2012-10-07(日) [長年日記]
■ 9784777917792
もともとカメラ・写真業界にはさほど興味がなかったこともあって、田中長徳の名前を知ったのも自分のカメラOLYMPUS E-PL1に関する情報を探しているときに「PEN PEN チョートクカメラ日記」を読んだのがきっかけだ。ライカ人類でおまけにApple信者なんて、いけ好かないヤツと相場が決まっているものだが*1、ライカ以外のカメラに接する態度もニュートラルで好感が持てた。そんなわけで本書をほしい物リストに入れておいたら、知人のフォトグラファーが贈ってくれたのだった。ありがとうございます。なんか最近、もらった本ばっかり読んでるなぁ。
本を読んでもブログの第一印象はかわらず、カメラという機械には貴賎なしという基本線は崩さず、その上で「ライカが好き」というスタンスなので良い。ライカにあらずんばカメラにあらずみたいなことは決して言わない。自分の身の回りに当てはめてみると、バイクはやっぱり最新型が良いということは認めつつ、あくまで好みで旧車に乗っているような紳士的な旧車ライダーみたいな人だ。
そんなわけで、ライカへの愛情はしっかり受け取れて、なるほど一度は触ってみたいなと思わせられる。まぁさすがに本体は買わないけど、PEN用に明るい28mmくらいのレンズは一本欲しいよね*2。ミラーレスにライカのレンズはサイズ的にすごく合うし、ズミクロンならうちの猫を何倍もかわいく撮れるはず!
……なんて寝ぼけたことをいう輩には手厳しいのも本書の面白さである。別にライカのレンズだからうまく撮れるわけではないとか、「ボケ味」にこだわる素人を一刀両断するあたりなどなかなか気持ちがいい。あたりまえの話なんだけど、ネットでばかり情報収集してるとこういうことが見えにくくなりがち。
ちなみにこの本をくれたフォトグラファーからの情報によると、ライカの80%は日本に集まっているのだそうだ。バブルの頃に買い漁ったんですかね。で、本書によればそれを今度は中国人が買いまくっているそうで、何年かしたらライカが欲しかったら中国に行けなんてことになっているのかも知れない。もっとも昨今の領土問題で中国人観光客も減っているらしいので、まだしばらく日本はライカの買いやすい国でいられるのかもね。
2012-10-05(金) [長年日記]
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挑む力 世界一を獲った富士通の流儀(片瀬 京子)
7月の送別会でいただいた本。やっと読めた。ありがとうございます。
ようするに富士通が取り組んで成功した8つのプロジェクトについて、その担当者たちへのインタビューを集めた本である。富士通の「泥臭さ」に焦点をあててるのでけっしてかっこよくはないけど、まがりなりにもちゃんと稼働しているビッグプロジェクトもあるんだぜということで、世の中「動かないコンピュータ」ばかりじゃないことがわかってよろしいんじゃないでしょうか(笑)。
Web業界に近いところにいると、日本のIT企業が低迷しているのはすべて大手SIerが悪いみたいな印象を持ってしまうし、そういう面があるのはまったく否定しないものの、本書が扱っている「スーパーコンピュータ『京』」や「東証アローヘッド」みたいなシステムをアジャイルで作られたらたまんねーなとも思うわけで。そういえば、本書に出てくる多くのプロジェクトは、ちゃんと「オンサイト顧客」を実践している。これだけは実践できていないアジャイルプロジェクトも少なくない中、真に顧客とともにシステムを作り上げる姿勢はとても良いと思う*1。
もっとも、200ページあまりの中に8つのエピソード(+解説もろもろ)をつっこんだせいで、各々のプロジェクトへのツッコミが足らない。プロセスをはしょってうまくいったという結論ばかりを羅列しているるので、IT業界に精通していない読者には何が成功要因なのかさっぱり伝わらない。そんなプロセス不足を浪花節で補うものだから、プロジェクトXの末期みたいな薄っぺらい「宣伝番組」のようになっている。というか、どうみてもこれは富士通のプロモーション本だよなぁ。まぁ、何にでも手を出してフォーカスがはっきりしないというのも実に大手SIerらしいので、それはそれで正しい現実を表現しているといえなくもないが。
ともあれ、題材は悪くないのだから、もうちょっとテーマを絞ったらよかったんじゃないかと思う。とくに最後のブラジルで手のひら静脈認証システムを売り込む話はめっぽう面白いので、富士通ブラジルの社長本人にこれだけ単独で一冊書いて欲しいねぇ。赴任して30年余、現地で妻をめとって定住までしてしまった新世代ブラジル移民の話なんて、エピソードには事欠かないはず。
*1 というのも富士通が元請けだから言える話であって、下請けや孫請けには遠い世界の話だろう。
2012-10-01(月) [長年日記]
■ Wassr終了
ソフトバンクがイー・アクセスを買っちゃったり*1、平田さんがSixApartのCTOに舞い戻ったり、@shyouheiがDeNAに転職したり*2、小川さんがサイバーエージェントに転職したり*3といろんなことがあった10月1日だったけど、個人的にはやっぱり正午のWassr閉鎖が最大のイベントだったかなー。
![[スクリーンショット]Waasr終了のお知らせ画面 [スクリーンショット]Waasr終了のお知らせ画面](http://userimages.tdiary.net/sho/20121001_0.jpg)
11時をすぎる頃から続々とユーザが集まってきて、名残惜しそうに「ヒトコト」を投稿しはじめた。お題ちゃんに感謝を伝えたり、お絵かきや書道で愛情表現する人も。少ない予算の中での運営でエンジニアリング的な制約がモロ見えな部分も多かったけど、楽しい空間を演出することにかけてはピカイチのサービスだったと思う。別れを惜しむ声にも「いままで消えていったどんなサービスのときよりも寂しい」という感想がたくさんあって、愛されていたんだなーとしみじみ。
Wassrを開発・運用していたモバイルファクトリーのみなさんにおかれましては、Wassrで培ったモロモロを活かして、これからも楽しいサービスを開発していっていただきたい(なにこの上から目線)。
で、Wassr代替先として開発を始めたMassrはあれから順調に成長を続けていて、すでに我々わさますの面々はWassr以上に快適なイイネライフを送っているのであった。おかげでWassr喪失感はさほど大きくない。やはり住処は自分で建てるのがベストなのか。ちなみに先日の発表時点でMassrをサービスだと勘違いしている人を見かけたけど、Massrはあくまで小規模でクローズドなコミュニティを運営するためのフリーソフトウェアなので、コミュニティ運営者が自分で運用するものだ。
じゃあSNSとしてのWassrの代替品はないのかというと、元モバファクの@takuji31がWasaを開発中。まだまだ完成度は低いけど、Wassrの全機能を目指してる感じ。寄付ベースでサービス運営をするつもりらしい。茨の道だけど、どうなるかなー。
*1 EMOBILEで快適なLTE生活をしている身としては、同じ回線にiPhone5ユーザがなだれ込んでくるのはまったく歓迎できないのでとっととdocomoに逃げ出したいのにXperia SXは相変わらず品薄で……とほほ。
*2 おれのガチャが@shyouheiの給料の一部を担うことになるとは!(笑)
*3 解析やってるとだんだん大きくて多彩なデータをいじりたくなるのでこれは納得の方向。