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ただのにっき


2012-01-27(金) [長年日記]

本は片手で読むもの? なぜ左右非対称のeブックリーダーばかりが開発されるのか

昨日東芝が新しいeブックリーダーを発表して、カラーE Inkもそろそろ実用になってきたかと感動する一方(何か別の記事と混乱してカラーE Inkと書いてしまったが、単なる液晶だそうで。ほめるところがなくなってしまったではないか)、「ああ、またか」とがっかりもした。見るからに左手で持つことを前提にした「片手持ち」デザインだからだ。べつに東芝だけを槍玉にあげるつもりはなくて、各社だいたいそういう傾向がある。SONY Readerはわりと左右対象に見えるがラウンドの付き方が違うし、だいたいページ送りボタンが左に寄っているのでこれも左手で持つことを前提にしている。国内だけでなく、たとえばKoboの新しいの(Touchじゃないヤツ)なんかは右手で持たないと操作できないところにボタンがついている。

先の東芝の端末は330g、文庫本2冊分だそうだ。文庫本を1冊通して読むのに早くて2、3時間として、それだけの時間、330gの機械を片手で持ち続けられるだろうか? たいていはかったるくなって何度も手を持ち替えるだろう。紙の本でも当たり前のそういう行為が、左右非対称のeブックリーダーではできない*1。なにより、ボタン類が端末上部についていることを見れば、両手での操作を前提にしているようだ。

本を読む人の中には、一方の腕が不自由だったりなかったりする人もいるはずなのだが、そういう人たちには電子書籍を読むなと言うのだろうか。最近アクセシビリティ関係の仕事をしているせいもあるが、こういう無神経さにはどうしても敏感になってしまう。どうして見た目のかっこよさよりもユニバーサルデザインを優先できないのだろう? というか、かっこいいユニバーサルデザインがなぜできない?

国産のeブックリーダーにはがんばって欲しいと思ってるんだよ、ホント。でも、こういう機械を買う気にはとうていなれない。だってKindleには、ちゃんと端末左右にページ送りボタンがついているもん。左右どちらの手で持っても変わらぬ操作で、大きくて押しやすいボタンを軽く1mm程度押しこむだけでページをめくれる。こんなふうに、紙の本よりも読む行為がはるかに楽になるところにこそ、電子書籍の価値があるんじゃないのかね。

Tags: ebook

*1 ページ送りはタッチパネルでスワイプすれば良いと考えているかも知れないが、数百gのものを片手で保持したまま数百回スワイプするという行為はそうとう苦痛である。ボタンを軽く押しこむ方がはるかに楽なのは間違いない。

本日のツッコミ(全7件) [ツッコミを入れる]

Before...

ただただし [本当だ! 何か他の記事と混同してしまっていたようです。面目ない。修正しておきます(ほめるところがなくなってしまった…..]

yoosee [ページ送りはタッチパネルでもスワイプじゃなくページ(画面)の端にタッチならそこまでは苦痛じゃないです。FireのPe..]

ただただし [Kindle TouchやFireは画面右側タッチでページ送り、画面左側がページ戻りだったはずだけど、これ、左手に持..]

yoosee [あ、言われてみればそうですね。Kindle Fireで何かを読むときはPerfectViewerやMantanoを使..]

ただただし [なるほど。 まぁいずれにせよ、タッチだけでしかページ送りができたい端末はゴメンです。多くのブックリーダー(アプリ)で..]

yoosee [私は今のところはタッチでもいいんですけど(Kindle Touchはページ送りが遅いという別の問題があるからあれです..]


2012-01-25(水) [長年日記]

DeNAの罠にはまってモバゲーのアカウントを取得するはめに

※タイトルにはおおげさな表現が含まれています。

昨日の夕方、急にTwitterのタイムラインが賑やかになって、何ごとかと思ったら「DeNA、HTML5開発支援フレームワーク「Arctic.js」を オープンソースとして公開」が話題になっているのだった。タイトルだけみると良い話なんだけど、GitHubに公開されたライセンス(公開当初のlicence.txt)がひどくて、明らかにOSDの定めるオープンソースではない。というかむしろプロプライエタリと言っても良いシロモノ。そりゃ騒ぎになるわけだわ。

DeNAは昨年、奥一穂さんが「オープンソース開発者がDeNAを選ぶ理由」なんて発表をするくらい「親OSSな会社」というイメージを打ち出せていただけに、これはちょっと笑えない話だ。結果として数時間後にはMITライセンスが適用されて丸く収まったわけだけど、どうしてこんなお粗末なライセンスが外に出てしまったのかには興味がある。成果物をオープンソースにしたいという要望はおそらく開発サイドから出たものだろうし、一方でこんな縛りを付けたがるのは経営層か法務だろう。しかし公開先がGitHubということは、公開作業は開発者がやっていると考えるのが普通なわけで、なんでこんなライセンスが開発者の手を素通りしてしまったのか、不思議でならないのだ。まぁ、舞台裏が公表されるとも思えないけど、なんとなーく風通しの悪さを感じさせてしまいますな。

ちなみにオープンソースは登録商標だけど、『オープンソース/Open Source商標を誰もが自由に使うことを認めます。 ただし、我々はOSIの定める「オープンソースの定義」に沿う形で オープンソースという言葉が利用されることを希望しています。』と書かれているように、こんな「なんちゃってオープンソースライセンス」を使っても商標違反ではない。今回のは単にモラル面で問題があったというだけの話なのでDeNAにはしらばっくれる権利はあった(開発者コミュニティから総スカンを食らうだろうけど)。もっともGitHubのPublic ReposはOSSでないといけないので、それには(一時的に)違反していたという指摘はあるが。

ところで、騒動のあいだにこんなことを口走ってしまったのだが:

公言した以上、約束は守ります:

[写真]モバゲーアカウント取得の証拠写真

まさかこんなきっかけてモバゲーのアカウントを取るハメになるとはなぁ*1。DeNAの中の人たちからたくさんのRTをいただきました(笑)。

そして半日が経過、モバゲーのメールボックスにははやくもモゲマス*2への招待メールが10通もたまっているのであった*3。まったくおまえらときたら……。「モバゲーのアカウントを作る」とは言ったが「モゲマスを始める」とは言ってないぞ!!

知る、読む、使う! オープンソースライセンス 知る、読む、使う! オープンソースライセンス
可知豊
760円+税

Tags: idolm@ster

*1 ちなみに真っ先に招待メールをくれた人(あえて名を秘す)は、紹介料としてGETした1500ポイントをさっそくガチャに投入していたもよう。

*2 「アイドルマスターシンデレラガールズ」のこと。

*3 なぜかGREEの中の人からのものを含む。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

Skirnir [TwitterのTLを眺めていて、たださんにDeNA社員の知り合いが多い(ように見えました)ことにうれしい驚きを覚え..]

ただただし [どちらかというと、知人が次々とソーシャルゲーム業界に転職していってる……という状況のような。あんなスピードの速い業界..]


2012-01-24(火) [長年日記]

クロノリス-時の碑- (創元SF文庫)(ロバート・チャールズ・ウィルスン)

「時間封鎖」「無限記憶」のウィルスンということでそこそこの期待をこめて読んでみたが、もう一声という感じかなー。いや、面白かったけど。解説によれば「時間封鎖」よりも前の作品ということで、なるほどここからメキメキ腕をあげていったというわけか。

20年未来から打ち込まれた巨大な石碑というアイデアはじつにいいんだけど、その背景にある(SF的な)仕掛けの説明はたんに学術用語っぽいものを並べただけであんまり説得力は感じない。いまどき多世界解釈を採用しないという勇気は認めるが、かといってタイムパラドックスに正面から挑むというわけでもない。つまり時間SFとしては中途半端なんだよな。

一方、ウィルスンらしい人間ドラマはかなりリアルで、アメリカの中流がこういう事件に巻き込まれるとどんな感じになるのかという雰囲気はすごく出ている(たぶん。アメリカ人じゃないので自信はない)。だから、小説としてはけっこう楽しめたので、まぁ当たりといえなくもない。

それはそれとして、「時間封鎖」シリーズの最新刊はまだかなー。

クロノリス-時の碑- (創元SF文庫)
ロバート・チャールズ・ウィルスン
東京創元社
¥54

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)
ロバート・チャールズ ウィルスン
東京創元社
¥160

時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)
ロバート・チャールズ ウィルスン
東京創元社
¥156

無限記憶 (創元SF文庫)
ロバート・チャールズ・ウィルスン
東京創元社
¥243

Tags: book

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