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ただのにっき


2012-07-26(木) [長年日記]

ケヴィン・ケリー著作選集 2 - 達人出版会

先日Kindle版がリリースされたのでようやく読んだ(いや自分でmobi化すりゃいいんだけどさ)。

第一集に続いて無料で配布されているこの第二集、白眉はやはり「技術は無料になりたがる」だろう。一番長いし。どんな技術も無料化に進んでしまうという話は今ではかなりの信憑性のある主張だと思うが、1998年の講演でKLMの幹部に鼻であしらわれたという話がなかなかショッキングでゾクゾクきます(ご存知のとおりその後の航空業界は格安化へまっしぐらである)。技術に携わる者として、「これが無料になったら、無料にしたらどうなるか」は常に意識しなくてはいけないんだよな。

個人的に面白かったのは「生き続けている古代の技術」と「アーミッシュのハッカーたち」。昨冬から編み物にはまっている身としては、こういう「古代の技術」がいまも生きていて、しかも生産性が上がっているもんだから物量的にも過去の実績を上回りかねないという話は身にしみてわかる(手製ニット製品が増え続ける我が家を眺めながら)。しかもこれらの技術、いまだ進化してるわけで「古代」といっても古いわけじゃない。

諸手を挙げての賛成とはいかないエッセイもけっこう多かったのが第二集の特色かも知れない。漠然とした印象だけど、保守的な方向の主張が増えたような気がする。特に特異点(シンギュラリティ)を否定的に扱った「思考主義」は、自説を有利に進めるためにシンギュラリティに不当な制約を課していたりして、シンギュラリティ信奉派としてはちょっと容認できないなぁ。そんな感じでちょっと注意しながら読み進むことができて、この話が早いうちに出てきてむしろよかったかも(笑)。

いずれにせよ読み応えのある、そして考えさせられるところが多い本であることには変わりがない。

Tags: book ebook

2012-07-24(火) [長年日記]

リーダブルコード (Dustin Boswell/Trevor Foucher/角 征典)

今はプログラマにとって、歴史上もっとも「赤の他人のコードを読まなくてはならない」時代かも知れない。OSもフレームワークもクラスライブラリもオープンソースで、なにかトラブると頼れるチームの仲間ではない、地球の反対側にいる見知らぬ誰かが書いたものを読まざるをえない状況になる。

おのずとコードを「読む」技術を(苦労して)身につけなくてはいけないわけだが、同じ苦労を大勢がするのは非効率だ、書き手がもうちょっとなんとかしてくれてもいいのではないか……というエンジニアらしい合理性によって「他人が読んでわかりやすいコードを書こう」というテーマの本が登場する。つまりこの本。

冒頭からもう、自分の弱いところをチクチクと刺されて、身悶えしながら読むわけですよ。自分だって、一週間後の自分は赤の他人だという痛い経験を何度もしているわけだから、自分自身のためにもできるだけ明快なコードを書こうと意識していたつもりながら、その意識そもののが明快なルールを欠いていたことに気付かされてしまう。かといって責められてつらいといった気分にならないのは、本書が「頼れる先輩」が気さくに話しかけてくる雰囲気をまとっているためだろう。もちろんその雰囲気を削がない翻訳もいい。

構成は変数の名づけ方(名前重要!)から始まって、関数(メソッド)内の構成、クラスの構成という具合に視野を徐々に広げていく。しかも一人で今日にでも着手できる小さな部分の話、広範囲に影響が及ぶリファクタリングの話という風にテーマの粒度が揃っているからわかりやすい。はっきりと明快なルールのおかげで理解も早い。おまけに日本語版にはその先にあるもっと大きな領域、つまり「リーダブルコードをチームの習慣・文化として根付かせるにはどうしたら良いか」というソーシャルに踏み込んだ解説までついている。ここまでたどり着ければ文句はなかろう。

強いて不満があるとすれば、いくつかの書評でも指摘されているdo~whileの例がイマイチなことと、リファクタリングの説明からテストが抜け落ちていること(別の章にテストがあるのでここはあえて触れていないのだろう)、そしてチームとしての取り組みに紙数を割いていない点(だがもちろんこれは前述のとおり解説できっちりフォローされている)。つまりまぁ、ほとんどカンペキ。

売れてる技術書の例にならってAmazonには在庫がないので(なんせすでに4刷!)、オライリーから直接購入するのが吉。もちろん超特急でリリースされたEbook版もある。

リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック (Theory in practice)
Dustin Boswell
オライリージャパン
¥2,640

Tags: book

2012-07-23(月) [長年日記]

ガスメーターの無線化をしようとして断念した(させられた)話

うちの生垣は元気すぎるせいか、ちょっと油断すると家の裏手に回れないくらいの枝ぶりになってしまう。裏手にはガスメーターがあるので、検針の人が入れなくなって迷惑をかけてしまう。で、相談したらいまは無線化して遠隔検針できるメーターもあるとのことなので、さっそくそれをつけてもらうことに。

で、今日工事だったんだけど、こんな感じだったらしい。以下、かみさんからの伝聞なので勘違い・行き違いがあるかも知れないが:

  • 留守中、検針器の取替えをしてもらう→完了
  • 帰宅後、「床暖房を使っていると警告ランプがつくことがあるのでリセットして」という電話連絡がある
  • リセット方法についてマニュアルが欲しいと返答
  • マニュアルは渡せない(!?)ので検針器を元に戻します←いまここ

そもそも、これだけガス床暖が普及している(しかも東京ガス自身が推進している暖房方式である)にもかかわらず、警告が出るとかちょっとおかしいんじゃないのか。かりに安全サイドに倒した設計だとしても、リセット方法を文書で提示できないなんてありえない。工事会社と東京ガスの間に、なにか行き違いがあるような気がするなぁ。

ちょっと調べてみると、無線「はこ」(検針端末用無線アダプタ)というものはあるようだ。これは「マイツーホーで使用する特定小電力無線機と同じもの」を使うとある。マイツーホーには(おそらく)ガスが出っぱなしになっている時に通報してくれるサービスがあるので、仕掛けじたいも同じなんじゃないか。つまり、検針無線化にはマイツーホーと同じインフラを使っているけど、マイツーホーサービスの利用者以外にはマイツーホーのマニュアルは渡せないからこんな事態になってるんじゃないか、と想像。

いや、もうちょっとツッコんで本当のところを知りたいところなんだけど。とか書いておくと関係者が教えてくれたりしないかなメソッドでとりあえず。


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