2012-02-26(日) [長年日記]
■ 時の地図 上 (ハヤカワ文庫 NV ハ 30-1)(フェリクス J.パルマ)
「SFなのかなー」と思って手にとったのだけど、少なくとも終盤まではそうではなかった。この本はネタを割らずに感想を書くのは不可能だし、新刊というわけでもないので気にせずネタバレを書くけど。正直、「これはないなー」という読後感。ちなみに向井さんは絶賛していたので、そっちを信用した方が良いでしょう(笑)。
というわけで以下ネタバレ。
時間モノSFが過去を描くとしたらペストが猛威を振るう中世ヨーロッパか、切り裂きジャックが暗躍するロンドンかというくらいで、本書の舞台も19世紀末のロンドン。主人公は「タイムマシン」を発表したばかりのH.G.ウェルズとなれば、おのずとガチな時間SFを期待するが、実はそうではない。いや、表面上はそういう体裁をとっているけど、少なくとも第一部と第二部はタイムトラベルを装ったペテンの話で、これはこれでけっこうよくできているので楽しいのだ。ここまでは良い。そりゃそうだ、「ハヤカワNV」なんだから。とうぜん第三部にもそういう筋を期待するし、さまざまな伏線がどんなトリックで回収されるのか楽しみにしていると、今度は本物のタイムトラベルが登場してしまい、なんとも都合のいい結末がついてしまう。がっかり。
特に第三部のタイムパラドックスは手垢がついたというか、今どきそれはないんじゃないのという感じだし、それを成立させるためなのか語り手がしょっちゅうメタな話題を挿入してくるものだから、読んでてイライラしてくる(これはもう冒頭からしばらくそんな感じで、途中で投げ出したくなるくらいにウザい)。やっぱベストセラーとは相性が悪いのかねー?
SFになっちゃうのは残念なんですが、最後にSFになっちゃうというのがネタバレなため感想に書けない、というのが問題ですね。
やっぱり、最後は残念ですよね!
「最後」だけが気になる!