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ただのにっき


2011-07-18(月) [長年日記]

「The Final RubyKaigi」3日目、そして楽園からの放逐

[写真]!tDiaryKaigi

なでしこジャパンが世界一になってしまったので(←史実の記録)、ちょっと遅刻して会場入り。日本Rubyの会法人化の話を聞き逃してしまった(けどたぶん知ってる話なので大丈夫だろう)。というか公式サイトのCSSが、10年くらい前に(CSSド素人の)おれが書いたtDiary向け「Cloverテーマ」のままなのはさすがに恥ずかしいので、法人化の際にちゃんと変えてよね……。

そのまま大ホールに居座ってエコシステム的な話を聴く。初日に「技術寄りの話を重点的にきこう」とか言ってたくせにこのざまです。実際は後ろのほうでtDiaryの新しい標準テーマを書いたり、JavaScriptのバグを直したりしていたのだが(.cssや.jsばかりいじっていてなぜ.rbを書かないのかと)。そのまま(意図的に)ボッチ化して書き続けようかと思っていたら、@freedomcatがやってきたので一緒にモスバーガーへ。なかなかボッチにはなれないものだ。Matzでさえ、懇親会でボッチになれるというのに!(本当)

午後は@hsbtがtDiary開発を通じて培ってきたレガシーコード保守に関する話。そのまま3F洋室に集まって!tDiaryKaigi(上の写真)なので今日はtDiaryデーです。それにしても、昨日の@kakutaniや@m_sekiの話で言及されたと思ったら、今日は写真入りで登場だよ(しかも一番悪辣な感じの写真を使いよった!)。一介の参加者に身をやつしているというのに、なにこの存在感。

んで、Kaigi中に分散して話し合われたtDiary的な話としてはこんなとこですかね:

  • 7/29のリリースは3.1にする。feature freezeは1週間前
  • 3.1リリースしたら、jason_pureの取り込み、@kakutaniパッチの取り込みをする
  • おまえらjsのテストも書け(→要、テスティングフレームワークの選定)
  • ドキュメントあるのに存在が知られてないのはなんとかする
  • Rack上での運用に関するドキュメントを書く
  • テーマの存在感をもっと出す

その後はまた大ホールに戻り、一番前の方に居座って(@kakutaniから実行委員長ばかりか同じ講演スタイルまで受け継いだ)@snoozer05講演、2回目のLT、Matz最後の基調講演、クロージングへ。いやー今年も、いや最後も、いいKaigiでした。家庭持ちで三連休を全部つぶして毎日深夜帰宅とかありえないので、今日はさくっと帰った。撤収がないというのはいいものだな(笑)。というかみんな家庭は大丈夫か?

[写真]クロージング直後の客席

さて、少なくとも現在のスタイルで行われる「The RubyKaigi」はこれで終わりなわけだが、そういうことも手伝って、今回はコミュニティやRubyそのものに対する「感謝」や、これからの自分の活動に関する「宣言」が多く見られた。@tenderloveの基調講演は「コミュニティにある障壁を取り除こう」という提言だったし、@kakutaniはDaveから出された宿題に応える行動を呼びかけ、@snoozer05はみずからのわらしべ長者的コミュニティ歴を紹介することであとに続く人への道標になった。@hsbtからは面と向かって感謝されて面映い限りだが、四半世紀続くプロジェクトを継続するための視点の提示があり、Matzに至ってはさらに先、百年先を見据えた態度が表明された。

で、これ、Rubyって言語とはもはや関係ないんだよね。日本で生まれ、20年近い長い歴史のある言語で、国内のイベントに大勢のコミッタが集結できるという特殊性はあるものの、今回の講演の多くはRuby言語に依存しない。RubyKaigi 6回の歩みは、「RubyKaigi」を抽象化して「Kaigi」を作る過程だったのではないだろうか。

Matzが講演の中で「高校生まで言語を設計するような国は日本だけ」という話をしたとき「そりゃ日本には『まつもとゆきひろ』というロールモデルがあるからや」と心の中でツッコんだものだが、RubyKaigiの価値はまさにここ、たくさんのロールモデルを壇上に引っ張り上げたところにあると思う。若い技術者が壇上の彼らの考え方や働き方をみて、自分もそうしようと決意したとか、そんな生き方ができるのかと気づいたとか、RubyKaigiにはそんな事例に事欠かない。

今回、Twitterを見ていると、Rubyに関係ないけど参加した(そして何かを得て帰った)という人が大勢いた。規模をどんどん拡大して、Rubyist以外にも門戸が広げられ、しかも抽象化した「Kaigi」を提供できたからこそ彼らにリーチできたわけで、「Ruby」を出発点にしたイベントが最終的に「Ruby」から離れる瞬間を見られたのは、個人的にはなかなか得難い体験だった。抽象化は大切ですね(と、いかにもプログラマ的なオチ)。

さて、おそらく別な形で再来年あたりに生まれ変わるThe RubyKaigiだが、こんな「楽園」から放り出されたわれわれRubyistは、しばらくの間は個別に「現実」とに戦わなくてはならなくなった。この抽象化された「Kaigi」という武器にどんな使い道が発見されるのか、なかなか興味がつきないところである。


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