2010-08-30(月) [長年日記]
■ 個人的なRubyKaigi2010総括と「最終回」について
クロージングで高橋さんが「次回最終回!」とやったもんだから、各所で議論が巻き起こっているわけだが、おれもちょっと書いておこうかな。あくまで個人的なもので、実行委員の総意でもなんでもない。
自分はまだ「RubyKaigi」と正式に名乗っていなかった初回の2006年にスピーカーとして参加。そのあとは実行委員に加わって、2007、2008、2009そして今年の2010と都合4回のスタッフとして関わった。まずはその5年間の変化をみてみたい。
懇親会で料理が余るようになった
2006年、2007年あたりの感想を探してみるとわかるけど、開始当初はホントにもう、あっというまに懇親会の料理がなくなってた。「Rubyistは酒もタバコもやらないけどやたらと食う」と認識した我々は、一昨年のつくばで「質を落としてもいいから量を出す」方針で懇親会を設計し、みごとに多量の料理を余らせたのだった。
そんな反省も踏まえて、適切な量と味を提供した今回の懇親会がどうだったかというと、これまた余ったわけだ。高井さんのパーティ設計がよくできていることはもちろんだが、どうみても食わずにおしゃべりしてるようにしか見えなかった。
つまり、懇親会に来てみたもののたいして知り合いがいないものだから、手持ち無沙汰な時間を食うことで消費していたシャイなRubyistたちが、おしゃべりに忙しくて食うことも忘れるようになった。これが5年間の変化。
「会議」が「講演」にとってかわった
一昨年のつくばで、初めて本格的にインターネット中継を開始。これに対して「有料参加者と(自宅で中継を見ている)無料参加者が同じコンテンツにアクセスできるのはどういうわけだ」という批判があった。ネット中継があたりまえのこんにちからすれば笑い話だが、これを真面目に受けて「わざわざ(身銭を切って)現地に足を運ぶ価値はなにか」を考え直した。
最終的に「一箇所に集った人たちと直接会って話をすること」そのものが価値だという(ありきたりな)結論になったわけだけど、これはつまり、ホールでの講演そのものは「おまけ」ということだ(大事なのはそのあと)。だから無料で中継しちゃう。「Lightning Talksは懇親会の直前にする」という2007年から始めた慣行も、「講演した人は話しかけてもらいやすい」から、できるだけ多くの人に「話す」きっかけを持ってもらうためだし、実は以前からこのあたりにブレはない。
で、それを受けて始めてみたのが2009年の「企画部屋」だ。単に廊下で立ち話ではなくて、ちゃんと場所をとって目的をもった議論をしてもらう。これぞ「会議」ではないか。
これがほとんど告知をしなかったにも関わらず好評だったので、今年は大々的に展開してみたら、むしろホールよりも集客してしまったという。実際どの企画も面白かったようだし*1、一部を除いて中継もされてないから、まさに現地に足を運んだ人のためのイベントになった。
ただ、これを2006年や2007年にやってもお寒い状況になったのは想像に難くない。つまりこの5年で、Rubyistたちは企画部屋を盛況にさせられるだけのスキルと社会性を身につけたわけだ。
おまえらはもう、十分につながったよ
(おそらく)リアルなつながりを求めて始まったRubyKaigiは、そんな参加者たちのスキルアップと歩調を合わせながら、一緒に進化してきたわけだ。RubyKaigi2010で、Rubyistたちはもう十分につながった。これ以上続けていると、混じり合って集合意識になっちまう。
いまだにアンケートなどには「内輪すぎてなじめなかった」的な感想が寄せられることがあるのだけれど、1日あたりの参加者が数百人もいて、しかも毎年規模が拡大しているのに参加者の9割が満足する「内輪の集まり」とか、ありえないから*2。つまりこれは、内輪ではないけどみんなつながってるという稀有な状態なのだ。
ここまできたらもう、次のステップに進まないといけない。だから今のスタイルの継続という意味では次で最終回なのだ。
「次があるとしたら」について考えるなら、ポイントはこの「つながってる状態」を利用して何ができるかでしょう。なにしろ、いまだにリファレンスマニュアルプロジェクトの進捗が遅々としていたり、ruby本体のバージョンが0.0.1あがるのにえらく時間がかかってたりするわけで、せっかくつながってんのに色々ムダになってるんだから。
RubyKaigiは、Rubyコミュニティに新しい状態をもたらして死ぬのです。生まれ落ちた子供たちには、親とは別のミッションがあるのです。
ところでRubyKaigiを殺したのは誰か
クロージング後のIRCのログより:
kaz_japon: これも、たださんデスノート伝説の新たな一ページ
unak: そうか、tdtdsか...
okkez: デスノートおそろしす
tdtds: おまえら……
ま・た・お・れ・か。
じゃあしょうがない。責任をとって、次回のRubyKaigiではスタッフではなく一般参加者として参加するよ。
まぁ冗談は抜きにして、2006は発表後体調が悪くてあんまりちゃんと参加してない(懇親会も出てない)し、その後はずっとスタッフだったので聴きたい講演も聞けず、参加したい企画にも行けずという状況が続いていたものだから、最後くらい普通に聴きたいものを聴いて、参加したいものに出席したいな。たぶん、スタッフとして参加する方が何倍も充実感はあるのだろうけれど、一度くらいは、ねぇ。
写真はいつものように高井さんのPhotoSetから。
2010-08-29(日) [長年日記]
■ 日本Ruby会議2010(3日目)
夕べは21時ごろ宿について、そのままゴロゴロしていたら寝落ちしていて、気がついたら5:30だった。同部屋の2人はずいぶん遅くまでロビーにいたようだけど。やっぱオジサンには体力的にキツいなー。で、せっかく早起きしたし、米の朝食だと調子も出ないので、近くのデニーズまで歩いてフレンチトーストを食べた。これでラスト1日なんとかなる。
……とはいえ、大ホール番長は体力的にはそんなにキツい仕事ではないのだけど(寒いことを除けば)。特に今年は@tmaedaがかなりの仕事を肩代わりしてくれたので、ホント助かった。午前中の司会も任せっきり。午後も、中ホールのhsbtやkwatchのセッションを聴きに抜け出せたしね。
hsbtの「before Rails 時代のプログラマが如何にして after Rails の世界にたどりついたか」は、途中でMacBookがフリーズするというアクシデントがあったものの、慌てず騒がずそのままスライドなしで続行するという、なかなかたいしたプレゼンだった。最後に「after Railsの世界に生きようと決めたのに(before Railsな)tDiaryのメンテナを続けているのはなぜ?」というイジワルな質問を投げたら「tDiaryを使っている人たちが大好きだからです」というまるでそういうシナリオがあったかのような答えが返ってきた。やるな(笑)。hsbtはesmに転職してから、ものすごく成長しているのがわかって、実に幸せな人生を歩んでいるように見える。
裏番組が@kakutaniで客の入りがどうなるか心配されたkwatchの「HTMLデザインをまったく崩さない、美しいテンプレートエンジンの作り方」、個人的にはこれを聴かないで何を聴くのよという重要なセッション。同じ意見の人が多かったようで、ほぼ満席。テンプレートエンジンの分類とそのメリット・デメリットを述べていく形式は、非常に論理的でわかりやすかった。pure HTMLでロジックが分離されている新しいテンプレートエンジンは、コンパイルしてeRubyを出力するというアイデアは、性能にも気を配る実にkwatchらしい実装だと思った。おまけにこれなら、いまERBを使っているようなアプリでも移行しやすいしなぁ。
その後は大ホールに戻って、Chadの基調講演~高橋会長のクロージング。会長の衝撃発表を受けて固まった聴衆を笑いでほぐして(えっ)、大ホール番長のお仕事はおしまい。
片付けしながらRejectKaigiの終了を待ち、余ったノベルティをばらまいたら本当に終了。打ち上げにはいつものように1時間くらいだけ参加してTXに飛び乗った。TXでは偶然、志村さんや星さんと一緒になったので、RubyKaigi感想戦など。(2.5Hの道のりを戻って)帰宅した。ぐはー。
総括はまた別途。写真は今年のノベルティと、3日ぶりにおれに会えて安心しきったグスタフ(グスタフはノベルティではありません)。
2010-08-28(土) [長年日記]
■ 日本Ruby会議2010(2日目)
tDiary会議
引き続き、RubyKaigi2010大ホール番長の2日目。今日は朝からのセッションはパスさせてもらって、tDiary会議。テーマは「testable tDiaryハンズオン」「tDiary 3.0.0リリース」「次の10年のユーザ像を考える」の3つ。
完全に日本ドメスティックな企画だったはずなのに、なぜか@sarahmeiと@ultrasaurusが参加、総勢で10人以上という想定を上回る参加人数になった。これならあと15年戦えます。なお、写真は"Rubyist Photographer"の高井さんによるもの(→RubyKaigi 2010 Set参照)。
testable tDiaryは、hsbtがコツコツ開発しているブランチで、steak、capybaraという相当新しいテスティングフレームワークを使っている。ペースが速くてハンズオンにはならなかったものの、どんなことができるのかはだいたいつかめたと思う。このブランチは公式リポジトリへの投入が合意され、できるだけ早くmasterにマージすることに。
で、その後は無事tDiary 3.0.0をリリース! Rails 3.0より先に出したぞ(笑)。Ruby 1.9.2という最新プラットフォームにすばやく追従してみせて、tDiaryがアクティブなプロジェクトであるというアピールができたと思う。
最後は「レンタルサーバでCGIを使う」という開発開始当初のユーザ像を、2010年の状況に合わせる議論。安価で日本語サポートのある旧来のレンタルサーバユーザはまだしばらく主役であるものの、先進ユーザや開発者を取り込み続けるためにVPS上のRack環境で動作する方向への進化するというビジョンを共有した。そしてHerokuやGAE上に簡単にデプロイできるようにして、レンタルサーバユーザの移行を促せるように。「もっとも重要なのは日記データそのもの」という認識も共有できた。
今回の議題のどれもが、「プロジェクトを25年間存続させて、安心して日記を書き続けられる環境を提供する」というtDiaryの目標を達成するために必要なことで、開発者がちゃんとこの目標を共有できていると感じた。仕事でもこの感覚はなかなか得られないものなので、FOSSプロジェクトというのはホントにいいもんだな!
大ホール
その後は担当の大ホールで司会業など。(珍しくコードの話をしたまつもとさんの基調講演を含め)今日も濃ゆい話が多くてお腹いっぱいです。
そういえば、ホールに戻る道すがら、書道コーナーで「祝tDiary 3.0.0 release!」と書いていたら「tDiaryリリースですか! おめでとうございます!」という声が下の方からして、「ありがとう!」と返しながら見たら噂の中学生ハッカー@sora_hだった。大人に対して物怖じせず、積極的でちょっと生意気なところが、出会ったばかりのころのitojunを彷彿とさせる。itojun並みのすごいハッカーになってくれるといいね。
そんな@sora_hも発表するLTが今日のラスト。ドラ娘には現地・筑波大学のゆかコン嬢2010から川端彬子さんをスカウト、浴衣でドラを叩いてもらった(そしてTwitter上の#rubykaigiがドラ娘で埋まるなど)。
懇親会
懇親会では、会いたい人の名前を書いた紙を使って知らない人同士を結びつけるという企画。去年の色紙にサインをもらって歩く企画といい、高井さんはシャイな人たちを上手に懇親させるいいアイデアを出すねぇ。おれも2組ほどを引き合わせることができた。あと、おれに会いたいと言ってくれてきた人の多くが「実はグスタフに会いたい」と白状していたのはどういうことなのかと。あと、ようやくkmutoさんに会えたり。
懇親会では「メタプログラミングRuby」に著者と翻訳者からサインをもらったり(サイン会はすごい行列で並べなかったので)。そういえば翻訳者の@kdmsnrからはtDiaryの主要開発者に本書がプレゼント(!)されたのだけど、これはアレですね、tDiaryはもっとeval使えというメッセージだと受け取ったよ!(違
その後、(2組を引きあわせた)景品として「jQueryクックブック」をもらうなど(RubyKaigiなのになぜ……)。これ欲しかったんだよー。仕事で使える。なんか、欲しかった本が2冊とも手に入ってしまった。
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◆ NT [グスタフのプロデュースが順調に進んでいるということじゃないでしょうか。めざせ、Sランク!]