2008-08-19(火) [長年日記]
■ ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)(マイクル・コーニイ)
かつてサンリオ文庫で出ていた本の新訳、どうも傑作らしいとの噂を聞いたので読んでみた。たしかに傑作。
サンリオが生きてる頃がいちばん本を読んでいたので、どこかですれ違っているはずだが*1、ぜんぜん覚えていない。
さて、内容はといえば、典型的なボーイ・ミーツ・ガールな青春恋愛小説。ちょうど子供から大人に「なってしまう」微妙な時期の少年と少女が、戦争が暗い影を落とす小さな漁業の街で恋に落ちる。苦く切ない物語……と書いてしまうといかにも陳腐な感じなんだけど、話がうまくてギクシャクしないので、とても読みやすくて良い小説。
それだけなら良いのだが、どういうわけか、舞台が異星、主人公たちも人間ではない。オリジナリティあふれる生態系、この惑星独特の風物、文化など、実によく作りこまれた世界だが、恋愛小説的にはぜんぜんSFである必然性がない。わざわざ読者を狭めるなんて、ほんまSF作家の考えることはわからんわ。
……などと油断して読んでいたら、ラストのほんの3ページでだだだだーん! と見事なまでのどんでん返しで、頭を抱えた。再三にわたって伏線が張ってあったのに、全部みのがした! おれはアホか! なるほど、これは確かに、SFとしても傑作だ。
なんでも未訳の続編があって、それが出るかどうかは本書の売れ行きにかかっているらしいので、SF者はきっちり買っておくべき。
*1 同じ作者の「ブロントメク!」は見覚えがあるけどタイトルから内容がさっぱり想起できないので買わなかった覚えがある。当時は今ほど書籍情報にアクセスしやすくなかったからなぁ。サンリオ文庫を買い占めておけば、いまごろ大金持ちですわ(ないない)。
>サンリオ文庫を買い占めておけば、いまごろ大金持ちですわ
買い占めておいたら、売ることなんてできないですよね!ね!
とりあえず、好きなかんじなので読んでみようと思います。>表題作
続編の出版が決まったそうです:
http://bm.que.ne.jp/log/20080821.html#p01