2012-05-28(月) [長年日記]
■ 禅とオートバイ修理技術〈上〉 (ハヤカワ文庫NF)(ロバート・M. パーシグ)
※注: これは書評ではない。
アジャイル方面(というか主に@kakutani)がよく引用しているので読んでみた。教養読書ですな。原著は1970年代、古い本だ。日本語の「品質」とは違う意味の《クオリティ》に関する、哲学の話。バラエティに富んだテーマと深い考察が数多く登場して、なるほど味わい深い。
が、正直あんまり気に入らなかった。客観的にはおれに哲学の素養がないのが最大の理由だ(ようするに理解できない)。主観的には、おれ「も」バイク乗りの端くれだという点につきる。同じバイク乗りとして同意できないという話。嫌味なエンスーオヤジが持論を補強するために小難しい話をしてるだけじゃん!
ストーリーは息子とタンデムで北米大陸を旅する話なのだが、これがまずいけない。ちょっとそのへんでバイクツーリングのレポートをいくつか探して読んでみるとわかるが、ツーリングに出るとバイク乗りは多かれ少なかれ「哲学的」になっちまうのだよ。なにしろ運転中は(たとえグループで行動していても)孤独で暇だし。普段は考えもしないどうでもいいことを、あーでもないこーでもないとぐるぐる考える。でも、旅から帰ればすっぱり忘れる。日記に書き起こしたりするとときおり漏れでてしまうことはあるが、基本的には与太話なので真面目に書き残したりしない。それが本書では主役級の扱いだ。こいつはいけねぇ。品がない。そういうもんは内に秘めておけ。
あと、著者がさんざんコケにする同行者の友人ジョン、彼はマニュアルに従ってどんなに暑い日にもチョークを引いてキックをするものだからしょっちゅうプラグをかぶらせてしまう機械音痴として描かれているのだが、その彼の乗るバイクがBMW R60というのがまたカチンと来る。同じ機械音痴のR乗りとして。ちなみに21世紀、BMWの技術者は彼らの製品からチョークを廃した。バイク修理技術を持たないバイク乗りをクズ扱いする著者と、現代のBMW、一人の技術者としてどっちが好ましいと思えるかは言うまでもない(後者ですよ?)。
ちなみに著者パーシグの乗るバイクは作中には登場しないが、1964年製のCB77に乗っていたことはあるそうだ。文庫版の表紙(ハーレー)はミスリードだね。もっともWikipediaの本書のページにはかつてこの記述があったらしいが今はないので、この旅で乗っていたという確証はないのかも知れない。作中にはハーレーからパーツを取るシーンがあるが、タペット調整の記述はパラレルツインのものなので、なんだかよくわからない。まぁ、パーシグがおそらくハーレー乗りじゃなくて良かったよ。アメリカ人のハーレー乗りが偏見抜きでBMWを評するのは難しかろう(←これも偏見)。
とまぁ、本当にどうでもいい話だな。いや、おれの日記が。
下巻までたどり着いたのかが気になる。
僕は下巻の途中で投げ出しました。
主な感想はたださんと驚く程一緒。
機械いじり得意なくせに!(笑)
おれは貧乏性なのでよっぽどのことがないかぎり本はちゃんと最後まで読むよ。この本だって、いちバイク乗りとして意見が合わないというだけで、理解できないなりに面白かったし。