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ただのにっき


2013-08-03(土) [長年日記]

Black Hat USA 2013 & DEF CON 21に行った(5)

続き

今朝はようやくハンズオンの画面に寝ているグスタフが写ったのでこっちから呼びかけたら、声に反応して起き上がり、おれが帰ってきたと思ったのか玄関に向かって駆け出したという……なんつーか、本当にグスタフは犬っぽい。かわいいけど不憫だなぁ。早く日本に帰って、散歩に連れてってやりたいよ。こっちもそろそろ猫禁断症状が。ホテルが猫を一晩貸し出すとか、そういうサービスはないのか。

[写真]Lockpick villageの風景 さて、DEF CON 2日目。朝から退役軍人が語るサイバー戦争の話とか、プロトコルとしての特徴を持たないように設計されたDustというプロトコルの話を聞きつつ、合間あいまに入り浸っていたのが「Lockpick village」、つまりピッキング講座の部屋。以前解錠師の書評で鍵師に対するほのかな憧れを吐露したが、ついにその夢がかなった! もうね、めっちゃ楽しいのよこれ。享楽の街ラスベガスに来て、カジノへも行かず、ショウも見ないでいたけれど、個人的にはこれができたってだけでもう十分だね。

写真のようにテーブルの上にピッキング道具と練習用のシリンダー錠がばらまいてあって、参加者は自由にそれらを手に取り、思い思いに解錠に挑戦する。1時間に1回、主催者のToools.usによる解説講座もある。シリンダー錠の仕組みは知っていたので、講座を受けなくてもピンが1本程度のやつはわりと簡単に開けられた。ピンの数が増えてくると歯ごたえが出てきて、本格的な南京錠になると偶然開くようなことはない。

同じテーブルで難しい錠に長い時間取り組んでいる人がようやく成功、「やったー」って感じで声をあげると、まわりから連帯感とライバル心がないまぜになったような「congratulation!」てな声がかかったり。あんまり楽しいので日本でも続けたいと思い、Toools.usのスタッフに会場で売っている$25くらいのピッキングツールセットを指して「これ日本に持ち込める?」って聞いたら「知らないけど、たぶんOK」みたいな適当な答えが返ってきたので、不安になって調べたら10年も前に成立した「ピッキング防止法」でツールの所持自体が違法になっていることを知る*1。あぶねーあぶねー。

で、「ああ、これがDEF CONか」と気づいたわけだ。ひいては「これがアメリカか」なんだけど、この地では「可能なこと」は「やっていいこと」とほぼ同義なんだな。ピッキングもそうだし、別の部屋では暗号化されていないWiFiアクセスポイントを通ったパケットをキャプチャ、平文で流れるIDとパスワードを表示しているコーナーまであったりして、なんつーか、徹底的に「自由」。だから講演も、技術的なだけでなく文化的な「自由」を扱ったものが多い。これがBlack Hatとの決定的な違いじゃないかと感じた*2

片や、こっちは犯罪に使われる恐れがあるというだけで自分で錠前を開ける自由すらたやすく手放してしまう国の住人だ。たぶん日本人はこの先も、あまり深刻に考えることなく次々と自由を手放していくだろう。そう考えると、この場にいるのが恥ずかしくなってくる。もちろんアメリカにもたくさんの不自由があるだろうけれど、DEF CON全体に通底する徹底した自由へのこだわりは、おそらくこれから数々のイノベーションを生み出すきっかけになるだろう。というわけで、DEF CONの正しい楽しみ方は、おとなしく講演を聴いているだけじゃなく、できるだけ自由の空気を吸い、刺激を得ることなんじゃないかな。

……といいつつ、さすがに体力が限界なので(もう歳なんすよ)、夜のパーティ潜入はパスして同僚に任せ、ひとりでホテルに戻ってハンバーガー買って食ってビール飲んで寝たのだった。やっぱりデカくてtoo heavy。

[写真]ハンバーガーとオニオンリング、ハイネケン

Tags: travel

*1 この法律を今まで知らなかったこと自体を恥ずかしいと思うし、知ってたら断固反対したと思う。

*2 Black Hatは全貌を見渡せたわけじゃないので、どこかにDEF CONに通じる精神があったかも知れないけれど。


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