2011-01-20(木) [長年日記]
■ 9784150117559
いや、ちゃんとハヤカワ文庫も買ったんですよ? すぐに断裁されて、今は段ボール箱に放りこまれてるけど。だってトールサイズは本棚に入らないし。
ナンシー・クレス作品の読後感には、満足と不満がちょうど半々くらいで同居している(←褒めてない気がするけどいちおう褒めてる)。そのあたりの理由については本書解説で冬樹蛉が実にうまいこと説明しているのであえてここでは書かないが、長くSFを読んでいる読者には物足りなさがあると思う。特にイーガンあたりを喜んで読む向きには、ヌルくてお話にならないかもね。
でも、小説としての完成度というか、読書体験としては上質だし、解説にもあるけれど手垢のついたテーマやアイデアだけど実装方法に味があるので、これはこれで価値がある。特に本書はクレスが得意とする中短編集なので、だらだら続いてかったるい長編と違ってどれも面白い。
そんなわけで、けっこう立て続けに翻訳が出て嬉しいんだけど、でもハヤカワ文庫を読むようなSFファンは先鋭化する一方だと思うので、こういうのはあんまり売れないんじゃないですかね。とか余計なお世話だろうけど。
9784150117559
■ 『言語設計者たちが考えること』電子版を買ったその場でKindlize
上の本は出張の行きの新幹線で読み終えてしまったのだが、もう未読の本がKindleに入っていない*1。帰りの新幹線が暇なのは困るので、その場でオライリーから『言語設計者たちが考えること』の電子版を購入。紙よりちょっと安い……とはいえ3,024円。いいお値段だなーと思ったら500ページ以上あるのな。こりゃ読み応えあるわ。
しかし、大型本で500ページなんて、ぜったい持ち歩く気にならないよ。電子版があってよかった。もっとも、オライリーの大型本は、Kindleで読むにはちょっと大きすぎるんだけどね。横持ちの場合は幅15cmくらいまでがちょうどいい。
とはいえ読めないってほどでもないので、すぐに昨日の手法でKindlizeしようと思ったら、画像化の時点でconvertがエラー吐いて死ぬのですよ。
オライリー本家の電子版がPDFやEPUBなど複数フォーマットでしかもDRMフリーなのに対して、オライリー・ジャパンのそれはPDFのみで印刷・コピペなどがいっさい禁止された非常に不自由なフォーマット。「やべー、読めない本を3000円も出して買っちゃったか?」と焦ったが*2、なんのことはない、pdftoppmでは普通に抜き出せたのでいつものRakefileであっさりKindlizeできた。
ちなみに原本にはメタ情報すら入っていない(!)ので、他の書籍のメタ情報ファイルを書き換えて使用した*3。当然この流用したメタ情報はScanSnapが入れたものなので、ScanSnap Organizerを使うことでOCRにかけられる。
かくして、印刷もコピペもできない原本から、印刷もコピペもできておまけにKindleでも読めるPDFができたことになる。ファイルサイズは30倍くらいになったけど(笑)。
とまぁ、この程度のDRM(?)なんてちょっとわかってる人なら簡単に回避できてしまうのだから、(特に技術者向けの書籍を作ってる出版社は)下手なDRMをかけるのは無駄というか、単に客の生産性を落としてるだけだということに気づいて欲しいものです。購入者のメールアドレスが埋め込んであるんだから、それだけで十分でしょ?
9784873114712
2011-01-19(水) [長年日記]
■ 『 プログラマが知るべき97のこと』が電子書籍になった
先日紹介した『 プログラマが知るべき97のこと』、Amazonに入荷しない状態がいまだに続いているわけだが、しびれを切らした(?)オライリー・ジャパン本家から電子書籍版が登場した。ひとづてに聞いたところでは、この日記でグダグタ言ったり、電子書籍の必要性を熱く語ったりしたのが効いたとか。本当なら嬉しいことだ。言ってみるもんだね。
オライリーに限らず、ソフトウェア技術者を相手にしている出版社は、積極的に電子展開を進めるべきだと思う。我々技術者は電子書籍にさほど抵抗がなく、読みたい本はすぐにでも手に入れたいタチなのだ。こんなにいい客、そうそういないよ? 売れすぎて入手困難なんてのは特殊な希少本にのみ意味があるステータスなのであって、旬な技術の本においては単なる販売機会の喪失にすぎない。
日本は、たくさんの技術書を(英語でない)母国語で読めるという世界的にも珍しい市場が成立している国なのだ*1。我々は(少なくともおれは)この特殊な市場がこれからも栄えて欲しい。もっとたくさん、そしてすぐに本が読みたいし、そのためにも「買うチャンス」はもっともっと拡大して欲しいと思う。
この調子で、新刊は発売と同時に電子版を用意してもらいたいし(もちろん電子版が先行でもいいのよ)、アフィリエイトもできるともっといいし、できればちょっとでも紙より安いと嬉しいですねぃ。
*1 今回のことをFacebookで紹介したら、海外在住の日本人技術者が即座に買っていた。電子書籍は海外に住む人にとっても福音だ。
■ 『Facebookをスマートに使いこなす基本&活用ワザ150』の第一章が電子書籍化されたのでさっそくKindlize
↑みたいに今後PDFで売られる書籍が増えてくると、買ったその場ですばやくKindle向けに加工できないといろいろ困る。自炊の場合は断裁して、スキャンして……という手間がかかるのははなから覚悟の上だからいいけど、最初からPDFになっている場合はやはりスピードが命。
というわけで今日、『Facebookをスマートに使いこなす基本&活用ワザ150』の第一章が電子書籍化というニュースを見たので、さっそくKindlize*1。最近はImageMagickの扱いにも慣れてきたので、スピード重視で中間画像ファイルなしの手法を編み出してみた。元のPDFを「src.pdf」として、convertコマンドのみで余白をトリミングした「dest.pdf」ができる:
% convert -density 300 src.pdf -fuzz 50% -trim -type GrayScale -resize x735 dest.pdf
#これは縦持ちにできる小型の書籍向けの設定なので、ターゲットが大型本で横持ちにしたい場合は「-resize 722」にする。
キモはsrc.pdf指定の「前」に置いた「-density 300」で、これは300dpiで画像化する指定だ。ソースになるファイル指定の前に置くことで「これから処理するファイルを300dpiで扱え」という指示になるみたい。なるほど、convertコマンドがコマンドパラメタを愚直なまでに順番に処理している様子がうかがえますな。これをやらないと悲しいくらいショボい画質になる。この手法がわかったので、自炊でもpdftoppmを使わずに中間フェーズを削減できるかも。
ノンブルをカットしたりといった細かい調整はできないけど、すぐにでも読みたい場合はこれで十分だ。元がテキストなので、紙をスキャンしたものに比べて格段にきれいでヨイです。
あとでメタデータをいじればScanSnapの付属ソフトでOCRにかけることもできるはずなので、DRMがかかってコピペ不可なPDFなんかもけっこう救えるんじゃないかと思う。あとでオライリーのPDFを何か買ってみよう。
*1 「Kindle向けに加工する」の意。ググってみたらすでに使ってる人がいた。
2011-01-18(火) [長年日記]
■ KindleのためにInstapaperを使い始めた
先日のトークセッションの懇親会で、「Kindleユーザならinstapaperが便利」と教わったので、さっそく使い始めてみたのだ。
Instapaperはいわゆる「あとで読む系ブックマークサービス」の一種。「長すぎてあとで読みたいなー」という記事をスクラップしておいて、いろんな形で読みやすくしてくれる。「Kindleユーザ必携」的な理由は以下の2点かな:
- Webページから「本文」だけをうまいこと抽出してくれる(ナビゲーションやサイドメニューなどの領域をカットしてくれる)
- Kindleに毎日まとめて送りつけてくれる
本文抽出はたまに失敗してくれるけど(そもそもWebページなんてものはたいして構造化されていないので、HTML5時代が来ない限りこれを完璧にこなすのは不可能だ)、けっこういい感じで抜き出してくれる。長い文章はよけいなものがなくなるので、それだけでずいぶん読みやすくなる。
そうしてスクラップしておいた長文記事を、毎日まとめてmobiファイルにし、(登録しておいたメールアドレスを経由して)Kindleに転送しておいてくれるというのが、今回の話のキモである。なるほど、これは便利。
試しに自分の日記の記事をいくつかみつくろって登録し、Kindleへの転送トリガを手動で起動してみたら、ほどなくKindleの書籍一覧に登場した。
これ、普通のmobiじゃなくて、「Section List」なんて機能がついた、ちょっと特殊なフォーマットらしい。たしか新聞や雑誌の定期購読向けのフォーマットで、なんとかって名前がついてたはずだ(ど忘れ)。もっとも肝心のSection Listは日本語が化け化けで、正直使い物にならない。ただ、5 Way Keyで記事単位のジャンプができるので、記事がたくさんあるような場面では拾い読みができていい。なるほど、新聞向けだ。こないだ作った日経電子版のスクレイピング、あれはそのままこっちに置き換えてもいいかも知れない(日本語の問題が解消されてばの話だが)。APIもあるし。
というわけで、新聞にはイマイチながら、いわゆる「あとで読む」向けにはけっこうよさそうだ。しばらく使ってみよう。