2013-09-04(水) [長年日記]
■ ゴリアテ ―ロリスと電磁兵器― (新ハヤカワ・SF・シリーズ)(ウエスターフェルド,スコット)
3冊まとめて買って一気に読むべきとか書いておきながら、残りをやっと読み終えたのが8ヶ月後とかどうかしてますね。読むべきものが多すぎて、小説がどんどん後回しになってしまう……もう電子積読でKindleがいっぱいなのだが。
とはいえ期待に違わぬ面白さで、時間さえ許せば一気読みしたことだろう。もちろんジュブナイルとしてという意味で、SF的な面白さとはちょっと違うのだけど。第一次世界大戦の「史実」にうまい具合に沿いつつも、機械国家 vs バイオ国家というトンデモ設定を網の目のようにからませていくあたりが実にうまい。テスラみたいな実在の人物を上手に登場させて活躍させてみたり。後半には日本も登場するのだけど、西洋人からみたありがちなエキゾチックさは残しつつもわりと正しい描写で感心した。そういう意味で徹底的にフィクションなくせに妙にリアル。
あとはなんといってもボーイミーツガールがね、いいよね。オーストリア王家の少年アレックと、性別を偽って軍隊に潜り込む少女ディランという、まるでベルサイユのばら並みのハードルの高さ。ボーイミーツガールはこうでなくちゃいけねぇ。男まさりのディランがたまにちらっと見せる少女っぽさがまたいい。
ところでこのシリーズ、原題は「リヴァイアサン」「ベヒモス」「ゴリアテ」というシンプルなもので、「クジラと蒸気機関」とか「ロリスと電磁兵器」という副題は日本でつけられたものだというのはわかっていたのだが、二巻の「クラーケンと潜水艦」というのが明らかに内容と乖離していて「ひどいなー」と思いながら読んでいたのだけど*1、訳者あとがきに「これは編集部がつけたもので(訳者は)反対した」的なことがわざわざ書いてあるばかりか、その後ろにはその編集者の言い訳というか説明(?)的なものまで書いてある始末。よっぽど訳者は編集部の行いに腹を立てているようだが、おれは訳者の肩をもちたい。原書は副題なしでも売れてるんだから、いらんだろ、こんな副題。編集者がこんなクソみたいな副題をつけないと読者に興味をもってもらえないと思ってるんだとしたら、日本の読者もなめられたもんだよ。
ベヒモス―クラーケンと潜水艦 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
早川書房
¥1,760
ゴリアテ ―ロリスと電磁兵器― (新ハヤカワ・SF・シリーズ)
早川書房
¥1,870
*1 作中に出てくるベヒモスはいわゆる伝説の怪物クラーケンともこの世界にいるクラーケンとも違うもので、しかも二巻にクラーケンは登場しない。