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ただのにっき


2011-01-10(月) [長年日記]

本当は怖い『キック・アス』

映画『キック・アス』を観てきた@TOHOシネマズ川崎。観測範囲では観てきた人みんな大絶賛で、最初は4館から始まった上映館も増えてきているみたいだし、これは観ておかなくちゃね、ということで。

ヒーローもののエンターテイメントとしてはまさしく素晴らしい出来で、派手なアクションは痛快この上ないし、他のヒーローもののオマージュは盛りだくさんだわで*1、笑いどころも多くて全編飽きるところがない。キック・アスのキョドった目付きや、ヒット・ガールのワルそうな唇含め、わざとらしい演出もいいですねー。あ、あと、ケイティの友だち役の人がかわいいので、思わずFacebookのファンページに入ってしまった(けど公式かどうかわかんない)*2

ただ、立ち止まってよく考えてみるとこの映画、えらく怖い話だよなぁ。通常こういうヒーローものは「これはフィクションですよ」というポイントが必ずあって、現実との境界線をきちんと引くものだけど、『キック・アス』は徹頭徹尾、「現実」から軸足を外そうとしない。主人公はたやすくぶちのめされて大怪我するし、本当に人が死ぬし。(以降ネタバレ注意)悪役は警察を買収している麻薬組織だし、洗脳されて育った11歳の女の子は倫理観ゼロの殺人鬼だし、最後は復讐の連鎖までできあがるのだから、まったくもって救いがない。

てぇことは、一見ヒーローものに見せかけているけど、実はぜんぜんそんなつもりはないんじゃないのかね、この作品。まぁ、これ以上は深読みのし過ぎかもしれないから書かないけど、単にスカッと爽快なエンタメじゃなくて、なんだかずっしり重いものを受け取ってしまったような、居心地の悪さがある。

キック・アス Blu-ray(特典DVD付2枚組)
アーロン・ジョンソン
東宝
¥1,787

Tags: movie

*1 と言ってもあんまりたくさん見ているわけではないけど、バットマンやスパイダーマンくらいはわかる。

*2 そう言えば映画に登場するSNSはFacebookでなくMySpaceである。登場人物たちの年齢層が低いからかな?

本日のツッコミ(全3件) [ツッコミを入れる]

向井 [そういう感想ならぜひ原作も。原作の方が暗い雰囲気で設定に一部違いがあり、あまりエンタメしていません。]

にじむ [まさにわたしも同じようなところで引っかかってました(Twitterにはちょっと書いた)。現実のまま結構なことが行われ..]

ただただし [あー、やっぱ原作はそっち方向なのね。というか、近年のアメコミってみんなそういう感じなんじゃ(伝聞でしか知らないけど)..]


2011-01-09(日) [長年日記]

ABC2011w (Android Bazaar and Conference 2011 Winter)に行ってきた

[写真]安田講堂

6月のABC2010sに続いて、Android Bazaar and Conferenceに行ってきた。前回は東大駒場キャンパスだったけど、今回は本郷、メイン会場は安田講堂である。……と言っても前夜、急な謎の吐き気に襲われて*1、10時間もぶっ通しで寝てしまったので、午前中の基調講演を聞き逃したばかりか、午後から行ってみたら予定していたセッションはすでに満席で入ることもできなかったという。何しに行ったんだオレ。

事前情報で参加申し込みが3,000人(!)というのを聞いていたので、こういう状況は予想できたことではあるが、混雑が苦手な人間にはつらいイベントになってしまったなぁ。まぁそれはそれとして、Androidが盛り上がっていることはたいへん喜ばしい。アメリカでVerizonがiPhoneを売るようになったことからしても、AppleがAndroidに相当危機感を持っていることがわかるわけで*2、やはり対抗馬がしっかりしていないと健全な市場は形成されないからねー。

で、そんなAndroid一色のセッション(同時7トラック!)を尻目に、電子出版のセッションを聴いたりしていたのだが(ホント、何しに行ったんだ。いや、村田真さんがしゃべるというので)。EPUB3.0の話題だったのだけど、縦書き、ルビ、縦中横などの実装は先行してWebkit上で行われていて(ここだけがAndroidとの接点)、現在はほぼ問題なく表示できているとのこと。逆に言えばEPUB 3.0の仕様を満たすにはほぼフルスペックのWebブラウザを作らなくてはいけないわけで、なかなかハードルの高い話だ*3。そんな最新のWebkitがAndroidに取り込まれて各端末に配備されるのはだいぶ先になるはずで、普及までにはしばらくかかりそうだなぁ。

最後は(せっかくなので)安田講堂でシャープの話を聴くなど。主に夏・秋モデルの話だったので新しいことは多くなかったのだけど、「開発用に端末貸し出しはないのか」という質問に「キャリアを通して出荷しているものだから難しい」と回答していたのが印象的だった。そうか、せっかくメーカーが開発者とうまくやっていきたいと思っていても、キャリアが足かせになってるのか。だったらさぁ、「つぎのNexus」をシャープから提供するように画策してみたらいいんじゃねーの、と思った。「Nexus SH」とか。せっかくの国産Android端末、ドメスティックな機能を盛り込むことばかりに注力してないで、世界標準の端末作るという方向はどうよ?

Tags: android

*1 みんな揃いも揃って「ノロだ」「ノロだ」と言ってたけど、そんなことなかったよ。

*2 キャリアが自分に有利な条件でiPhoneを扱うなら今がチャンス(笑)。

*3 もちろん「青空文庫専用」とか特定用途に絞ってサブセットを作るのもアリとのこと。


2011-01-08(土) [長年日記]

「ひとりぼっちのプログラマ」に読んで欲しい、『 プログラマが知るべき97のこと

オライリーの高さんから献本いただいた。いつもありがとうございます。

この本はねぇ、「ひとりぼっちのプログラマ」にぜひ読んで欲しいなぁ。

ここでいう「ひとりぼっち」にはふたつの意味があって、ひとつは「ひとりでがんばっているプログラマ」。

Twitterやブログを読んでいると、仕事でいろんなことにチャレンジしたり、業務を改善したりしたいと思っているのに、職場の文化が壁になったり、上司の理解が得られなくて歯がゆい思いをしている若いプログラマの叫びが、それはもう、かなり頻繁に聞こえてくる。10年前ならいざしらず、今ならさっさと転職してしまうのが正しい道だろうけど、そうもいかない事情を抱えている、でも現状をなんとかしたい……そう感じているひとりぼっちのプログラマにとって、本書はいい味方になってくれると思う。というか、モチベーションを失って旧弊な企業文化に飲み込まれるまえに読むべき。

本書にエッセイを寄せている数十人のベテランプログラマたちは、おそらく今は恵まれた環境で仕事をしていると思うけれど、けっこうな人数が若い頃の失敗や挫折についてかなり赤裸々に語っている。そうそう、あちこちに「達人プログラマ」への言及も目立つのも特徴的。彼らとて、Daveら「達人」に憧れて、失敗を繰り返しながら今の地位にのぼりつめ、達人の一人になったんだよね。

我々日本人からすると青々とした芝生に見えていた英語圏のプログラマたちだって、さまざまな壁にひとりぼっちで立ち向かわなければいけなかった時はあるし、それでも「達人プログラマ」を目標に歯を食いしばって努力を続けたから、英語圏を代表する数十人のプログラマの一人としてエッセイを書くまでになれたのだ。

エッセイの内容は「えっ」と思うほど初歩的なことも多い。でも彼らがそこに至るまでには、きっとひとりでがんばっている時期があって、それが血となり肉となっているから、どんなに初歩的な内容であってもここに載る価値を持ったのだ。だから、いま、ひとりぼっちでがんばっているプログラマは、同じ境遇の「仲間」と「目標」を得る意味で本書を手に取るといいんじゃないかなぁと思う。

もうひとつは「孤立したプログラマ」という意味での「ひとりぼっち」。これは自覚しにくいけど、日頃から「自分以外のプログラマはバカばっか」と考えていたり、テスターや上司(ときには顧客まで)を敵だと感じることが多いなら、本書を読むべきだ。

上で書いたような「ひとりでがんばる」ことをやりすぎた結果、職場で孤立してしまう弊害について書かれたエッセイもまた、本書で大きな割合を占めている。というか、純粋に技術的なエッセイを除けばほとんどが「一人で仕事してると思うなよ」という戒めがテーマになっていると言っても過言ではない。それは、プロダクトに関わる他の人々のことであったり、(自分を含む)未来のメンテナのことであったりさまざまだけれど、自分勝手で独りよがりなプログラマはプロではないという意見が、手をかえ品をかえて登場している。

もし自分が職場で孤立していると感じているプログラマがいたら、これもまた一度手にとってなぜいま自分は孤立しているのかを振り返るきっかけにしてみてはどうかと思う。とはいえ、こっちの「ひとりぼっち」は、たいてい自覚症状がないからなぁ。

プログラマが知るべき97のこと
和田 卓人
オライリージャパン
¥3,889

蛇足: ほんとはだいぶ前に読み終えていたんだけど、Amazonの在庫がぜんぜん復活しないのでちょっと待っていたのだ。読みたいと思ってもらえてもその場で買えないんじゃ紹介する意味がないし。まぁ年末年始を跨いでるからしょうがないね……と思っていたが、年があけて一週間待ってもまだ入荷しないし、あんまり時間があくと内容を忘れてしまうので(笑)、しょうがない。リアル店舗では買えるみたいなので。

ホント、こういうのを見ると紙の本なんてとっととなくして、デフォルトで電子書籍になって欲しいと思うよ。まぁ、オライリージャパンのPDFは制限キツくて評判悪いみたいだけど。

Tags: book

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