2011-07-21(木) [長年日記]
■
MM9 -invasion-(山本 弘)
なんか、山本弘ばっかり読んでるような? といってもこの作品はこの単行本ではなく、「Webミステリーズ!」上の連載で読んだのだけど。紙の本になったのでメモがてら。
こうやってまず電子媒体で公表して、評判を観察しつつ紙の部数を調節すればリスクが減らせていいと思うんだけど、なぜか逆に電子書籍を後回しにしたりして、ハイリスクなことするんだよね、日本の出版業界。不思議不思議。
前作「MM9」がパロディ満載の本格SFだったのに対し、今作は体裁的にはラノベ。主人公は少年少女だし、ちょっといい感じのラブコメもありで、雰囲気だいぶ違う。が、「敵」は宇宙怪獣だし、前作でも登場した「ヒメ」が大活躍で、怪獣小説としては前作に勝るとも劣らない出来。こういう小説は楽しくていい。
なお本作品は(たぶんWebで連載されていたためだと思うが)珍しく電子書籍版も新刊として購入できる(東京創元社のページから各電子書店へ)。また、Webミステリーズ!ではMM9シリーズの新作「MM9 -destruction-」も連載中である。
2011-07-19(火) [長年日記]
■
去年はいい年になるだろう(山本 弘)
誕生日プレゼントにいただきました、どうもありがとう! うっかり四六版上製の本を「ほしい物リスト」に入れておいたら届いてしまったので、ムリを承知で自炊してみたら、Kindle3でもなんとか読めなくもない文字サイズになった。これ以上老眼が進むと厳しいので、ハードカバーの小説は買わないようにしないと(本末転倒)。
300年後の未来からタイムマシンに乗った「侵略者」が襲来、そのときSF作家・山本弘は……という設定で、ああ、これは「題未定」(小松左京)か「亜空間要塞」(半村良)ですね(←例えがいちいち古い)。小説家が自分を主人公にすると「私小説」になるが、SF作家がそれをやるとたいていSF的な意味でひどい目にあうことになるので、ギャグにならざるをえない。だから本書もきっと笑える話……かと思いきや、これがなかなかシリアスな展開。主人公がひどい目にあうのは同じなんだけど、シリアスにひどい目にあうので読んでいて少々胸が痛い。
あ、そうそう、祝・星雲賞受賞。作中に「星雲賞がなかなか取れない」という話が出てくるので、なかなかメタな話になって面白かった(時間線が違うので問題にはならない)。SFに登場するさまざまな小道具・大道具を縦横無尽に組み合わせ、作者の過去の作品への言及もにじませながらバランスの良い「私小説」に仕上がっている。エンディングはちょっと都合が良すぎる気もするけど、そういう点も含めて、SFファンの心をつかんだのだろう。良作。
Kindle版:
去年はいい年になるだろう
PHP研究所
¥1,601
Kindle版: B009HO5GIQ
9784894567788
2011-07-18(月) [長年日記]
■ 「The Final RubyKaigi」3日目、そして楽園からの放逐
なでしこジャパンが世界一になってしまったので(←史実の記録)、ちょっと遅刻して会場入り。日本Rubyの会法人化の話を聞き逃してしまった(けどたぶん知ってる話なので大丈夫だろう)。というか公式サイトのCSSが、10年くらい前に(CSSド素人の)おれが書いたtDiary向け「Cloverテーマ」のままなのはさすがに恥ずかしいので、法人化の際にちゃんと変えてよね……。
そのまま大ホールに居座ってエコシステム的な話を聴く。初日に「技術寄りの話を重点的にきこう」とか言ってたくせにこのざまです。実際は後ろのほうでtDiaryの新しい標準テーマを書いたり、JavaScriptのバグを直したりしていたのだが(.cssや.jsばかりいじっていてなぜ.rbを書かないのかと)。そのまま(意図的に)ボッチ化して書き続けようかと思っていたら、@freedomcatがやってきたので一緒にモスバーガーへ。なかなかボッチにはなれないものだ。Matzでさえ、懇親会でボッチになれるというのに!(本当)
午後は@hsbtがtDiary開発を通じて培ってきたレガシーコード保守に関する話。そのまま3F洋室に集まって!tDiaryKaigi(上の写真)なので今日はtDiaryデーです。それにしても、昨日の@kakutaniや@m_sekiの話で言及されたと思ったら、今日は写真入りで登場だよ(しかも一番悪辣な感じの写真を使いよった!)。一介の参加者に身をやつしているというのに、なにこの存在感。
んで、Kaigi中に分散して話し合われたtDiary的な話としてはこんなとこですかね:
- 7/29のリリースは3.1にする。feature freezeは1週間前
- 3.1リリースしたら、jason_pureの取り込み、@kakutaniパッチの取り込みをする
- おまえらjsのテストも書け(→要、テスティングフレームワークの選定)
- ドキュメントあるのに存在が知られてないのはなんとかする
- Rack上での運用に関するドキュメントを書く
- テーマの存在感をもっと出す
その後はまた大ホールに戻り、一番前の方に居座って(@kakutaniから実行委員長ばかりか同じ講演スタイルまで受け継いだ)@snoozer05講演、2回目のLT、Matz最後の基調講演、クロージングへ。いやー今年も、いや最後も、いいKaigiでした。家庭持ちで三連休を全部つぶして毎日深夜帰宅とかありえないので、今日はさくっと帰った。撤収がないというのはいいものだな(笑)。というかみんな家庭は大丈夫か?
さて、少なくとも現在のスタイルで行われる「The RubyKaigi」はこれで終わりなわけだが、そういうことも手伝って、今回はコミュニティやRubyそのものに対する「感謝」や、これからの自分の活動に関する「宣言」が多く見られた。@tenderloveの基調講演は「コミュニティにある障壁を取り除こう」という提言だったし、@kakutaniはDaveから出された宿題に応える行動を呼びかけ、@snoozer05はみずからのわらしべ長者的コミュニティ歴を紹介することであとに続く人への道標になった。@hsbtからは面と向かって感謝されて面映い限りだが、四半世紀続くプロジェクトを継続するための視点の提示があり、Matzに至ってはさらに先、百年先を見据えた態度が表明された。
で、これ、Rubyって言語とはもはや関係ないんだよね。日本で生まれ、20年近い長い歴史のある言語で、国内のイベントに大勢のコミッタが集結できるという特殊性はあるものの、今回の講演の多くはRuby言語に依存しない。RubyKaigi 6回の歩みは、「RubyKaigi」を抽象化して「Kaigi」を作る過程だったのではないだろうか。
Matzが講演の中で「高校生まで言語を設計するような国は日本だけ」という話をしたとき「そりゃ日本には『まつもとゆきひろ』というロールモデルがあるからや」と心の中でツッコんだものだが、RubyKaigiの価値はまさにここ、たくさんのロールモデルを壇上に引っ張り上げたところにあると思う。若い技術者が壇上の彼らの考え方や働き方をみて、自分もそうしようと決意したとか、そんな生き方ができるのかと気づいたとか、RubyKaigiにはそんな事例に事欠かない。
今回、Twitterを見ていると、Rubyに関係ないけど参加した(そして何かを得て帰った)という人が大勢いた。規模をどんどん拡大して、Rubyist以外にも門戸が広げられ、しかも抽象化した「Kaigi」を提供できたからこそ彼らにリーチできたわけで、「Ruby」を出発点にしたイベントが最終的に「Ruby」から離れる瞬間を見られたのは、個人的にはなかなか得難い体験だった。抽象化は大切ですね(と、いかにもプログラマ的なオチ)。
さて、おそらく別な形で再来年あたりに生まれ変わるThe RubyKaigiだが、こんな「楽園」から放り出されたわれわれRubyistは、しばらくの間は個別に「現実」とに戦わなくてはならなくなった。この抽象化された「Kaigi」という武器にどんな使い道が発見されるのか、なかなか興味がつきないところである。