2013-12-14(土) [長年日記]
■ 映画「ゼロ・グラビティ」をさっそく観てきた
SFクラスタおよび宇宙クラスタは必見ということだったので、封切り直後に観てきましたよ、IMAX 3D。そういえばアバター以来、ほぼ4年ぶりの3Dだ*1。
プロットは単純で、軌道上で作業していたスペースシャトル*2が、衛星の破壊をきっかけとしたケスラーシンドロームに巻き込まれてほぼ全滅、生き残った2人の宇宙飛行士がどうやって地球に帰還するか……というサバイバルもの。事実上、登場人物はたったの2人なので、広大な宇宙を舞台にしていながら密室劇みたいな雰囲気。観ながら小川一水を思い浮かべていたんだけど、舞台は「漂った男」(「老ヴォールの惑星」収録)、シチュエーションは「天涯の砦」といったところ。まーとにかく次から次へとトラブルに襲い掛かられて、息つく暇もない。じゃあスピード感だけで押し切るのかというとそんなこともなくて、けっこうちゃんと伏線を張っていたりしてシナリオに穴らしい穴がないので、話としてのリアリティがすごく高い。映像のリアリティばかりが話題になるけど、シナリオがしっかりしてるのが一番いいところだと思う。
キャストもいい。こういう役どころにはサンドラ・ブロックしかいないだろという感じだが、宇宙服を着ていたら動きの演技なんてできないわけで、息遣いや口調だけで真空と向き合う恐怖感をしっかり醸し出せていたのはすごい(ので、3Dでも字幕版で観るべきだと思う)。あとジョージ・クルーニーがいかにも「ああ、NASAのミッション・コマンダーってたぶんこういう人」っていうステレオタイプをしっかり演じていてこれはこれで上手いというか。あと、公式サイトにはキャストとしてサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーしか載ってないけど、ちょっとびっくり(というかニヤリとする)キャストが他にもいるので、エンドロールはしっかり見たほうがいい。あれは映画館に足を運んだ人向けのサービスかな。粋ですね。
マニア視点としてはやはりなんといっても科学考証がすばらしい。冒頭からね、「音」がしないところでまず感動だよ(笑)。これまでの宇宙映画が「サービス」で入れてきたよけいな音をいっさい排除してる。聞こえてくる音といえばたとえばスパナでボルトを緩めるシーンで、金属同士が擦れる様子が、ちゃんとスパナから腕を伝わってヘルメットを震わせているような音になってるわけ。ここでもう泣きそうになる。音だけじゃなく、軌道上での物の浮かび方とか、慣性のつきかたとか、いちいちまじめに計算されていて、ほんと惚れ惚れする。飛び回ってるものは全部CGだろうけど*3、人物も含めて統一感のある絵にするにはいったいどうすればいいのか見当もつかない。
もちろんすべてが完璧というわけでもなくて「宇宙服の中であの服装ってことはないよなぁ」とか「あの方向に噴射したら目的地に着けなくない?」とか心の中でツッコミを入れつつ観ていたけど、まぁまじめに軌道力学を再現したら一般の観客がついてこれないので、適度な妥協点としてあれはあれでいいんじゃないかね。
最後に苦言を呈すならば、邦題の「ゼロ・グラビティ」はひどいね。原題の「GRAVITY」は観終えてから意味がわかるずっしりと手応えのあるいい題名なのに、邦題は集客目的の上っ面だけ。日本の観客をバカにするのもいい加減にしろ。
B00G1W3UKI
追記
映画を観た人にだけわかるスピンオフ映像がYouTubeにあった(転載っぽいけどオリジナルが見つからない。違法コピーかも知れない)。こういう地上でのできごとも観たかったとは思いつつ、でも本編に入れたら台なしなのでどうしようもないのだけど、いまはYouTubeがあるのだよなぁ。