2011-10-11(火) [長年日記]
■ 第2回アクセシビリティBAR『秋の文字サイズ変更ボタン祭り』に行ってきた
前回の『初夏のパンくず祭』に続き(ちゃんと続いたとは!)、今回は『文字サイズ変更ボタン』がテーマ。Webサイトの右上あたりにある「小中大」とか書いてあるボタンで、押すと文字サイズが変わるという、なんの役に立つのかよくわからんアレが題材である。
例によって飲み食いに忙しくしつつも、太田さんが力の入った(入りすぎた?)プレゼン資料を用意してきてくれたので、それをネタにして18人でしゃべりっぱなしの2.5時間。みなさん一家言あって面白い。
太田さんの事例調査によって、自治体や公共団体のサイトはともかく、企業サイトについている「文字サイズ変更ボタン」は本当に飾りにすぎないことがわかってなかなか面白かった。やはりこういう「肴」があると盛り上がる(笑)。JISが決めている「最低200%まで拡大」という基準を満たせてないばかりか、そもそもボタンがどこのあるのかわからなかったり、トップページで設定した文字サイズが他のページに適用されないとか、まぁ、はっきりいってひどかったね。おまけにおかしなランキングに載るためだけにIRページにだけボタンをつけるという、さらにひどい慣習まで暴かれて、これは本当に「ないほうがマシ」というシロモノ。完全にユーザそっちのけだ。
で、参加者の多くは制作サイドの人間なので、一致した意見としては「ブラウザの拡大機能を使え」なわけだし、そのためには「ブラウザの機能をもっと啓蒙しないと」とか「わかりやすいUIのためにブラウザベンダさんもっとがんばって下さい」という流れになってしまうは必然だろう。その点にまったく異論はないのだが、現状のブラウザの拡大機能がどれくらい使われているのか(啓蒙の成功度合いは測定可能なのか?)とか、さらに言えば「文字サイズ変更ボタン」はそもそもどれくらい利用されているのかという客観的な指標がないので、なにかと机上の空論になりがちだ、という指摘をした。やっぱ(解析屋としては)数字がないと足元がはっきりしないんだよね。
というわけで、「(好むと好まざるとにかかわらず)文字サイズ変更ボタンをつけてる」というWebマスターさんにおかれましては、自サイトの文字サイズ変更ボタンがどれくらい利用されているのか、ぜひ調査して結果を公表していただきたい。なに、JavaScriptをちゃちゃっと数行書くだけですよ。
2011-10-09(日) [長年日記]
■ 富士山一周(反時計回り)
だんだん秋めいてきて、まさに今乗らずにいつ乗るのというくらいバイクにはベストシーズンになった。今日は早起きできたので、Tシャツにウェアをひっかけただけの格好で出発したけど、まだまだぜんぜんいける。……とか調子こいてたら御殿場あたりで耐え切れなくなって、ダウンのインナーを着てしまった。弱い。
今日は風もないおだやかな日なので逆さ富士でも拝めるかと思い、いつもと逆に反時計回りで富士山一周へ。と思ったら篭坂峠越えて山中湖に入ったところでガスが出てきてしまい、富士山どころではなくなってしまった。富士吉田で朝食をとりながら時間をつぶしていたら晴れてきたので、ようやく出発。
先日の台風の影響で「第六の湖」こと「赤池」が出たという話は聞いていたが、どのあたりにあるのかもよくわからなかったので、まぁ見れたらラッキーくらいのつもりでいようと思っていたら、途中、精進湖の手前で道路脇に人だかりができていたのでなんの問題もなく道から見られた。ここの橋、「赤池大橋」って名前がついてたけど、そういう意味だったのか。知らんかったわ。まぁ、湖というより、池だね、たしかに。
精進湖までくるとすでに太陽はだいぶ高く、たしかに逆さ富士にはなっているもののこんな光線の状態でうまい写真を撮る腕はおれにはねぇよ(笑)。まぁ、そういう狙いなら太陽が富士山から顔を出す前に来いってことだよな。あ、いや、こっち側ならむしろ夕方に赤富士を狙うべきなのか。
精進湖がこのありさまなら本栖湖はもっと厳しいのであった。おまけにマラソン(?)があるらしく周回道路が通行止めだし。
帰路はいつものように富士山スカイラインを走ったが、当然ながら五合目への登山道は渋滞しているので、今日は寄らずにまっすぐ帰宅。山の木々はまだぜんぜん色づいてもいないので、あと2、3週間したらまた来よう。
■ 20世紀フォックス版『はやぶさ/HAYABUSA』は最高のパラボラ映画だ!
だいたい、原作付きの映画というものは、特にそれがお気に入りの原作だったりする場合、ガッカリな出来と相場が決まっているものである。その「原作」がノンフィクションだった場合はなおさらで、下手に細部を知っているものだから「そこは事実と違う」とか「あの場面を描かないとはなにごとか」とか、文句の出ないはずがない。だから、同時に3本(!)も進行している「はやぶさ」の映画化についてはまったく期待していなかった。
で、先日最初の一本である「20世紀フォックス版」が公開されても観に行くつもりはなかったのだが、驚いたことに観てきた人たちの感想が大絶賛の嵐なんである。とにかく悪い評判を見たことがない。それが主に、うるさいことには定評のあるTwitterの宇宙クラスタの人たちなんだから、これは無視するわけにはいかなくなってきた。ソーシャル怖いです。
というわけで行ってきた。
いやもう、すごかった。どんだけすごいかっつーと、
- まずはいきなり内之浦34m(通称うっちーさん)。初登場は射場の隅っこなんだけど(すごく目立つので視線はそっちに釘付けです)、すぐにピンでアップ。思わず「キターーー!」ってつぶやいちゃったよ。
- それからなにより臼田64m(通称うすださん)。これはもう、頻繁に何度も登場するし、ストーリー上一番盛り上がる「はやぶさを発見」するシーンでは主役を張るわけで、もう最高としか言いようがない。
- 最後にゴールドストーン70m。まさかの海外パラボラが友情出演。鼻血出るかと思った。
大型パラボラアンテナ施設が3ヶ所も出てくる映画はきいたことがない。これは史上最高のパラボラ映画といっても過言ではないのではないか……と思ったけど、「最高」はいまだ『月のひつじ』だね、やっぱり。なんにせよパラボラマニア必見である。
冗談はさておき(いや冗談ではないけど)、映画としてもすばらしくよくできていた。なんといっても脚本がまず上手い*1。なにしろ「嘘」がほとんどない。でもちゃんと140分の枠にペンシルロケットから「のぞみ」を経て「はやぶさ」に至る道筋も、発射から帰還までのエピソードもすべて入っている、まるで魔法のような脚本だった。
わりとどうでもいいこと(リアクションホイールが壊れるシーンとか)をさっくり省いたりする一方で、川口さんがポットのお湯を入れるシーンみたいな重要だけど細かいシーンをちゃんと入れるといった、メリハリをしっかりつけて欲張り過ぎてないところがいいんだな。それから、実在の人物にかなり似せてきたキャストの中に、一人だけ架空の人物を、それも主役に入れるという演出上の冒険も、実話をもとにしたエピソードをからませることで実在感を持たせて、違和感なくまとまってるし。たいしたもんだなぁ。
まぁなんにせよ、竹内結子のメガネだけでお腹いっぱいです。本当にありがとうございました。でも他の2本にはまだ気を許していないけど。
はやぶさ/HAYABUSA [Blu-ray]
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
¥3,480
*1 「最後の講演シーンはよけいだったよね」とはかみさんとおれの共通意見。まぁあれは本来なら的川さんの講演なので、的川さんの教育論という文脈から切り離したら浮いて当然だよなぁ。もうちょっとシンプルなまとめ方もあっただろうに。
2011-10-07(金) [長年日記]
■ 「DRMをかける書店からは電子書籍を買わない」というポリシーは貫けるか
長谷部誠の「心を整える。」が電子書籍化というニュースをみて、以前からちょっと読みたかったこともあり、おまけに印税は被災地に寄付とのことなので、ベストセラーは読まない方針を曲げてじゃあ買ってみるかと思ったのだ。
で、並んだ電子書店の中から特定端末前提ではない書店としてhontoがあったのでログイン(なぜかアカウントを作ってあった)。XMDFって書いてあるから普通にブンコビューアで読めるだろうと思ったが、ふと不安がよぎったので対応デバイス・環境についてを読んでみたら妙な記述が:
すでにPCにダウンロード済みの本につきましては、そのままお楽しみいただけます。
PC向け「honto」アプリでも閲覧可能です。
「すでに」って? 「PC向けhontoアプリ」ってなんぞ?
で、ぐぐってみたら「hontoのPC向けXMDF/ドットブックがDRMフリーをやめて端末紐付に変更した」なんて記事を見つけたわけです。うわー、ヤバいヤバい。あやうくDRM付き電子書籍をつかまされるところだった。XMDFって書いてあるからってなんでもOKってわけじゃないんだなー。本屋が潰れたら読めなくなる本なんて誰が買うかっつーの。その足で即、アカウント消去。
そういえばけっこう品揃えがいいBookLive!も、調べてみると電子書籍販売サイト:BookLive! - そのDRMにあるように相当ひどいらしく、こっちはアカウントを作る前に踏みとどまって良かった良かったてなもんだ。
こんな調子でDRMを避けていたら、最終的にどこの書店からも買えなくなってしまう気がする*1。もちろん、技術系出版社の多くはDRMをかけない方向なので安心だけど、Spece Town亡きあと、小説は今のところ安心して買えそうな書店はパピレスくらいだろうか*2。書店として理想的なのはパブーだけど、プロの作品はまだまだ少ないし。なんとも、お先真っ暗だのぅ。
先日、今の電子書店は本を消費財としか考えていない人向けという指摘をしたが、上でリンクしたこの電子書籍下さいでも、同じ危惧を表明している(→気付いたら1年.. 今後のテーマは "保存" だ!!)。別におれひとりがDRMのかかった本を買わない決心をしたところで、この傾向に歯止めがかかるとは思えないけれど、著作権保護を訴えるときは「文化、文化」とうるさいくせに実際売ってるのは「消費財」という、あからさまな裏表っぷりはどうにかして欲しいよ。
ちょっと期待してしまうのが今日発表になったYahoo!ブックストアだけど、日本の電子書籍を取り巻くこの状況をYahoo!が単独でひっくり返せるとは思えないしなぁ。
◆ takahashim [まだ試してないのですが、Kinoppyはどうですか? http://blog.goo.ne.jp/ikunya/e..]
◆ ただただし [紀伊国屋はいままで真面目に見てませんでした。おお、「心を整える。」がありますね! しかもXMDFだ。 http://..]
◆ ただただし [DRMなしのが買えたのはいいが、このサイト、なんだかセキュリティ的にヤバそうな……]
◆ かずひこ [よくあるご質問: Q 海外からでも利用できますか? A あいにく現時点では海外在住のお客様へ電子書籍のダウンロードサ..]
◆ こ~りん [よくある海外規制は、接続元のIP規制じゃなくて、クレジットカードが日本国内のものかどうかだから 実際にはちゃんと買え..]
◆ taken [> 現状のブラウザの拡大機能がどれくらい使われているのか > 客観的な指標がないので 1年以上前のデータですがFi..]
◆ ただただし [おー、ありがとうございます。Firefoxはじめ、モダンブラウザはメニューを隠す方向に進化しているので、この傾向は今..]
◆ yoosee [ブラウザの「最低文字サイズ」がもっと使われればそれで終わりなきもしますね。インストール時のウィザードで設定するような..]
◆ ただただし [インストール時に最小フォントサイズを設定させてしまうというのは悪くないアイデア。ただ、老眼というものが進行性であると..]