2012-07-01(日) [長年日記]
■ ひさしぶりに時之栖へ
裾野の時之栖・茶目湯殿へ。なんかすごくひさしぶり。
雨だったが露天風呂に入ったのだけど、炭酸風呂とかいってやたらと泡が出るようになっていてちょっと興ざめ。あそこはオープン当初は大人向けのすごくいい日帰り温泉だったのだけど、だんだんと手が入って低俗になってしまっているのが残念でならない。地蔵の石像があちこちに置かれ始めたあたりから素人臭が漂いはじめた。最初はちゃんとしたコンサルタントが入って企画をしたんだけど、その後の運用で素人が台なしにしつつあるという感じ。
2012-06-30(土) [長年日記]
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都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)(チャイナ・ミエヴィル)
「これははたしてSFなのか?」という疑念が最後までつきまとうが、読み手の常識を始終逆なでするこの手触りはまぎれもないSFなんだよなぁ。不思議な、傑作。
領土を「共有」するふたつの都市国家が舞台。パラレルワールド的な意味でなく、本当に同じ土地に重なりあっているというトンデモ設定で、一方の国民は他方の国の人や物を「見ない」ように幼少期から徹底的に訓練されているから交わらずに済んでいるという。「いやいやありえないだろ、それ」と頭ではわかっていても、とことんディテールを積み上げられてしまって、読んでるうちに否定のしようがなくなってしまう。
それ以外は時代も現代だし、場所もだいたいバルカン半島あたりということで、SFっぽさはほとんどない。半村良がフィクションの舞台を作るときに、地図にカミソリで小さな裂け目を入れてその中にだけ架空の存在を入れるという話を書いていたけど、まさにそんな感じだ。
そんな舞台でおきた、国をまたがる殺人事件、それを追う両国の警察……というミステリー要素が加わり、さらに越境を厳しく取り締まるブリーチという謎めいた組織がなんだか超自然的なテクノロジーを持ってるっぽくてこれがSFらしさを加えてくる*1。
いやぁ、これが面白くないわけがないよなー。すげー。
*1 実際はそれほどでもなかったので肩透かしっちゃぁ肩透かしだ。
2012-06-29(金) [長年日記]
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日本の電子出版を創ってきた男たち (OnDeck Books(Next Publishing))(インプレスR&D)
リンク先はAmazonだが(PODでの出版だそうだ)、もちろん自分は電子版をLibra PROからから買ったのである(こっちは980円)。これまで日本の電子出版に関わって来た人たちへの、OnDeck上でのインタビューをまとめたもの。
ここ数年の「電子書籍元年」(いつまで元年なんだか)よりも前から活動している関係者の話だから、ボイジャーだとかパピレスなんかの老舗はもちろん、青空文庫成立の経緯とか、懐かしくも誇らしい、そしてちょっと悲しい(ガラパゴス的な意味で)話が多くてじつに面白い。EPUB3.0に日本語まわりの仕様を入れる話なんかは、国際化に挑むにあたってのノウハウがすごくて、やっぱ国内の「常識」で動いてちゃダメだよなーとしみじみ感じる。
あと、権利まわりの仕事をしている人の口から出るのは既得権益を持つ業界内の談合を肯定するばかりで、読者の利益のことがぜんぜん出てこないのに苦笑したり。音楽も本も海外勢にやられっぱなしな理由が、なんとなくわかった気がするね。