2011-10-13(木) [長年日記]
■ Dennis Ritchie死去
なんだかIT業界有名人の訃報が続いているが、個人的にはこれは悲しいなぁ。ちなみに第一報はGoogle+上のRob Pikeの投稿:
I just heard that, after a long illness, Dennis Ritchie (dmr) died at home this weekend. I have no more information.
I trust there are people here who will appreciate the reach of his contributions and mourn his passing appropriately.
He was a quiet and mostly private man, but he was also my friend, colleague, and collaborator, and the world has lost a truly great mind.
C言語の開発者であり、UNIXの開発者でもあるデニスはもう70歳、この先さらに新しい何かを産み出してくれるようなことは期待できないわけで、彼のいない未来から何かが欠けるわけではないだろう。ただ、彼の残したものに対する尊敬というか感謝……うん、そうだ、感謝だな。それはもう、計り知れないわけで。
(ポケコンのBASICを除けば)最初に学んだプログラミング言語はPascalで、次に覚えたのがCだった。Pascalは基礎を学ぶには良い言語だったが、「これならなんでも書ける!」という多くのプログラマが感じるある種の「全能感」はまさにC言語によって与えられた*1。その後はエディタのマクロやAWKを除けば、Javaに触れるようになるまでほとんどCだけを使っていた記憶がある。さすがにもう、C言語は役目を終えたと思うが、それでもインターネットがCで支えられている事実はまだしばらく揺るがないだろう。
ネット上の追悼メッセージをみていると、
free(dmr);
とか、
dmr = (void *)0;
とか、
printf("goodbye world\n");
とか、「おまえらわかってんなぁ」というのが目について、いっそう悲しみに拍車がかかるのである。
彼なくして、今日の世界はけっしてなかった。R.I.P.
*1 この全能感はのちにRubyによってさらにブーストされるわけだけど、それはまた別の話。
2011-10-12(水) [長年日記]
■ 9784774148311
なんでも編集後記でこの日記を引用したからという理由で献本していただいた。ありがとうございます。読んでみたら2006年の記事から、ほんの数行である(律儀だなぁ!):
執筆陣が豪勢だと評判なので、買ってみた。たしかに豪勢だ。ただ、昔の雑誌の「その道の大家を連れてきました」的な豪勢っぷりとちょっと違う気がする。編集者がちゃんとネットにアンテナを張って、いま「旬」な技術者を見つけてきている感じ。
これが32号のときの話で、この総集編にはそれを含む1号から60号までのすべての記事がPDF化されて入ってたったの2,700円。「1冊あたり云々……」という計算は誰かがやっていたから省くが、たいへんな大盤振る舞いには違いない。また、今回で3冊目になる総集編ながら、ちゃんと1号から再録してるところも真面目だよなー。
さて、上で引用したように、旬のソフトウェア技術者を見つけ出してきてその専門分野について語ってもらうというのがWEB+DBの本領なわけだが、あれから5年、読み手であるおれはWebアクセス解析の道へ踏み出し、開発の一線からはちょっと外れた位置にいるものの、60号においても執筆陣の何割かは知人・友人だったりする。この割合は5年前とさほど変わっていない(むしろ最近の方が増えている感じ)。
これが、相変わらず開発者コミュニティとのつながりを保ち続けているおれの成果なのか、それともWEB+DBが硬直化しているサインなのかはわからない(まぁたぶん前者)。ひとつ確実なのは、引き続き移り変わりの激しいWeb業界でありながらも、トップエンジニアたちがその流れに押し流されることなく先頭を走り続けているということと、それを押しのけるように若い力も台頭してきているということだ。
総集編の記念エッセイに名を連ねている11人の「Topエンジニア」たちは一部を除いてさすがにみなベテラン揃いだが、さらに5年後、この顔ぶれがどのように変わっているのかも楽しみである。
9784774148311
2011-10-11(火) [長年日記]
■ 第2回アクセシビリティBAR『秋の文字サイズ変更ボタン祭り』に行ってきた
前回の『初夏のパンくず祭』に続き(ちゃんと続いたとは!)、今回は『文字サイズ変更ボタン』がテーマ。Webサイトの右上あたりにある「小中大」とか書いてあるボタンで、押すと文字サイズが変わるという、なんの役に立つのかよくわからんアレが題材である。
例によって飲み食いに忙しくしつつも、太田さんが力の入った(入りすぎた?)プレゼン資料を用意してきてくれたので、それをネタにして18人でしゃべりっぱなしの2.5時間。みなさん一家言あって面白い。
太田さんの事例調査によって、自治体や公共団体のサイトはともかく、企業サイトについている「文字サイズ変更ボタン」は本当に飾りにすぎないことがわかってなかなか面白かった。やはりこういう「肴」があると盛り上がる(笑)。JISが決めている「最低200%まで拡大」という基準を満たせてないばかりか、そもそもボタンがどこのあるのかわからなかったり、トップページで設定した文字サイズが他のページに適用されないとか、まぁ、はっきりいってひどかったね。おまけにおかしなランキングに載るためだけにIRページにだけボタンをつけるという、さらにひどい慣習まで暴かれて、これは本当に「ないほうがマシ」というシロモノ。完全にユーザそっちのけだ。
で、参加者の多くは制作サイドの人間なので、一致した意見としては「ブラウザの拡大機能を使え」なわけだし、そのためには「ブラウザの機能をもっと啓蒙しないと」とか「わかりやすいUIのためにブラウザベンダさんもっとがんばって下さい」という流れになってしまうは必然だろう。その点にまったく異論はないのだが、現状のブラウザの拡大機能がどれくらい使われているのか(啓蒙の成功度合いは測定可能なのか?)とか、さらに言えば「文字サイズ変更ボタン」はそもそもどれくらい利用されているのかという客観的な指標がないので、なにかと机上の空論になりがちだ、という指摘をした。やっぱ(解析屋としては)数字がないと足元がはっきりしないんだよね。
というわけで、「(好むと好まざるとにかかわらず)文字サイズ変更ボタンをつけてる」というWebマスターさんにおかれましては、自サイトの文字サイズ変更ボタンがどれくらい利用されているのか、ぜひ調査して結果を公表していただきたい。なに、JavaScriptをちゃちゃっと数行書くだけですよ。
◆ taken [> 現状のブラウザの拡大機能がどれくらい使われているのか > 客観的な指標がないので 1年以上前のデータですがFi..]
◆ ただただし [おー、ありがとうございます。Firefoxはじめ、モダンブラウザはメニューを隠す方向に進化しているので、この傾向は今..]
◆ yoosee [ブラウザの「最低文字サイズ」がもっと使われればそれで終わりなきもしますね。インストール時のウィザードで設定するような..]
◆ ただただし [インストール時に最小フォントサイズを設定させてしまうというのは悪くないアイデア。ただ、老眼というものが進行性であると..]