2011-07-19(火) [長年日記]
■ 去年はいい年になるだろう(山本 弘)
誕生日プレゼントにいただきました、どうもありがとう! うっかり四六版上製の本を「ほしい物リスト」に入れておいたら届いてしまったので、ムリを承知で自炊してみたら、Kindle3でもなんとか読めなくもない文字サイズになった。これ以上老眼が進むと厳しいので、ハードカバーの小説は買わないようにしないと(本末転倒)。
300年後の未来からタイムマシンに乗った「侵略者」が襲来、そのときSF作家・山本弘は……という設定で、ああ、これは「題未定」(小松左京)か「亜空間要塞」(半村良)ですね(←例えがいちいち古い)。小説家が自分を主人公にすると「私小説」になるが、SF作家がそれをやるとたいていSF的な意味でひどい目にあうことになるので、ギャグにならざるをえない。だから本書もきっと笑える話……かと思いきや、これがなかなかシリアスな展開。主人公がひどい目にあうのは同じなんだけど、シリアスにひどい目にあうので読んでいて少々胸が痛い。
あ、そうそう、祝・星雲賞受賞。作中に「星雲賞がなかなか取れない」という話が出てくるので、なかなかメタな話になって面白かった(時間線が違うので問題にはならない)。SFに登場するさまざまな小道具・大道具を縦横無尽に組み合わせ、作者の過去の作品への言及もにじませながらバランスの良い「私小説」に仕上がっている。エンディングはちょっと都合が良すぎる気もするけど、そういう点も含めて、SFファンの心をつかんだのだろう。良作。
Kindle版:
去年はいい年になるだろう
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題未定怪奇SF (文春文庫)
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