2008-09-11(木) [長年日記]
■ 深海のYrr 〈上〉 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-1)(フランク・シェッツィング)
なんだかガツンと長いのが読みたくなったので、ベストセラーと知りつつ読んでみた。さすがに1冊で1200ページもある文庫本とかアホなもんは読む気にはなれなかったし!
海で起こり始める異常現象が、3分冊の上巻をほとんど丸々使って、じわじわと語られるさまは、描写の細やかさもあって、半村良の伝奇シリーズのような雰囲気(ちょっと褒めすぎか?)。なかなか派手な展開にはならないけれど、飽きさせないのは上手い。
中盤からは海洋分野にとどまらない豊富な科学知識、多量の取材に裏打ちされた緻密な世界描写が盛りだくさん。かといってくどくどした解説調になるわけでもなく、「なんでこんなことまで説明してるんだろう?」というような些細な描写がちゃんとあとで意味を持ったりして、長くてもちっともだれない。いやぁ、なんかすげぇエンターテイメント小説だなぁ。ドイツ版クライトンの異名は伊達じゃない。
ただ、終盤の展開が、なんというか、あまりにハリウッド的なのがちょっと残念か。「政治家が一番アホ」っていう設定は、当たり前すぎ。なんでSF文庫じゃないんだろうと思ってたんだけど、この展開はたしかにNV文庫だわ(笑)。
それでもちゃんと「世界が変わる」結末も含めて、SF者としても十分に満足できる小説だった。個人的には、セーガンの「コンタクト」をネタにしたところが多くて*1、好印象。
深海のYrr 〈上〉 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-1)
早川書房
¥17
深海のYrr 〈中〉 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-2)
早川書房
¥2,552
深海のYrr 〈下〉 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-3)
早川書房
¥9
*1 それも映画版、ジョディ・フォスターのモデルになった科学者と称する女性が登場して、いちいちそれっぽい言動をするのがおかしい。とはいえ、本書には実在する科学者が実名で登場しているが「コンタクト」の本当のモデルは別の人で、SETI研究所のジル・ターターと言われている。
■ iTunes 8の新しいグリッド表示がどうしょもない
まぁ、たぶんおれが想定外の使い方をしてるんだと思う。けど、いくらなんでも、これはないよなぁ。
全ムービーにそれぞれ別々のサムネイルを設定してあるにも関わらず、同じアルバム名のムービーは代表して(iTunesが勝手に選んだ)ひとつのサムネイルで統一されてしまうようになってしまった。おかげで、すべてのムービーに同じアルバム名をつけている*1ような場合には、グリッド表示がまったく意味をなさない。
まぁ、おかげでスクロールなんかはだいぶスムーズになったけど、機能落として性能上げられても嬉しくないっつの。iTunesの完成度って、いくら待ってもちっとも上がらない。
*1 もちろん「THE iDOLM@STER」。
『深海のYrr』は登場人物全員の性格が歪んでいるのが素晴らしいと思いました。これが欧州クォリティ?
たしかに。とは言え「全員心に傷を負っている」と考えれば、普通に「今風」と言えるかも?