2011-06-03(金) [長年日記]
■ オルタード・カーボン(上)(リチャード・モーガン)
「なんだかクールな表紙だな」と思って読んでみたらガッチガチのハードボイルド(ただし舞台は600年後)だった。ハードボイルド読んだの久しぶりだ。
ハードボイルドってやつはスタイリッシュなだけでは成立しなくて、背景には哀愁のようなものが漂っていなければいけないと思うのだけど、本書はそういう意味ではとてもよくできたハードボイルド小説だと思う。主人公のタケシ・コバッチはたくさんの悲しい過去を背負いつつ、しかしそんな情報も断片的にしか明らかにされないので、謎めいた憂いのあるかっこよさが際立つ。
舞台は600年後、人間の記憶・意識は常時チップにバックアップされ、死んでもチップさえ保護できれば新しい肉体(スリーヴ)で復活できる。表面上は不死が実現しているが、ただしスリーヴの入手にはもちろんコストがかかるし、チップのオンラインバックアップにも金がかかるので、貧富の格差が寿命の長さに直結している。スリーヴを用意できない人間は電子状態で凍結されるか、せいぜいヴァーチャルで過ごすしかない。
と、設定だけみればかなり「SF」してるんだけど、アイデンティティ方面にはあまり足を踏み込まないので、こういう題材を扱うわりにはあまり現代的な感じはしない。というか同じような設定の小説は自分でも学生時代に書いたよなぁ(そしてハヤカワに送ってボツにされた)。傲慢な長寿族と虐げられる一般市民の確執が話の基本で、このあたりは設定を現代に移してもそんなに変わらない主題だ。
ということなので、SFっぽい設定のハードボイルド小説として読めば楽しめるけど、本格SFとしての期待感はあまり持たない方がいいかも。
■ tDiary: search-bing.rbを書いた
Yahoo!のBOSS APIがそろそろ廃止のはずなので、別の検索サービスに乗り換えなくてはいけないのだ。で、Google版はhbさんが書いていたので公開されるのを待つとして(とか書いてたらcontribに公開された)、なるたけオルタナティブな選択肢を用意しておく信条のおれとしてはBing版を書くしかあるまい。
というわけで、やや手抜きっぽい部分もあるが、search-bing.rbを書いた。ドキュメントはこっち。さっそくこの日記に組み込んでみた。1000件までという制限がある他はとくに制限なし(なのかな?)なので、Yahoo!みたいに規約が変わらないかぎり使い続けられるだろう。ただ、明らかに検索結果が少ないんだよなぁ。やはりGoogleに一日の長か。
ただこれ、セキュアモードでは動かないので、tDiary.Net全体で使えないんだよな。無理やりセキュアモードで動かすか、js版を書くかしないと……。
今日はその他に、rubykaigi.rbがRubyKaigi2011対応になったり*1、section_footer2.rbがGoogle +1に対応したりと、妙にプラグインのアップデートが多い日であったよ。
*1 さっそく→のバッヂを置き換えた。今年は個人スポンサー
2011-05-31(火) [長年日記]
■ 第1回アクセシビリティBAR『初夏のパンくず祭』に行ってきた
最近、仕事の関係でなぜかWebアクセシビリティのコミュニティに関わりができはじめていて(受託の面白いところですな)、一介のプログラマだったはずなのに数奇な運命であります(おおげさ)。
で、東日本大震災の直後に関係者と飲んでいたときに「今年はヤマザキ春のパン祭も自粛らしいですよ」的な話が出て、「じゃあ代わりに『カワサキ春のパンくず祭』をしようではないか」という流れになったんだが、実現したときには本家は復活したあと、しかもすでに春というよりは初夏になっていたという。そんなこんなで第1回アクセシビリティBAR『初夏のパンくず祭』に参加したのだった。
ハッシュタグ#a11ybarを見ればわかるように、参加者がやや内輪だったこともあり、開始直後から1時間くらいは飲み食いに忙しくてどうなることかと思ったが(笑)、その後けっこう真面目にパンくずリストの話になった。パンくずリストの話など、すでにこの10年間で出尽くした感があるし、どんなマークアップにするかでセマンティックも変わってくるとあって、宗教論争じみた展開が定番なのだが、アクセシビリティがからむとひと味違う感じになるのが面白い。
例えば数年前、記号を適切に読み上げられなかった当時のスクリーンリーダーを意識して、区切り記号の「>」を画像にしてalt属性に「の中の」を当て、文章として読み下せるようにパラグラフとしてマークアップしたパンくずリスト(例: インフォアクシア)は、当時としてはユーザテストまで行ったしっかりしたものだが、今となっては改善の余地がおおいにある。特に「">"で挟まれた複数のリンク」が「パンくずリストである」と認知されている現在では、スクリーンリーダーユーザをそこまで過保護にする必要はないのだそうだ。が、今でもこのスタイルを無批判に真似をしたサイトが蔓延していて、発案者が頭を抱えている状況になっていたり。
あと、セマンティクスを意識して、ul/olを使ったり、dlを使う、さらにリストを入れ子にするなど、凝ったマークアップは数あれど、スクリーンリーダー利用者からしてみるとどれもたいして変わりはないとか(しいて言えばそこにパンくずリストがあることがわかるという意味で単純なリストで十分とのこと)。まぁ、原理主義者による行き過ぎた実装が現実では尺に合わないというのはよくある話である。
とりたててスクリーンリーダーユーザを特別扱いしなくても、慣れればそこに何があるのかはけっこう理解できているというのは目ウロコというか、過剰なサービスが冗長でうっとおしく感じられてしまうというのは晴眼者にしてもわかる話で、普通にシンプルなマークアップを心がければいいんだってことだよね。ポップアップやドロップダウンリストで過剰に飾り立てたパンくずリスト(例: ネットイヤー)なんかは画面を拡大して使っている弱視のユーザにはかえって不便だったりもするわけで。そういう意味では、そもそもパンくずリストが必要ないシンプルな構造のサイトを目指せという指摘もうなずけるものがあった。
そんなこんなで予定よりも30分延長してお開きになったのだが、パンくずリストだけをネタに3時間も話ができるんだから、どんだけ変態の集まりなんだ。またやろう。
2011-05-29(日) [長年日記]
■ tDiary: ようやくテスト環境を構築
まだやってませんでした、すみません ><
いやね、第一tDiary.Netの引越しが先だよなぁ、それが終わったらちゃんとやろうと思っていたら、ずるずると長引いてしまったのだよな。テスト環境の構築方法はhsbtが書いてくれた「How to testing tDiary」のとおりにやればいいので難しいことはない。
% cd ~/src/tdiary/core % gem install bundler ... % bundle install --path ~/.bundle ... Your bundle is complete! It was installed into /home/sho/.bundle
あとは「bundle exec rake spec」を実行するだけなんだけど、なにやらボロボロとエラーが出る。dataディレクトリがないというメッセージの他に、文字コード変換まわりのメッセージが出ているので、おそらくUTF-8をEUC-JPに変換できないでいるんだろう。なにしろ以前UTF-8にうまく移行しそこねて以来、いまだにEUC-JPなオレが悪い。ま、ごまかしようはいくらでもある(とか言ってるからいつまでたってもUTF-8に移行できないのである):
% mkdir -p tmp/data % LANG=ja_JP.UTF-8 bundle exec rake spec | nkf -e ... 109/109: 100% |=======================| Time: 00:12:10 ... Finished in 730.76 seconds 109 examples, 0 failures, 14 pending
とりあえず、すごく遅いことはよーくわかった(マシンも、テストも)。