2012-04-23(月) [長年日記]
■ アジャイル・ユーザビリティ ―ユーザエクスペリエンスのためのDIYテスティング―(樽本 徹也)
知人から「ユーザテストをやってみたいんだけど」と相談されて、「これがいいんじゃないかな、まだ読んでないけどきっといい本だから」なんて答えていたんだけど(ひどい)、やっと裏付けがとれた。いい本です。
ヤコブ・ニールセンが「5人で十分ですよ」と言ってからずいぶん長い時間がたったけれど、不思議なことにいまだにユーザテストを提案すると尻込みするクライアントが多い。まず最初のリクルーティングが心理的なハードルみたいだし、(どんなに手軽さを説明してもなお)すごく大変なことをするような先入観があるらしい。そんなリクルーティングを始め、「5人で十分」な成果をあげられるディスカウント・ユーザビリティを、いかに低コストで(その代わり何回も)実施するためのノウハウに絞ったのが本書。
本書で描かれるユーザテストには、マジック・ミラーで仕切られたご大層なテストルームは登場しないし、ビデオの解析に何週間もかけ、分厚いレポートを書く自称専門家も登場しない。文字どおりDo It Yourselfで、製品に責任を持つ自分たちの手で、自分たちが調達できるリソースだけでテストをする。安上がりにすると言っても、テストの信憑性を担保するためにはどこは削ってよくて、どこは削ってはいけないかが懇切丁寧に書かれているので、安心だ。
で、書名のとおりこのアプローチはアジャイルに通じるところがあるのだけど、実はこれまでのUX設計はアジャイルというよりもウォーターフォールとの相性が良くて、アジャイル開発にUXを取り込むにはUXの方をアジャイルにすり合わせなければならない……という流れから始まる、終盤ほんの数十ページの部分がけっこうエキサイティングで、個人的にはすごく面白かった。特にさらに終盤になってコラムで登場するRITEメソッドがなんか究極っぽくて、「やっぱり行き着く先はMicrosoftなのか」という。
なんにせよ、こういうライトウェイトなユーザテスト、あらゆる案件でやれるようになるといいよなぁ。
アジャイル・ユーザビリティ ―ユーザエクスペリエンスのためのDIYテスティング―
オーム社
¥2,420
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