から全戸絨毯爆撃型の郵便が入っていて、地デジへの移行について各地で説明会を行うという案内だったのだが。
中に入っていたパンフレットがすごい。表紙の説明が「初めて、我が家にテレビが来たときのうれしさ」「白黒からカラーになったときの驚き」「あの時のテレビの感動を再び……」。おれくらいの年齢でも、テレビがなかった頃の記憶なんてほとんどにないのだから(白黒がカラーになった記憶はぼんやりとある)、だいたい50代以上しか相手にしていない。中のイラストや写真も老人ばかりが描かれていて、完全に若者はターゲットの外である。
これを「これからもTVを見てくれるのは年寄りだけだろう」と見ればすばらしく割り切った良いターゲティング戦略だが、「どうせ地デジのことがわかってないのは年寄りだけだし」と判断した結果なら大間違いだろうなぁ。若い人でもアンテナのこととかわかってない人けっこういるしね。
なんにせよ、この極端さは面白いと思った。実際の説明会の顔ぶれがどうなるのか楽しみだ。……とは言え、うちはすでにケーブル経由で地デジ見られるので行く気ないけど。
◆ たかえふ [総務省の中の人とそういう観点で会話をしたことはありませんが、 現場でスタッフの人と会話をする限りでは、「若い人は自分..]
◆ ただただし [うわぁ……。「2011年7月は血を見る」という予測は何年も前から出てるわけだけど、現場の人にとってはただごとじゃない..]
◆ たかえふ [うーん、でも、これって誰が悪いんでしょうね。 (そもそも、地デジにする必要がないじゃん、っていうツッコミはおいといて..]
◆ ただただし [いやまぁ、「誰」と指摘できるほど具体的に「悪い人」はいないと思いますけど。全国民に確実に周知しなくてはいけない、こん..]
◆ たかえふ [このへんで最後にしますが… > いやまぁ、「誰」と指摘できるほど具体的に「悪い人」はいないと思いますけど。 そう..]
◆ ただただし [>国はどういうような告知をすべきだったんでしょうね? 地デジのプロモーション活動について俯瞰的に見たことがないの..]
2010-01-17(日) [長年日記]
■ EMOBILEのモデムをN8の天板につけた
EMOBILE D02HWがぶらぶらして邪魔なので、R3の時と同じように、マジックテープでN8の天板に貼れるようにした。バリバリー!!
R3用に買ったのは白だったからN8の黒い天板に合わなかったので、わざわざ黒を買い足し。まぁ、今ならモバイルルータにするのが筋なんだろうけど、なんだかんだいって高いもんね、あれ。
あとはPanasonicの上下ひっくり返ったロゴを隠すためのステッカーが欲しいんだけど、いい感じのはないかねぇ。今はありあわせのマスキングテープを貼ってるんだけど。
■ Subject To Change ―予測不可能な世界で最高の製品とサービスを作る(Peter Merholz)
奥付をみたら1年以上前の本だった。いいんだ、内容が古びない本はいつ読んだって。
タイトルではなんの本だかわからないし、副題の「予測不可能な世界で最高の製品とサービスを作る」からもイマイチ内容が想像できない。ようするに、顧客指向でデザイン・ドリブンな製品・サービスづくりをしなさい、ということが書いてある。
序盤はこれからの時代は「体験」を売るのが重要だという話で、顧客にいかにして共感するかとか、延々わかりきった話が続くのでどうしたもんかと思ったが*1、中盤からは実例を交えて実際にそういう製品・サービスがどういう過程で開発されたのかを解説していく。
Appleの事例が多くてバランス欠いてる気もするが、Appleが現代の企業の中では格段に共感の扱いに長けているのはたしかなので、いたしかたないやね。でもこの本に書いてあることが理解できるとAppleの狙いが読めちゃって、白けちゃうかも知れないけど。
最後は、そういう開発プロセスにはやっぱアジャイルじゃないと……という、読み通りの展開で〆。個人的にはそれほど目新しくなかったけど、良い製品開発に必要な要素を知るために、薄くて読みやすい良い本だと思う。
*1 嘘ですすみません。顧客に共感するには技能と訓練が必要なので、実はだいぶ大事なことが書いてある。というかじっさい共感が苦手な人が多いから、おれみたいな職業が成立するんだけど。
2010-01-19(火) [長年日記]
■ iPhone向けTwitter/Wassr投稿専用アプリ「Tsubuyaki」が軽くて実にいい感じ
「S」のついてないiPhone 3Gなもんだから、アプリの選択はおのずと「軽さ」が重要なファクターになる。
Twitterは最近、TwitBird ProからSimplyTweetに乗り換え、さらにqStatusというTwitter/Facebook両対応の投稿専用アプリを使っている。専用アプリの決定版がないWassrは、クソ重いWebを見るのがかなり苦痛で、せめて投稿だけでも軽いのが欲しいと思うのだが、Wassrにはこれもなかった。
で、まさに今日、TsubuyakiというTwitter/Wassr両対応の投稿専用アプリがリリースされた。作者はニコマス界隈でおなじみのポケP。縁あってβテストに参加していたんだけど、ホントに軽くて使いやすい。どっちに投稿するか簡単に選べるから、内容に応じて気軽にぽんぽん投稿できる(もちろん両方同時にも)。テキストだけでなく、写真の添付ができて、TwitterではTwitPicsを使い、WassrはちゃんとWassrの機能を使ってくれる。
おまけに細やかな気づかいのあるUIが非常に心地よい。写真を添付すると「Post」ボタンの横にアイコンがついたり、「Clear」で内容を消した直後は「Undo」に変わったり。投稿中は画面がグレーアウトしてちゃんと他の操作ができないフィードバックがあったり。それでいて重くなりがちな余計なおまけはなく、ギリギリまで機能を削ってあるから、軽さは犠牲になってない。
そんなわけで、初日からホーム画面の1ページ目に鎮座したよ。ほくほく。
2010-01-21(木) [長年日記]
■ 自前ビルドしたiKeePassを使ってみた
先日Bluetoothでファイルを送ろうとして失敗した、KeePassのデータベースだが、知人のiPhoneアプリ作者に頼んでMac上でビルドしてもらい、野良アプリとして導入してみた(というのは「自前」ビルドとは言わないか?)。ちなみに、ちゃんとiTunes Storeに登録されていないアプリの有効期限は3ヶ月なんだって! Appleセコい、超セコい。
で、肝心のパスワードデータベースをどうやって送るのかというと、マニュアルによれば自分でWebサーバを立ててHTTPで送るというのが正規の方法らしい。なんという(笑)。まぁ、Webサーバなら事欠かないし……ということで、無事転送に成功した。KeePassのデータベースはちゃんと暗号化されているので、この辺はそれほどセキュリティにシビアにならなくて良いと考えているが、できればHTTPSを使いたいところだ。
というわけで、いったん転送すればローカルキャッシュを使ってパスワードを引き出せるので、オフラインになってもちゃんと使えている。というか、使えることはわかった。でも3ヶ月の制約付きじゃ、あんまり依存できないよなぁ。はやく日本でも買えるようにならないものか……。
2010-01-23(土) [長年日記]
■ 自分たちで歴史を書き残すこと - 「敷居の部屋」シリーズを読む
「年甲斐もなく……」と揶揄されそうな趣味を持つときは、大人の防衛本能として「ちゃんと役に立ってる」ように見せかける言い訳を用意しがちだと思うのだけど、ニコマスに関しても「Web屋としてネット時代のCGMについて知見を得るため」みたいな表向きの理由をちゃんと用意してあるわけです。本音としては「765プロのアイドル最高です」に尽きるわけだけど(笑)。
冗談はさておき(どっからが冗談だったんだ)、この3年間をとおしてニコマスを通して得たCGMに関するアレコレは実際血肉となっているわけで、お客さんからその手の仕事を振られてもそれなりにこなせるだけの知識と経験を得られたと思ってる。それどころか英語サイトの運営を通してSEO/SEM的な実験までさせてもらって、なんとも有意義な3年間だったよなぁ。以前書いたニコ動のコミュニティに関する記事にニコ動はコミュニティと呼べないなんてコメントが付いて失笑を買ったりするように、こういうものはある程度コミュニティの中に入りこまないとわからないことが多いわけで、3年という時間もなんらかの成果を実感するのに必要な期間だった気がする。
その「成果」を確認する上でも重要な著作が3冊、昨年の夏から冬にかけて登場したので、まとめて取り寄せ、読んでみた。敷居の先住民の敷居さんがラジオで行ったニコマスPへのインタビューをまとめたものである。同人誌買うのなんて何年ぶりだろ(taitokuさんいろいろありがとう~)。なにしろ人見知りが激しい上に、どのニコマスPも天上界の人々に感じてしまう見る専なので、こういう企画はホント嬉しい。
ニコ動御三家の中でもニコマスは常に著作権問題と向きあわざるを得ない立場にあることもあり、他のジャンルに比べて陰影が濃いのだが、そのせいもあって従来メディアが取り上げてくれることが極めて少ない。ということは歴史を書き残すのは自分たちしかないわけで、その点だけでもこういう仕事が紙として残るのは重要なことだ。
ニコマスPはブログ保有率も高くて、作品解説なんかもけっこうしてくれるんだけど、インタビューというのは自分語りとは違った側面に光を当てるので、これが実に面白い。敷居さんはリスナーのニーズを捉えた上で的確かつクールな質問をするので、インタビューとしてもかなり優れものだ。これに大工Pの熱い歴史解説が加わるのだから、3年間を俯瞰する資料として必要十分。普通は「熱いインタビューと冷静な歴史解説」という組み合わせになりそうなところ、実際は逆というところも面白い。
まぁはっきり言って、ニコマスに触れたこともないような人が読んでもチンプンカンプンな本だけど(同人誌はそれでいいんだけど)、そういう人はのちの歴史家がこれを資料として書くものを読めばいいので、現時点でこの三冊の持つ価値は計り知れない。というか、ニコマスは衰退どころかいまだ毎日100作品も上がる大きなジャンルなので、これからも継続して出してもらいたいところ。がんばってください:-)
「敷居の部屋」シリーズはサークル敷居亭関連情報まとめ&通販受付から、通販でも入手できる。
2010-01-24(日) [長年日記]
■ 鎌倉へ
かみさんが、鎌倉の県立近代美術館でやってる内藤礼展に行きたいというので、昼ごろからのんびり出かけた。寒いかと思ったら、いい天気でけっこう暖かかった。
予備知識なしで見た内藤礼の作品は……うーん、俗物にはよくわからんよ(笑)。ちょっと汚れたジャムの瓶に水を満たして池のほとりに置いてみたり、テグスにビーズをみっちり通してぶら下げて《恩寵》と名づけてみたり。かみさんは満足していたようなので良かったが。どう考えても狭いターゲット相手に勝負しなきゃいけない、現代アートの人はほんと大変だなぁ。
そのまま別館の「イギリスの版画展」も行ってみたが、18世紀のマンガみたいで、こっちはけっこう面白かった。
その後、鶴岡八幡宮で参拝してから、陽が落ちてきたので七里ヶ浜へ。「bills」で何か食べようかということだったんだが、満席で1H待ち。というか、ここは朝食を食べにくるべきところなので、海岸まで出て「珊瑚礁」で夕焼けを見ながらカレーを食べた。デートっぽい!(と思ったが、家族連れがけっこう多かった)
2010-01-28(木) [長年日記]
■ (いまごろ)Skypeのアカウントをとった
Skypeが音声だけでなくテキストチャットができることは知っていたものの、音声目的なら電話があるし、1対1のテキストチャットなんてかみさんとGmailチャットでするくらいなので、ずっとアカウントを持たずにいたのだが、まぁ別に持ってて損するもんでもないよな……と思い、すさまじく今さらながら、いちおうアカウントを取っておくことにした。最近買ったLet'snote N8がBluetooth内蔵で、iPhone用に使ってるヘッドセットがそのまま使えるというのもあるし。
最近の「新しいアカウントを取る儀式」は、まずKeePass上にエントリを作って、IDにいつもの「tdtds」、パスワードを自動生成させておくところから入るのだけど、Skypeの場合、まず「tdtds」が文字数不足ではねられる。ひどい。どっちにしろ先行者有利な名前空間なのに、その制限にどんな意味があるんだ!*1
それでは、と第二の選択肢である「tadatadashi」で取ろうとしたら、こんどはすでにあるという。うわー、まさか同姓同名で使ってる人がいるのか? まぁ、ググってみるとこの変な名前を持つ人が、日本には少なくとも3、4人はいるらしいことがわかるので、バッティングしても不思議じゃないけどさぁ。やっぱネットサービスは、使うかどうか考える前にまず登録だよなぁ。
ここで心が折れてしまったので「もういいよ」的な気分になったものの、しばらくして気分も回復したので「tdtds_」で取得した。この末尾の「_」に、すっごく敗北感……。
*1 Gmailも6文字以上という制限があった。ほんと意味ないからやめて欲しいわ。
2010-01-29(金) [長年日記]
■ 社長賞
昨年やった仕事が認められて社長賞などもらってしまったので、いっぺんに使いきろうということでプロジェクトメンバを連れて会社近くのいいレストランへ。iPhoneで撮るとぜんぜん旨そうに見えないのでPicasaさんにアレンジしてもらった。
ここ数日は新しい仕事の提案資料作りで深夜まで働き、今日はそのプレゼンでかなり死んでいたので、その打ち上げとしてもよかった。というか、プレゼンを来週に設定しなくてよかったわ。気が気じゃなくて飲んでなんていられなかったもんなー。
2010-01-31(日) [長年日記]
■ iPadとマルチタスクのこと
今ごろiPadについて書く(ふりをしてiPhoneに対する不満をぶちまける)。
iPadについての分析は、iPad初感 - Drift Diary XIIIがとてもよくまとまっていると思うのでそちらを(丸投げかよ)。実際、自分は欲しいとは思わないものの、父や母が使っている姿は思い浮かぶので、まぁ、そのへんがターゲットなんでしょう。
ただ、最後のマルチタスクに関する考察だけは賛同できない。iPhoneOSがいま真っ先に実装すべきなのはマルチタスクだと思うから。
といっても、本当の意味でのマルチタスク……つまり、バックグラウンドに回ったプロセスにもCPUを割り当てて、常時動き続けるようなことまではしなくていい。割り込みだって最小限でいい。極端な話、バックグラウンド・プロセスはサスペンドしてしまって、完全に動作を止めてもいいと思う。使っている人間はシングルタスクなのだから、それはそれで良いのだ。擬似的なマルチタスクとしてはpush notificationという仕組みもあるのだから、それを利用してもいいわけだし。
今のiPhoneOSの良くないところ(というか自分では最悪だと思っている点)は、タスク切り替えの手段が「現在利用中のアプリの終了」しかない点にある。動作中のアプリを終了して主記憶から消し去り、空いた空間に別のアプリをストレージから主記憶へロード、初期化をして利用開始。そしてまた、別のタスクに切り替える必要が生じるたびにこの消去、ロード、初期化を繰り返すのだ。な・ん・た・る無駄!
おれのiPhoneは(Sのつかない)3Gというせいもあり、この待ち時間がハンパなく長い。何かをしている最中に、メモを取りたいとか、電話をしたいとか、そういう欲求は普通にあるはずなのに、今していることを完全に中断しないとそれができないのだよ、iPhoneOSは。それというのも、まったく生産性に寄与しないこのメモリ間の転送と初期化処理のせいだ*1。
もとはと言えば、ストレージと主記憶の分離という、PC由来のアーキテクチャに諸悪の根源があるのだが、それを今さら変えるのは難しかろう*2。しかし、マルチタスク機能を開放した上で以下の機能を加えるだけで、どれだけ自然にタスク切り替えができるようになることか。
- ストレージへのページイン/アウト
- なんらかのタスク管理
1.は簡単だろう。もともとメモリ管理には仮想記憶を使ってるわけだし、数十GBもあるストレージにいくらかスワップ領域を確保したところで害はあるまい。
2.が、(操作が煩雑になるという理由で)Appleがマルチタスク化を躊躇している理由じゃないかと想像しているんだけど、ようするに本当にプロセスを殺す操作を可能にしないと困るという話。これだって、長いこと使ってないアプリは(今の動作と同じように)自動的に殺すようにしてしまえばいいのだ。先にバックグラウンドではサスペンドにして動作させないようにしても良いと書いたのは、これを正当化するためだ。
こういう部分で手を抜いて、平気でユーザの快適性を損ねるから、「Appleはユーザエクスペリエンスを大事にしている会社だ」なんて言うのを聞くと、眉をひそめてしまうのである。iPhoneOSのマルチタスク化は、ユーザエクスペリエンス向上のために真っ先に実装すべき機能だ。iPadなんて作ってる場合じゃないっつの。
◆ ただただし [最近はガラケーもだいぶ進化してるんですね。補足ありがとうございました。 screenを使う技術者じゃなくても、普通..]
◆ unibon [W-ZERO3 の Windows Mobile を使っていて感じますが、OS は普通の PC なみにマルチタスクを..]
◆ ハハハハ [ちょっと待って、ガラケーのマルチタスク機能はメーカー機能じゃなくてキャリア要件ですっ>< ドコモの話ですけど、マル..]
◆ ただただし [(FOMA使ってたけど、通話中にブラウザ立ち上げるなんて夢にも思わなかったな……700系だから?)]
◆ ハハハハ [(ハンズフリーで通話してるシチュを思い浮かべるとなるほどって思いません?)]
◆ ただただし [(いや、そういう意味じゃなくて、ガラケーでマルチタスキングできるなんて想像だにしてなかったってことです)]
◆ グスファン [トットラ!! ひさびさに動画が見たいです。]
◆ shino [あけましておめでトラッ☆]