2014-11-21(金) [長年日記]
■ 映画「楽園追放 -Expelled from Paradise-」を観てきた
「虚淵玄作品で主役が釘宮理恵」という以外は予備知識ゼロだったんだけど、まぁ虚淵だしどうせ暗くて救いのない話なんだろうと思っていたら、むしろ明るくて未来を感じるいい話だった。いや、それでいいんだけど、勝手な先入観で肩透かしとか言ったらダメだよなぁ(笑)。
ストーリーはかなりシンプルというかオールドファッションで、1980年代あたりのSFに親しんでいればオチも含めて読めちゃうレベルだからおれの年代だと新鮮味はない*1。でも同じ回で観ていた若者たちはかなりインパクトを受けてたみたいだし、それはそれでいいんじゃないの。まぁ「知ってる話」だから映画がつまらないとは思わないし。
主人公のアンジェラが、年齢設定のわりに幼い容姿なのにはちゃんと合理的な説明がついていて笑ってしまったが、それにしてはおっぱい大きすぎるよな。あと尻。それはさておき、アンジェラ役のくぎゅの演技が素晴らしくてねぇ、これだけは書いておかねばならんと思った。くぎゅと言えば「ツンデレの女王」で、そういう方向の役ばかりやらされてる感じがあるのだけど、アンジェラはそういうステレオタイプじゃない等身大の女の子だったし、アクションシーンではかなり派手に叫んで「おお、くぎゅのこういう演技聴いたことなくて新鮮だわー」と感動してしまった。逆に静かなシーンでの息演技がこれまたじつに多彩で、あらためてくぎゅの実力を感じられてほんと良かった。
もちろん終盤の戦闘シーンはめまいがするほどド派手で緻密だから、これだけでも近年のSFアニメとして十分すぎるクオリティ。考証もがんばってるし。とはいえ最後の打ち上げシーン、ロケット本体から氷が剥がれ落ちるという最近お決まりの描写があるんだけど、これハイブリッドロケットだから酸化剤はたぶんN2Oだし、液酸液水ロケットみたいな極低温にはならない気がするのだよなぁ(←細かい)。
あと、最後に「気に入ったからパンフ買おう」と思って売店に入ったら2000円もの値段がついてて「強気だなぁ、売れるのかねぇ」と感心してたら「売り切れです」だって。ほんとオタクは金持ってるな……。
*1 あれで最後は分裂して一緒に出発しちゃう人格とかが出てくると21世紀のアイデンティティSFになるんだけど(笑)。
2014-11-20(木) [長年日記]
■ My Kindleが(ついに)リニューアル
kindlizer-backendの設定方法を大幅に変更した*1ときにテストで流したドキュメントを消そうと思い、My Kindleにアクセスしたら見覚えのないページに飛ばされて焦ったのなんのって。少し前に一部のユーザに試験的に見えるようになっていた新しいUIがついにリリースされたらしい。待ってたぜ。
ウキウキしながら触ってみたら(こう見えてもMy Kindleのヘビーユーザである)、まぁもちろん改善されてるところも多数ある。といっても前のUIが壊滅的にダメだったのだから、誰が作りなおしても改善になるよな、というレベル。いまどきのSPAとしてはアマチュアレベルだよなぁ……。
で、もちろん不満点の方が多いわけですよ。まったくAmazonのUI設計・開発力のなさときたら……!!!
- 一度に削除できる文書が10個まで。しかも削除前後に無意味な確認ダイアログボックスが出る
- 「表示するアイテム」「並べ替え方法」のドロップダウンリストが頻繁に空になる。リロードしないと直らない……というかしばらく試してたらリロードしても直らなくなった(笑)
- メールで送ったドキュメントを(端末に送り込むだけでKPDには)保存しないという設定があったので(これこそが待ち望んでいた機能である)、喜び勇んで設定したけどきっちり保存されてる
他にもあるけどもう覚えてない。こんなにシンプルなアプリなのにテストしてないだろこれ。バグ報告してやりたいけどフィードバック方法もわからんし(そもそもAmazonはユーザの声を聴かない)、もうやだこの会社……他の選択肢が欲しいよ……。
*1 変更しましたのでREADMEを参照しつつconfig.yamlを書きなおして下さい。とかここに書いてどうする。
2014-11-19(水) [長年日記]
■ 「メイカーズ」コリイ・ドクトロウ
Makerブームの立役者のひとり(?)、ドクトロウの「メイカーズ」を、さまざまな英文を翻訳していることで知られるH.Tsubotaさんが翻訳していたので読んでみた。HTML版およびEPUBまたはmobi版が無償で入手できる。
ドクトロウといえば以前「マジック・キングダムで落ちぶれて」をけちょんけちょんにした記憶しかないのだけど、本作はけっこう楽しめたかな。2009年の時点でMakerブームとその行く末をここまで描けるのはたしかにすごい。こういうネタだと単純に「あるMakerの成功譚」になりそうなところ、わりと山あり谷ありで、けっして明るいばかりではない結末になるあたり、なかなか誠実だ。
もっとも、5年前の作品ということを割り引いてもリアリティはそんなに感じられなくて、まぁ近未来を描くSFはどうしてもそうなってしまう傾向があるとはいえなんでかなーと不思議だった。で、序盤を読み終えたところでちょうどDMM.make AKIBAがオープンして、そのレポートを読んで謎が解けた。DMM.makeには製作用だけでなくさまざまな検査用の設備があるんだけど、この小説にはそういう描写がいっさいないからなんだな。安全かどうか、環境を汚染しないかどうかもわからんようなものが、こんなふうに世界を席巻するわけがない。あと、とにかく登場する「3Dプリント作品」がどれもぜんぜん魅力的じゃないというのも大きい(笑)。
それはさておき、読んでいて心の中で大きくなっていったのはやはりリチャード・ストールマン(RMS)の存在。RMSも扱いづらいタイプのハッカーとしてこの作品の主人公たちに重なるところが多いのだけど、彼は法律さえもハッキングのターゲットにしてしまうという意味ではるかに格が上なのだ。本作の主人公たちはストーリー上は文字通り「世界を変える」のだけど、こっちにはRMSという比較対象がいるもんで、なんだか矮小な存在に見えてしまう。RMSを超える人物はフィクションの中にさえ登場しえないということか(この作品世界には少なくともGPLはあるようだけど本人は登場しない)。
ところで日本語版は小説としての一般作法から外れてるところが多くてかなり気になってしまったのだけど(三点リーダを使ってない、文頭の字下げがない、段落間の行間が空きすぎ……など)、フィードバックはどうしたらいいんだろう? パッチ送りたい。
追記: とか書いたらリポジトリを公開してくれた! わーい。