2011-07-30(土) [長年日記]
■ 読み返したい「小松左京」、5冊
2007年のワールドコンで、あまりにちっちゃくなってしまった「巨星」の姿(それでもあの時は元気いっぱいだったけど)を見て以来、お別れをするのもそう遠くないと覚悟はしていたので、昨日の小松左京の訃報、それほどのショックはなかった。来るべきものが来たなぁ、という感じで。
で、いつものように追悼読書をしようと思って本棚を探してみたら、ほとんど残ってないの。愕然。古参の日本人作家(主に角川文庫)は数が多いので、いつだかの引越しのタイミングで嫌になって全部捨てちまったらしい(2001年の夏のことらしい)。半村良も平井和正もない。自分の青少年期を形作った中でももっとも影響力のあった人たちの作品が手元にないとは、まいったね。BookOffにでも行って、探してみるか。
というわけで、見つけたら買い直したい小松左京作品を5冊ほどメモ。Amazonでも新品が買える本は少ないのがもったいないよなぁ。せっかくだから、これを期にプラネタリアートで小松左京の全作品を電子化してくれればいいのに。というか今やらずにいつやるの。
さよならジュピター〈上〉 (ハルキ文庫)
角川春樹事務所
¥985
さよならジュピター〈下〉 (ハルキ文庫)
角川春樹事務所
¥1,005
「さよならジュピター」、映画は日本SF映画界の黒歴史とまで呼ばれているが(おれは好きだけど)、小説の方は掛け値なしの傑作。小松左京が一番のっていた時期の作品で、やりたいことにみちあふれていたことがよくわかる。「日本沈没」で描かれていた日本に対する深い愛情が、地球ばかりか木星を含めた太陽系にまで広がったような、日本を代表するSF作家によるスケールの大きい"ラブストーリー"だ。
映画化された作品ばかりを選ぶとマニア度が低くなってしまうけど(笑)、そもそも小松左京はちゃんと(マニアを満足させつつも)マス向けの作品を書けたという点がすごいところなわけで、映画にもなるほどの作品にだって、SFの魂はぎっしり詰まっているのである。地球に対する愛情が感じられる、これも傑作。
古いけど、がっちりした本格SFとして、これは読み返したい。短編なのにどれもスケールが大きくて、一気に読むとクラクラするほど。小松左京は短編の名手でもあった。
(例によって怪しげな)記憶をたどると、初めて読んだ小松左京はこの作品だったかも知れない。少なくとも小松左京作品を好きになったきっかけはこの本だった。ミステリーとしてもすばらしいが、なんといってもSFらしいパースペクティブがすごい。
基本的になんでも書けた小松左京は、もちろんホラーも上手い。ホラー系短篇集は多いのだけど、「牛の首」が収められた短篇集はいくつかあって、どれが入手しやすいのかよくわからんな。「牛の首」に関しては……おや、誰か来たようだ。
「夜が明けたら」はホントに怖い素敵な小説です。おっさんになった今でも怖い。
「復活の日」も、もっと評価されてよい作品だと思います。