2012-07-01(日) [長年日記]
■ ひさしぶりに時之栖へ
裾野の時之栖・茶目湯殿へ。なんかすごくひさしぶり。
雨だったが露天風呂に入ったのだけど、炭酸風呂とかいってやたらと泡が出るようになっていてちょっと興ざめ。あそこはオープン当初は大人向けのすごくいい日帰り温泉だったのだけど、だんだんと手が入って低俗になってしまっているのが残念でならない。地蔵の石像があちこちに置かれ始めたあたりから素人臭が漂いはじめた。最初はちゃんとしたコンサルタントが入って企画をしたんだけど、その後の運用で素人が台なしにしつつあるという感じ。
2012-07-02(月) [長年日記]
■ 楽天koboに期待したい (オープンプラットフォーム的な意味で)
楽天が買収したkoboの日本展開が発表になった。というか今月中に発売か、想像以上に早い! さすが。
価格もすごい頑張ってるし、AmazonのKindleは国内参入と同時にかすんじゃうかも。もっとも、koboの方はkobo Touchのみの販売だそうで、タッチ式の読書端末に否定的なおれとしては現状あまりそそられないのだけど*1。そもそもkoboのサービスにはPersonal Document相当のものがなさそうなのが致命的だ。今やあれがない生活とか考えられん。
とか言ってたら、koboのカーネルはLinuxベースでフリーだと教わった。GitHubで公開されているそうだ:
へー。たしかにメンテしてる人たちもkobo社の社員だ。じゃあ、例えば「DropboxをストレージにしたPersonal Documentもどきをkobo上に構築」なんて真似もできるかも知れないのか。これは夢が広がるなぁ。もっとも、国内向けの端末にはNetFront BookReader(Webkitベース)やフリーでないフォントが含まれるので、そう簡単な話ではないと思うが。というかたぶんソースの全面公開は絶望的だと思うけど。
それより、どこの報道を読んでもDRMに関する記述がないのには呆れるねぇ。過去の情報からするとそのままMarlinを使っているんだとは思うけど。「対応フォーマットEPUB」と書いたところで、それは出版サイドに「つぶしがききますよ」と伝えているだけで読者にはなんにも関係ない。読者にしてみたら対応フォーマットがなんであれ、DRMがかかっていたら最後、自分の手元でバックアップすらできないわけで、いくらカーネルがオープンでも意味ないよ。
たぶん音楽と同様、電子書籍もゆくゆくはDRM撤廃の方向に進むと考えているのだけど、Amazonに対抗する意味でも、楽天koboにはその先陣を切ってもらいたいものだ。いや、夢物語に限りなく近いとは思いつつも、楽天にはオープンカルチャに理解のある技術者がいっぱいいるしさ、ちょびっとくらいは期待してもいいじゃん?
*1 Kindleだって国内向けにはTouchやFireしか売らないかも知れない。
2012-07-03(火) [長年日記]
■ 「カーネル・サンダースの自伝」をKindlizeする
「カーネル・サンダースの自伝」がすごく面白いらしいので、さっそくPDFをダウンロードしてみたら、見開きPDFだったという。しょうがない、いったん分解してからKindlizeしましょうか。
PDFを加工するのでなく、いったん画像化して、半分に割るという作戦にします。pdftoppmで抽出し、convertで右半分と左半分の画像(PNG)を生成:
% pdftoppm -r 300 sanders.orig.pdf ./sanders % for f in *.ppm; do convert $f -chop 1500x0 `basename $f .ppm`.1.png convert $f -gravity SouthEast -chop 1500x0 `basename $f .ppm`.2.png done % for f in *.png; do sam2p -j:quiet $f `basename $f .png`.pdf; done % pdftk sanders-*.pdf cat output sanders.pdf
sam2pでそれぞれをPDF化したのち、pdftkで一個のPDFにまとめなおし。なんでわざわざPDFにしなおしているかというと、こうすれば普通の自炊本と同じ体裁になるのでKindlizerが使えるから。実際は見開きでないページが2、3入っているので、それだけ特別扱いするなどの手作業が入ったけど、最小限の手間でKindlizeできた。
で、めでたく60冊の電子積読につけ加えられたわけであります。いったいいつになったら読めるんだろう……。
2012-07-05(木) [長年日記]
■ ドーラ、Chrome拡張「いいニャ」に声の出演
まりぽさんが開発中のCrome拡張に使う猫の声を募集していたので、ドーラの声を録って送ったらさっそく取り込んでくれた。その名も「いいニャ」。Facebookのいいねボタンを押すと、猫の声がするという(ねこらぼの紹介記事)。さっそく入れてみたが、PCから飼い猫の声がする(それも頻繁に)というのはへんな気分だな。というかこの声、「遊んで攻撃」のときの声なので、なにか催促されている気がする。
ちなみに声を録音する機材がなくて悩んだんだけど、けっきょくこんな手順で:
- E-PL1で動画を撮る
- AVIファイルをPicasaに取り込んで必要な部分だけ切り出す
- そのままYouTubeにアップロード
- エンコード済みMP4ファイルをダウンロード
- HugFlashで音声トラックの吸出し
まわりくどく見えるかも知れないが、普段頻繁に使っているツールだけでこなせるのでなにげに一番手っ取り早い。
もちろんグスタフの声も録ったのだけど、暇さえあれば遊んで欲しがるドーラにくらべ、ヤツが鳴くのは1日1回、おれが帰宅したときに玄関で散歩をねだるときだけ。それも控えめに弱々しい声なので拾うのはけっこう難しい。
とりあえずAndroidのボイスレコーダを使ってみたら、出てきたファイルが拡張子.amrとかいう知らない形式。ググってみたら変換してくれるサイトがあったので良かった。ここでWAVにしたあとはAudacityで正規化やノイズ除去できる。今回、けっこういい感じに情けない声が録れたので送りつけた。すぐに取り込まれると思われ。
追記
とか書いてたらすぐにグスタフの声が加わったのが公開された! 仕事はやい!
いやー、さすがグスタフさん、ずば抜けて気弱な感じでいいですなー(笑)。
◆ ただただし [その機能は存じでおるのですが、それはシャッターチャンスが先にあって、あとからのんびりコメントをつけるためのものなんで..]
◆ こ~りん [wavでいいなら、これにavi放りこめばいいかな? http://www1.axfc.net/uploader/Ne..]
◆ ただただし [ろだにある謎のzipを開いていいようなのどかな時代じゃないよw いずれにせよ、今回は新たなツールを導入しないという縛..]
◆ こ~りん [それもそうですねぇ。私が置いたファイルだってのは、あれじゃ、私にしかわからないしw 最新のffmpegだとこんな感..]
◆ ただただし [あー、ffmpegなら何かのツールがついでにインストールしたものがディスクに入ったままの可能性はあるなぁ。]
◆ こ~りん [古いのだったら、-c:a のところを -acodec に。 とはいえ、「普段頻繁に使っているツールだけで」という縛り..]
2012-07-07(土) [長年日記]
■ 海峡でわさます肉の会
わさますのメンツで急に「肉をくおう」という話になったので、集まれる人だけ5人で秋葉原へ。おれも今日はかみさんが留守だったので行ったのだった。しかし何年ぶりだ、秋葉原。買い物はほとんどネットと地元で事足りるようになってから、おれにとって秋葉原は無用の街になってしまったなぁ。
それはそれとして、外は雨だったので出歩くのもいやだねということになり、そのままアキヨドのレストラン街へ。肉なら本陣だろ、と歩きはじめたら、途中の海峡の客引きに声をかけられ、そのまま中へ。まぁ、唐揚げだって肉ですしね……。
で、2.5時間、ほぼモゲマスの話しかしてないのでした。ちょうど途中で水泳大会の2倍タイムが始まったので、みんなしていっせいに殴ってるし。平和だなぁ。
2012-07-08(日) [長年日記]
■ VMware PlayerからVirtual PCへ乗り換え(中)
先月のWindows Update以来、Let's noteのWindows7内でLinuxを動かしていたVMware Playerが不調になってしまった。一度でもVMware Playerを動かしたら最後、休止状態から復帰できなくなるという。自宅のLenovoでは同じ構成で問題ないので、Let's note固有の何かだと思われるのだけど、同じメにあっている人を見たことがないので原因は別のところにあるのかも知れない。
いずれにせよ、Linuxは主に開発環境なので、自宅にいる間はいいものの、出先でのちょっと空いた時間にデバッグ……みたいな真似がぜんぜんできなくなってしまった。これがVMwareとの相性問題なら、別の仮想マシンにすればいいではないか。というわけで、Microsoft謹製、Windows Virtual PCを使って見ることに。Windows7 Proなら無償で使えるというのがありがたい。もちろんこれはXPモードを使うという目的で公開されているものだけど、別にWindowsしか動かないわけではない。
いつものようにDebianを入れるわけだが、少しコツがいるらしい。
- DVDイメージではなく、ネットワークインストール用のisoファイルを使う
- インストール時のパラメタに「noreplace-paravirt」を追加する(参考「IT-Memo: Debian を VirtualPC 2007 にインストールするには」)。これをやらないと最後の最後、GRUBのインストールで失敗した。ただしリンク先とは状況が違うので発生箇所は環境によって違うのかも)
あとは普通にインストールできる(いつものようにGUIは使わないので、サーバとして)。dotfilesはBitbucketに入れてあるから、git cloneすればホームディレクトリの環境は簡単に復旧できるし、開発中のコードだってGitHubから持ってくればすぐに開発を継続できる。いい時代になったもんだなぁ。
もっともまだ問題があって、ネットワークまわりがちょっとうまくいってない。
まず、外への接続にはNATを使いたいのだが、これが動かない。ゲスト側ではIPアドレスを取得できているようなんだが、外に向かってパケットが飛んでない感じだ。でもそのルートがよくわからない(ホストOS側のどれを見ればいいのやら)。これはとりあえずNATをあきらめてWiFiのアダプタを直接見るようにすることでインターネットへのアクセスはできるようになった。ただ、特定のネットワークにつなげたときだけしか使えないもんだから、自宅にいるときもPocketWiFi経由でつなげているという。わけわからん。
この状態で、ホストとゲスト間の通信にはLoopbackアダプタを介して専用のネットワークを組むのが定番らしいので、こっちは「VirtualPCで安全にサーバを立ててホストOSからアクセスする」や「Windows7でMicrosoft Loopback Adapterを追加するには - みゃうのリカバリーをする前に」を参考にしつつなんとか。これもひとたび休止状態にするとホスト側から接続できなくなってしまうという問題が。これはどうやら、ゲスト側からいちど通信を確立するとそのあとはスムーズになるらしいので(あやふや)、そういう監視ツールを書いて動かしておけばいいかなー、と考えている(けど本質的じゃないよな)。
VMwareのときはこんな苦労はなかったんだがなー。あ、でも、キーボードフォーカスの扱いについては、Virtual PCのがはるかにいい。VMwareは本当に不便だった。
2012-07-14(土) [長年日記]
■ ドーラのかわいい表情を撮るのが難しい
今朝、寝床にしているカゴの中からドーラの頭がひょっこり覗いていたので、望遠でぱっと撮って「よしよし、かわいいのが撮れたぜ」と思って見なおしてみたらこのアリサマという。なんかねー、ドーラの写真は半分ちかく、こんな感じで目付きが悪い。明るいところではこんなふうに目をすがめていることが多いせいなのか、まつげが長すぎて影ができるせいなのか(ほんとに長いんですよ)。
ちなみにグスタフは、我が家では「お笑い担当」と呼ばれるくらいに愛嬌のある顔立ちをしているせいか、たいていはおっとりとして緊張感のない顔つきになり、あんまりひどい写真にはならない(←ほめてない)。やはり野良経験があるせいか、ドーラの方が精悍である。メスなのに。
とはいえ猫のかわいい写真を撮るのは簡単で、まずは寝ているときなら弛緩して無警戒な姿態が撮れる。もっとも目を閉じているから面白みは少ない。もうひとつは暗い場所で、瞳孔が開いているからまんまるの目になってドーラみたいな目つきでもかわいらしく撮れる。でも、暗いとシャッタースピードが落ちるから、動かれたらアウトなんだよねー。
なにが言いたいかというと、屋内猫向けの明るいレンズが欲しい。こんなのとか:
OLYMPUS 単焦点レンズ M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 シルバー
オリンパス
¥27,255
こんなのとか:
OLYMPUS 単焦点レンズ M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
オリンパス
¥49,800
45mmはけっこう手頃な値段になってきたけど、ちょっと離れたところから無防備な猫を撮るなら75mmだよなぁ。でも、たっかいよなぁ。というか、腕のなさを機材のせいにするあたりが典型的なアマチュアリズムです。
2012-07-16(月) [長年日記]
■ 今年も浜降祭に行ってきた
今年も海の日に浜降祭が開催されたので、例年どおり行ってきた。
ここ数日は大雨で九州地方が大災害に見舞われるなど天候が不順で、関東も3連休はずっと強風。いつもは青い茅ヶ崎の海も茶色がかっていて波も高い。こんな日でも海に入るのかなーと心配したが(どっちの方に?)、気にせず入るのですね。もっとも、例年では肩まで水につかるような神社もある中、今年はみな深いところまでは行かず、比較的波打ち際に近いところで引き上げていった。ちゃんと自制してるんだなぁ。
というわけで、今年の写真と動画↓:
■ ドーラ、我が家に来てから2年
今日でドーラがきてから丸2年である。めでたい。
あいかわらずかわいい写真を撮るのが困難ではあるが、おもちゃで釣るとこんな感じ。奥のほうでいっしょに狙ってるひとがいますが。
体重はほぼ変わらずの3kg台前半で、太ることもなく(背中からみると腰のあたりにくびれがある。セクシー)、まだ子猫みたいな感じではある。おまけに人の顔を見れば「遊んで遊んで」とねだるので、本当に子猫のようだ。というか拾われてきたときは逆に子猫っぽさが欠けていたくらいなので、まるでアンチエイジング。もっとも、遊んでやらないとデスクの上にあるものを落としたり、ディスプレイの裏に入り込んだりという嫌がらせをすることを覚えたので、猫らしいずるがしこさは持っているのだが。
2012-07-17(火) [長年日記]
■ ついに「電子献本」の時代がきた──オライリーが開いた未来
(タイトルがおおげさすぎる気もするけどまぁいいや)
ありがたいことに年に何回か「献本したいので送り先の住所を教えて欲しい」という連絡をもらう。中にはいきなり以前教えた住所に送りつけてくるところもあって、これはこれで楽しい驚きでいいのだけど、こういう問い合わせをもらったら最近はまず「電子データで下さい」と返事を出すことにしている。
もらう立場にいながらなんたる傲慢というかわがまま言い放題すぎるだろと思わなくもないが(思えよ)、Kindleを入手してから1年半、ほぼ紙の本を読まない生活を達成*1している身としては、もはや自炊すら面倒なのですよ。何回目か知らないが電子書籍元年というからには紙と電子は普通に同時出版であるべきだし、たとえ献本であっても好きな方を選べるべきだと思うのだよね。
とはいえ、たいていは「電子書籍化の予定はまだありません、すみません」「ぐぬぬ」みたいなやりとりがあって、紙のままで送ってもらうのだが(いちおう礼儀として即自炊しちゃうけどいいか、とは聞いておく)、先々月のそれはちょっと違った。「またそんな未来の話を……」「未来の先取りといこうじゃないか」「ちょっと(出版社に)聞いてみます」みたいなやりとりの末、「3ヶ月後の電子版リリースまで待ってくれれば送る」ということに。ヤッター!
……というわけで、本日リリースのEbook版「リーダブルコード」が、めでたく「電子献本」されたのであった。3ヶ月待ったかって? とんでもない、1ヶ月切ってるし。オライリーの中の人がそうとうがんばってくれたらしい。たとえオライリーといえこのペースはかなり無茶したんじゃないかなーとは思うが、現在紙版はあちこちで在庫が払底しているようだし、電子版が早々に出たことで販売機会の喪失も回避できて、結果的には多くの読者に喜ばれたんじゃないでしょうか。
献本というと普通は発売日より前に届くものだけど、あれは流通のタイムラグのせいなので、電子版の場合は発売と同時なんだね。もちろん戦略的に日程をずらすこともアリだとは思うが、今回はすでに紙版が出ているわけで、変に凝る必要はない。特に今回、献本にあたって既存のシステムをいじることなくうまい具合におれの書棚にデータを送り込んできた仕掛けには感心した。でも、これから電子書店のシステムを開発する人はあらかじめ献本の仕組みを入れておいた方がいいと思うよ(←YAGNIに反する提案)。
で、さっそくKindlizeして、優先順位高めで未読キューに送り込んでおいた。ちなみにcropboxのパラメタは[45, 50, -45, -60]です。
リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック (Theory in practice)
オライリージャパン
¥2,640
*1 ただし写真集やイラスト本、マンガはまだ紙の状態で読んでいる。
2012-07-19(木) [長年日記]
■ リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす (エリック・リース)
当面起業する気はないし、読むとしてもしばらくあとでいいなー、とか思っていたら「開発者こそ読むべき本」というメッセージとともに、誕生日プレゼントとしてもらったのであった。どうもありがとうございます。
で、読み始めてすぐに「あれ、これっておれらアクセス解析屋がいつもやってる(もしくはやろうとしている)方法論と同じじゃん」と思ったのであった。仮説を立て、何を測定するかを明確にし(KPI)、スプリットテストの結果を数字で評価する。コホート分析を使うところなんかもそのまんま。なるほど、マネジメントを科学にするというのはそういう意味か。
本書が扱う「スタートアップ」は別にベンチャー企業のことではなくて「先の見えない困難な状況に立ち向かう組織」というくらいに大きなくくりだ。どんなに強力なサーチライトがあっても見通せないような濃霧の中、ペンライト一本で正しいルートを探し出すにはどうしたらいいか。見える範囲で少しずつ進み、現在位置と方角の正しさを測定によって確認するしかない。それはつまり、科学の手法だ。科学の成果をいただくのではなく、科学の「方法論」を使ってムダのない組織運営をしようという話だ。
「リーン」という言葉のとおり、出発点はTPS(トヨタ生産方式)にある。というか、有名な「5つのなぜ」をはじめ、出てくるメソッドの多くはTPSそのままだったりする。ただ、TPSはその出自からどうしても製造業を連想しがちで、こういう組織運営論にはすっとなじまないことが多い(主に受け手の問題だが)。本書ではそのあたりがうまく抽象化されていて、生のTPSよりもずいぶん納得感が高い印象。これならやれそうって思うし。成長エンジンの類型化なんかもわかりやすくて、汎用的かつ具体的によく考えられてるなぁ。
こういうメソッドは組織のリーダーだけが知っているだけではダメで、構成メンバの全員が理解している必要がある。そういう意味で開発者も、誰もかれも読んでおいて損はない。こういうやり方で仕事をして欲しいんだよなぁ! ……という意味では、うちの解析チームのメンバにもぜひ読んでもらいたいと思った。
もっとも、このメソッドをいちばん適用して欲しい分野は、政治だったりする。「消費税をあげると税収が増える」とか「違法ダウンロードに罰則を課すとCDの売上がのびる」とか、そういう"仮説"はちゃんと実験してから法律にして欲しいわけですよ。この例はどっちもネガティブな結果が出そうな気がプンプンするけど。
2012-07-23(月) [長年日記]
■ ガスメーターの無線化をしようとして断念した(させられた)話
うちの生垣は元気すぎるせいか、ちょっと油断すると家の裏手に回れないくらいの枝ぶりになってしまう。裏手にはガスメーターがあるので、検針の人が入れなくなって迷惑をかけてしまう。で、相談したらいまは無線化して遠隔検針できるメーターもあるとのことなので、さっそくそれをつけてもらうことに。
で、今日工事だったんだけど、こんな感じだったらしい。以下、かみさんからの伝聞なので勘違い・行き違いがあるかも知れないが:
- 留守中、検針器の取替えをしてもらう→完了
- 帰宅後、「床暖房を使っていると警告ランプがつくことがあるのでリセットして」という電話連絡がある
- リセット方法についてマニュアルが欲しいと返答
- マニュアルは渡せない(!?)ので検針器を元に戻します←いまここ
そもそも、これだけガス床暖が普及している(しかも東京ガス自身が推進している暖房方式である)にもかかわらず、警告が出るとかちょっとおかしいんじゃないのか。かりに安全サイドに倒した設計だとしても、リセット方法を文書で提示できないなんてありえない。工事会社と東京ガスの間に、なにか行き違いがあるような気がするなぁ。
ちょっと調べてみると、無線「はこ」(検針端末用無線アダプタ)というものはあるようだ。これは「マイツーホーで使用する特定小電力無線機と同じもの」を使うとある。マイツーホーには(おそらく)ガスが出っぱなしになっている時に通報してくれるサービスがあるので、仕掛けじたいも同じなんじゃないか。つまり、検針無線化にはマイツーホーと同じインフラを使っているけど、マイツーホーサービスの利用者以外にはマイツーホーのマニュアルは渡せないからこんな事態になってるんじゃないか、と想像。
いや、もうちょっとツッコんで本当のところを知りたいところなんだけど。とか書いておくと関係者が教えてくれたりしないかなメソッドでとりあえず。
2012-07-24(火) [長年日記]
■ リーダブルコード (Dustin Boswell/Trevor Foucher/角 征典)
今はプログラマにとって、歴史上もっとも「赤の他人のコードを読まなくてはならない」時代かも知れない。OSもフレームワークもクラスライブラリもオープンソースで、なにかトラブると頼れるチームの仲間ではない、地球の反対側にいる見知らぬ誰かが書いたものを読まざるをえない状況になる。
おのずとコードを「読む」技術を(苦労して)身につけなくてはいけないわけだが、同じ苦労を大勢がするのは非効率だ、書き手がもうちょっとなんとかしてくれてもいいのではないか……というエンジニアらしい合理性によって「他人が読んでわかりやすいコードを書こう」というテーマの本が登場する。つまりこの本。
冒頭からもう、自分の弱いところをチクチクと刺されて、身悶えしながら読むわけですよ。自分だって、一週間後の自分は赤の他人だという痛い経験を何度もしているわけだから、自分自身のためにもできるだけ明快なコードを書こうと意識していたつもりながら、その意識そもののが明快なルールを欠いていたことに気付かされてしまう。かといって責められてつらいといった気分にならないのは、本書が「頼れる先輩」が気さくに話しかけてくる雰囲気をまとっているためだろう。もちろんその雰囲気を削がない翻訳もいい。
構成は変数の名づけ方(名前重要!)から始まって、関数(メソッド)内の構成、クラスの構成という具合に視野を徐々に広げていく。しかも一人で今日にでも着手できる小さな部分の話、広範囲に影響が及ぶリファクタリングの話という風にテーマの粒度が揃っているからわかりやすい。はっきりと明快なルールのおかげで理解も早い。おまけに日本語版にはその先にあるもっと大きな領域、つまり「リーダブルコードをチームの習慣・文化として根付かせるにはどうしたら良いか」というソーシャルに踏み込んだ解説までついている。ここまでたどり着ければ文句はなかろう。
強いて不満があるとすれば、いくつかの書評でも指摘されているdo~whileの例がイマイチなことと、リファクタリングの説明からテストが抜け落ちていること(別の章にテストがあるのでここはあえて触れていないのだろう)、そしてチームとしての取り組みに紙数を割いていない点(だがもちろんこれは前述のとおり解説できっちりフォローされている)。つまりまぁ、ほとんどカンペキ。
売れてる技術書の例にならってAmazonには在庫がないので(なんせすでに4刷!)、オライリーから直接購入するのが吉。もちろん超特急でリリースされたEbook版もある。
リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック (Theory in practice)
オライリージャパン
¥2,640
2012-07-26(木) [長年日記]
■ ケヴィン・ケリー著作選集 2 - 達人出版会
先日Kindle版がリリースされたのでようやく読んだ(いや自分でmobi化すりゃいいんだけどさ)。
第一集に続いて無料で配布されているこの第二集、白眉はやはり「技術は無料になりたがる」だろう。一番長いし。どんな技術も無料化に進んでしまうという話は今ではかなりの信憑性のある主張だと思うが、1998年の講演でKLMの幹部に鼻であしらわれたという話がなかなかショッキングでゾクゾクきます(ご存知のとおりその後の航空業界は格安化へまっしぐらである)。技術に携わる者として、「これが無料になったら、無料にしたらどうなるか」は常に意識しなくてはいけないんだよな。
個人的に面白かったのは「生き続けている古代の技術」と「アーミッシュのハッカーたち」。昨冬から編み物にはまっている身としては、こういう「古代の技術」がいまも生きていて、しかも生産性が上がっているもんだから物量的にも過去の実績を上回りかねないという話は身にしみてわかる(手製ニット製品が増え続ける我が家を眺めながら)。しかもこれらの技術、いまだ進化してるわけで「古代」といっても古いわけじゃない。
諸手を挙げての賛成とはいかないエッセイもけっこう多かったのが第二集の特色かも知れない。漠然とした印象だけど、保守的な方向の主張が増えたような気がする。特に特異点(シンギュラリティ)を否定的に扱った「思考主義」は、自説を有利に進めるためにシンギュラリティに不当な制約を課していたりして、シンギュラリティ信奉派としてはちょっと容認できないなぁ。そんな感じでちょっと注意しながら読み進むことができて、この話が早いうちに出てきてむしろよかったかも(笑)。
いずれにせよ読み応えのある、そして考えさせられるところが多い本であることには変わりがない。
2012-07-27(金) [長年日記]
■ 異動することになった
来月から異動することになったので、部で壮行会をしてもらった。おそらく最後にスピーチを求められるだろうから、部下の一人でも泣かせてやろうというミッションを密かに胸に抱いて参加。餞別に「HAYABUSA」のディスクと本をいただく。やはりほしい物リストは公開しておくものです(笑)。
今の部署に配属になったのはまだオフィスが新百合ヶ丘のときなので、ほぼ7年か。同じところにいるのは10年くらいが限界だと思うので、飽きてモチベーションが下がる前に離れるという、悪くないタイミングではないか。大企業のWebサイトがどのように維持・運営されているのかを目の当たりできたのはいい経験になったし、中でも解析チームを(自分が抜けてもぜんぜん大丈夫なくらいに)しっかりした専門集団にできたのは胸を張れる成果だろう。
一方、わりと足を踏み入れて浅いアクセシビリティ関連に関しては、やっと成果を出し始めたWAICの活動が中途半端になってしまうのが心残りといえば心残りなんだけど、まぁ、あそこは(いい意味で)変態専門家集団なのでこっちも抜けて問題はない。アクセシビリティ・キャンプ東京には引き続き関わっていくつもりだし(第2回は8月3日の予定でまだ参加者募集中デス)。
次の仕事に関してはどこまで書いていいのかわからないので書かないが、少なくともWeb業界からはいったん離れることになるかと。もうそろそろいい歳で、にもかかわらず部長になるには管理職として無能すぎるので(自分の能力を超えるところまで昇進してはいけない)、ここらでバシッとキャリアを変えてまた現場で腕をふるうのは自分に合っていると思う。腕をふるえるかどうかは未知数だけど。
なお、冒頭のミッションはもちろんコンプリートしました:-)
2012-07-28(土) [長年日記]
■ 川崎 4-1 大宮@等々力陸上競技場
勝つ監督はいい監督だ!……と言いたいところではあるが(笑)。等々力で勝つのをみたのは2ヶ月ぶりだよまったくもー。
故障で主力が何人も離脱するのはいたしかたないとしても、田坂を始めとして移籍まで続きそうな雲行きで、これはもう「流出」といってもいい事態。当然「補強」で応えて欲しいわけだが、さすがに「監督のご子息2名の加入」を補強と呼ぶのはちょっとなぁ……。で、その2人が今日は揃ってスタメンで、それ本当に私情が混じってないのかよとツッコまれても仕方のない布陣。
点差は大きく楽勝だったように見えるけど、うち3点はPKを含む個人技だし、風間兄弟は目立った活躍もないしで、やっぱり不安要素はたんまりとあるのであった。
■ 等々力陸上競技場から見えた花火は立川のもの(か?)
この季節にはだいたい毎年、試合中に遠くの打ち上げ花火が見られるんだけど、今までどこの花火大会なのか調べたりしなかった。で、ちょうど今日の試合がそうだったので、調べてみた。隅田川花火大会が同じ日程だけど、この方角にあるのは多摩川なので多摩川沿いだろう。となると、立川のそれしかなさそうだ。でもなぁ、立川ってけっこう距離があると思うんだけど、あんなに大きく見えるもんかね。
というわけでざっと計算。
花火の直径は最大で腕(約60cm)を伸ばした先にある親指の爪1個分くらい(約1.5cm)なので、2×π×60÷360×1.5で視野角にしておよそ1.5度。
一方、武蔵小杉から立川の花火大会会場まではGoogleの距離ツールによると直線距離で27km。2×π×27÷360で視野角1度が450mくらいに相当。1.5度だと600m以上か。花火の直径は最大で500mくらいだそうなので、まぁまぁあってる。もっとも立川でそんなに大きなのをバンバン上げてるとは思えないけど、誤差の範囲かな。
2012-07-29(日) [長年日記]
■ 夏の富士山一周 (またか)
4時に起きてもタイヤの空気圧調整をしているだけで汗だくですわ。そんな連日の猛暑から逃れようとして富士山に登ったらちょうど今週からマイカー規制が始まっていて、五合目までは上がれなかった。富士山スカイラインの標高でも十分に涼しかったけど。
今日はこないだkitajに教わったルートを通ってみようと思い、r71を出たところで左折。r21で西湖を西端から北側をまわって、道路標示を注意していると、あった、r719へ右折。地図上ではほっそい道なんだけど、けっこう整備されていて走りやすい……と思ったらナビ上の地図が途中でぷっつり切れてるじゃねーの!!
で、ちょうどそのあたりからえらく暗くて狭くてまっすぐで寒いトンネルが延々と続いて、ナビがGPSを見失ったころようやく出口へ。ナビにない道は存在しないと同義なので、知らないわけだわ、こんな道。いやでも、楽しい道だった。
もっとも(これは予想したとおりだが)中央道から帰ると相模湖から自宅までが灼熱 & 渋滞の地獄だったので、トンネルの向こうに出たらr36は左折して、精進ブルーラインから戻ってきちゃった方がいいかも知れない。
■ tDiary 3.1.4リリース
今月も無事、リリースできました。
今回はバグfix中心のわりと大人しめなアップデートだけど、次回リリースではRdbIO含めPaaS対応まわりを進めて、Herokuなどでの運用を簡単にしようと話をしております。
2012-07-30(月) [長年日記]
■ 「たのしい開発 スタートアップRuby」を電子献本していただいた
あれ、おかしいな、たしか紙の本をもらう手はずになっていたはずなのに*1、なんでPDF版が手元にあるの……? これはつまり「ただただしがグッとガッツポーズするだけで電子書籍化が早まる」伝説の始まり?
というわけで、出たばかりの「たのしい開発 スタートアップRuby」(電子書籍版)を献本していただきました。未来の話だと思っていたけど、けっこう現実化してるやないですか、電子献本。というか、Amazonによれば紙版の発売日は明日になってるような。事実上の先行発売じゃない、スゲー。
なんかだいぶ毛色の変わったRuby本と評判なので、読むのが楽しみですなー。
*1 もちろん「電子版を下さい」というリクエストはしていた。
2012-07-31(火) [長年日記]
■ 西山温泉、慶雲館へ (1)
異動にともなう引き継ぎも順調に進んで、あれ、もしかして異動先でちゃんと休みが取れるかどうかわかんないじゃん……という不安があるので、早めに夏休みを取ることに。つっても猫がいるから例によって一泊しかできないんだけど。というわけで山梨県の西山温泉へ。ここはちょうど10年前に行っている。
そういえば中央道の代わりに新東名を使ってもいいんじゃないのということで、ようやく新東名を走ることができた。上の写真は駿河湾沼津SAから見た駿河湾のパノラマ*1。新東名、Rが大きいというのはわかったけど、勾配が緩いというのはあんまり実感できなかったかなー。スピード感が薄いので、ついつい出しすぎてしまうというのはあった。でもまぁ、新しい道路はいつだっていいものです。
西山温泉までは新清水ICで降りたあとが長くて(約2時間)、よくまぁこんな秘境に温泉を開いたなというくらいの山奥にある。しかしながらあちこちで道路工事がされていて、とくにトンネルはどこも新しくてきれいで、なんかがんばって開発しているという感じだ。宿のパンフで知ったのだけど、西暦705年創業の慶雲館は、ギネスにも載っている「世界でもっとも歴史のある旅館」らしい。ほんまかいな。
最近掘り当てたあたらしい源泉がけっこうの湯量らしく、全館掛け流しになっていた。だてに10年たってない。料理もうまいし(でも多い)、こんな山奥なのにSBMの電波もバリバリ入るしでいいところです*2。
◆ かずひこ [pdfの合体には、(最近の)poppler-utilsにpdfuniteというのがいて、最近はそれを使っています。 ..]
◆ ただただし [Debianのパッケージ前提だから、pdfuniteは使えないなー。かずひこがkobo向けに作ってたスクリプトにあっ..]
◆ かずひこ [このPDFは文字の色が微妙に薄いので、convertの引数に "-normalize -gamma 0.5" とかい..]
◆ ただただし [ガンマ補正は本家Kindlizerの方でやれるので。あと、リサイズは2回もしてないような?(上のスクリプトではリサイ..]
◆ かずひこ [リサイズ二回というのはちょっと不正確でした。「最終的に欲しいピクセルサイズにあわせて最初からラスタライズ」の方が「と..]