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ただのにっき


2011-01-08(土) [長年日記]

「ひとりぼっちのプログラマ」に読んで欲しい、『 プログラマが知るべき97のこと

オライリーの高さんから献本いただいた。いつもありがとうございます。

この本はねぇ、「ひとりぼっちのプログラマ」にぜひ読んで欲しいなぁ。

ここでいう「ひとりぼっち」にはふたつの意味があって、ひとつは「ひとりでがんばっているプログラマ」。

Twitterやブログを読んでいると、仕事でいろんなことにチャレンジしたり、業務を改善したりしたいと思っているのに、職場の文化が壁になったり、上司の理解が得られなくて歯がゆい思いをしている若いプログラマの叫びが、それはもう、かなり頻繁に聞こえてくる。10年前ならいざしらず、今ならさっさと転職してしまうのが正しい道だろうけど、そうもいかない事情を抱えている、でも現状をなんとかしたい……そう感じているひとりぼっちのプログラマにとって、本書はいい味方になってくれると思う。というか、モチベーションを失って旧弊な企業文化に飲み込まれるまえに読むべき。

本書にエッセイを寄せている数十人のベテランプログラマたちは、おそらく今は恵まれた環境で仕事をしていると思うけれど、けっこうな人数が若い頃の失敗や挫折についてかなり赤裸々に語っている。そうそう、あちこちに「達人プログラマ」への言及も目立つのも特徴的。彼らとて、Daveら「達人」に憧れて、失敗を繰り返しながら今の地位にのぼりつめ、達人の一人になったんだよね。

我々日本人からすると青々とした芝生に見えていた英語圏のプログラマたちだって、さまざまな壁にひとりぼっちで立ち向かわなければいけなかった時はあるし、それでも「達人プログラマ」を目標に歯を食いしばって努力を続けたから、英語圏を代表する数十人のプログラマの一人としてエッセイを書くまでになれたのだ。

エッセイの内容は「えっ」と思うほど初歩的なことも多い。でも彼らがそこに至るまでには、きっとひとりでがんばっている時期があって、それが血となり肉となっているから、どんなに初歩的な内容であってもここに載る価値を持ったのだ。だから、いま、ひとりぼっちでがんばっているプログラマは、同じ境遇の「仲間」と「目標」を得る意味で本書を手に取るといいんじゃないかなぁと思う。

もうひとつは「孤立したプログラマ」という意味での「ひとりぼっち」。これは自覚しにくいけど、日頃から「自分以外のプログラマはバカばっか」と考えていたり、テスターや上司(ときには顧客まで)を敵だと感じることが多いなら、本書を読むべきだ。

上で書いたような「ひとりでがんばる」ことをやりすぎた結果、職場で孤立してしまう弊害について書かれたエッセイもまた、本書で大きな割合を占めている。というか、純粋に技術的なエッセイを除けばほとんどが「一人で仕事してると思うなよ」という戒めがテーマになっていると言っても過言ではない。それは、プロダクトに関わる他の人々のことであったり、(自分を含む)未来のメンテナのことであったりさまざまだけれど、自分勝手で独りよがりなプログラマはプロではないという意見が、手をかえ品をかえて登場している。

もし自分が職場で孤立していると感じているプログラマがいたら、これもまた一度手にとってなぜいま自分は孤立しているのかを振り返るきっかけにしてみてはどうかと思う。とはいえ、こっちの「ひとりぼっち」は、たいてい自覚症状がないからなぁ。

プログラマが知るべき97のこと
和田 卓人
オライリージャパン
¥2,090

蛇足: ほんとはだいぶ前に読み終えていたんだけど、Amazonの在庫がぜんぜん復活しないのでちょっと待っていたのだ。読みたいと思ってもらえてもその場で買えないんじゃ紹介する意味がないし。まぁ年末年始を跨いでるからしょうがないね……と思っていたが、年があけて一週間待ってもまだ入荷しないし、あんまり時間があくと内容を忘れてしまうので(笑)、しょうがない。リアル店舗では買えるみたいなので。

ホント、こういうのを見ると紙の本なんてとっととなくして、デフォルトで電子書籍になって欲しいと思うよ。まぁ、オライリージャパンのPDFは制限キツくて評判悪いみたいだけど。

Tags: book

2011-01-07(金) [長年日記]

Kindle3向けdot by dotな自炊PDFを(真面目に)作成する

ePUB 3.0が、縦書きやルビをサポートしてそろそろ仕様確定するそうで、それはそれでめでたいんだけど、各種デバイスがいつサポートするのかもわからんし、出版サイドにノウハウがつくのにも時間がいるだろうし、普及にはしばらくかかるだろう。

いっぽう、大長編「まおゆう」を自作したPDFで読んだり、最近高橋さんが作っているSONY Reader向けの青空文庫PDFをKindleに入れてみた経験からすると、電子書籍は必ずしもリフローできるフォーマットである必要はないんじゃないかとも思い始めている。世に出回っている電子書籍端末は、3~4インチ(スマートフォン)、5~6インチ(KindleやSONY Reader)、10インチ前後(いわゆるタブレット)の3種類。だったらこれらに合わせて最低3種類のPDFを選択可能にしてくれればそれで十分じゃないのか? 字の大きさのバリエーションを2種類作ってもせいぜい6種類。これで大多数の人が使えるなら、ePUBじゃなくてもいいわな。

いずれにせよ、現時点でePUBが読めないKindleがePUB 3.0をサポートするかというと怪しいと思うので、自分にとって自炊本がソースである期間はまだしばらく続きそうだ。

というわけでベストプラクティス宣言後も、シェルスクリプトのRakefile化と並行してチマチマと最適化をしていたりして。なにせ、字がまだ汚いのだ。ちなみに最新のRakefileはGitHubで公開してある

最近の発見(?)は、pdftoppmが吐き出す画像ファイルのデフォルトの解像度が150dpiだったこと。えーと、たしかおれ、600dpiでスキャンしてたよね? 150dpiつったら、Kindleそのものの解像度より小さいわけで、そんな画像を拡大表示してたら汚くてあたりまえだ……。というわけで「-r 300」をつけて大きめの画像を抽出するようにした(「-r 600」ならなお良いが、300でも十分な解像度である)。

それから、これをトリミングしたあとで、Kindleの画面にぴったりフィットするようにあらかじめリサイズする。けっきょくこれが一番確実なのがわかった。そのために、真っ黒な画像を使ったPDFを作り、Kindle上でどれくらいの大きさに表示されるのかチェック(ググればわかるように他の人も似たようなことをしているけど、みんな微妙に数字が違うので自分だけを信じることにした[笑])。

まず文庫や新書向けの縦持ち(ポートレイト)の場合、560x735がPDFの表示エリア。紙の書籍を画像化した場合は縦がつっかえるので、高さ735に最適化すれば良い。ImageMagicには「-resize x735」を指定する。できたPDFのスクリーンショットがこんな感じ。ちょっとノイズが乗っているけど、実際にKindle上で読んでいれば気づかない程度:

[スクリーンショット]ポートレイト時の文字

続いて大型の技術書を横持ち(ランドスケープ)で読む場合、722x535が表示エリア。こんどは横だけフィットすれば良いので、ImageMagicのオプション指定は「-resize 722」になる。これで最適化するとこんな感じ:

[スクリーンショット]ランドスケープ時の文字

これならmobiな書籍と比べても遜色の無い美しさだよ。満足だ。長かったけどこれで最適化の旅はたぶんおしまい。あとはファイルサイズ削減のためにもうちょっと圧縮率を上げられないかトライするかも。

Tags: ebook kindle
本日のツッコミ(全6件) [ツッコミを入れる]

sasasin [pdftoppmはノーマークでした。150dpiがデフォとは。画期的だし嬉しいのですが、画質面はこれで開拓しつくしち..]

ただただし [わからなくもないですw > 寂しい]

imudak [最近Kindleを手に入れて、自炊本を読むのに重宝しています。ありがとうございます。 自分の自炊ファイルではちょっと..]

ただただし [ありがとうございます、拝見しました。私はスキャンの時点で白紙を飛ばしているので、そういうメにはあってないんですねw ..]

imudak [白紙飛ばすと印刷のページ番号とずれちゃってどうにも気持ち悪かったのでそのままにしてたんですが、思わぬ落とし穴でした…..]

ただただし [まぁこの世界、古くからmkmfのようなプログラムが存在するわけで(今ならAutoconf?)、アプローチとしては間違..]


2011-01-05(水) [長年日記]

ようやく「まおゆう」を読み終えた

先月21日にPDF化した「まおゆう」こと「魔王『この我のものとなれ、勇者よ!』勇者『断る!』」、やっと読み終えた。いやー、長かった。面白かったけど。先日出た書籍もけっこう売れているようで、よかったですな。

骨格は「ドラえもん」のバリエーションというか、SF的に言えば「未来の外挿」タイプ。おなじみの「剣と魔法」世界に、(現実の)未来のテクノロジーを無邪気に投入したらどうなるかというシミュレーションが前半。「経済」というキーワードで語られることが多いけど、経済も含めたテクノロジーの話だと思うよ。

うってかわって後半は骨太の「物語」で、新旧テクノロジー、魔法と科学が入り乱れる戦争描写がメイン。前半に仕込んだタネがいっせいに芽吹いて葉を広げ、けっこう感動的なラストへ。この大長編で読者を飽きさせないストーリーテリングは素晴らしい。こんなに思い切って「ファンタジー」を否定してしまって大丈夫かいなと思いながら読んでいたけど、むしろそこがウケているのかも。

ただ後半になると誤字が急増していかにも「書き飛ばした」感が強まるし、登場人物が入り乱れて前半にくらべて格段にわかりにくい。このあたりはおそらく書籍版では直っていると思うので、気になるなら本を買った方がいいだろう。ちなみに手元ではできるだけ誤字を修正、縦書きでも読みやすいように英数字を置き換えた青空文庫フォーマットのテキストがあるんだけど、これって配ったらまずいんだろうなぁ。ライセンスが明示されてない著作物って面倒デスネ。

あと、登場人物には固有名詞がなくて役柄(ロール)名しか与えられていないため、会話中でもロールで相手を特定するんだよね。しかもなぜか代名詞がほとんど使われないので、めっちゃ不自然。これが作者の作文技術のなさゆえなのか、特定フォーマットを模すためにわざとやっているのかわからないけど、読んでて白けるのが難点。人間はこんなふうに会話しません。


そういえば、少し前に書籍のフォーマットに関していろいろ文句を言っている人がいるのを知ったのだけど(たとえばTogetterだとこのあたり)、書籍を神格化しちゃっててなんだかなーと感じた。2chが原典で、最初の編集物がまとめサイトだとすれば、書籍なんて三次メディアに過ぎないわけで、それだけ後発ならいろいろ手を入れて工夫するのはむしろ当たり前。原典にあたりたい人はネットを探せばいいわけで(いつでもタダで読めてしかもコピーがとれる!)、いまどき「最初の書籍化」なんてものに原典的な価値を求めてどうすんのかと。

だいたい、ト書きすらない、セリフとオノマトペのみで構成されているこの作品は、一般的には「戯曲」の一種なのだろうが、むしろ(マンガの)「ネーム」と呼ぶほうがふさわしい(本来のネームはそういうものじゃないけど)。なんせ「ばさりっ」なんてオノマトペが説明抜きで登場するんだから(状況からしてたぶんこれは「天幕をめくって人が入ってきた様子」)、あとはコマ割りをして絵を入れればマンガになる。

だとすれば最初の書籍を小説の体裁で出すなんて保守的発想もいいところで、むしろ最初から少年ジャンプあたりで連載した方がよかったんじゃないの。この国ならむしろコミックスの方が後世に残るでしょ。書店で入手できなくなってもマン喫で一気読みできるし、絶版になったらJコミに置けばいいわけでさ。そういう観点で今回の書籍化を「残念」というならわからんでもない。もっと冒険したっていいだろうに(いや無茶を承知で書いてるけどさ)。

まおゆう魔王勇者 (1) 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」
橙乃 ままれ
KADOKAWA/エンターブレイン
¥2,330

Tags: ebook book
本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

eikus [まとめサイトの殆どは書いた人に無断でやったモノで、よくても事後承諾に過ぎないわけです。それを「最初の著作物」であると..]

ただただし [まとめサイトに関する記述は「著作物」ではなく「編集物」。脊髄反射しないでちゃんと読もうね。 あと言うまでもないけど、..]


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