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ただのにっき


2014-06-23(月) [長年日記]

YONDEMILLの電子書籍ビューア雑感

先日読んだ電子書籍YONDEMILLというオンライン書店のものだったので、必然的にブラウザで(PC/スマホ/タブレットを渡り歩きつつ)読んだのだけど、まぁ、上質な読書体験とはとうてい言いがたかったのでメモっておく。といっても立ち読みしてみればわかるように、ビューアの作りはほぼBinBのそれと同じなので、ボイジャーのOEMに間違いないだろう(なのでこれはボイジャー製ビューアのインプレッションとほぼ同意)。

ちなみに運営会社をたぐってみると、本が好き!を運営してるところで、ああ献本ってようするに同じ会社のプロモーションなのかとやっとわかった。それにしてもこのサイト、アクセシビリティのかけらもなくて、よくこんな意識で出版に関わろうなんて思うよなぁ。

字が汚い

スマホやタブレットでは気にならないものの、Windows上のブラウザ(Google Chromeと念のためIE11も)で開いたらもう、突然視力が落ちたんじゃないかと思うようなひどいフォント。ジャギーでガタガタだし、アンチエイリアスに失敗していて「日」の字の真ん中の線がぼやけて二重に見える始末。「きれいに表示される」と書いてあるWebフォントをONにしてこれである。おれの知ってる出版人にはフォントにすごくこだわる人が多いんだけど、少なくともボイジャーにそういう人はいなさそう……。

遅い

ブラウザだけで読めるということは、本を一冊ダウンロードしてきてるわけじゃなくて、ページごとにダウンロードしていることを意味する。いちおう数ページくらいはまとめてダウンロードしてるようだけど、キャッシュの切れ目に入る追加ダウンロードが遅いのなんの。光回線につながってるPCでもひっかかるので、電波状態の悪い地下鉄なんかだと数秒は待つ。Webフォントを切ってもたいしてかわらず。なんでちょっとした先読み機能すらつけないのか理解できない。本を読んでいてページめくるたびに数秒待たされるとかありえんでしょ。

コピペできない

ブラウザで読むといってもコードを読めばわかるように暗号化(?)したデータを取ってきてCanvasに貼り付けるようになっていて、単純なHTMLとしてレンダリングされているわけではない。いちおう長押しで範囲選択ができるようになってるけど、指定した文字列を送れる先はGoogle検索とTwitterなどのSNSだけ。ということはせいぜい100文字程度しかひっぱれないわけで、満足に引用もできない。書評サイトを運営してるのに、本文の引用すらさせてくれないとは。

その他もろもろ

がんばって縦書きにレンダリングしてるものの、行頭に読点がきたりして最低限の禁則もできてないレベル。自動ページめくりという機能が設定でONにできるのだけど、どうやれば自動でめくってくれるのかわからない。ダウンロード型でないということは、言うまでもなく購入した本の寿命はYONDEMILLのサービスの寿命に依存する。にもかかわらず「貸本にすぎない」というエクスキューズがない(まぁこれは他の電子書店も五十歩百歩だけど)。

というわけで読みながらストレス溜まりまくりで苦痛だったので、今後はYONDEMILLの献本は申し込まない方向で。いくら無料つってもこれはない。


2014-06-22(日) [長年日記]

猫とすごす雨の日曜日

朝から雨でどこへも出かけられないし、かみさんが仕事してるのでおとなしく寝室でごろごろしながら読書していると、グスタフがやってきて脚の上で寝始める。そのまま2時間くらい。どうも最近、人の上で寝るのが好きになったらしい。もう夏になるというのに。体重8kgもあるのに。

で、ようやく降りてくれたと思ったら、こんどは入れ替わりにドーラがやってくる。

[写真]ドーラは決して人の上に乗らない。

ドーラは抱っこ嫌いなので人の上に乗ってくることはないけど、つかず離れずの位置で丸まったりする。なんだかんだいって人のそばにいるのは好きらしい。ただしこの状態は長くは続かない。独占欲の強いグスタフがすぐに戻ってきて定位置に居座るからだ。

[写真]グスタフが戻ってきてまた脚の上に乗る

こんな状態でまた小一時間。さすがに人間の方が飽きたので、起き上がってダンボールの片付けをしていたら、案の定集まってくる。2つの箱は同じサイズである。

[写真]ダンボールは2つ用意してやらねばならぬ。

まぁ、楽しそうでなにより。

[写真]二階建て

Tags: gustav dora
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2014-06-21(土) [長年日記]

初音ミクはなぜ世界を変えたのか?(柴那典)

本が好き!の献本抽選、ついこのあいだ当たったと思ったら連続して当ってしまって慌てたのなんのって。4回に1回当たる計算で適当に申し込んだのに、これじゃ積読が消化できないじゃないの(笑)。いやもちろん本当に読みたいとは思ってたけど。ちなみに今回はYONDEMILLという(今回初めて知った)電子書店によるキャンペーンなので、いつものように自炊本をKindle読むのではなく、スマホ、タブレット、PCのブラウザを渡り歩きながら読んだ(これに関しては別項で)。

およそ20年に一度音楽の世界に現れる「サマー・オブ・ラブ」ムーブメント。初音ミクのムーブメントはその3回目にあたるのではないかという仮説に基づいて、初音ミク関係者への取材などからその裏付けをしていくという本。初音ミクのキャラクター的な側面(萌え方面)ではなく、わりとがっつり音楽方面からアプローチしている点が目新しいのだろう。ただ、この手の書籍によくあるように、著者は基本的に自身の仮説に合う逸話ばかりを並べていくので、客観性は読み手の側に求められる。まぁ著者自身もあとがきで学術的なものではないと書いているくらいなので、あまり真面目にとりあってはいけないものだと思う。とはいえ自分はあまりこの方面には明るくないので、なかなか面白かったし、音楽に限って言えばそれなりに説得力があった。

とはいえ、かれこれ四半世紀近くフリーソフトウェアおよびオープンソースソフトウェア(FOSS)に関わっている身としては、初音ミクムーブメントがFOSSの歴史をみごとなまでに忠実になぞっていることを知っているわけで、初音ミクムーブメントは規模こそ大きいだけでそんなに目新しいものではないという実感がある(たぶんコミケに関わってきた人も同じような感想を抱いているんじゃないかな)。音楽畑の著者の目にはそりゃぁ新規なものに映ったのだろう、でなけりゃ「世界を変えた」なんて大それたタイトルをつけるわけがない。でも悪いがそれはGNU/Linuxがすでにやったことなんだよね。

そんなFOSS視点から本書を読むと(というか他の読み方ができないんだけど)、いろいろアラがみえる。たとえばピアプロ・キャラクター・ライセンスがオープンソース運動にインスパイアされた重要な要素として語られてるけど、利用目的に制限をかけてる時点で腰が引けている。これは営利企業が策定したことによる制約だろうし、初音ミクを悪事に使ってほしくないという気持ちはわかるけど、これはもう「表現」というものに対する覚悟がぜんぜん足らない。ちなみにOpensource Definitionには「No Discrimination Against Fields of Endeavor」という項があって、利用目的による差別を禁止している。

こういうせっかくの先人がいるのにあまり歴史に学ばない、良くも悪くも子供っぽいところがボカロコミュニティにはあって、自分はわりと初期の頃から横目でみつつ距離を置いていたのだけど*1、ryo(supercell)の「メルト」は今でもけっこう好きで、この曲がエポックだという本書の指摘には大いに頷けるところがある。当時は初音ミクが「自分自身以外のことを歌う」というだけでも価値があったし。そんなryoがあの「Tell Your World」のアンサー・ソング「ODDS & ENDS」を出しているというのも今回初めて知って、探して聴いた。うん、いいね。彼の詩はすごく沁みる。ただこの曲の公式PVがニコニコ動画にないという時点で、サード・サマー・オブ・ラブがすでに終わっているという本書の指摘が真実だということを思い知るわけだけど。

いまやうまく上昇気流を捉えて高々度で安定飛行を始めたボーカロイドが、ムーブメントが終わったあと、過去2回のサマー・オブ・ラブのように音楽業界のバックグラウンドとして居座り続けることができるのか、それはあと10年は待たないとわからない。ちなみにFOSSの申し子GNU/Linuxは、今やなくてはならない社会インフラになっているが、さて。

Tags: book

*1 アイマスの方がいつまでも危なっかしくて目が離せない(笑)。

関連する日記: 2014-06-23(月)

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