2012-03-28(水) [長年日記]
■ さよならジュピター〈上〉 (ハルキ文庫)(小松 左京)
まだこんな時代のを読んでいたりする。というかKindleの未読リストの半分くらいが、最近ブックオフで買いあさっている1970~80年代の国産SFなんだが……。同時代の海外SFはたくさん書庫に並んでいるのに、国産SFはみんな売っぱらっちゃったんだよなぁ。たぶん「どうせあとで簡単に買い直せるし」と考えたんだと思う(けどそれほど簡単ではなかった)。今後、市場から消え去ってもいいようにがんばって自炊しよう。
「さよならジュピター」は個人的「ベスト・オブ・小松左京」なので、楽しく読んだ。とはいうものの、どうしても先の震災にからめた感想を抱いてしまうのだが。自分は震災の影響をあまり受けていない方だと思ってはいるけど、そうでもないのかな。たった2年で木星を爆破させるプロジェクトを成功させるプロフェッショナル集団をずさんな原発管理と対比してしまうし、計画を妨害しようとするジュピター教団の急進派はデマを撒き散らすことも厭わない過激な脱原発派に重なる。はたして人類は今後100年で、こんなすごいことをやってのけるところまで進歩できるんだろうか?
それはそれとして、ハルキ文庫版は巻末の対談が面白い。本書が書かれた時期はちょうど8bitのパソコンが普及しはじめた時期ということもあって、コンピュータに映画製作をサポートさせるためのテクノロジーがどんどん出てくる。3Dのワイヤーフレームを描くのに一晩かかったとか、タダでCray-1を借りちゃった話とかちょっと今では考えられない。にもかかわらず、作中にインターネットは登場しないわけで、いかにインターネットという存在が「想定外」のものだったかよくわかる。
さよならジュピター〈上〉 (ハルキ文庫)
角川春樹事務所
¥1,818
9784894565234