2011-01-14(金) [長年日記]
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異星人の郷 上 (創元SF文庫) (創元SF文庫)(マイクル・フリン)
SFよ、私は帰ってきた!
……いやね、こないだ本屋に入ってハヤカワ文庫の棚を見たらさ、高さの異なる新旧の本が凸凹に並んでて実に悲しい気分になったんだけど、ちょうど自炊本のクオリティが不満のないレベルになってきた頃だったので「全部自炊しちゃえば高さの違いなんて気にならないじゃん!」と思ったので新刊を買ったのよ。創元文庫だけど(え?)。
で、本書がそうなんだけど、いやぁ、かなり面白かった。
ペストが猛威をふるう中世ヨーロッパ*1に異星人の宇宙船が座礁(?)したところから始まるファーストコンタクトもの。科学技術が発達した現代ではなく、キリスト教が支配する時代にファーストコンタクトがおきたらどうなるか。これだけで勝ったも同然の設定なんだけど、これに、数少ない資料から当時のようすを再構築するという現代視点のストーリーがからむ。
上下巻の上巻は、異星人と人類の交流をじっくり描く。じっくりすぎてジリジリするほどだし、現代パートが絡んでるんだか絡んでないんだかよくわからない。正直「失敗したかな」と思った。が、ファンタジー耐性の低い異星人たちが次々とキリスト教に帰依し始める中盤から、がぜん面白くなってくる。といってもギャグに走ることなく、そして言うまでもなくペストが登場することでむしろシリアス極まりない展開になり、最後は中世と現代の間で別々に展開していた物語がカチリとはまる。ああ、これがSFの快感というものですよ。
なんかね、いろいろなものが実にバランスよく配置されているのがいい。圧倒的な科学力を持つ異星人と数で勝る人類の力関係が醸しだす緊張感、インテリで自由な思想の神父と真面目で敬虔すぎる修道士の関係、理論物理学者と歴史研究者のカップル。水と油のような組み合わせが反発しつつ引き合って、物語に深みを与えている。
ひさびさに手にとったSFが「当たり」でよかったなぁ。
異星人の郷 上 (創元SF文庫) (創元SF文庫)
東京創元社
¥93
異星人の郷 下 (創元SF文庫) (創元SF文庫)
東京創元社
¥497
*1 SFに登場する中世ヨーロッパと言えばペストです。
2011-01-12(水) [長年日記]
■ Wikisourceで(ちょっとした)編集合戦を体験した
こないだ紹介した『プログラマが知るべき97のこと』、いつまでたってもAmazonに入荷しないのでグチっていたら、中尾さんに指摘された:
@tdtds かの本のXIIページによると、エッセイは CC-BY 3.0 US とのことなので、テキストデータ化して毎日一エッセイ表示するアプリをつくって流通させてしまいましょう。
— NS(id) (@32nm) January 9, 2011
なるほど! 読み飛ばしていたが、たしかにCCだって書いてある。原書がCCであるにも関わらず、翻訳されると(意図的かどうかわからないが)なぜかライセンスが抜け落ちてしまう書籍が多い中、素晴らしいことであります。
で、さっそく(中尾さんが)Wikisourceに目次ページを用意したので、試しに5つほどページを起こしてみた。なにしろこっちは自炊済み、OCRがテキスト化してくれたPDFファイルがあるので、事実上コピペするだけである。
それが日曜夜のこと。
翌朝、ページをリロードしてみると、早くも削除対象になっていた(笑)。仕事はえぇ。
いや、CCなんだから不当な削除なんだけど、明らかに書籍をもとにした文章を何の断りもなくコピーしたのだから、むしろしっかり自警がされているということで、Wikisource的には好ましいのではないかと思う。ザルよりは少しくらい過剰な方が良い場合もある。
で、ちゃんとライセンス的に問題ない旨をノートに書いて復活。そんでもって翌日にみてみたら、また削除されてるの(笑)。
その後の展開は削除依頼のページを見ればわかるように、ちゃんと誤解が解けた上に、適切な書き方まで指導してもらい、おまけに目次には最初の5つばかりか、なぜか残りの100あまりの項目まで並んでいる(←いまここ)。
今回のは「編集合戦」と呼ぶほどのものではないけれど、ライセンスがはっきりしたものしか載らない/載せないWikisourceだからいいものの、Wikipediaでこういうことが起きたらたしかに収拾がつかなくなるのもわかるわなぁ。
ちなみにオライリーの営業妨害をするつもりはないので*1、おれは(少なくとも十分に時間がたつまで)これ以上の追加はしないけど、ライセンス上の問題はまったくないので、残りの100項目あまりの追加はご自由にどうぞ。
*1 だから早くAmazonで買えるようにして下さい。
2011-01-10(月) [長年日記]
■ 本当は怖い『キック・アス』
映画『キック・アス』を観てきた@TOHOシネマズ川崎。観測範囲では観てきた人みんな大絶賛で、最初は4館から始まった上映館も増えてきているみたいだし、これは観ておかなくちゃね、ということで。
ヒーローもののエンターテイメントとしてはまさしく素晴らしい出来で、派手なアクションは痛快この上ないし、他のヒーローもののオマージュは盛りだくさんだわで*1、笑いどころも多くて全編飽きるところがない。キック・アスのキョドった目付きや、ヒット・ガールのワルそうな唇含め、わざとらしい演出もいいですねー。あ、あと、ケイティの友だち役の人がかわいいので、思わずFacebookのファンページに入ってしまった(けど公式かどうかわかんない)*2。
ただ、立ち止まってよく考えてみるとこの映画、えらく怖い話だよなぁ。通常こういうヒーローものは「これはフィクションですよ」というポイントが必ずあって、現実との境界線をきちんと引くものだけど、『キック・アス』は徹頭徹尾、「現実」から軸足を外そうとしない。主人公はたやすくぶちのめされて大怪我するし、本当に人が死ぬし。(以降ネタバレ注意)悪役は警察を買収している麻薬組織だし、洗脳されて育った11歳の女の子は倫理観ゼロの殺人鬼だし、最後は復讐の連鎖までできあがるのだから、まったくもって救いがない。
てぇことは、一見ヒーローものに見せかけているけど、実はぜんぜんそんなつもりはないんじゃないのかね、この作品。まぁ、これ以上は深読みのし過ぎかもしれないから書かないけど、単にスカッと爽快なエンタメじゃなくて、なんだかずっしり重いものを受け取ってしまったような、居心地の悪さがある。
◆ 咳 [そういうわけで日本人の2は以下にテキストデータがあります。 http://d.hatena.ne.jp/m_seki..]
◆ ただただし [らじゃw]