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ただのにっき


2008-04-03(木) [長年日記]

ソフトウェア開発者採用ガイド(Joel Spolsky)

最初に書名を見たときに思ったのは「よく企画書が通ったな〜」だった。だって、「ソフトウェア開発者」を「採用するためのガイド」で、しかもその目標が「優れた技術者の集まる会社にするため」だよ? Joelが書いている以上、かなりレベルの高いプログラマをごく少数集める話になるのは想像に難くない。どんだけ対象が狭いんだと。シリコンバレーのスタートアップの社長がこぞって買えばそこそこの市場になるかも知れないけど(ならないか)、日本でこれは売れないでしょう。

そんな不利を覆すために、あちこちのブロガーに献本しまくっているわけですな。というわけで、前作に続いてまた送っていただきました。ありがとうございます。これで売れたら、バイラルマーケティングの勝利です。

そう言いつつも、実はけっこう楽しく読んじゃったりして。

なぜかというと、本来のターゲットである「採用担当者」の数はごく少ないけど、逆に「採用される側」はゴマンといるからだ。ようするに、「こういう採用方針をとっている会社に入れば気持ちよく働ける」という(高い)基準を示してあると考えれば、腕に多少の覚えのあるプログラマもターゲットだといえる。

別に、それほど腕に覚えがなくても、本書に書かれていることと逆をいく採用活動をしている企業には、近寄らないほうがいいという見方もできる。(給与や安定性だけでなく)仕事の内容で会社を選びたいと考えているプログラマはいちどは目を通しておいていいかも。

もっとも、Joelの主張に全面的に賛成というわけではない。Joelが求める「最高のプログラマ」を全部集めても、世の中のすべてのソフトウェア需要を満たすことができないのは明らかだからだ。そういうシーンにはそれ以外のプログラマ、つまり「普通のプログラマ」にがんばってもらうしかないわけで、彼ら*1には本書の基準は当てはまらない場合が多いだろう。

たとえば、アジャイル開発では個室はご法度だったりするけど、これは天才は個室に閉じ込めておけば勝手にいい結果を出すけど、普通の人はそうじゃないからだ。だから、自分が天才という自覚がないなら、個室を求めることなんてやめた方がいい。

あと、最後の章でなぜかプロジェクトマネジメントのノウハウ話が入ってたり、ジョエルテストが再収録されていたりするのは、本書のテーマから外れていて、蛇足感がある。そういう、「ちょっとマッチしない部分」を除けば、「われわれプログラマは最高でどのあたりの待遇を得られるものか」という高みを知っておく意味で、ぱらぱらと目を通しておくのはいいんじゃないかな。ちょっと夢も見られるし(笑)。

Tags: book

*1 人ごとのように書いているがおれだってこっち側の人間だ。


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