2011-01-16(日) [長年日記]
■ はやぶさ、そうまでして君は〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話(川口 淳一郎)
「はやぶさ」本、通算4冊目。いよいよ真打ち登場、川口プロマネ自身による書籍である。山根一眞、的川泰宣と筆の立つ人たちの本を読んできて、さすがにもう新しいことはないだろうと思っていたけれど、やはり立場によって突っ込んで書くポイントが違うんだよな、面白い。
例によって(笑)打ち上げまでの話で4割くらい。ホント、日本に限らずプロジェクトが認められて打上げに到るまでで苦労の半分くらいは済んでしまうのが宇宙探査の実態なわけで、ここのところがもうちょっとなんとかならんものかと思う。もっとも「はやぶさ」は打ち上げたあとの苦労も成果も前人未到だったわけだが。
川口さんはメディアに登場するときはいつも冷静沈着で、クールで頼れるプロジェクトマネージャという雰囲気だったのだけど、本書では終盤になるにしたがって今まで聞いたこともないほどエモーショナルな文章が増えてくる。ああ、やっぱり彼も人の子だったのだ、こういう心情は、すべてが終わったいまだから書けるんだろうなぁと思うと、またもやジワっとくるものがあります。
それにしても、イトカワ上空で奇跡の復活をとげたとき、リチウムイオン電池が生き残っていた理由がいまだにわかっていないという話は既知だったっけ? おれは知らなかったんだけど、まさかこんなオカルトじみた話が出てくるとは、現場が神頼みをしたくなるのもわからんでもない。ただ、その神頼みにしたって、本当に人事を尽くしたあとの話なのがよーくわかる。そういう点がすごくしっかり描かれているのが、本書最大の魅力だろう。やはり現場で指揮をとっていた人の話は重みが違う。
もう一冊出ている新書の方も評判いいので読んでみたい……けどまた在庫切れだよ、いいかげん出版社は本気で電子書籍に(ry
はやぶさ、そうまでして君は〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話
宝島社
¥1,320
9784121020895
2011-01-15(土) [長年日記]
■ 無印良品の「猫草栽培セット」を使ってみた
昨年末、無印良品の店で「猫草栽培セット」というのを見かけたので買ってみた。サイトの説明によるとずいぶん以前からある商品みたいだなぁ。ぜんぜん知らなかった。
毛玉取りには専用のゼリーを舐めさせているから猫草はいらないと思うんだけど、グスタフは散歩に出ると道端の草をかならずかじるので、草を食べたい気分のときもあるんだろう、ということで試しに買ってみたのだった。
年明け、3日あたりに開けたので、食べごろになるまで10~12日くらい。寒いせいもあると思うけど、けっこうかかる。
今日になっていい感じに伸びていたので二匹に見せてみたら、そろって駆け寄ってきて、興味津々な感じで匂いをかいでる。で、グスタフはそれっきり口もつけずに去っていき(お前のために買ったんだぞ!)、ドーラはばりばり食べ始めた。この差はなんなんだ。
もっとも、食いちぎろうとすると紙の容器まで持ち上がってしまってうまく口に入らないらしく、ちょっと食べづらそうだ。容器を固定してやらないといけないのかもなぁ。ツメが甘いぞ、無印良品。
■ 「プログラマが知るべき97のこと」のトークセッションに行ってきた
先日紹介した『プログラマが知るべき97のこと』のトークセッションがあるというので、ジュンク堂書店池袋本店に行ってきた。なにしろ登壇者が、監訳者のt-wadaに加え、プログラマとしてのスキルの出発点がtDiaryだったことを公言するsecondlifeと、現役のtDiaryユーザであるomoとあっては、行かないわけにはいくまいよ。
なにげに池袋店は始めてだったりするのだけど、会場の4F喫茶に行ってみると池袋店に常駐しているtakahashimがいるのはまぁ当然として、「ジュンク堂RubyKaigi店長」でおなじみの長田さんが出迎えてくれ、UstreamはsuzukiがKaigiFreaksテクノロジーを投入、おまけに見回すと半分くらい(←ややおおげさ)は見知った顔……という「なにこのミニRubyKaigi」状態。そんなことでいいのか!
セッションの内容はUstreamの録画とハッシュタグ97prog_jaで追えるのでそちらで。基本的に書籍の内容にはほとんど触れずに、二人が「よいプログラマになるためにしていること」を紹介していくという流れで、たった2ページで1トピックを語る本書のスタイルとは違った、けっこう突っ込んだ話が聞けて面白かった。というか、レビューの話ばっかりしていた気もするが。
その後はなんとなく懇親会についていき、担当編集者の高さんに「オライリーは真面目に電子出版して下さいよ」的な話をしたり、「プログラマ35歳定年説は本当だよ」などと言って若者を怖がらせたりしていた。あと、先日話題になったJavaプログラミング能力認定試験がひどいという話、日本の現場は本当にあんな感じだという証言を聞いたり*1。怖いでデスネー。
そうそう、せっかくなので登壇者の三人にサインをしてもらったのだった。といっても書籍はとっくに断裁済みなので、サインをしてもらうページだけ抜き取って持っていったのだが。サインしてもらうために重い本を持ち歩かなくていいという、自炊の新たなメリットが!(笑)
で、帰宅してからそのページだけ再度スキャンして、PDFの該当ページを差し替え、Kindleに転送。EPUBな書籍にサインをもらう話は以前takahashimが書いていたが、これはその自炊版である。
そんな「97きのこ本」、せっかくトークセッションまでやったのにまだAmazonの在庫がない! と思ったが、メッセージが「そろそろ入荷するよ」的なものに変わってるようだ。もうじき普通に買えるかも?:
プログラマが知るべき97のこと
オライリージャパン
¥3,889
*1 言語がCOBOLからJavaに変わってついていけなくなった「高齢者」が、偉くなったふりをして設計だけしているからああなるのだそうだ。なるほど、これも一種の老害というわけだ。
2011-01-14(金) [長年日記]
■ 異星人の郷 上 (創元SF文庫) (創元SF文庫)(マイクル・フリン)
SFよ、私は帰ってきた!
……いやね、こないだ本屋に入ってハヤカワ文庫の棚を見たらさ、高さの異なる新旧の本が凸凹に並んでて実に悲しい気分になったんだけど、ちょうど自炊本のクオリティが不満のないレベルになってきた頃だったので「全部自炊しちゃえば高さの違いなんて気にならないじゃん!」と思ったので新刊を買ったのよ。創元文庫だけど(え?)。
で、本書がそうなんだけど、いやぁ、かなり面白かった。
ペストが猛威をふるう中世ヨーロッパ*1に異星人の宇宙船が座礁(?)したところから始まるファーストコンタクトもの。科学技術が発達した現代ではなく、キリスト教が支配する時代にファーストコンタクトがおきたらどうなるか。これだけで勝ったも同然の設定なんだけど、これに、数少ない資料から当時のようすを再構築するという現代視点のストーリーがからむ。
上下巻の上巻は、異星人と人類の交流をじっくり描く。じっくりすぎてジリジリするほどだし、現代パートが絡んでるんだか絡んでないんだかよくわからない。正直「失敗したかな」と思った。が、ファンタジー耐性の低い異星人たちが次々とキリスト教に帰依し始める中盤から、がぜん面白くなってくる。といってもギャグに走ることなく、そして言うまでもなくペストが登場することでむしろシリアス極まりない展開になり、最後は中世と現代の間で別々に展開していた物語がカチリとはまる。ああ、これがSFの快感というものですよ。
なんかね、いろいろなものが実にバランスよく配置されているのがいい。圧倒的な科学力を持つ異星人と数で勝る人類の力関係が醸しだす緊張感、インテリで自由な思想の神父と真面目で敬虔すぎる修道士の関係、理論物理学者と歴史研究者のカップル。水と油のような組み合わせが反発しつつ引き合って、物語に深みを与えている。
ひさびさに手にとったSFが「当たり」でよかったなぁ。
異星人の郷 上 (創元SF文庫) (創元SF文庫)
東京創元社
¥70
9784488699024
*1 SFに登場する中世ヨーロッパと言えばペストです。
◆ takahashim [それは出版社云々の前に、amazonの仕入れ能力の高くなさという書店側の問題もあるのではないかと http://ww..]
◆ ただただし [目利きの店員がいて機動力のある書店がきちんと読者のニーズをとらえた仕入れをしている、という点はそのとおり。で、Ama..]
◆ エチオピア効果 [近所のTSUTAYAで探したけどないので、店員さんにきいたら「エッセー」のコーナーに「中学生失格」と一緒においてあり..]