2010-01-03(日) [長年日記]
■ プレゼンテーションzen(Garr Reynolds)
高橋メソッドのプレゼン資料が全部載ってるということで半年位前に話題になった本。読んだあとの付箋の数が多すぎず少なすぎずなので、これはきっと良い本!*1 でもちょっと電波強度が強いので注意(笑)。
Ruby/アジャイル界隈の人には「角谷風プレゼン」、そうでない人には「(Appleの)ジョブズ風プレゼン」と言えばだいたいわかってもらえる、イメージ重視で文字が極端に少ないプレゼンをするための本。……というよりは、箇条書きと細かい図表ばかりのクソつまらないプレゼンをやめようぜ、と訴える本、かな。
書いてあることはどれももっともで、基本的にはごく当たり前のことばかりだと思う。言いたいことをひとつに絞れとか、よく練習しろとか、発表資料と別に配布資料を用意しろとかね。スライドいっぱいの画像を使う手法も常識はずれのように思えるかも知れないが、高解像度の写真を多量に入手できて、それを処理できるマシンというサポートがある現代ならやって当然だろう。それ以前から広告代理店のプレゼンなんてそういうものだったはずだし*2。
かといって、みんながみんなこの本のとおりに真似をしても面白くないので、そこに至った過程や考え方を読み取って、自分独自のプレゼン手法を編み出したいところだ。そういう意味で、異色ながらも高橋メソッドが取り上げられてるのは重要だね。
しかし、この考え方(特にスライドと話者は一体で不可分という考え方)が浸透すると、Slideshareがまったく役に立たなくなるねぇ。いまでも、角谷さんのプレゼン資料は単体で見てもさっぱりわからないしなぁ。今後、講演動画の重要性がますます高まるんじゃないか。
あと、書名だけでなく禅を参考にしたり随所に日本ヨイショ的な話題が出てくるが、あくまで著者のインスピレーションの源泉がそこにあるというだけで、こういう考え方に至る文化は日本に限らないという点には、(特にわれわれ日本人は)注意しながら読む必要があるだろう。少なくともわれわれの遺伝子に禅やらわびさびやらが刻み込まれているわけではないことは肝に銘じておかないと。でなければ日本国内にも箇条書きプレゼンが溢れているわけがない。