2014-08-25(月) [長年日記]
■ ALS以外の難病のことも時々でいいから思い出してあげてください
数日前にしたTweetが、いつの間にか1000件以上RTされてて「おおっ」てなった:
世間が氷水かぶって浮かれてるさなか、日本の各種難病患者たちの手元には来年から医療費の負担額が上がる法改正のお知らせが届いておりますね。
— ただただし⋈ (@tdtds) August 22, 2014
たどってみるとアンチ自民とかアンチ安倍政権みたいな人たちの琴線に触れただけみたいではあるけど。まぁそうだよね。
言うまでもなくALSアイスバケツチャレンジと特定疾患医療受給者の自己負担が増える話には関連はない。両者を並べたところで、そこに意味を見出せるのは当事者だけだろう。なので実際にALSに寄付をした人を揶揄する意図はない。まぁ、一人の難病患者としては「ALSめうまいことやりやがって」とか「その寄付金、ちょっとでいいからこっちにも回してくれねぇかな」とは思うけどさ。エゴだって? そりゃそうだ、こっちは自分の命がかかってるんだから。
日本で「難病」(カッコつき)というと、かなりざっくりした定義としては「原因不明で治療法も見つかっていない慢性疾患」で、厚生労働省が決めた130疾患(!)のことだ。そのうちの数十疾患は国から医療補助が出ている*1。話題のALSはその中のone of themにすぎないのだけど、その特異な症状や、天才物理学者ホーキング博士という「ヒーロー」の存在もあって、難病のなかでは超メジャー級の知名度だ。が、今回のチャレンジを通じて初めてその存在を知ったという人がけっこういて、ALSでない難病患者としてはかなり暗い気分になってしまった。
こと病気の話だし、慢性疾患だから症状が表面的になりにくい場合もあって、今回のチャレンジのように派手なことをしないと人々の意識にはとまらないのだよね。一時期マーケティングやプロモーションに関わっていた身としては、こんなにも低予算で効果的なプロモーションを思いついた人をなによりも賞賛したいし、これをきっかけにして他の難病の存在も(少しは)知られたという効果は良かったかなとは思う。他の疾患を持つ人の反応なんかもぼちぼちあるし(随時追記予定):
- ALS アイスバケツチャレンジ|高橋メアリージュンofficial blog 「MARYJUN」
- アイスバケツチャレンジに遠位型ミオパチー患者として思うこと|3人で居れば晴れ~遠位型ミオパチー&車椅子ウォーカー
- アイスバケツチャレンジに対する、1難病患者(間脳下垂体機能障害)の思い - Togetterまとめ
そういう意味で個人的な興味は、安倍首相の動きである。彼はよく知られているように(と書いてはみたけど一般には知られないよね)難病のひとつである潰瘍性大腸炎の患者で、第一次内閣を途中で降りたのは病状の悪化が原因だ。現在ちゃんと職務を遂行できているのは臨床研究が進んで彼の症状にマッチした良い薬が出たからで、まさに日本の対難病政策の成果を享受している人物だ。すでに他の政治家から次のチャレンジを指名されている彼が、どのようなメッセージとともにこれを受けるのか。きちんと他の難病についても言及するのか。「がっかりさせてくれるなよ」という期待とともに待っている。
なお「難病」について少しでも興味を持った人は、難病情報センターのサイトをざっと眺めてみるといろいろわかると思う。公益財団法人難病医学研究財団では寄付も受け付けている。
*1 逆にいうとなんの補助も出ていない気の毒な患者もたくさんいるということだ。