トップ «前月 最新 翌月» 追記
RSS feed

ただのにっき


2012-06-01(金) [長年日記]

「Readlists」で複数のWebページをまとめたEPUBを作ってみた

[写真]Kindleに入った「コックピットから」

つい最近、三菱重工のサイトにある(もう連載は終了してしまったが)「コックピットから」という戦闘機の読み物があるのを知って、ちょっと読んだらとても面白かったのでKindleに入れてまとめ読みしたいと思った。が、全17話を一個ずつSend to Kindleするのも扱いが面倒だし、どうせなら1個のEPUBにでもまとめたいと考えていたら、ちょうど「ウェブ上の記事をまとめて電子書籍にできる『Readlists』」を読んだのでさっそく使ってみた。

作り方はめちゃめちゃ簡単で、 http://readlists.com/new/ にアクセスして右側のリストに上からまとめたいURLを入れていくだけ*1。ページのタイトルが化けるが気にしないでかまわない(Editすればいちおう日本語は入るが、Permalinkを開くとやっぱり化けるので)。ページ左側にて書名とDescriptionを入力すれば完成。

あとは左のメニューからEPUBをダウンロードしたり、メールや電子ブックリーダーに直接送ることもできる。おれはいったんEPUBでダウンロードして、いつものようにcalibreでMOBI変換してからKindleに送った。なぜなら書名の日本語はやっぱり化けてしまうようなので、calibre上でそのあたりのメタ情報を再入力したからだ。まぁ、Readlistsが生成するEPUBはCSSがイマイチな感じなので、EPUBファイルさえ入手しておけばいずれそのあたりも調整できるしね。

Tags: ebook epub

*1 ちなみにこのコーナーがある「Discover MHI」は、右クリックは無効化されてるわ、フォーカスがどこにあるのかわからないわと、アクセシビリティ的には最悪の部類。こういうのは意味がないばかりか弊害しかないのでやめた方がいいですよ。


2012-06-02(土) [長年日記]

みなとRuby会議01に参加した

今日はYokohama.rbが主催する「みなとRuby会議01」だったので参加してきた。年に1回くらいは地域Ruby会議に参加しなくては。

「みなと」とはいえ、場所は二俣川の運転試験場のすぐそば(つまり山の上)。「みなと」は3年後の目標であるパシフィコ横浜を指しているのだそうだ。うむ、SF大会にできてRuby会議にできないわけないよな!

さて、受付をして指定された席につくも、同じテーブルに誰もいない。他のテーブルはけっこう埋まっているのに。しょっぱなはペアを組んでのプログラミングということなのにこれは困る……と思ったらギリギリに@bash0C7や@tatsuoSakuraiらが到着。というわけで、最初のセッションはペアプログラミングで課題をこなす「ソーシャルコーディング」。テーマは「あみだくじ」か「English Numberals」、相棒は@ymorimo。しかし、あっちはMac+USキーボード+Emacs、こっちはLinux+JISキーボード+vimというペアプログラミングをするには厳しいペアになってしまった。まぁ画面が大きい方(つまりMac)を使うという当然の選択をしたわけだが。

いっしょに働いたことのない人と即席ペアを組んで1時間、集中してプログラミングをするというのは、実にスリリングで面白いよね。できたあみだくじはこちら。テストはなし(爆)。そのかわりというわけではないが、かなり見通しのよい短いコードにできたと思う。データ構造に文字列の配列を使ったところがポイント。その後、奇数カラムの横線が高密度になりがちという(仕様面ではなく美意識的な)問題をなんとかしたり

後半は講演がいくつか。どれも楽しかったが、とくに最後の@nagachikaによるEnumeratorの話は勉強になった。これからはもっと真面目にEnumeratorを使おう。

懇親会にも参加して、初めての方々といろいろお話できてよかった。@nagachikaとモバゲー友達になれたし!(笑)

[写真]Ruby会議標準サイズの名札

Tags: ruby
本日のツッコミ(全1件) [ツッコミを入れる]

sora_h [ステッカーwww]


2012-06-04(月) [長年日記]

今後は紙の本を手に取ることなく電子化する方向で

今まで買った本はいったん自宅に届けてもらって(すでに何年も前からオンラインでしか買わなくなっている)、表紙を外してからBOOKSCANに送っていた。BOOKSCANは表紙をスキャンしてくれないので。ただ、表紙画像を見るだけならオンライン書店のそれを見ればいいわけで、いまの手順がだんだん面倒になってきた(笑)。というわけで、意を決して「ショップからBOOKSCANに直接送りつける」を敢行。

少ない冊数の場合はチューニングラボへ自動で送ってくれるそうなので、いちおうKindle向けのチューニングをした上でDropboxへの配信とKindle Personal Documentsへの送信処理を追加で依頼しておいたら(プレミアム会員なら無料)、今日になってさっそく届いた。購入から数日のブランクがあるとはいえ、いきなり手元に電子書籍が届く、それもKindleに直接ってのは感動するねぇ。

とはいえ、先日本当にノンブルを完全自動で切り落とせるのかどうか疑念もあると書いたように今日届いた文庫本はノンブルが残ったままの老眼には厳しいサイズだったので、けっきょく自宅に帰ってからいつものようにKindlizerにかけたわけだけど。いやでも、これでようやく、夢(?)電書生活ですよ。

[写真]残念ながらノンブルが残ってしまったチューニング済みPDF

Tags: ebook

2012-06-06(水) [長年日記]

金星の太陽面通過は見られなかったけれど

[写真]ひのでがとらえた金星の太陽面通過

先月の金環日蝕に続いての天文イベント、金星の太陽面通過がある日だったのだが、朝からあいにくの雨。そろそろ梅雨入りかねぇ、関東も。というわけで、残念ながら太陽観測メガネの出番もなく、しおしおとなりながら普通に出社。

もっとも、大気圏の外側にはなんの影響もないわけで、日本の誇る太陽観測衛星「ひので」がすばらしい写真を公開してくれた。「個人のご利用はご自由にできます」という曖昧模糊としたライセンスに苦笑してしまうわけだけど、せっかくなので記念にありがたくコピーさせてもらおう。

これ、本当にすごいよな。最初見た時は「なにこれ、SF!?」って思ったもん。どんだけ近くで撮ってんだよ(※近くありません)。もちろん国立天文台のサイトには、じっと見ているだけで鼓動が早まるような高解像度にして美麗な写真が他にも多数。いい時代に生きてるなぁ、ホント。


2012-06-07(木) [長年日記]

SONY DR-BT21Gのイヤーパッドを100均で修理した

ずいぶん前に買って、けっこう音漏れがするのでけっきょく屋外では使わず、自宅で使っているSONYのBluetoothヘッドフォン「DR-BT21G」。さすがにスポンジのイヤーパッドが劣化して、というか穴があいてしまったので交換部品を探したんだけどもう扱っていないようだ

[写真]ボロボロになって穴があいたイヤーパッド

で、調べてみると「100円均一で売ってるヘッドフォンのイヤーパッドが使える」という情報があり、ほんまかいなと訝りつつもそれっぽいのを買ってきた。見た目はたしかにだいたい同じサイズ。

[写真]100均で買ったヘッドフォン

で、これをはずしてつけてみたら、ホントにぴったりで笑ってしまった。実際には100均版の方がユニットに厚みがあるせいですこし緩くなってしまっているんだけど、つけてるうちにフィットしそうだし、何の問題もない。本体のほうを捨ててしまうことに対して罪悪感がないわけではないが、まぁ100円だしなぁ。

[写真]めでたく復活


2012-06-10(日) [長年日記]

今年も緑のカーテンを作るぞ(2)

4月の末に種をまいた去年の夕顔、十数粒あったのに発芽したのはたったのひとつというありさまで、けっきょく成熟していたと思っていた種の多くは未成熟だったということか。というわけで、とりあえずその一株をプランタに移した:

[写真]ひとつだけ芽を出した昨年の夕顔

これだけではカーテンにならないので、先日あわてて朝顔の苗を買い足したんだが、雨続きで作業ができないあいだベランダに置いておいたらドーラが葉を食べてしまい、なんだか無残なすがたに。グスタフはウール製品を食べるわ、ドーラは朝顔を食べるわ、なんて悪食なんだうちの猫たちは!!

そんなわけでなんだか心もとない状態ではあるが、いちおう植えた。かろうじて芽は残ってるけど、ちゃんと育つんだろうか、これ:

[写真]葉をかじられて丸坊主の朝顔

なんだかんだでけっきょく去年と同じペースじゃないの。間に合わんなー、これは。

Tags: gardening

2012-06-11(月) [長年日記]

ナンシーの謎の手紙 (ナンシー・ドルー・ミステリ8) (創元推理文庫)(キャロリン・キーン)

本が好き!で当たった献本なんだけど、不思議なことに必ず「4回に1回」当たるんだよね。抽選つってるけど、作為が入ってるようにしか見えない(笑)。

それはそれとして、あらすじを読んで反射的に応募したのだけど(ミステリだということは理解していた)、蓋をあけてみたらジュブナイルだった。しかも、ページをめくって目に飛び込んできたのは「1932」という数字。なんと、原作が書かれた年である。それからようやく調べてみると、1930年から同じペンネームを使って複数の作者が書き続け、数百冊におよぶ大シリーズの一冊だということ。ようするにミステリ界のペリー・ローダンということか! いやぁ、存在すら知らなかったよ。

主人公は「少女探偵」、アメリカ在住の18歳(?)でコンバーチブルの車を乗り回し、父親は成功した弁護士、大学アメフトの選手をボーイフレンドに持つという、いい感じにファンタジーの入った設定で、たしかにこれで主人公が歳を取らなければ長く読み継がれるシリーズになるのもうなずける。ミステリとはいえ殺人は起きず、少々危ないメにはあうものの命にかかわるようなことはない。シリーズすべてがこんな感じなのかはわからないが謎解き要素は希薄で、むしろ冒険小説にちかいプロット。子供の頃に知っていたらたぶんはまっていたと思う。

面白いなぁと思ったのは、捜査中のナンシーの問い合わせに、警察署も郵便局も航空会社も、第三者の個人情報をほいほい渡すところ(笑)。のんびりした時代だったのだねぇ。現代のプライバシー基準下ではとても書けない(謎が解けない)のは間違いない。そいういう意味でのオールドファッションさも、ジュブナイルとしてのバランスの良さにつながっているんじゃないかと思う。近作がどんな感じなのか読んでみたいね。

このシリーズは複数の出版社から出ているけど、創元のシリーズは表紙もかわいいながらも萌え絵ではなく、ちょっと外国文学らしい香りが残っていて良いと思った。翻訳はこの巻でおしまいという噂をみかけたけど、ちゃんと継続して、学校の図書室にずらっと揃えておいて欲しいなぁ。

Tags: book

2012-06-12(火) [長年日記]

Ruby 2.0を使ってみたくなったので今さらながらrbenvを導入

基本的に1.9系の最新リリースしか使わない方向で環境を整備してあるのだけど、そろそろLazyとか使いたいじゃないですか。いまだに1.8でしか動かないツールを使いたいとかそういう後ろ向きの理由じゃなくてね。

というわけでrbenv導入の単なる作業メモ。ネットで見つかる導入解説記事は信用せず、オリジナルのドキュメントを読んだ方が良い。最近はruby-buildのインストール先なんかがずいぶん整備されている。

rbenv本体のインストール。このインストール方法はなかなか好み:

% cd
% git clone git://github.com/sstephenson/rbenv.git .rbenv
% echo 'export PATH="$HOME/.rbenv/bin:$PATH"' >> ~/.zshenv
% echo 'eval "$(rbenv init -)"' >> ~/.zshenv
% exec $SHELL

続いてruby-buildプラグインを導入:

% mkdir ~/.rbenv/plugins
% cd ~/.rbenv/plugins
% git clone git://github.com/sstephenson/ruby-build.git

今まで使ってた古いrubyは一旦退避:

% mv ~/bin/ruby ~/bin/ruby193

rubyのインストール。最新リリースの1.9.3と開発中の2.0.0:

% rbenv install
    :
  1.9.3-p194
  1.9.3-preview1
  1.9.3-rc1
  2.0.0-dev 
    :

% rbenv install 1.9.3-p194
% rbenv install 2.0.0-dev
    :
/home/sho/.rbenv/plugins/ruby-build/bin/ruby-build: line 161: autoconf: command not found

ぎゃ(笑)。しばらくHEADをビルドしてなかったからなぁ。たしかautoconfだけじゃなくてbisonも必要だったはず:

% sudo aptitude install autoconf bison
% rbenv install 2.0.0-dev
% rbenv versions
* 1.9.3-p194 (set by /home/sho/.rbenv/version)
  2.0.0-dev
% rbenv global 1.9.3-p194
% ruby -v
ruby 1.9.3p194 (2012-04-20 revision 35410) [i686-linux]
% rbenv global 2.0.0-dev
% ruby -v
ruby 2.0.0dev (2012-06-12 trunk 36037) [i686-linux]

よし。

% pry
zsh: command not found: pry

ああ、そりゃそうですね。gemを全部入れなおすのはめんどいなぁ。

% gem install pry
% rbenv rehash
% pry
[1] pry(main)> (0..Float::INFINITY).lazy.map{|i| i*2 }.take(5).force
=> [0, 2, 4, 6, 8]

わーい。

でもまぁ、gemとかいろいろ移行が面倒だし、当面は「rbenv global system」しておこう(ぉぃ)。

Tags: ruby

「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」をKindleで読むためのCropBox設定

物理学者の田崎晴明が書いた「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」という電子書籍(?)がPDFで公開された。まわりの評判をみるかぎり、きちんとしたもののようだ*1。というわけで、Kindleに入れて読みましょう。

PDFのなかを見ると各ページのマージンをCropBoxで指定しているようなので、以前紹介した手法が使える。この場合はOFFSETを[60, 50, -60, -70]にすればいい感じになるようだ。

せっかくなのでスクリプトもcropbox.rbという名前でKindlizerに入れておいた。ご利用ください。

Tags: book ebook

*1 一部の不届き者のせいで科学者が書いたというだけでは信用できないご時世なのがなんとも悲しい話である。


2012-06-13(水) [長年日記]

Kindleアップデート4.1.0ではWiFiのON/OFFが面倒になった

[写真]新しいKindleのSettings画面。Airplane ModeでのみWiFiをON/OFFできるようになった。

Kindleの4.1.0へのアップデートが出たので、さっそく入れ替え。待っていれば勝手にWiFi経由で落ちてくるんだけど、いつも待たずにPCから更新をしてしまう。せっかち。

今回の目玉はフォントの変更(くっきりした……ように見える)とFormat8への対応だけど、まぁ自炊本ばっかり読んでる身からするとあんまり関係ないかな。

アップデート後に画面を見たら、いつもWiFiのアンテナマークが出ているところが航空機のマークになっている。で、メニューからWiFiをONにしてみようと思ったらメニューに項目がない! なんてこった、Settingsメニューの下に移動しちまったぞ。

これはようするに、普段からONにしっぱなしで使えってことだよなぁ。バッテリの持ちの問題もあるし、以前はONにしていると不安定になる傾向(固まったり勝手にrebootしたり)があったので、基本的にOFFにしておいて必要なときだけONにする使い方をしていたんだけど、今後はそれも面倒になったなぁ。というか、いいかげん安定しているだろうし、ONにしっぱなしで使うか。

ちなみにこれは以前からだけど、KindleはWiFiをONにしたまま充電状態にしておくと、電源が切れているように見えても裏でときどき通信をしているらしく、夜中に勝手に新しいドキュメントをダウンロードしておいてくれたりする。いつもkindlizer-backendを使って新聞を早朝に配信させているので、そういう運用をすれば便利っちゃ便利だな。

Tags: kindle

2012-06-14(木) [長年日記]

放射線医が語る被ばくと発がんの真実 (ベスト新書 358)(中川 恵一)

昨今の放射性物質汚染関連に関する発言でもっとも信頼に足る人物の一人である、中川医師による本。ちょっと時間がたってしまったがようやく読んだ。

放射線医というだけあって、あくまで健康面に軸足を置いて、この困った時代のリスクにどう対処すべきかという指針を提示している。放射性物質汚染によって発生するリスクはけっきょくのところガンになるリスクだと定義した上で、そもそもガンとはどういうものかという解説にかなりの紙数を割いていて、その中で今回の事故に起因する放射線によるガンがどのレベルに位置づけられるのかを明確にしている。ここには、起きてしまった事故についてどうこうする(つまりはこれから原発をどうするかという話題)ではなく、「すでに存在する(存在してしまっている)」放射性物質がもたらすリスクとどう付き合っていくかという現実的な話しかない。おかげで焦点がぼけることなく、とても有用な本になっている。

さらに思い切ったなーと思うのが、よくある核分裂のしくみだとか、シーベルトとベクレルの換算だとか、一般の人の多くができれば避けて通りたいと感じてしまう「科学的」な部分はいっさい書いていない点だ。そのかわり、現在採用されているさまざまな「基準値」や「指針」がなにをベースに決められていて、どうして世界的に信頼できると考えられているのかというポイントを解説している。科学的に正いしからという理由付けでなく、なぜみんなが信用しているのか(その背景に科学がある)というスタンスなので、その信頼性に納得できればとてもわかりやすい。

まぁ、これでも納得できない人はいるわけだけど、そういう人たちはもう、カルト宗教にはまっちゃったようなもんだからなぁ。こういう本とは別の方向からのケアが必要なんだよね。

本日のツッコミ(全5件) [ツッコミを入れる]

たのじゅんじ [技術系&日常系の日記にこういう事を書きたくないのですが、カルト信者のようなと揶揄されては反論せざるをえない。 中川..]

ほーい、ほい。 [>中川恵一氏については、.. 複数の学者さんから批判されています。 なぜ、自分で批判/検証しないのか。人の意見は尊..]

ただただし [たのじゅんじさん、まずは、中川医師に同意しない人をすべてカルト扱いしているかのような表現をしてしまったことに関しては..]

たのじゅんじ [私の批判は「中川恵一氏の論説が間違いだから信じるな」ではなく「"中川恵一氏の論説に納得しないのはカルト"という根拠の..]

たのじゅんじ [ほーい、ほいさんへ (1)車輪の再発明をしないのは議論の場でも当然。 (2)カルトと決めつけられた側が反論するのに..]


2012-06-15(金) [長年日記]

やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識 (田崎 晴明)

[写真]「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」in Kindle

昨日の『放射線医が語る被ばくと発がんの真実 』に続いて放射線対策関連書籍を読んだ。フリーのPDFなのでISBN番号はない。が、たいへんな力作だし良書なので、PODとかで紙でも売ればいいのにと思わなくもない。なお、Kindleに入れて快適に読む方法は先日書いたとおり

昨日の中川医師は放射線医だったが、こちらの著者は物理学者ということで、軸足は科学的な確からしさに重きをおいていて*1、出発点もそもそも核分裂とはなんなのかから入る。さすがに大学の先生だけあって、体裁はすごく教科書っぽい。なにしろ演習問題まである! ついでに書いておくとなくても良さそうな脚注が多すぎるところもそれっぽい!(笑)

著者の意図は核物理学による現象は我々が慣れ親しんだ化学反応をベースにした常識からはかけ離れているということを理解してもらうことにある。放射性物質は熱を加えても半減期は短くならないし、特殊な微生物を使って分解することもできない。内部被曝は外部被曝よりはるかに危険(なはず!)という我々の「直感」が間違っていることを、平易な言葉で筋道立てて説明する。直感や常識にのっとって判断すると往々にして間違った結論に至ってしまうことに、いつも注意を払わなければならないのだ。

そんな、これまでの常識とは違う放射線の知識を、「新しい常識」にして欲しいと著者は願う。この願いは科学者としてまっとうなものだと思う。が、それは難しいんじゃないかなーとも思う。とくに大人は、いままで培ってきた常識を入れ替えるのが難しいし。やっぱり大人には、昨日紹介した中川医師の本を薦めたい。一方、まだ頭がやわらかい若者や子供たちには、まず本書を手にとってみて欲しい。普通に核物理学の入門書としてもわかりやすいし。

あと蛇足だが、基本的に現在は(一部地域を除いて)日本は安心して暮らせるレベルにあるという結論に、そのために日々たいへんな努力をしている人たち、とくに農産物を作っている人たちへの賞賛と感謝を忘れない、そんな著者の姿勢はすばらしいと思った。自戒も込めて。

Tags: book

*1 そしてもちろん、「確かでないこと」を明らかにしつつ進む、たいへん正しい科学的態度。


2012-06-17(日) [長年日記]

ドーラ、カラスを威嚇する

[写真]電信柱上にいるカラスに身構えるドーラ

外で大きな羽音がしたなーと思ったらドーラがダダダっとベランダに飛び出していった。みれば電柱の上に止まった大きなカラスに向かって身構えている。最近はずいぶん甘えっ子になってすっかり飼い猫になったと思っていたが、こういう野生はまだまだ残っている感じ。ちなみにそのころ、グスタフは人間のベッドの上で腹を上にしてぐっすり寝ていたのだった。まぁグスタフに野生があったことなどないけどな……。

そうそう、すっかり書くのを忘れていたが、先月ドーラは(だいたい)満二歳になった。明確な誕生日がないとついつい忘れる(←ひどい)。でも体重はたったの3.2kgしかなくて、ちょっと小さすぎるような気もする。メスだし、これ以上は大きくならないんだろうなぁ。ちなみにグスタフは7.4kgです。

Tags: dora

2012-06-20(水) [長年日記]

違法ダウンロード罰則化成立を一有権者として反省し、音楽断ちをしようと思う

歴史に残る悪法がとうとう成立してしまった。

いま国会にいる民主党議員には投票したことはないけど、そもそもこれは主に自公側が出した議員立法なので、どっちにしろ彼らを選んだ(自分を含めた)有権者の責任である。多くの人が指摘しているように、この法によって意図せぬ危険に陥れられるのは若い世代だ。投票権を持たない彼らに危害が及ぶような法律の成立を、有権者である我々が看過してしまった。腹をかっさばいて詫びたいところではあるがそうもいかないので、せめてのも償いにしばらくのあいだ、刑罰化の対象になる音楽を買うのを控えようと思う。

今でもおよそ月あたり1枚くらいは買っているCDを買わずにいるのはとてもつらいけど、うっかり公開してしまったら最後、他人を犯罪者にしてしまうようなデータを入手することを控えれば、少しは犠牲が減らせるのではないだろうか。いや甘いのは承知の上だけど。というわけで、改正法の施行(10月1日)以降、国内でCDを買わない。とりあえず1年間

もちろんまったく音楽を聴かないというわけではないよ。せっかくだからVOCALOID界隈で無料で公開されている楽曲を聴きこんでボカロ耳を鍛えてみるのもいいね(合法)。なにしろ、いまだに初音ミクがなんて歌ってるのか聞き取れないしさ。あと、これを期にクラシック音楽に親しむのもよさそう。調べてみると、著作権の切れた演奏データを公開しているサイトはけっこうある(合法)。あとはまぁ、たまにAmazon.comなど海外からCDを個人輸入するくらいは許してもらおう(罰則対象外?)。

もしも。もしもですよ。おんなじように音楽断ちをする人がとてもたくさん現れてしまったら、日本の音楽業界は壊滅してしまうかも知れない。でもまぁ、それはそれでしょうがないんじゃないかね。森林火災のあとには新たな芽吹きがあるものだし、ニコニコ動画やVOCALOID界隈を眺めてみれば、じっさいそういう胎動は感じられるわけで。こんな悪法をものともしない、もっと健全な音楽文化が育ってくれるのであれば、それはそれで良いと思う。

Tags: copyright
本日のツッコミ(全6件) [ツッコミを入れる]

鳥居三三 [いい提言ですぜ。おいらもCDはほぼ買ってなかったんですが、10月以降はこの法律が無意味に国民生活への脅威を及ぼす懸念..]

ただただし [いやいや、提言でも運動でもないですよ、たんなる個人的な反省行為です。もちろん他の人が追従することは止めませんけどね!]

匿名希望 [個人的にはそういうのもアリだと思います。 ただ今の流れを見てると刑事罰化でもCD売上が伸びなかったとしてさらなる改悪..]

MonMon [ただただしさん初めまして、1人の音楽好きとして発言します。 Jamendo(http://www.jamendo...]

ただただし [だからさー、なんで個人的な反省行為にすぎないものを、不買「運動」とか大きな話にしたがるんですかね。いっしょに反省する..]

しぃな [いやぁ、ちゃんとCDは買ってるなぁ。ま、同人作家の出す東方系とボカロ系ですけどね! どこぞの胡散臭い団体にはいかない..]


2012-06-23(土) [長年日記]

アイマス7thライブだった (不参加だけど)

わさますのフラスタ (電撃オンライン掲載)

ついに7周年を迎えたアイマスのライブがおらが街(というか勤務地)新横浜にやってくるというので、フロンターレの試合を見にいくついでもあったので途中下車して雰囲気だけ見てきた。今回、我々"わさます"はついにフラスタ*1を出したので、そのねぎらい的な意味もあって。チケット持たずに会場にきて、物販や他の参加者との交流だけをすることは専門用語で「会場推し」というらしい(ハロプロ発祥?)。

件のフラスタはとうぜん中に入らないと見られないわけで、実物を目にすることなく会場を離れたのだけど、その会場内へのカメラの持ち込みも禁止されているわけで*2、「いいカメラで撮っておきたいよねー」なんて話をしていたら、なんと電撃オンラインが撮ってくれていたのだった。ありがとう、電撃オンライン! いい記念になったよ。

普段、新横浜で働いていると、しょっちゅうジャニーズのライブで若い女の子がうじゃうじゃしていたり、逆にハロプロに男子がわさわさ集まったりしているのを目にするわけで、うぜーと思うこともしばしばだけど、こうして会場そばまで来て雰囲気を感じてみると、これはいわゆる祭祀に近いものなのだなぁと理解する。ようするに地元で夏祭りが催されていて、屋台がたくさん出たり、寄進者の名前入り一斗樽が積み上げられていたり、神輿が練り歩いたりするのとおんなじだ。コミュニティのベースが地域にあるか、(なんらかの)コンテンツ/アーティストにあるかの違いだけだわ。まぁ、こっちは屋台に5時間並ぶ世界だが。

働いている側からするとそういう"祭り"が日常に差し込まれてくるから違和感を感じるわけなのだな。新横浜が横浜アリーナという祭祀場を抱えている以上、それは受け入れなくてはいけないものだろう。今回は週末2Days開催なのでなんの問題もないけど。というか、駅前のヤマザキデイリーストアが、店の外にスピーカーを出してアイマス曲をがんがんかけていたのにはびっくりした(笑)。あの店、普段はあんなことしてないよなぁ? 店員にPがいるんだろうか。

Tags: idolm@ster

*1 フラワースタンド、ようするにお祝いの花輪的なもの。

*2 ケータイくらいならお目こぼししてもらえている。

川崎 0-0 横浜F@等々力陸上競技場

[写真]コーナーキックをするケンゴ

で、ライブ会場をあとにして等々力へ。前半は一進一退、後半は防戦一方だったけど、故障者が多くて守備に問題を抱えているのに無失点で抑えられたのは良かったと言えるのかも知れないなー。負けなかった、とポジティブにとらえよう。これで負けてたらライブ組に何言われるかわかったもんじゃないしな!

Tags: frontale

2012-06-24(日) [長年日記]

(プレ)バースデー

[写真]マンゴーのロールケーキ

誕生日は来週の水曜なんだけど、かみさんが忙しいみたいなので誕生日の前借り(?)をした。アンリ・シャルパンティエ、マンゴーのロールケーキ。うん、これはうまかった。

ちなみにWish listはこちらになります:

(少しメンテしたけど長年の蓄積がすごすぎて昔のはもうなにがなにやら)


2012-06-25(月) [長年日記]

Kindle4にフリーの英和辞書を入れてみた

公開されたのは2ヶ月以上も前のことだが、つい最近Kindle用のフリーの英和辞書というものの存在を知る。プリンストン大学のWordNetプロジェクトの成果を利用したものだそうだ。なんというすばらしい仕事!

で、wordnet-ja.prcをダウンロードしてきて、ついいつもの癖でSendToKindleを使って送ってみたのだが、辞書の一覧に現れない。あらためてUSBケーブルで接続してdocumentsディレクトリの下にコピーしてみたら、こんどは見えた。ネットで送らない方がよさそうだ。

SettingsメニューからDictionariesに入るとこんな感じになっているのが確認できると思う(おれのKindleはデフォルトの辞書を消してしまったので普通はこうじゃないかも知れない):

[スクリーンショット]辞書選択画面

これで英語のドキュメントを開き、カーソルキーでキャレットを移動すると、その場所にある英単語の日本語訳が下の方にポップアップする*1:

[スクリーンショット]Kindle User's Guideで辞書を引いているの図

あんまり英語の文書を読む機会はないけど、これならだいぶはかどりそうだ。というか、ようやくKindleの本領を発揮させられることができたぜ。

Tags: kindle

*1 これに限れば、目的の単語を直接指定できるKindle Touchの方が使いやすい。いや、買いませんよ。


2012-06-27(水) [長年日記]

誕生日につき (追記あり)

[写真]届いたプレゼントたち

ケーキなんかは日曜のうちに食べちゃったし、なにより今日はかみさんが遅いので特になにもなく。ただ、日中いくつもAmazonの箱が届いていたので、(猫に邪魔されつつ)楽しく開封。みなさんお祝いありがとうございました!

ほしい物リストに入れてある品物は真面目な仕事用の専門書から未来の趣味に関するものまで多様なんだけど、わさますの人たちはだいたいネタっぽい品を選びたがる傾向があるのがわかります。あと、匿名の人は名乗りでてもらえるとありがたく。

追記(1)

モゲマスの方に「スタドリ5本」がプレゼントされていたのに気づいたときは目を疑った。けど、これはおおいにアリだよなぁ。ちょうど明日からフェスが始まるし!

追記(2)

[写真]追加分

引き続きたくさんいただきました、ありがとうございます! なんか今年は多い気がする。なにがあったんだ。ともあれ、しばらく読む本には困らない感じ。あと、今後はいかにもプロっぽくカッコイイ写真を撮らなくてはいけなくなりそうだ。

本日のツッコミ(全5件) [ツッコミを入れる]

small [おめでとうございます。13:56に我が家に長女が生まれました!誕生日が一緒なんて偶然?]

ただただし [おー、おめでとう! おれといっしょの誕生日なんて、そりゃいい子に育つよ(笑)。]

みわ@miwarin [おめでとうゴマス。「私たちの「はやぶさ」」は私です]

啓明@ati9m [(*^^)//お誕生日お祝い申し上げます。]

ただただし [> miwarin 昨日届いていました。ありがとうございます!]


2012-06-28(木) [長年日記]

(ようやく) 日経電子版の有償版を読むようにした

最近やたらと飛ばし記事が増えている感のある日経新聞、まぁそのあたりに注意していれば悪くない新聞ということもあり、我が家では紙から電子版に完全に切り替えて購読し続けている。もちろん有償会員。

といってもkindlizer-backendを使ってクロールした結果をKindleで読んでいるのだが、いままではログイン処理を入れるのがめんどうでFree版(nikkei-free)しか読んでいなかった。せっかくの有償会員なのにもったいない! ……というわけで、新しくnikkei-paidを作ったのであった。

なぜかログインフォームがJavaScriptで生成されていたり、ログイン成功時に無駄なリダイレクトページが挟まっていたりと、よくわからないこだわり(?)のせいでちょっと苦労したけど、いまのところ朝夕ちゃんと生成されているようだ(ただし現状、エラー処理はほぼない)。もっとも、今まで省略されていた記事が読めるようになったものの、省略されている部分がわりとどうでもいい1、2行だったりして、なんだかなぁという感じでもあるが。

そういえば朝日新聞用のプラグインも書こうと思っていたんだけど、あそこも最近は有償会員しか続きを読めない記事が増えていてちょっと面倒になってしまったなぁ。電子新聞の有償モデルはうまくいっているのだろうか。

Tags: kindle

2012-06-29(金) [長年日記]

日本の電子出版を創ってきた男たち (OnDeck Books(Next Publishing))(インプレスR&D)

リンク先はAmazonだが(PODでの出版だそうだ)、もちろん自分は電子版をLibra PROからから買ったのである(こっちは980円)。これまで日本の電子出版に関わって来た人たちへの、OnDeck上でのインタビューをまとめたもの。

ここ数年の「電子書籍元年」(いつまで元年なんだか)よりも前から活動している関係者の話だから、ボイジャーだとかパピレスなんかの老舗はもちろん、青空文庫成立の経緯とか、懐かしくも誇らしい、そしてちょっと悲しい(ガラパゴス的な意味で)話が多くてじつに面白い。EPUB3.0に日本語まわりの仕様を入れる話なんかは、国際化に挑むにあたってのノウハウがすごくて、やっぱ国内の「常識」で動いてちゃダメだよなーとしみじみ感じる。

あと、権利まわりの仕事をしている人の口から出るのは既得権益を持つ業界内の談合を肯定するばかりで、読者の利益のことがぜんぜん出てこないのに苦笑したり。音楽も本も海外勢にやられっぱなしな理由が、なんとなくわかった気がするね。

Tags: book

2012-06-30(土) [長年日記]

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)(チャイナ・ミエヴィル)

「これははたしてSFなのか?」という疑念が最後までつきまとうが、読み手の常識を始終逆なでするこの手触りはまぎれもないSFなんだよなぁ。不思議な、傑作。

領土を「共有」するふたつの都市国家が舞台。パラレルワールド的な意味でなく、本当に同じ土地に重なりあっているというトンデモ設定で、一方の国民は他方の国の人や物を「見ない」ように幼少期から徹底的に訓練されているから交わらずに済んでいるという。「いやいやありえないだろ、それ」と頭ではわかっていても、とことんディテールを積み上げられてしまって、読んでるうちに否定のしようがなくなってしまう。

それ以外は時代も現代だし、場所もだいたいバルカン半島あたりということで、SFっぽさはほとんどない。半村良がフィクションの舞台を作るときに、地図にカミソリで小さな裂け目を入れてその中にだけ架空の存在を入れるという話を書いていたけど、まさにそんな感じだ。

そんな舞台でおきた、国をまたがる殺人事件、それを追う両国の警察……というミステリー要素が加わり、さらに越境を厳しく取り締まるブリーチという謎めいた組織がなんだか超自然的なテクノロジーを持ってるっぽくてこれがSFらしさを加えてくる*1

いやぁ、これが面白くないわけがないよなー。すげー。

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)
チャイナ・ミエヴィル
早川書房
¥1,100

Tags: book

*1 実際はそれほどでもなかったので肩透かしっちゃぁ肩透かしだ。


トップ «前月 最新 翌月» 追記
RSS feed