2010-12-23(木) [長年日記]
■ インプレスの「OnDeck」をKindleで読んでみた
インプレスが電子書籍に関する雑誌「OnDeck」を電子媒体だけで出すと聞いて、無料の創刊号をダウンロードしてみた。EPUB形式。
もちろんEPUBはそのままでは読めないので変換する必要がある。Amazonが配布しているkindlegenはEPUBもソースとして受け付けるので、まずはこれを利用してみる。
……なんか残念な感じに。
いやまぁ、kindlegenのEPUB→mobi変換はイマイチだとは聞いていたけど。文字装飾がほとんど反映されてないのと、ヘッダ部分のグラフィックスがおかしい。あと、目次が無視されてる。ドキュメントのメタ情報も化け化けだ。
小説くらいなら十分だけど、ちょっと凝ったことしてたらダメだねこれは。
続いて電子書籍周辺を嗅ぎまわっているとかならずこの名前に出会う電子書籍管理ソフト「calibre」を使って変換。
評判通りいい感じ。
もとのEPUB版がどれほどの表現力を持っていたのかはわからないけど、calibre内蔵のEPUBビューアに比べて遜色ない出来栄えだし、実際読んでみても表組み以外は問題なさそう(表組みもカラム幅が微妙なだけでレイアウトの大枠は崩れていない)。表紙や目次もきちんと反映されているし、これは十分実用的なコンバータと言えそうだ。ヘッダ部分のTwitterアイコンは「クリック」できないっぽいけど、本文中のリンクは生きていて、内蔵Webブラウザが立ち上がるし。
これならEPUBな本にも躊躇なく手が出せるってもんだね。DRMかかってなければ。
calibreはひととおり使ってみたけど、動作がかなりもっさりしているのは別にしても、まだあんまり使いやすくないかなぁ。ユースケース分析がされてないというか、機能は豊富だけど、やりたいことが簡単にできない感じだ。まだ「できること」を増やしている段階だと思うので、今後の進化に期待、かな。というか、おれの用途ならcalibreのEPUB→mobi変換部分だけツールになってればいいんだが……*1。
そうそう、肝心の「OnDeck」は、雑誌としてはそこそこ網羅性があって、こんな感じのが定期的に出てくれるなら悪くないんじゃないかなぁと思った。少なくともちゃんとリフローするフォーマットで出してくれるのはいい。特に「メイキング・オブ・OnDeck」は電子雑誌の編集にまつわる苦労が赤裸々な感じで面白い。気に食わない点があるとすれば、なぜか本文中の英数字が全部全角な点。スッカスカでマヌケすぎる。
これ、創刊3号までは無料配布でその後有料化するみたいだけど、DRMはどうするんだろうね。たぶんDRMがかかったらmobiに変換もできなくなるんじゃないかと思うので、読みたくても読めなくなっちゃうんだけど。なんかさー、「うちはDRMかけません」って喧伝する出版社はあれど、「うちのDRMはこれです」ってちゃんと説明してる出版社って少なくて、安心して手を出せないんだよね。普及前段階のこの時期に買い控えさせてどーすんだっていう。
*1 と思って「epub2kindle」なんてキーワードで探すとそれなりにあったりするのであとで試すかも知れない。
2010-12-21(火) [長年日記]
■ 「まおゆう」をKindle向けPDFにしたら2,600ページ超の大長編になったでござる
しばらく前に話題になった「まおゆう」こと『魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」』が書籍化するというので、「そんなに面白いなら読んでみようか」と思ったものの、『電車男』の頃ならいざしらず、いまさらブラウザで長編小説を読むのはキツいのでそのまま放置していたんだが、今のおれにはKindleがある!
……ということで、まとめサイトから全スレをダウンロードしてきて青空文庫形式のテキストを吐くスクリプトをちょろっと書いた(もちろんRuby 1.9専用):
- maouyusya2aozora.rb まとめサイト上の「まおゆう」を青空文庫形式のテキストファイルに変換する
こんな感じで実行すると、青空キンドルマニュアルを使ってKindle向けのPDFにすることができる:
% ./maouyusya2aozora.rb > maouyusya.txt % curl --data-urlencode text@maouyusya.txt -d s=m -o maouyusya.pdf http://a2k.aill.org/download.cgi
で、Kindle用なのでかなり字詰めが少ないとはいえ、2,600ページを超える大長編になったのには驚いた。登場人物の会話だけから成り立つ小説でこの長さとか、早くも最後まで読み終える自信がない(笑)。
ちなみに紙の本はもう予約できるようになっているようだ。「1」ってことは何巻かに分かれるんだなー。付加価値つけるためにもかなり加筆されてるだろうし。
9784047269330
2010-12-20(月) [長年日記]
■ ホーガンの「巨人三部作」を読み返した
J・P・ホーガンが7月に他界してから、なにか読み返そうと思っていたんだけど、SFからだいぶ離れていたのでなかなか腰があがらず、やっと自炊してKindleに入れることで読む気になった。ターゲットはもちろん、「巨人三部作」*1。
読み始めてしまえばそう簡単には止められないくらい面白いのはわかっているわけで、並行して他の本を読みつつも*2、ついついこっちに手が伸びる。最初の翻訳が出てからほぼ30年がたっているとは思えないくらい古びてない*3。やはり傑作中の傑作だねぇ、この3冊は。
もっとも学生だった当時とは違って、目に付くものもいろいろ違っているわけで、古典を読み返す面白さもまた発見だった。なかでも「巨人たちの星」にはホーガンが後年傾倒する「社会科学SF」の萌芽(というかそのまんま?)があって、ああ、もしかすると最初からこっちがやりたかったのかもねぇ、向いてなかったけど……などと思ったりした。初めて読んだときはそんなこと気にもならなかったのにね。でもまぁ「SFは"人間"は描かないかも知れないが"人類"は描く」の王道を行く、骨太でホンモノのSFであることに変わりはない。
「もう絶版なんだろうなぁ」と思って本屋を覗いたら平積みになっていた。追悼の意味かどうかわからないけど、増刷になっているみたいだ。変な萌え系に走らず当時のままの表紙もいいですな。もちろんAmazonでも新品が買える。
9784488663018
9784488663025
9784488663032
◆ さく [タバコについては「渚にて」を読んだ時に同じような印象を持ちました。]
◆ sasasin [curlなんてただのダウンローダーだと思ってました。manを開いたらすごいことに... 青キンのバックエンドはTe..]
◆ ただただし [ははは、ImageMagicのお返しができたかな;-) 「%」はおっしゃる通りでした(←作るのに満足してまだ読んで..]