2013-01-02(水) [長年日記]
■ ミラー衛星衝突 上 (創元SF文庫)(ロイス・マクマスター・ビジョルド)
ヴォルコシガン・シリーズ、前作からずいぶん間があいてしまって、それでも視点がクローンからマイルズに戻ってきたのでやっぱり読むか……みたいな。シリーズものに手を出すとこういう惰性が働いてしまうなぁ。邦題もなんかひどいと思わなくもないが(ストーリーのきっかきになる事故の名前)、原題「KOMARR」も舞台の惑星の名前だったりしてどっこいどっこいなのだった。
皇帝直属聴聞卿となったマイルズがいつものように知恵と権力を駆使して難事件を解決するというパターンはかわらずだが、本作における主人公はなんといってもコマール側の女性、エカテリンだろう。ヴォル文化下にある抑圧された女性がマイルズの(文化的に)破天荒な性格に刺激されて自我に目覚めていく。終盤の活躍はなかなかスカッとする展開。
5つ☆でも1つ☆でもないちょうど中間の面白さなんだけど、シリーズものとしては次を読んでもいいかー、という閾値は超えてるんだよなぁ。未訳もあと3冊くらいあるみたいだし、順調に出るならもうしばらく付き合うかという気にはなってる。ここまでくるとマイルズの人生に付き合わざるをえないというか(笑)。
9784488698157
2013-01-03(木) [長年日記]
■ 寒川神社へ初詣
昨日はすごい強風だったので出かけるのはあきらめて、初詣は今日にした。寒川神社、恒例のねぶたはたいてい干支がネタなので、巳をどう料理するのかと思ったら、今年は干支は題材にしないことにしたようだ。ちぇ。三が日も最終日ともなるとけっこう空いていて、そこそこ動きまわりやすかった。
「B級グルメ」というタームが定着したせいか最近は出ている店もバラエティに富んでいて、なにを選ぶか悩ましいんだけど、昨年食べて気に入った「鶏皮ぎょうざ」を今年もチョイス。かつて寒川神社の個人的定番だった「揚げたいやき」が亡き今、しばらくこれを推していこう(別に鶏皮ぎょうざはここでしか食べられないというわけではないけど)。
2013-01-05(土) [長年日記]
■ 映画『レ・ミゼラブル』を観たら大失敗だった
いやー、退屈だった。3時間ちかく拘束されてあれはない。ネットの評判は悪くないようだけど、個人的にはどうしようもない駄作だと思う。ミュージカルを撮るなら『サウンド・オブ・ミュージック』を100回観てから出なおしてこいと。
何が不満って、歌のパートがクローズアップばかりなのだ(セリフがほぼない完全なミュージカルなので、つまり声の入っているシーンのほとんどがアップということ)。それも顔面だけにピントの合ってるやたらと被写界深度の浅い構図ばかり。アン・ハサウェイがどんなに美人でも、ただただ泣きながら悲惨な境遇を訴える歌を延々とアップで見せられたら苦痛だわ。著名な監督だし、何か意図があっての演出かもしれないけどさ、顔の表情以外の演技を見せてよ!
あと、画面が小奇麗で臭いが伝わってこない。貧民街の住人はもっと脂ぎってて臭いだろうに、単にすすで汚れているだけにしか見えない。下水道のシーンも、浅い沼地ていどの汚さしか感じない。銃撃戦でも血の匂いがしない。おかげで、セリフ(歌詞)以外の要素からも伝わってくるはずの悲惨さがぜんぜん足らないと思う。あと、CGがのっぺりしていて、汚しが足らない気がした。
ストーリー的には「みんな自分だけの勝手な正義や善を神の名のもとにふりかざして、神さんも大変やなー」という感想なのはおれが無神論者だからだろう。登場人物の中で一番共感できたのが宿屋の夫婦だし(笑)。ジャン・バルジャンの超人っぷりにスポットをあてたエンターテインメントに仕立てたらもうちょっと面白くなったんじゃないかと思う(←ひどい)。
◆ りったん [明らかにエリザベートとか王家に捧ぐ歌の方が面白いよね]
◆ アイリス [98年判の方が断然良かった ]
◆ ずん [映画版のグランテールが原作と違ってかっこよすぎて男なのに大好きになりました。 あまりスポットライトは当たることはあ..]
◆ ぬ [原作が好きで、東宝ミュージカルのリピーターで、すごく楽しみに映画館に行って、んんんー?と釈然としないまま帰ってきた覚..]
◆ ポケモン映画の方がマシ [冒頭からミュージカル調… 物語に全然集中出来なくて、退屈で停止ボタンを何度押そうと思ったことか。 歌は蜂..]
◆ CGハリボテ歌劇団で人は感動する [映画としては駄作です。1年後にこの映画のテーマを語れと言われて、語れる人がいるか疑問です。記憶にも残らないんじゃ? ..]
2013-01-06(日) [長年日記]
■ 江ノ島へ行ってきた (主に猫とフレンチトースト)
これもまた例年のように、江島神社へも初詣に行こう、ついでに江の島水族館や長谷寺にも寄ろうという欲張り計画で朝から出発。弁天丸(船)で裏に回って、海岸を散歩したあと上にあがって、ロンカフェでフレンチトーストを食べた。ホテルオークラのあれとは方向性が(値段も)違うので比べないけど、おいしいフレンチトーストでした。昼食がわりにとったものの完全にスイーツだったけど。写真は、季節および店舗限定・スイートポテトと甘栗シロップ。
初詣のピークは過ぎたからか、人はさほど多くなく、島のあちこちでは猫たちがのんびりしていた。ここ何年か、江ノ島に行っているけど、こんなに猫を見たのは初めてかも。風もなくて日向は暖かかったからかな。
けっきょく、正月の運動不足がたたって島の上り下りだけでへろへろになってしまったので、他の目的地はすっぱり諦めて帰ってきてしまったのだった。これにて年末年始休暇はおしまい。うがー、コードを1行も書けなかった!!
2013-01-08(火) [長年日記]
■ WappwolfとIFTTTを使ってKindle Personal Documentを復活させた(暫定)
Personal Documentにメールできない問題はいまだ絶賛継続中。Amazonのサポートもおれが1週間に1回かならずpingを打ってくることを学習したらしく、仕事始めの1月4日に向こうから「続報なし」のメールを送ってきた。いや、そんな情報量ゼロの話を知らせてもらえてもね……。メールがどこで詰まっているのか見つけるのになんでこんなに時間がかかるのか、不思議でしょうがない。
……と、待っていても不便でしょうがないので、(Amazonのサポートには引き続きがんばってもらいつつ)なんとか回避策をうつことにした。
なにしろHerokuのsendgridプラグインを使った場合のみ失敗するので、まずは自動的にPersonal Documentにメールできるルートを開拓しなくてはならない。ここにはWappwolfを使った。Wappwolfは以前「Dropbox Automater」と呼ばれていたサービスで(今はGoogle Driveやboxも使える)、Dropboxにファイルを作ることをトリガーにしていろいろやってくれる。ここで、特定のフォルダにファイルを入れたらそれをメールでKindle Personal Documentに送るというタスクを作ってやる。不思議なことにWappwolfを使うと、あきらかにFromを詐称しているにもかかわらずちゃんとメールでもPersonal Documentにファイルが届く。謎だ。DKIMなどの認証がネックだと思っていたけど、そうでもないらしい。
さて、これで次の課題は「生成したmobiファイルをDropboxにコピーする」というルートを作る点になった。これにはIFTTTを使う。IFTTTもWappwolfと類似だがより汎用的なサービスで、とにかくWebサービスを連結していろいろやってくれる。ここでは「IFTTTにメールすると添付ファイルをDropboxの特定フォルダにコピーする」というタスクを作る。これで、IFTTTへmobiファイルをメールすればよくなった。
で、最後はKindlizer-backendのメール送信先を、kindle.comのアドレスからIFTTTのトリガー用アドレスに変更する。これで無事、HerokuからKindleへの迂回ルートが開拓できたことになる。バンザイ*1。
ややこしくなったけど、本来こうだったものが:
Heroku →(メール)→ Personal Document
こうなった:
Heroku →(メール)→ IFTTT →(Dropbox)→ Wappwolf →(メール)→ Personal Document
うぇー。
実際はIFTTTだけでできるという話もあるんだけど、IFTTTはパーミッションが大雑把すぎて怖いので(Dropboxへの全面アクセス権を要求する)、できれば使いたくない*2。すでにKindlizer-backendにはメールだけでなくDropboxへも直接ファイルを送れるような改造を入れてあるので、以下のような運用にできるはず:
Heroku →(Dropbox)→ Wappwolf →(メール)→ Personal Document
とはいえ、Amazonのサポートとのお付き合いは今後も続けるので(←物好きな!)、毎朝メールを直接送るルートも残しておかないといけないので、もうちょっと手を入れないと。
◆ DjebelPappy [何か送信先のメールアドレスとKindleのクラウドスペースの紐付けが 飛んでいるような気がするので、My Kindl..]
◆ ただただし [その推理だと、いっさいのメールが届かなくなると思うのだけど。でもまぁ、やってみる価値はあるかもですね。]
◆ ただただし [非常に興味深いことに、DjebelPappyさんの提案の通りkindle.comのアドレスを変更したら、なんと夕刊が..]
◆ DjebelPappy [私のケースですが、 ・Nexus7のKindleアプリでアカウントを作る ->パーソナルドキュメントでアドレスが発行..]
◆ ただただし [Nexus7とXperia SXなんて、あなたはおれか! でも、Nexus7でKindleアプリを使い始めた直後はち..]
2013-01-11(金) [長年日記]
■ Kindle Personal Documentの不具合が直ったよ!
さて、先日Dropboxを介してPersonal Documentを復活させた話を書いたところ、DjebelPappyさんから「メールアドレスを変えてみては」という提案をもらった。
たしかにそれは試してないけど、なんで試してないかというと、別のルートではちゃんと届いているからなんだよな。先のDropboxを介した方法にしたって、最終的にはWappwolfから件のアドレスにメールが送られているわけで。だから、向こう側の受け手のアドレスそのものには問題ない「はず」。ただ、「はず」が通用しないのがクラウドサービスの闇とも言える。これを変えるとあちこちに登録してあるアドレスも変えて回らないといけないから面倒なんだけど、一時的に変更してみよう。
……で、やってみたら直っちゃった。ええー、マジかよ。なんでこれで直るんだよ。ふざけんなてめー。
念のため2日ほど様子をみてみたけど、ちゃんと動いてるっぽい(Wappwolfからのと合わせて毎回2通の新聞が届く)。じゃあ、これにて一件落着かぁ? まだ安心したわけではないので、Kindlizer-backendの方には送信先としてメールアドレスとDropboxパスの両方を指定できるようにしてバックアップ体制とした。ビクビクしつつ本運用に戻そう*1。DjebelPappyさんには足を向けて眠れませんね。
蛇足
(もうメールを何往復させたかもわからないけど毎回違う担当だったので特に愛着もない)Amazonサポートの人に「解決したよ、あんたら何の役にも立たなかったけど」って知らせてあげないとなーと思い、最新のメールに返信したところ、即座にこんな返答が:
誠に申し訳ございませんが、お客様の返信されたEメールアドレスは配信専用のアドレスとなっており、お問い合わせ等のメッセージを受け付けることができません。
今まで普通に返信でメールしてたのに、最後の最後でこの仕打か。もういいよ、勝手にしろよ。サポートからのメールフッタに書いてある念仏が虚しいのなんのって:
Amazon.co.jp は、お客様からのご意見により、地球上で最もお客様を大切にする会社を目指しています。
できればもうちょっと大切にしてほしいものです……。
*1 そしてIFTTTのDropboxアクセス権は削除。パーミッションが広すぎて怖いので。Wappwolfは安全なのでそのまま使えるようにしておく。
◆ DjebelPappy [とりあえず直ったようで何よりです。 まぁ、原因は配信先の端末が分かんなくなっちゃったか、SMTPの経路のどっかで 詰..]
2013-01-12(土) [長年日記]
■ リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)(スコット・ウエスターフェルド)
1年以上前の本ですが(現在、電子積読82冊)。終盤、いいところで物語がバツっと切れて「えっ」となった。三部作の1冊目だそうだ。知らずに買ったおれも悪いが、せめてサブタイトルに「××シリーズ[1]」とか「○○三部作」とか入れといてくれ……。自炊するようになってから裏表紙のあらすじとか読まなくなっちゃったもんなー。ただ、ちょうど先月に最終巻まで翻訳が揃ったようなので、残りもとっとと買うべきだ。
さて気を取り直して。
いやー、いいジュブナイルを読んだ。世のお父さんお母さんはぜひこれをお子さんに読ませてですね、ゆくゆくは立派なSF者にしたててもらいたい(笑)。
最初は「ふーん、スチームパンクか、さすがにそろそろ飽きたな」とか思って読み始めたんだけど、実際は蒸気機関よりは少し時代が下って第一次対戦勃発のころ。イギリスはダーウィンが遺伝子操作技術を開発して一大バイオテクノロジー国家になっており、対するドイツは内燃機関を発達させて多足歩行機で軍を構成している*1。もちろんどちらも「ありえないほど」に進歩しすぎているのでここがファンタジーなわけだけど、それでもクジラの遺伝子から作られた生きた巨大飛行船 vs 地上を八本の脚で移動する弩級戦艦なんてものを見せられたらなんでも許しちゃう気になろうというものだ。とくに飛行船の方はさまざまな遺伝子改変動物たちが独自の生態系を形成していたりして、なかなか面白い&キモくて良い。
これに、育ちも身分も違う主人公の少年少女によるボーイミーツガールがあって、それが実にじれったい進展ぶりで……とジュブナイルの王道もしっかり押さえている。ふたりの違いを際立たせる言葉づかいを選ぶ翻訳もいい感じだ。「イラスト」と呼ぶのもはばかられる挿絵もタッチがちょっとレトロな感じで、雰囲気をもりあげる。これは3冊まとめて買って一気に読むべきだったなー。
リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
早川書房
¥1,760
ベヒモス―クラーケンと潜水艦 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
早川書房
¥1,760
ゴリアテ ―ロリスと電磁兵器― (新ハヤカワ・SF・シリーズ)
早川書房
¥1,870
*1 ここで当然「ドイツの科学力は世界一ィィィ」を思い浮かべる。ちなみに副題にある「蒸気機関」はこの世界ではすでに時代遅れな技術なので(ケロシンを使う内燃機関が使われているようだ)、ちょっとそれはないんじゃないのという感じである。
2013-01-13(日) [長年日記]
■ 東京Ruby会議10 (1日目) #tkrk10
Aaron Swartz自殺のニュースが飛び込んできたりして騒々しい朝だったが(これについてはいずれ何か書くかも知れない。天才はどうしてこう夭折してしまうのだろう)、今日は東京Ruby会議10なのだ。開催場所をみればわかるように、うちから見ると「東京Ruby会議」というよりは「東京横断Ruby会議」と呼びたくなるような遠距離で、7時には家を出ないといけない。「東京」の名前にだまされた! ……いやまぁ、どうせ猫に起こされるからいいんだけどさ。
今回は応募のあった発表者のうちRejectされたのが錚々たる面々だったこともあって(錚々としてはいないけどおれも含む)、実行委員会の意図に「世代交代」があるのではないかと噂されていた。実際、知らない人が次々と登壇して新鮮だったな。テーマが「話そう、集まろう、いつものRuby、日常のRuby」ということで、これに沿ったものがちゃんとチョイスされていたと思う。個人的には(仕事の話よりも)自分や自分の周りの人たちを幸せにする工夫をとりあげたセッションが楽しかった。
いつも言っていることだが、我々プログラマはそういうことができる特殊技能を持っているのだから、9to5の間だけそれを発揮するのはもったいない。そんな意味で、初日の中ではThe Everything Machineや(@r7kamura)、Herokuでつくる50人のためのRailsアプリ(@yotii23)がとても良かった。もっとみんな、こういう発表すればいいのになー。
……とか言いつつ、午後はずっと電源休憩室に座って(発表を右耳で聴きつつ)コード書いていたんだけど。いいのだ、良いカンファレンスはコードを書きたくなるものなのだから。
ところで、写真に写っている4つの缶バッジ、他の人と交換して4種類全部集めるというゲーム企画があったのだけど、なかなか揃わないのでこんなTweetをしたら、微妙に流行ってしまったのだった:
これ、オンラインゲーム(現在は主にソシャゲ)でアイテムのトレードをもちかける符丁だから。ちなみに見ればわかるようにまだ揃っていない。「黒」って書かれたバッジがSレア並の希少価値で、持ってる人が少ないのなんのって。2日目には揃うだろうか?
2013-01-14(月) [長年日記]
■ 東京Ruby会議10 (2日目) #tkrk10
思えば、昨日のランチのときにKindleを見せながら「バッテリももつし、この中に80冊入ってるから、無人島に放り出されてもしばらくは平気」みたいな話をしていたのがフラグだったのかも知れん。天気予報では雨とのことだったので、また片道2時間かけてえっちらおっちら千葉に出かけたら、午前中のうちにこのありさまですよ:
こんなに積もったのは7年ぶりらしい。午後のセッションが始まる直前、関係者が協議して14時に中止することが決まった。残念だけど、東京の交通機関は脆弱だからしょうがないね。受付では余剰ノベルティを配っていたので、けっきょく最後まで揃わなかったSレア(黒)や勝利報酬の缶バッジをもらった。いわゆる「運営からの補鎮」である(違)。
遠方まで帰ることもあって14時を待たずに撤退したんだけど、最後まで残っていた人たちは京葉線で足止めを食らったりしていたようで、おれは間一髪で千葉を脱出できたようだ。日頃から雨ばかり降らせていると、こういうリターンがあるらしい。
さて2日目、朝っぱらからMatzが電波で語りかけてくるという貴重な体験をしたあとの、SEILへmrubyを組み込む話(@rev4t)とFluentdの話(@tagomoris)が良かった。賢いルータは楽しそう。あとやっぱFluentdはちょっと触ってみないとなぁ。
全体として振り返ると、妙に勉強会やコミュニティ運営の話が目立っていて、ちょっと多すぎるんじゃないのと思った。もちろん話者にとってはそれが唯一の手持ちのネタなのでなんの罪もないが、採択するときにもうちょっと絞ってくれても良かったんじゃないか。というか(これはThe RubyKaigiが定着させてしまった悪しき風習だと思うのだけど)コードの出てこないプレゼンも多かった。まがりなりにもプログラマばかりが集まるカンファレンスで、ここまでコードが出てこないプレゼンなのはいささか寂しいと言わざるを得ない。工夫したポイントはコードで語って欲しいよ。
そういう意味では、技術系の話にしても「定番のフレームワークとPaaSを使ってWebサービス立ち上げました」なんて話ばかりじゃなくて、聴衆おいてけぼりのゴリゴリに高度な話とかも混じってていいと思うんだよ(その観点でPHPの話は良かったね)。今日(中止になって)聴けなかった話のいくつかはそういう向きのもあったような感じなので、いずれ聞けるといいなぁ。
2013-01-15(火) [長年日記]
■ 雪なのでお休み
今日はというか昨日は雪がだいぶ積もったので、通勤路が相当ひどいことになっているため、会社には行かず、自宅で仕事をすることにした。家でできることもいっぱいある仕事でよかった。職場の方がマシン性能は上だけど、回線速度は家の方が高いし。
で、その旨伝えるために始業時刻に電話をしたら誰も出ないの(笑)。無理して出社しないという判断をする人が多くてすばらしい……と思ったらたんに遅れていただだけらしく、昼ごろにもう一回電話したら連絡がついた。まぁそうだね、日本人だしね……。
午後になって(いつものように)グスタフが散歩に連れて行けとせがむので(ベランダから見える景色と玄関から出た先にある景色は別のものだと思っているのか?)、リードをつけて連れ出してみたら、雪の中に前足をつっこんでプルプルしたあと、途方に暮れたような顔をしてからすごすごと引き返してきた。やっとわかったか。
しかしこのアイスバーン、しばらく残りそうだなぁ。雨でも降れば溶けるんだけど。
2013-01-17(木) [長年日記]
■ Gene Mapper -core- (ジーン・マッパー コア)(Fujii, Taiyo)
9月に買ったというのにようやく読んだよ……(現在電子積読82冊←なぜ減らない)。その間にもKindle Storeが日本でサービスを開始、一躍ベストセラーになってしまったのだった。ベストセラーは読まない主義なのに(笑)。
著者の藤井さんとはTwitter(@t_trace)で交流したりblogを読んだりしていてべらぼうに頭のいい人だなぁと思うのだけど、その頭の良さをひけらかさない、わかりやすくて良質のエンターテインメントSFだった。
なんといっても主人公が(比較的)凡人なのがいい。脇役は拡張現実を使いこなすサラリーマンのプロとか、伝説のスーパーハッカーみたいなすごい人物ばかりなのに、主人公は普通のプロフェッショナル。でも世界を変えていくのは彼の直感と勇気というストーリーに共感する。とくに後半は気に入った。
21世紀になって「ITの次はバイオだ」と言われて久しいけど、その単純な延長線上にあるわけではない舞台設定、でも現代の読者にわかりやすいようにできるだけITのアナロジーでその世界を説明していたりして、このあたりも計算ずくなんだろうとは思うけど、上手いよなぁ。
下のリンクはKindle Storeのものだけど、以前書いたように公式サイトから好きなフォーマットで直接購入できるDRMのかかっていない本物の電子書籍を入手しておくことを強くお勧めする*1。
Gene Mapper -core- (ジーン・マッパー コア)
Taiyo Lab
¥500
*1 追記: Kindle Storeで販売しているものもDRMフリーだそうです。またKindle Storeで購入した場合も著者に連絡すれば別フォーマットのファイルをもらえるそうだ。至れり尽くせり。
2013-01-18(金) [長年日記]
■ 「はてなスペース」を使ってみて、自分が「欲しいものを作れる人」で良かったと思った話
はてなスペースがオープンβに移行したので少し使ってみた。思えば昨年、Wassrの閉鎖にともなって「非実名でクローズドなコミュニケーションツールがない」と気づき、みずからMassrを作ったわけだけど、はてなも同じことに気づいたようですね……はっ、なんかちょうど10年前にも同じ流れがあったような記憶が!(→参考: はてなダイアリー10周年)
冗談はさておき、中央に掲示板、右カラムに関連する話題のニュースフィードというレイアウトはなかなかいいアイデアだと思った。「同じ話題で盛り上がる人たちの集まり」をうまく可視化している。UIも日常的にWebアプリを作ってる会社だけあってこなれているというか、奇をてらわず直感的に使いやすいし、日常で多用するツールとして必要なショートカットもうまく設けられている。TAB一発で投稿欄にフォーカスが移るところとかね。
で、ひととおり使ってみて(まだ発展途上だと承知した上で)やっぱ常用するならMassrだよなぁと思う。これはもう当たり前の話で、万人向けのサービスとしてバランスをとらなくてはいけないはてなスペースと、自分と少数の知人たちに向けてチューンしているMassrでは、後者のほうが自分にとって圧倒的に使いやすいのは当然だ。あまたのブログサービスがどんだけ進歩しても、おれにはtDiaryが一番手に馴染むのと同じこと。
こんなとき、「自分が作れる人間で良かったなぁ」とつくづく思うのだった。もちろんおれの場合、作れるのはソフトウェアに限るわけだけど(最近はニットも「作れる」ようになったが)、それでもITがのさばるこの時代では、日常の困ったことのかなりの部分を自力で解決できるのだ。こんなに幸せなことはない*1。
もちろん大多数の人はソフトウェアを作れない人たちなのだから、作れる人が「1億人が使うサービス」を目指すのは気高く大切な仕事だ。でもみんながそればっかり使う世の中は、やっぱりなんだか面白くないと思う。作れる人たちが、もっと多様性に富んだいろいろなもので世の中をあふれさせてくれたら楽しいのにな。
かようなことを考えながら、プログラミングを覚えたての頃に感じた「万能感」を思い出すことが最近妙に増えた。こないだも書いたよね。歳のせいですかね。それとも表面的な「ユーザ数」を競うばかりのWebサービス業界に嫌気が差してきたのかもしれないね。
*1 絵や音楽が作れる人は自分の内なる美意識を満足させることができるだろうし、機械いじりができる人は車やバイクを自分好みに改造できるだろう。人それぞれが持つ技能に違いはあれど同じような感覚は多くの人が抱くと思う。
2013-01-20(日) [長年日記]
■ Nexus7袋のあまり糸でKindle袋も編んだ
先月編んだNexus7袋、毛糸がまだまだたっぷり余っているので、サイズ的にもだいたい同じKindle4の袋も編むことにした。E-Inkは雑に扱っても大丈夫だと思っていたが、なんと割れることもあることを知ってしまったので、バッグに裸で放り込むときにはこれに入れようと思う。あいかわらずのんびり編んでいるのでこんな小物にも一ヶ月とか平気でかかってしまった。セーターなんてムリムリ。
完成品をかみさんに見せたら「湯たんぽの袋?」と言われてしまったが(こんな小さな湯たんぽがあるかい)、狙いとしては「失敗作」と名高いiPodソックスと同じ方向性である。しょっちゅう取り出して操作する必要のあるiPodであんなケースを作ったらダメに決まっているが、利用シーンのON/OFFが明確なKindleならこのデザインはアリだ。iPodソックスは全体をゴム編みにしていたが、Kindle袋は出し入れをスムーズにするためにメリヤス編み、入り口だけ一目ゴム編みにして少し絞った。全体は袋編み。袋編み+ゴム編みなんて頭おかしくなるかと思った(という程度にはスキル低い)。
ところでまだ毛糸が余ってるんだけど、どうしたもんかな。
2013-01-24(木) [長年日記]
■ Rapid7 Nexposeが日本語ロケールでインストールできなかった
脆弱性スキャナを評価していて、MetasploitでおなじみRapid7のNexposeを使ってみようとしたんだけど、どうしてもWindows7に入らない。インストールログを見てみるとDBの初期化あたりでコケてるようなんだけど、リソースがロードできない的な内容なのでDBは関係なさそうだ。
サポートは「最低メモリ8GB必要だ」とかトンチンカンなことしか言わないし(32GB積んでるっつの)、いろいろ試してみたところ、システムロケールを英語にしたら通った。なんだよ、いまどき「LANG=C問題」か!
NexposeはJavaで書かれているようなので、システムロケールを変えなくてもオプションや環境変数で指定できそうだけど(このへん?→Javaのオプションを環境変数で設定する)、なにぶん最近のJava環境にはうといので何が正解かよくわからん。つーかシステムロケールを英語にしただけでは表面上はなにも困らないんだなぁ、最近のWindowsは。
もうちょっと詰めたらRapid7に報告したい……けど英語の壁ががが。
2013-01-25(金) [長年日記]
■ アクセシビリティキャンプ東京#4を開催した
アクセシビリティキャンプ東京も順調に回を重ねて第4回。Togetterまとめ。今回は少しやり方を変えて、テーマはひとつ、それをグループに分かれて議論することに。テーマは「アクセシビリティのブランディング」と題して、冒頭に木達さんから現状整理をしてもらう(資料:アクセシビリティキャンプ東京#4開催にあたり)。UXやモバイル・ファーストは盛り上がるのになぜアクセシビリティは盛り上がらないのか(むしろ下火?)、ビジネス的には「コスト」、制作の現場でも「オプション」扱いなのはなぜか、どうすれば「アクセシビリティ・ファースト」にできるのかという問題提起がなされた。
その後、グループに分かれてディスカッション*1。おれは(なぜかWeb制作に携わる人ばかりが集まった)グループ4に混じった。アクセシビリティがハンディキャップを持った人にしか関係ないものと思われている、現場に意識があっても経営層からはROIが見えないという指摘から、「外圧」として「数の論理」を振りかざせるような施策はできないかという話に。セキュリティ対策のように「やらないと不利益になる」と認識してもらうように、アクセシビリティ上の問題を持っているサイトを報告できるような仕組みはどうか(IPAの脆弱性報告みたいに)、ブラウザ拡張で簡単に指摘ができるといい、などのアイデアが。
その後、グループごとにまとめを報告。メリットを訴えるのも必要だがやはり法的拘束力があるべきだ(飴と鞭)、「リブランディング」以前に「ブランディング」ができてないじゃないかという指摘など、多面的な考察が述べられた。どれもすぐに着手できるものではないけど、目安箱的なサイトは欲しいなぁ。個人的に老眼が進行している中で、アクセシビリティ的に問題のあるサイトにぶち当たりことが増えているけど、苦情をあげるにしてもそういう窓口に辿りつけないんだよね、ほとんどのサイトが。報告してもシカトされる可能性大だしさ。
同会場で引き続き行われた懇親会では、韓国のスクリーンリーダWebTalksベンダのShinさんが韓国のアクセシビリティ状況をプレゼンしてくれた。日本とかなりよく似た状況にあるが、大きな違いがアクセシビリティの欠如が刑事罰をともなう違法行為になっている点。韓国はこういうところがほんと徹底してるなぁ。すでに民事訴訟も起きているとのことで、「外圧」が機能している感。もっともShinさんいわく「日本以上にガラパゴス」な韓国のこと、件の法律が施行される今年にどんなことが起きるのか、いろんな意味で目が離せない。
今回のようなスタイルはけっこういい感じだったな。テーマとまとめ役さえちゃんと選べれば。なお次回アクセシビリティキャンプ東京#5はは4月中旬ごろの予定で調整中。
*1 前回は開催通知が遅れて参加者が少なかったけど、今回はちゃんとやったので4つもグループが作れた。仕込み重要。
2013-01-27(日) [長年日記]
■ Windows8を(ようやく)インストールした
今月中に買うと安くなるということで先週中に買っておいたWindows8のアップグレード版を、ようやくインストールした。自宅用、メインのデスクトップマシンのWindows7をアップデートする形。インストール自体はスムーズに済んで、マウスの設定とVirtualBoxのアダプタ設定を忘れてくれた以外はきちんと環境も引き継がれたようだ。この日記もWindows8上のIE10で書いている。
最初のログイン時に聞かれたパスワードがローカルのものではなくてlive.comのそれで、(KeePassで自動生成した)ものすごく複雑で長いパスワードなものだから「これを毎回入力するのかよ……」と卒倒しそうになったけど、ちゃんと数字4桁のPINや画像+ジェスチャ認証を組み合わせることができるようになっていて感心。
メトロ……もとい、モダンUIはなんだかんだで触れる機会がなかったので、これが1stインプレッションになる。まずはなにより、これだけの大胆なUI変更を断行したMicrosoftの勇気に敬意を表したい。世界一のインストールベースがあるコンシューマOSでこれをやるってのがマジすごい。感動した。
モダンUIが使いやすいかどうかという点については、まだデスクトップメタファーへの愛着が残っているうちに評価を下すべきではないだろう。新しいUIを、ほんの数時間触っただけでダメ出しをするような安直な行為は慎むべきだと思うので、これについてはおいおい。でも、できるだけ旧デスクトップ環境には逃げないで、モダンUI上で活動してみようと思う。というか客観的にみても、少ないルールを覚えるだけで済むし、タッチ操作じゃなくても普通に使いやすいと思うよ、これ。マウスの移動量はもうちっと減らしたいところだが。
もっとも、さすがにまだこなれてないというか、はっきりいってバグが多い。Windows Media Centerも今月中は無料だというからインストールしてみたら、再起動後にはスタート画面のレイアウトをきれいさっぱり忘れてくれて、おまけにIE10のブックマークへのショートカットがスタート画面に追加できなくなっちゃった。これはひどい。IE10もデスクトップ版とモダン版ではコードベースが異なるというのは本当らしく、PACファイルを使ったProxyサーバの設定がモダン版では効いてない。これもひどい。あと、マイピクチャを外付けHDDにしてあると、写真アプリが画像ファイルを見つけてきてくれないとか、標準アプリの完成度が低いのが気になる。このあたりはとっととアップデートしてくれ~。
3rd partyのアプリもいくつか入れてみたけど、フルスクリーンを上手に使うノウハウがまだないようで、お粗末なのが多い。Evernoteは内蔵PDFビューアーが省かれてるし、Adobe Readerは見開き表示がない。ちょっとありえんと思う(両者を組み合わせて使うと悪くないけど操作がだいぶ煩雑)。
あんがいよかったのがNAVITIMEで、広い画面で路線図や乗換ルートを上手に表示してる。あと、moraや日経電子版もだいぶいい感じだった。これだけ短期間でちゃんと研究していいもの投入してるベンダもある。すばらしい。ほかのベンダも追従して、モダンUI上での生活がしやすくなるといいな。
2013-01-29(火) [長年日記]
■ tDiary 3.2.1リリース
恒例、3ヶ月に1回の肉の日リリース。3.2.1になった。今回のリリースもほとんど何もできんかったよ。帰宅が深夜だったこともあってリリース作業もぜんぶ@hsbtにやってもらってしまった。プロジェクトを完全に乗っ取られる日も近い(笑)。
バグfixや性能チューニングが主な変更だけど、ツッコミ欄にemojiが使えるようになったりなど、楽しい系の変更も入ってる。emojiで使える文字はEmoji cheat sheet for Campfire and GitHubを参照、でいいのかな。
個人的には「リンク元」の表示をAjax化したlazy_refererプラグインがcontribに入ったのが大きい*1。性能問題で有効に使えなかった本日のリンク元を復活させられたのは嬉しい。refererの可視化はtDiaryのアイデンティティのひとつだしな。もっとも世の中HTTPS化が進んで、refererから取れる情報はどんどん減っているのだけどね……。
*1 いずれcoreに移動する予定。
2013-01-30(水) [長年日記]
■ 時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)(R・F・ヤング他)
昔の文庫本は字が小さいので(これ以上視力が悪くなる前に)片づけちまおう……というわけで古いのを発掘しております。2009年発行(←そんなに古くなかった)、日本オリジナルの時間SFアンソロジー。
解説の冒頭で「『夏への扉』や『たんぽぽ娘』が人気なのは日本だけなので日本人向けにロマンチックな時間SFばかり集めた」と身も蓋もない動機が書かれていて吹いたけど、いやでもそうだよなー、どんなややこしいタイムパラドックスがくるのかと身構えてする読書は疲れるもんね。というわけで、タイムトラベルを可能にする技術的屁理屈をこねることもなく、タイムパラドックスの迷路に誘い込むこともない(あっても単純な)、ほんわかした短編がメインの、たいへん心に優しい作品集でした。
この手の作品集には欠かせないヤングやフィニイの作品はもちろん言うまでもない良作なんだけど(ヤングの作品はものすごいオールドファッションな作りなのに、時間ものならではのすばらしい結末)、他の作品もいい味わいのものばかり。やはり時間モノは結末に「おおっ」てなるのがいい。冒頭の『チャリティのことづて』もそんな感じで、時を隔てたボーイミーツガールが、実にいいのよ。
かといって画一的なわけではなく、どの作品もバリエーションに富んでいて、飽きない、良質なアンソロジー。
◆ 謎の小人 [こんにちは、謎の小人です。 あなたの、日記は、格別ですね。 質問なのですが、鶏皮ぎょうざは、いくらなのですか? 教え..]