2018-06-22(金) [長年日記]
■ 映像研には手を出すな!(3) (ビッグコミックス)(大童澄瞳)
待ちに待った3巻が出たのですぐ買った……というのは嘘で、Kindle版を予約してあったので今朝になったら自動的にダウンロードされていたんだけど(電子版に関する諸々は後述)。
Twitterかどこかで「次は音声担当が増えるに違いない」的なことを書いた記憶があるんだけど、予想通り音声マニアの仲間が増えた。アニメ研から引き抜いてくるのかと思ってたけど、ぜんぜんべつの独立系の人だった。性別不詳な感じが良い。
で、音の話がメインになるかと思いきや、金森氏の幼少期の話なんかがけっこう挟まったりして、これが実にいい。映像研ではプロデューサーとして立ち回る彼女だが、その背景には「経営」に対する情熱があってこそというのがわかって良かった。生徒会や教員たちとのバトルでもこれまであまり描かれなかった熱意が伺えて、この巻の主役は実は金森だなぁ。
じゃあ音の話はどうなのかというと、個人的にはちょっとビミョーな感じで、実はそこが面白いと思ったのだ。これまでこの作品、動かないマンガというメディアを使ってアニメーションを表現してきたわけだけど、同じように音の出ないメディアで音声を表現できたかというと、2巻まではできていた。とくに独特の擬音は「まさにそれ!」って感じで「聞こえて」きたのだが、じゃあ新作アニメの音声も同じかというと、これがあまり「聞こえてこない」。
そりゃそうで、見たこともない世界の見たこともない機械がたてる音なんだもん、わかるわけがないんだわ。もちろん、似たようなSF映画で似たような音を聴いているはずだし、そこからかろうじて類推できるんだけど、でも共感度合いは少なめだ。映像研の音声表現、まだまだ先がありそうだし、大童澄瞳の伸びしろもさらに大きいとかえって期待が膨らむ。
映像研には手を出すな!(3) (ビッグコミックス)
小学館
¥693
3巻であきらかに変わった、というか徐々に変わってきて本性むき出しになったなーと感じたのが、マンガの文法を無視し始めたところ。エピーソード間でかなりの時間経過があるのに、前回の振り返りから入らないとか(月刊連載なのにこれはすごい度胸)、コマ間にある時間経過も説明なしですっ飛ばしたり。あと、コマの外にいる人物のフキダシがめっちゃ増えたよね。ここまでこの作品を読んでパース付きフキダシや被写界深度表現に慣れてきた読者なら、このへんは付いてくるだろう……みたいな妙な信頼を感じなくもない。
というわけで、この先どこまでマンガの文法を無視してくるのか楽しみだ。4巻まだかなー(気が早い)。さて、この巻のイチオシひとコマ:
マンガはもう電子版しか買わないようにしてるんだけど、今回もまた、紙より発売が遅れた。10日ほど。ポジティブになら「10日に縮まった!」とも言えるんだけど、我々が住んでいるのは残念ながら「After漫画村」の世界である。出版社は漫画村にさんざんな目にあわされて、かつスマホで読める電子版の需要も思い知ったはずなのに、いまだに電子版を遅れて出す。アホか。仮に紙のほうが先にできてても、あえて寝かせて電子版と同時発売にしろよなぁ。まったく、ほんとにどうしようもない。