2014-08-27(水) [長年日記]
■ パラークシの記憶 (河出文庫)(マイクル・コーニイ)
前作「ハローサマー、グッドバイ」の感想で未訳の続編のことに触れていたにもかかわらず(しかもその出版が決まったことまで追記しておきながら)、1年近くもまったく気づかずにいたというね。なんでAmazonはこれをレコメンドしないのか。
続編とはいえ前作から「一周期」ほどあとの時代の話なので、登場人物も重ならないし、設定についてもちゃんと説明があるので前作を読んでいなくても話はわかる。が、どうせこれを読んだら前作も読みたくなると思うし、そうなると前作の「大どんでん返し」を楽しめなくなってしまうのでちゃんと前作から読んだほうが良い。
で、続編も「どんでん返し」かというとそうでもなくて、スタイル的には正統派のミステリー、それも殺人事件の。もちろん事件の真相はある意味「どんでん返し」なんだけど、それよりもたんねんに構築された世界の生態系や新しい異星の文化の描写が楽しい本だと思う。
とはいえ、前作からこの星の人々にはどういうわけか世代を超えて伝わる完璧な記憶という超能力が付加されていて、たったひと世代でこんな変化が起きるというその理由もいちおう説明されてはいるんだけど、個人的には「ないわー」と感じた。ほかにも地球人が登場したりと、変化をつけるためとはいえちょっと都合が良すぎる状況設定が目立つし、恒例(?)のボーイミーツガールもいささか順調すぎて単純だ。
十分楽しめたし佳作には違いないが、前作が大傑作だっただけあって、ちょっと点が辛くなっちゃうかな。作者が書き上げたあとで出版せずにいたというのもあんまり出来に満足してなかったからではないか……なんてよけいな想像をしてしまうのだった。いや面白かったけどさ。