2008-05-25(日) [長年日記]
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プレゼンテーションの極意(川崎 和男)
川崎和男を読まずにプレゼンについて語るなよみたいなことを言われたので読んでみた。
「極意」と書いてあるけど、内容は「基本の基本」だなぁ、これ。目新しいことは何も書いていない。何か高度なことが書いてあると勘違いして敬遠している人がいたらひどく損なタイトルだ。
目新しくないからと言って無価値なわけじゃなく、基本をおろそかにしたハウツー本ばかりがあふれている現状を鑑みるに、こういう「心構え」についてきちんと書いてある本は、プレゼンをする者は目を通しておいた方が良いのは確か。
もちろん、基本的なことだから簡単に実行できるというものでもない。最近、顧客先でプレゼンする機会が増えた自分も、わかっているけどできていないことがけっこう多かった。でもまぁ、場数を踏めば、ここに書いてあることは言われなくてもなんとなくわかるのではないか。
場数という意味では、われわれIT技術者は現在、すごく恵まれてる。特に東京近郊に住んでいれば、毎日のようにどこかで勉強会やカンファレンスがあって、プレゼンを見る機会もする機会も以前に比べてものすごく増えている。向上心にあふれる人たちが、お互いに切磋琢磨できる環境があるのは実に幸せなことだ。
今ではプレゼンの大御所として構えている川崎和男に、例えば高橋メソッドの登場を予見できただろうか。会場の内外からIRCでツッコミが入るようなカンファレンスが、川崎和男の想像の範疇にあっただろうか。そんな風に考えると、あまりにエキサイティングな時代に生きていることに気づいて、ちょっとどきどきしてくる。
本書の内容に戻るが、帯に「パワーポイントは創造性を奪い取る」って書いてあるのを文字通りに受け取るようでは話にならない。横並びの目立たないプレゼンがダメと言っているだけなので、例えば最近MacばかりになりつつあるRuby関連のカンファレンスでKeynoteを使うのは、パワポを使うのと同じ罠に落ちることになるだろう。実際、3Dでくるくる回るだけの資料はもう飽きたよね?
あと、図がひどい。本文中に登場するキーワードを、なんとなく線でつなげただけで、内容を補完したり理解を深めたりする効果がぜんぜんない。著者じゃなくて編集者が、埋め草代わりに入れたんじゃなかろうか……というくらい意味がない。まぁ、文章はわかりやすいので、図は見なくても問題はない。
2008-05-24(土) [長年日記]
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ウォー・サーフ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)(M.M. バックナー)
超大企業の神のごとき役員と、衣食住は保障されてるけど奴隷に等しい従業員に二分化された、環境破壊がとことん進んだ地球。役員連中はうなるほどの金と数百年の寿命を持ちながら、危険な場所に赴いてその様子をネットに流す「ウォー・サーフ」という遊びに夢中。
そのウォー・サーフがメインのアクション物かと思いきや、実際のウォー・サーフ場面は上巻の半分までしか出てこない。残りは、やたらと従業員クラスを見下しまくる鼻持ちならない主人公の老人が、捕虜になった宇宙工場で自分探しをする話。
今まで自分が想像したこともない世界を目の当たりにすることで、だんだん偏見をなくしてまっとうな人間になる様子を描くのが目的なんだろうけど、なんだかその描写が薄っぺらくて、説得力に欠けるんだよなぁ。中途半端に道徳的な気がするのは、主人公の動機がすべて女がらみだからか。
下巻の後半から再び物語が動き出して、SFっぽい変革も現れるんだけど、わざとらしい自己犠牲で終わるストーリーには、ちょっと白けた。ジュブナイルに仕立て直したらいいんじゃね?
2008-05-23(金) [長年日記]
■ 『今日の早川さん 2』の限定版を買った
かみさんに誘われてふらふらと入ったリアル本屋で残り3冊になっていて、「ま、Amazonで買うからいいさ」と思ったが、ふと不安感に襲われたのでケータイで検索してみたらもう売り切れていたもんだから、慌てて買った。リアル本屋で本を買うなんて、久しぶりだ。というか、自分の第六感に喝采。
今回、やたらと早川さんのエロい表情が多かったような気がする。でもおれは岩波さん派だけどな!
ところで、本文(?)中でこんなこと→を言われている有川浩だが、今日の日記で:
自由業ですが、それでもたまに名刺を作ることがあります。
肩書きをいつも悩んで結局抜いたり税務署の登録と合わせて「文筆業」にしたりしていたのですが、この度「ライトノベル作家」にしてみました。
ということで、ハードカバーばかり出していてもラノベ作家らしい。おれとしては黒々としたゴシック体で「恋愛小説家」って入れて欲しかったぜ。