トップ «前日 最新 翌日» 編集
RSS feed

ただのにっき


2016-07-31(日) [長年日記]

シン・ゴジラ」: ついに初代を超えるゴジラ映画が作られた!

いきなりだが、約10年前の日記を引用する:

妻: (バレンタイン用に)日本初上陸のチョコを買ったよ
俺: 「上陸」って言うと、怪獣っぽいよな
妻: 東京湾から?
俺: 「最近は埋立地が増えて上陸しづらいなぁ」とかぼやきつつ
妻: いやいや、その前に海ほたるを破壊
俺: 東京湾横断トンネルを踏み抜いたりして
妻: 観たい! そのシーン観たい!
俺: だろー?

冒頭のシーンで、おれの動悸が急速に高まった理由をご理解いただけるかと思う。あれでいきなり胸をわしづかみにされたね。ちなみにかみさんはこの会話を覚えてなかったらしい(笑)。

というわけで、話題の「シン・ゴジラ」をさっそく観てきた(@109シネマズ・グランベリーモールIMAXシアター)。なにしろ金曜の公開から、いい評判しか聞かない。そりゃ、庵野・樋口タッグに潤沢な予算(←重要*1)を与えればいい映画が出てくる確率は高い。それにしたってネガティブな感想がいっさいないとは何ごとか。

(以下、軽いネタバレを含む。まぁグダグダ言わずに観に行け)

前のハリウッド版GODZILLAを観たときに「津波の出てくる映画はデリカシーがない」と書いたけど、こっちも冒頭から船がバンバン流されるシーンで「おいおい、これはヤバいんじゃないの」とヒヤヒヤした。その後も東京が放射能に汚染され「μSv」のような聞き慣れた単語が次々と飛び交う。そもそもゴジラへの政府の初動は3.11のそれをなぞっているのだ。

海から襲いかかり、放射能の恐怖をまきちらす。あの大災害をゴジラを通して再現する。まさか5年でこんな映画が日本で撮られるなんて。だが、ただのディザスター映画ではないのだ。観終えたあと、むしろ明日への希望、未来への決心が胸に残る。

初代を撮るのに第五福竜丸が必要だったように、新しいゴジラには3.11が必要だったのだ。それも単に現実へのフックとしてではない、日本の今を描き、未来へのメッセージを込めるために。

おそらく、東北でこれを観てショックを受ける人はまだ大勢いると思う。批判もされるだろう。作り手はそんなことは百も承知で、それでもあえて自重することなく、3.11後の日本へのメッセージを込めたのだ。表現者としての覚悟を感じたし、その勇気を讃えたい。

骨まで溶けて消えてしまった初代ゴジラに対し、今回のゴジラは東京のど真ん中にオブジェとして残り続ける。人類への警告どまりだった初代より、さらに一歩先まで踏み込んだ「シン・ゴジラ」は、ついに初代を越えて「真ゴジラ」になった。これまで数々の怪獣映画が挑んで果たせなかった「初代越え」を、幼少期から日本の特撮、アニメ、マンガを浴びて育った二人の監督がついになしとげた。

とにもかくにも、すごいものを観た。これは歴史に残る傑作だ。世界よ、これが「ゴジラ」だ。


あとはネタバレを気にせず、好きなトピックを思いつくままに追記していく:

しょっぱなから真っ昼間の東京をゴジラに歩かせたのがまずすごい。そもそも暗いとごまかしが効くし、怖さや不気味さを引き立たせるためにも怪獣は夜に歩かせたくなるものだけど、あれだけ堂々と日中に登場させても違和感のない絵作りができるようになったんだよねぇ。平成ガメラもかなり日中の絵が多かったけど、ここまでパキっとした映像にはなってなかった。技術の進歩すごい。もちろん夜の放射熱線もすばらしかったわけだが。

それにしても、マッドサイエンティストが一人でこっそり作った薬品で殺せた初代ゴジラを、現代でリアルに殺そうと思うと日本中の化学プラントと世界中のスパコンが必要になるんだから、21世紀に怪獣映画作るのも大変だよなぁ。

最高だったのは、絵的に面白すぎて思わず笑ってしまった在来線無人爆弾な! 自分では「くすり」と笑った程度だと思ってたけど、終わったあとかみさんから「笑ってたでしょ」と言われた。たぶん爆笑してた。「トップをねらえ!」に例えれば、ホーミングレーザーのバカバカしさと木星爆弾の悲壮さを兼ね備えた超兵器。このままゴジラに薬液を延々と飲ませ続ける退屈なラストになるかと思わせておいてあれだよ、天才か。しかも、たぶん世界でも東京か新宿でしかできないんだよなぁ、あれ。舞台も含めて最高と。

あと、こんなに真面目で堅い作品なのに、それでもちょいちょい遊びを入れる余裕があるのにも舌を巻いた。在来線無人爆弾ももちろん遊びの部類なんだけど、他にもエヴァのBGMが多用されてるし、そもそも最後の作戦名は「ヤシマ作戦」のパロだもんなー。エンドロールに安野モヨコの名前がちらっと見えたので、どっかでまた何か登場してたんだろう。

庵野は人間の演技つけられないんじゃないのという予想もあって、それはわりと正しかったような気もするが(笑)、たとえば最初はことなかれ主義だった総理が覚悟を決めたあとは表情が一変するとか、無表情な尾頭ヒロミが最後に一回だけ微笑むとか、けっこう悪くない演出もあった。

そうそう、こんなに絶賛しておいてなんだけど、実はゴジラの造形は大嫌いなんだ。ぼってり安定志向の三角錐に、長すぎる尻尾。不格好だし、どんなに凶暴ないかつい顔にしてもぜんぜん怖くない*2。平成ガメラがすごかったのは、どう考えてもギャグにしかならない「亀の怪獣」を、あそこまでかっこよくしてしまった点にあるわけで。そういう意味では今回のゴジラの造形も「ふーん」どまりではある。むしろキモチワルさ加減では第二~第三形態がすばらしかったよね。あれはキモくて実にいいし、そもそも「(成長ではなく)進化途上のゴジラ」というアイデアがすごい。第二形態のモーションも野村萬斎だったらと想像すると楽しい(けどたぶん違う)。

Tags: movie

*1 言うまでもないけど「充分な予算」ではない。日本映画標準で「潤沢」というだけ。

*2 造形が怖くないだけで、存在自体はものすごく怖い。とくにあの放射熱線には絶望しかない。映画の怪獣に「たのむから早く死んでくれ」って思ったのはガメラ2のレギオンが角を折られたあとに復活したとき以来。

関連する日記: 2016-08-08(月)
本日のツッコミ(全4件) [ツッコミを入れる]
ぴよぴよ (2016-08-03(水) 07:01)

エンドロールに安野モヨコさんが出ていたのは気づかなかったのですが、映像協力で使用されたオチビサンじゃないでしょうか?
http://natalie.mu/comic/pp/godzilla2016_03
もしかしたら安野さんご自身も出演されていらっしゃったのかもしれませんが。

ちなみに、パンフレットには「映像協力」としてクレジットされているそうです。
http://france-chebunbun.com/2016/08/01/post-7115/

ただただし (2016-08-03(水) 07:03)

(↑のぴよぴよさんのツッコミ、spamフィルタで弾かれていたので再構成してあります)

なるほど、JIDAIと同じ、作品提供ですか。たしかにキャストのところではない部分で表示されていたような。

いわさん (2016-08-03(水) 07:48)

「オチビサン」はコジマ×ビックカメラの店員さんが店のテレビでゴジラのニュースを見ているシーンの冒頭で店のテレビにチラッと映っています。

ただただし (2016-08-03(水) 09:23)

やっぱりもういっぺん観ないとあかん感じですねぇw


トップ «前日 最新 翌日» 編集
RSS feed