2011-01-12(水) [長年日記]
■ Wikisourceで(ちょっとした)編集合戦を体験した
こないだ紹介した『プログラマが知るべき97のこと』、いつまでたってもAmazonに入荷しないのでグチっていたら、中尾さんに指摘された:
@tdtds かの本のXIIページによると、エッセイは CC-BY 3.0 US とのことなので、テキストデータ化して毎日一エッセイ表示するアプリをつくって流通させてしまいましょう。
— NS(id) (@32nm) January 9, 2011
なるほど! 読み飛ばしていたが、たしかにCCだって書いてある。原書がCCであるにも関わらず、翻訳されると(意図的かどうかわからないが)なぜかライセンスが抜け落ちてしまう書籍が多い中、素晴らしいことであります。
で、さっそく(中尾さんが)Wikisourceに目次ページを用意したので、試しに5つほどページを起こしてみた。なにしろこっちは自炊済み、OCRがテキスト化してくれたPDFファイルがあるので、事実上コピペするだけである。
それが日曜夜のこと。
翌朝、ページをリロードしてみると、早くも削除対象になっていた(笑)。仕事はえぇ。
いや、CCなんだから不当な削除なんだけど、明らかに書籍をもとにした文章を何の断りもなくコピーしたのだから、むしろしっかり自警がされているということで、Wikisource的には好ましいのではないかと思う。ザルよりは少しくらい過剰な方が良い場合もある。
で、ちゃんとライセンス的に問題ない旨をノートに書いて復活。そんでもって翌日にみてみたら、また削除されてるの(笑)。
その後の展開は削除依頼のページを見ればわかるように、ちゃんと誤解が解けた上に、適切な書き方まで指導してもらい、おまけに目次には最初の5つばかりか、なぜか残りの100あまりの項目まで並んでいる(←いまここ)。
今回のは「編集合戦」と呼ぶほどのものではないけれど、ライセンスがはっきりしたものしか載らない/載せないWikisourceだからいいものの、Wikipediaでこういうことが起きたらたしかに収拾がつかなくなるのもわかるわなぁ。
ちなみにオライリーの営業妨害をするつもりはないので*1、おれは(少なくとも十分に時間がたつまで)これ以上の追加はしないけど、ライセンス上の問題はまったくないので、残りの100項目あまりの追加はご自由にどうぞ。
*1 だから早くAmazonで買えるようにして下さい。
2011-01-10(月) [長年日記]
■ 本当は怖い『キック・アス』
映画『キック・アス』を観てきた@TOHOシネマズ川崎。観測範囲では観てきた人みんな大絶賛で、最初は4館から始まった上映館も増えてきているみたいだし、これは観ておかなくちゃね、ということで。
ヒーローもののエンターテイメントとしてはまさしく素晴らしい出来で、派手なアクションは痛快この上ないし、他のヒーローもののオマージュは盛りだくさんだわで*1、笑いどころも多くて全編飽きるところがない。キック・アスのキョドった目付きや、ヒット・ガールのワルそうな唇含め、わざとらしい演出もいいですねー。あ、あと、ケイティの友だち役の人がかわいいので、思わずFacebookのファンページに入ってしまった(けど公式かどうかわかんない)*2。
ただ、立ち止まってよく考えてみるとこの映画、えらく怖い話だよなぁ。通常こういうヒーローものは「これはフィクションですよ」というポイントが必ずあって、現実との境界線をきちんと引くものだけど、『キック・アス』は徹頭徹尾、「現実」から軸足を外そうとしない。主人公はたやすくぶちのめされて大怪我するし、本当に人が死ぬし。(以降ネタバレ注意)悪役は警察を買収している麻薬組織だし、洗脳されて育った11歳の女の子は倫理観ゼロの殺人鬼だし、最後は復讐の連鎖までできあがるのだから、まったくもって救いがない。
てぇことは、一見ヒーローものに見せかけているけど、実はぜんぜんそんなつもりはないんじゃないのかね、この作品。まぁ、これ以上は深読みのし過ぎかもしれないから書かないけど、単にスカッと爽快なエンタメじゃなくて、なんだかずっしり重いものを受け取ってしまったような、居心地の悪さがある。
2011-01-09(日) [長年日記]
■ ABC2011w (Android Bazaar and Conference 2011 Winter)に行ってきた
6月のABC2010sに続いて、Android Bazaar and Conferenceに行ってきた。前回は東大駒場キャンパスだったけど、今回は本郷、メイン会場は安田講堂である。……と言っても前夜、急な謎の吐き気に襲われて*1、10時間もぶっ通しで寝てしまったので、午前中の基調講演を聞き逃したばかりか、午後から行ってみたら予定していたセッションはすでに満席で入ることもできなかったという。何しに行ったんだオレ。
事前情報で参加申し込みが3,000人(!)というのを聞いていたので、こういう状況は予想できたことではあるが、混雑が苦手な人間にはつらいイベントになってしまったなぁ。まぁそれはそれとして、Androidが盛り上がっていることはたいへん喜ばしい。アメリカでVerizonがiPhoneを売るようになったことからしても、AppleがAndroidに相当危機感を持っていることがわかるわけで*2、やはり対抗馬がしっかりしていないと健全な市場は形成されないからねー。
で、そんなAndroid一色のセッション(同時7トラック!)を尻目に、電子出版のセッションを聴いたりしていたのだが(ホント、何しに行ったんだ。いや、村田真さんがしゃべるというので)。EPUB3.0の話題だったのだけど、縦書き、ルビ、縦中横などの実装は先行してWebkit上で行われていて(ここだけがAndroidとの接点)、現在はほぼ問題なく表示できているとのこと。逆に言えばEPUB 3.0の仕様を満たすにはほぼフルスペックのWebブラウザを作らなくてはいけないわけで、なかなかハードルの高い話だ*3。そんな最新のWebkitがAndroidに取り込まれて各端末に配備されるのはだいぶ先になるはずで、普及までにはしばらくかかりそうだなぁ。
最後は(せっかくなので)安田講堂でシャープの話を聴くなど。主に夏・秋モデルの話だったので新しいことは多くなかったのだけど、「開発用に端末貸し出しはないのか」という質問に「キャリアを通して出荷しているものだから難しい」と回答していたのが印象的だった。そうか、せっかくメーカーが開発者とうまくやっていきたいと思っていても、キャリアが足かせになってるのか。だったらさぁ、「つぎのNexus」をシャープから提供するように画策してみたらいいんじゃねーの、と思った。「Nexus SH」とか。せっかくの国産Android端末、ドメスティックな機能を盛り込むことばかりに注力してないで、世界標準の端末作るという方向はどうよ?
◆ 咳 [そういうわけで日本人の2は以下にテキストデータがあります。 http://d.hatena.ne.jp/m_seki..]
◆ ただただし [らじゃw]