2008-05-11(日) [長年日記]
■ 裏磐梯周辺ツーリング(2)
昨日に続いて裏磐梯周辺を走ります。
07:30 猪苗代湖
ホテルの朝食は07:00からなのでパスして、事前にコンビニで買っておいたパンを食べ、06:00に出発。中年ライダーのツーリングというと、各地の温泉につかっておいしいものを食べて……というのが多いのだが、はっきり言ってそんなことには興味がない。というか、そういう旅行は家族とするものだ。バイクで一人旅なら、寸暇を惜しんで走るべし。
今日は「裏磐梯三大スカイライン」の残り2本を走るので、猪苗代湖をぐるっと回って北東へ進む。
今回、湖の周回ルートはナビに自動で決めさせたんだけど、べったり湖岸ばかりでもなく、遠回りな国道ばかりでもない絶妙な距離感でいい感じだ。大きくて入り組んでいる湖を一周するときに、地図を見ないで走るというのは従来はありえなかったんだけど、ナビのおかげですごく楽になった。ルートを外れて冒険して迷っても、すぐにもとに戻れるし。おれみたいな方向音痴には、夢のような機械だなぁ。
08:30 磐梯吾妻レークライン
本日一本目の有料道路、レークラインへ。書き忘れたが、朝からずーっと雨である。昨日より本格的な雨。
ドカに乗ってたときは雨だと出かける気にもならなかったが、BMWだと特に躊躇することもなくなった。とはいえおっくうなことに変わりはなかったのだが、GSになってからはそんな不快感すらなくなった。ABSの安心感だけでなく、上から下までゴア尽くしのウェアは晴雨関係なく走れるし、ETCやカーナビのおかげで停車して財布を出したり地図を見たりする必要がなくなったのが大きい。若い頃は重装備のツーリングには嫌悪感すら抱いていたものだが、こういう装備は楽しさを削がないために必要なんだなぁ。
そんなわけで、雨だとまったく止まらずに走り続けてしまうのだが、生理現象はどうにもならない。レークラインのレストハウスでトイレ休憩をしていると、まだ開店していない売店のおばちゃんが店内に招き入れてくれた。ストーブが暖かい。グリップヒーター全開で走っていても、やはり指先はかじかむわけで、こういう好意はありがたいねぇ。
そうそう、昨日は意識していなかったが、「要所要所で場所とコメントをTwitterに入れていけば、あとで日記書くのが楽じゃね?」と思ったが、その矢先にケータイの電池が切れた。この先、帰宅するまで必然的にオフラインに。
09:30 磐梯吾妻スカイライン
続いて磐梯吾妻スカイライン。日本の道百選のひとつらしく、料金もびっくりの1000円超である。大人なので躊躇しないで走るのである。もっとも、入ったらすぐに濃霧になってしまい、自慢の眺望はまったく見えないわけだが。
料金所で「上は雪ですよ」と言われ、また残雪がたっぷりなんだろうと思ったのだが、雲を抜けて上に出たら、本当に雪がゴンゴン降ってた(笑)。昨日よりさらに1枚多く着ているので寒くはないんだけど、5月のツーリングということを忘れるような天気だ。
ふもとでは淡い若葉をつけている白樺やブナが、上の方では丸裸で雪に埋もれている。さらにその先では硫黄の匂いが立ち込める不毛の地が延々と続く。これで雪が降ってるんだもん、なるほど絶景だ。
この道を抜けてしまうとずいぶん遠回りになってしまうので、途中でUターン。
13:00 ナビが気を利かせてくれたと思ったら自分で設定した道だった
来た道をほぼ逆走する形で会津若松に戻り、そのまま南下。奥只見はどうかを勧められたので、このまま新潟に抜けてしまおうというルートである(ここでわかってる人なら「らめぇぇ」と叫ぶところだが、もちろんわかってない)。
会津田島のセブンイレブンでパンをかじっていたら野良猫になつかれたりしながら、R121を南下。全身びしょぬれなので、レストランとかに入れないんだよな。R121は微妙に街中を通る道で、交通量が多い上に退屈。そろそろ限界だなー、と思ったところでR352に入ってまた空いた。
ところが、その直後にナビが右折を指示。林道並みに細い道をどんどん登っていく。ガードレールもない、落石跡ばかりの道で、いくらなんでもこんなルートを自動で選択するナビは欠陥品だろう! と思ったら、事前に自分で設定した道だった。とほほ。R352の旧道で、峠からの眺めは絶景らしい……が、もちろん雨と霧で見通しは悪い。でも、雑木林の合間を縫う、ぼろぼろな舗装の細い道は、はっきりいって大好物である。楽しかった! ルートを設定した一昨日の自分、GJ!
14:00 ナビが道を見失う
その後R352に戻ったのでそのまま素直に走ればいいものを、やはり一昨日の自分がショートカットを設定してあったようだ。桧枝岐村方向へ。
が、R352に戻る最後の道が写真のように通行止。なんとなく通れそうな感じはあるが、行くだけ行ってダメだったらダメージが大きい。このまま走ってればナビが別ルートを見つけてくれるだろう……と思ってだらだら走っていたら、ピーっと言って降参しちゃった。えー。あきらめるのが早いよ!
仕方がないので元の分岐まで戻ってR352を西へ。雨はほぼあがって、路面も乾いてきた。
14:30 そして夢潰える
それにしても道が空いている。信号もないから、1、2時間のあいだ足をつかずに走り続けることもできるくらい。まるで北海道だ。東北の山奥って、どこもこんな感じなんだろうか。ライダーの夢が具現化したような土地だね。道路行政万歳。
などと頭の中をお花畑にしながら走っていくと、ふたたび前方に雪山が迫る。ずんずん登って、周囲が幻想的なブナ林になったところで、ふたたび通行止。な、なんだってー!?
いや、たしかに「R352、尾瀬まで通行可」って案内は出ていたけど、「尾瀬が一般車禁止なのは常識だろ」とか生半可な知識で都合のいい解釈をしていた。字義通りに読めば、尾瀬から先は通行止めって意味だけどさー。じゃあこの季節、福島から奥只見には行けないのか。がーん。
いやぁ、以前GWにカブで青森に行ったとき、数メートルの雪の壁に挟まれて酸ヶ湯温泉まで行けたもんだから、日本人は5月までにはどんな道も通行可能にするものだと思い込んでいたんだよねー。少なくとも本州では。いやはや、下調べは大事ですね!
それにしても尾瀬か……なつかしい。大学一年のときに来て以来だな。あの時もずっと雨だったっけ(こんな思い出ばっかし)。
というわけで、もう何も考えたくなくなったので、ナビの目的地に「自宅」を入れて、言われたとおりに帰ってきた。2日間の総走行距離、1,235km。よく走ったなー。GSも20,000km超えたので点検に出さねば。
2008-05-10(土) [長年日記]
■ 裏磐梯周辺ツーリング(1)
05:00 出発
普通に雨なわけだが、何も言うまい。そういう運命だ。
久々に両パニアケースとタンデムシートをつけて出発。タンデムシートは、別に「旅先でヒッチハイク中の女の子を拾うため」ではなく、高速巡航中に腰のサポートをするためである。06:00までに東北道に入るつもりで東名へ。
09:00 安達太良SA
朝食をとった蓮田SAを出てから2時間走ったので休憩。走りながらずーっと歌ていたので、声が枯れた(限度を知れと)。でもiPodの電池切れちゃった。Bluetoothは、電池食いすぎで実用性が乏しすぎる。
気温は10℃くらい。雨は弱いけどやまない。寒いので、念のためにパニアケースに詰め込んでおいた、ダウンのインナーウェアとゴア・ウィンドストッパーのアンダーパンツを着用。早くも冬装備。先が思いやられる。
あと、郡山の手間で、前からホイールキャップが飛んできた時は死ぬかと思った。ホイールキャップが飛ぶシーンなんて、映画にしか出てこないんだと思ってた。こえぇよ東北道。
11:00 蔵王
東北道を白石I.C.で降りて、蔵王エコーラインへ。ガソリン入れるたびに、あまりの高値にギョッとするね。
雨はまだ降っている。でも、雨は嫌いじゃないよ。長年の付き合いだしな。じゃなくて、特にこの季節は、濡れた若葉がいっそうみずみずしく見えるしな。エコーラインも、山麓の新緑が実に素晴らしい。
と、いい気分で登って行くと、どんどん寒くなって一面雪に。まぁ、そりゃそうか。冬装備で良かった……。道はやや荒れ気味ながらGSで楽しいタイトなワインディングで、満足。
下界に降りたあと、上山市の原口そばやで蕎麦。名物らしいが(というか、このあたりはどこに行っても蕎麦が名物と主張している)、昔から蕎麦の味はそれほどよくわからないので、うまいのかどうか判断できない。漬物はうまかった。
13:30 ぶどうまつたけライン
関東の山は右を向いても左を向いても杉ばかりで、こんな山にしてたら花粉症にもなるよなぁというひどい単一植生なんだけど、東北の山はバリエーションに富んでて、見ていて飽きない。なんとなくよさげな気がしてルートに組み込んだ「ぶどうまつたけライン」も、そんな山並みに囲まれながら走るいい道だった。アップダウンが少なく、コーナーも緩やかなので、風景を存分に楽しみながら走れる。
雲は多いが雨は上がったので、気分も上向き。おまけに、走行中一台も車を見かけなかった(笑)。今日はホントに週末か。
14:30 西吾妻スカイバレー
再び雪景色。
「動物飛び出し注意」の道路標識がニホンカモシカやニホンザルの絵柄だったので、そういうのがいるんだろうなー、と思って走っていたら、道端にふつーにニホンザルがいた。自然すぎる。
止まって写真でも撮ろうかと思ったが、こういうところの猿は食料目当てに人を襲ったりするかも知れないので、目を合わさないようにして通過した。それとも人を襲うのは日光の猿だけだろうか?
16:30 桧原湖
久々に「湖を一周したい病」が再発したので、桧原湖を一周半(冒頭のルートには含めず)。その後、五色沼に寄ってみたが、特段変わった色ではなかった。日が悪かったのだろうか。つーか、全部の沼を回ろうと思ったら、往復8kmも歩かなければならないようだ。ライディングブーツでそれはムリだよなぁ。いつか家族で来よう。
17:00 会津若松
有料道路の磐梯山ゴールドラインで南下、会津若松へ。
ホテルに荷物を置いて、周辺をウロウロしてみたが、なんにもない街だ。日帰り温泉があったので、飛び込んで温まる。なにしろ寒い。5月とは思えない寒さ。
そのまま夕飯。ソースカツ丼が名物なの? もちろん、見た目通りの味。
◆ smbd [五色沼は西側と東側を結ぶバスがあるので、それに乗れば片道の4kmで済みますね。ライダーブーツで歩きました。]
2008-05-08(木) [長年日記]
■ 本泥棒(マークース ズーサック)
タイトルに惹かれて、まったく予備知識なしに買ってみた。だって『本泥棒』だよ? 買うよなぁ。ちなみに非SF。読み終わってから、外国ではベストセラーになっているということを知った。ベストセラーは買わない主義だったのに……。
養子に出された無教育で貧相な主人公の女の子と、お人好しで優しい養父、ツンデレの養母。近所に住む、主人公に恋焦がれる少年。やぁ、これは『赤毛のアン』のバリエーションですね! 大好物だぜ!!
しかしながら、舞台は第二次世界大戦下のドイツ。暗い話がひたすら続く。養父の教えで字が読めるようになった主人公は、言葉の魅力にとりつかれていくが、残念ながら貧乏な一家に余裕はなく、盗むしか本を手に入れる方法はないのだ。大好きなものを手にするのに、他人から奪い取るしかないなんて、それだけで泣ける。
各章の冒頭で、その章の結末が明かされるという変わった構成から、単純にストーリーの上っ面を読んでおしまいにすることは期待されていないのがわかる。それだけに、ドイツに暮らす少年・少女たちの描写が実に緻密で、臨場感がハンパじゃない。
実際、ストーリーだけを追うならば、考えうる最悪の結末を迎える、ただの後味の悪い話になってしまう*1。しかし、そこから振り返ると、数えるほどの暖かいエピソードたちが、まばゆいばかりに輝くのだ。重いようで軽やかな、不思議な読後感のある一冊。歴史に残る名作になるかも知れん。
*1 語り手である「死神」が自らの言葉で語るエピローグでは少し救われるが。
◆ kitaj [2日で1200kmってスゴイねぇ.おそるべしBMW. ドカじゃ絶対に走りたくない…]
◆ ただただし [もっと恐ろしいのは、これだけ走っても特に疲れてないってところかな。もうひとっ走りできるよ。]
◆ satot [えー!? 国道なのにGW明けてもまだ通行止めですか? これは失礼しました。ほんとに人身御供にしてしまいました。すいま..]
◆ ホリウチ [お疲れ様でした〜。 写真、文章ともに楽しく拝見しました。 ソロツーリングいきたい病が再発しそうです。]