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ただのにっき


2017-05-01(月) [長年日記]

「ミュシャ展」を観てきた

スラブ叙事詩(1)

おれは9連休だがかみさんは仕事があるので、何日かは一人で遊ばねばならぬ。ということで、今日は(かみさんが興味なさそうな)美術館・博物館めぐり。まずは国立新美術館の「ミュシャ展」へ。『スラヴ叙事詩』全20点をチェコ国外へ初めて持ち出すという大掛かりな展示で、開催当初からけっこうな人出と聞いていたから(日本人はミュシャ好きだからなー)、行くとすればいちおう平日の今日しかない。

国立新美術館は初めてだが、この日、関東は断続的な雷雨に見舞われていたので乃木坂駅から外に出ずに入れるので助かる。隣でやってる「草間彌生展」の方がやや動員多めな感じを受けたが、その印象は多分間違いだと中に入ってわかる。なにせ6m×8mの巨大キャンバスを20枚並べた展示室はまるで体育館で、どんだけ人を入れてもスカスカに見えるわなぁ。

とにかくその巨大さに圧倒されてしまうのだが、ひととおり見て回ってからじっくり近づいてみると、アール・ヌーヴォー時代とは手法は違えどまぎれもなくミュシャで、とくにコントラストの大きく異るオブジェクトを挿入して見る者の視線を誘導したり、人物が枠をはみ出して描くあたりなんて、ポスター描きで培った商業っぽさすら感じる(ので好き)。とにかく、死ぬまでにこれをまた国内で観る機会はまずなさそうなので、観られてよかった。

ご多分に漏れずアール・ヌーヴォーのポスター画がきっかけでミュシャが好きになったので『スラヴ叙事詩』以外の作品もじっくり観たいところだが、残念ながらそれらは狭い展示室に人をギュウギュウに詰め込んだ隙間から観なくてはならないので、ざっくり眺めておしまい。まぁいいや、ポスターは画集持ってるし。

ということで次へ行こう、次へ。

Tags: art

「大英自然史博物館展」を観てきた

始祖鳥

ミュシャの次は上野に出て、国立科学博物館で「大英自然史博物館展」を観るのだ。大英帝国ちほーの飛ぶのが得意なフレンズ(ほんもの)が来てるので!*1

いやー、これまで始祖鳥のロンドン標本はレプリカで何度も観てるし、よくできたレプリカは素人目には本物と区別がつかないのは承知してるが、やっぱり本物を観られるのは嬉しい。これは自然史博物館の初の世界巡回展で、最初の開催地がこの日本だそうなので、じつにありがたいことです。

とまぁ、当初は始祖鳥だけが目的だったんだけど、とにかくどの標本も「これは図鑑に載ってた」「あれはTVのドキュメンタリーで見たことある」なんてのばっかりで、次から次へと登場する歴史的標本の数々にめまいがする。大英帝国マジすげぇ。こりゃかなわんわ*2

そんな博物館の収蔵品を集めたコレクターや研究者たちの紹介を間にはさみつつの展示なのだけど、女性がかなりの割合を占めていて面白い。階級社会で余裕のある人々が金と時間を使って収集した人類の(というか地球の)遺産だ。

イッカク(メス)の頭骨

とにかく楽しくて、出口まで行ってまた引き返して二周してしまった。で、その出口にある最後の展示品が、なんの変哲もないイッカクの頭骨。しかもメスなのであの特徴的な長い歯もない。なんでこんなものが? と訝って中のプレートを読むと、

1949年にイングランドにある川の浅瀬で、陸に座礁して死んだイッカクのメスの頭骨。大英自然史博物館は1913年以来、イギリス国内で座礁したクジラとイルカの全記録を残し、座礁の原因解明や海洋生態系の理解に取り組んでいる。

とある。そしてケースの外側にも、あとから追加したようなプレートまである:

イギリスでは、座礁したクジラやイルカを発見し、大英自然史博物館に連絡する市民のネットワークがある。

このように、市民と協力して博物館標本を充実させている。

ふむー。素直に読めば、現代まで続く100年以上におよぶ継続的な収集が研究の基礎にあって、それには市民の理解と協力があるという事実を書いているだけにみえるけど……穿った見方をすれば、先日あった「学芸員をがん呼ばわりした無学な大臣」(とそれを選んだ有権者)に対する、国立科学博物館側からの強烈な皮肉なんじゃないかしら。

なんて想像をして、ニヤニヤしながら会場をあとにした。もちろん、常設展示場にもちょっと寄って、ティラノサウルスたちにも軽く挨拶をしてから。

*1 ただし始祖鳥が飛べたかどうかは確定していない。

*2 なんて書くと国立科学博物館の皆さんに失礼かも知れないが、そもそも展示の解説がそういうニュアンスを出しまくっているので、たぶん当人たちもそういう気分なんじゃないかと思う。


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