2010-06-17(木) [長年日記]
■ 「はやぶさ2」ってサイエンスミッションになるんだよね?
一昨日あたりから、Twitterの#hayabusaを見るのをやめている。ただの感情的な政治家批判しか流れなくなっちゃったから。最新情報は@Hayabusa_JAXAや@JAXA_jp、あとは@koumeiShibataをウォッチしてれば十分だし。
それにしても、はやぶさ2の予算がつくことになった……の? なんだかなぁ。
いや、一人のはやぶさファンとして、後継機の実現はそりゃぁ小躍りするほど嬉しいよ。でも、今回の帰還を受けての特別な予算化なのだとしたら、釈然としない。だって、これだけ華々しい成功をしなきゃ予算がつかないんだとしたら、本当に前人未到の新しいミッションなんてぜったい実現しないってことじゃないか。
とかなんとか言ってたら、L/Dで怪文書が公開された。メールを公開したことの是非については踏み込まない。松浦さんもジャーナリストとしていろいろ勘案しての公開だろうし。じっさいこのメールには誤認が多いようだけど、ひとつだけ正しいことが書いてあるように思う。「はやぶさ2は理学ミッションとして考えるべき」のくだり。
工学系の実証実験が目的の「はやぶさ」の経験を受けて「はやぶさ2」が改良されているのだとしたら、今の日本で「2」も同じ実証実験として通すのは難しいだろう。とうぜん「2」はイトカワとは違うタイプの小惑星に赴いて、そこのサンプルを持ってくること自体が目的になる。つまり「1」と「2」は目的が異なるはずだ。だとしたら、「2」を飛ばすかどうかは他のサイエンスミッションと同列に比較して、より意義のある方に予算をつけるべきだろう。「なんか華々しく成功して国民の支持が高いみたいだから、特別予算つけてあげるね」というのは、税金の使い方としてどうかと思う。
いま飛んでいる「あかつき」を始めとして、JAXAでは魅力あるサイエンスミッションがたくさん実施・計画されている。個人的には有人ミッション削ってでもこれらの計画を全部実現して欲しいくらいなんだけど、はやぶさだけがクローズアップされてる裏で、これらがかすんじゃうのはもったいない。
もちろん、小惑星探査に関する主導権を握り続けるために「2」を飛ばすというならわかるけど、今回そういうビジョンはちゃんと提示されてるのかね。だったら「2」だけじゃなくて「Mk2」にもスポットライトが当たるべきだよね。そうじゃないとしたら単なる政治家のスタンドプレーにすぎないなわけで、日本の宇宙探査の将来が先行き不安なことに変わりない。あんまり気持ちのいいもんじゃないね。
2010-06-14(月) [長年日記]
■ W杯: 日本 1-0 カメルーン
はやぶさのことが落ち着くまでは「ワールドカップ? なにそれおいしいの?」的な状態だったのだが(ぬるサッカーファンですまん)、翌日になってやっと興味が向いてきたと思ったら日本の初戦である。はやぶさ空気読みすぎだろう。
スカパーがあるので、かみさんは全試合とは言わないまでもけっこうな試合数を見てるみたいだけど、この時間帯に付き合ってたら会社員として破滅だよなぁ。まぁ、少なくとも日本戦くらいは見る。
いやだってさ、川崎の選手が代表に3人(ケンゴ、稲本、川島)だよ!? しかもいつのまにか川島が正GK。すげー。でも、せっかくシュンスケを外したんなら、代わりにもうひとりの中村をスタメンに入れてもいいと思うんだけどね、岡ちゃん。
試合は「日本絶好調!」というよりは「カメルーン不調なん?」的な内容だったけど、勝ちは勝だ。ちょっと前に本田と中田の対談番組を見たけど(ホスト対談みたいだった)、見た目と違って本田ってかなりの策士で頭いいんだと知った。だから1トップにされたら意図をちゃんと理解してガツガツいくと思っていたから、彼の得点は納得だ。
2010-06-13(日) [長年日記]
■ はやぶさ、星になる。
ちゃんと打上げの日のことを日記に書いてたおれえらい。その後、イトカワに着くまでスルーだったけど。というわけで、クドクド経過は書かなくていいよな。
いよいよ今日、はやぶさが地球に帰ってくる。
日曜なのに運悪く仕事にしてしまったので朝から出社だったのだけど、まぁはっきりいって手につかなかったね。あんまり頭を使わない事務仕事ばかりでよかった。16時ごろ帰宅して、家のことをいろいろ片付けたあとは(よりによってこんな日にくじら出まくりの)Twitterで最新情報を追いかける。
JAXA相模原キャンパスは目と鼻の先だけど、すでに人がおおぜい押し寄せているようだし、ちょっと待ってればはやぶさのカプセルを擁する街に住んでる自慢ができるようになる(と信じてる)ので、今日は遠方から来た人たちに席をゆずるよ。
というわけで、夕飯後は生中継受信準備。ニコニコ動画と和歌山大学が現地から生中継をするというので2窓体制、いや管制室のようすもUstされているので、3窓体制。こんな形ではやぶさの帰還を迎えられるのも、はやぶさが大遅刻してくれたおかげ。予定通りだったらネットで何万人も相手に(ニコ生は最大時20万人近く視聴していた)生中継なんてありえなかったと思う。旧メディアはいっさい生中継してないので、今でなければはやぶさの帰還をリアルタイムに目撃できる人は非常に限られた人数になったはずだ。まったく、はやぶさの空気を読む能力は異常。
昼間から涙腺緩めで、いざ再突入のときには号泣しちゃうんじゃないかと思っていたけど、不思議と冷静だった。というか、運用を終え、しだいに人影がまばらになっていく管制室にただよう寂寥感をしみじみ味わっていたり。探査機そのものも好きだったけど、この運用チームのプロフェッショナルぶりが大好きだったんだよなぁ。長いことお疲れさまでした!
オタク的に印象に残っていることを2つだけ。
子供のころからアニメやマンガにどっぷりひたっていた世代だから、はやぶさの物語にはそういうものをどうしても重ねてしまう。運用チームはまさしく「ヤマトの真田さん」だったり。帰路についたときには「トップをねらえ!」を引用したけれど、今回は「トップ2」だよ。写真はハワイの「すばる」がとらえたはやぶさ。帰還する「彼」を最初にとらえるのは、ぜったいに「ハワイの天文台」でなくてはならないのだ*1。すばる中の人、ぜったいこれを意識してただろ。GJすぎる。
内之浦の34mパラボラが可視でなくなると同時に通信途絶したはずなので、この写真の最後の部分はまさにそのタイミングで欠けたわけで、お前これ狙ってやっただろ!とツッコミを入れたくなったけど、写真が公開された時はすでに彼は燃え尽きていたのだった。はやぶさにピューリッツァー賞をあげて欲しいよ*2。
で、この写真がやっぱり「トップ」のラストシーンに重なる。あんな感じに派手な出迎えはしてやれなかったが、びっくりするほどの輝きをはなって自らの帰還を演出するあたりはさすがとしか言いようがない。本当に、最後の最後まで完璧な探査機だった。
◆ nq [松浦氏の「怪文書」記事へのトラックバックリンクでこちらに来ました。100%同感です。ちょっとやりきれない気持ちになっ..]
◆ Shi [業界の者です。たださんのご意見は、常々私が主張している物と一致する物です。あれだけいろいろ勉強されている松浦氏がその..]