ただのにっき
2011-05-19(木) [長年日記]
■ https://www.amazon.co.jp/dp/9784873114514
一般に(と著者が考える)「セキュリティにまつわる常識」みたいな話の数々を、「神話にすぎない」と切って捨てるという体裁の本。いや、語り口は誠実で、そんな高飛車ではないけど。
ひとつひとつは頷ける内容だし、いい本だとは思うのだが、どんな読者をターゲットにしているのかよくわからない。専門用語をできるだけ排除しようとしているし、技術者なら当たり前のように神話にすぎないと考えるようなネタ(「Macは安全だ」とか)を多く取り上げているから、一般向けなのかなーと思うけど、ちょっと考えればわかるように、技術者でもない限りこんな本を手に取ることがあるとは思えない。難易度の高い話を削って、もっと短くまとめたものを新聞連載とかにでもしてみたら、想定している読者にリーチするんじゃなかろうか。
なにより、著者が現役のMcAfee社員で、しかも序文からしてMcAfeeの偉い人だったりするから、「バイアスかかっていそうだな」と読む前から身構えてしまう。実際、引き合いに出される事例の多くがMcAfeeで起きた話だったり、McAfeeが改善に取り組んでる話だったりするので、なんだかMcAfeeの宣伝資料を読まされている気分だった。そういうところを差っ引けば、悪くないと思うだけど。
技術者が、一般人に対してセキュリティについて説明するための「うまい説明のしかた」を学んだり(意外とこれ重要かも)するのには良いんじゃないかな。
https://www.amazon.co.jp/dp/9784873114514
オライリー直販ならこちら。もちろんEbookもある。幅15cmなのでKindleでもいける。
■ オライリー・ジャパンのEbookが「DRMフリー」になるぞ!
そうえいば上の本はオライリーの「被災者支援キャンペーン」で買ったものなんだけど(そしてDRMについてグダグダ書いたわけだけど)、このたび、めでたくEbookがDRMフリーになるというアナウンスが! これはめでたい。いやぁ、さまざまなハードルをクリアするための、中の人たちの尽力が目に浮かぶようだよ。素晴らしい。
さて、オライリーは読者であるわれわれ技術者を信頼してくれた。われわれはその信頼にきちんと応えることで「電子書籍にDRMはいらない」ということを証明してみせなければならないと思う。FAQにある以下の注意は肝に銘じようではないか:
オライリー・ジャパンが販売する書籍(Ebookも書籍だと考えています)は、コピー・フリーではありますがコピーライト・フリーではありません。日本国の著作権法による保護を受けており、著作権法で定められた範囲を超えた複製、頒布、送信などは、著作権法に抵触する恐れがありますのでご注意ください。
で、次はEPUBも(できればmobiも)、と期待したいところだが、さすがにこれは編集過程にまでメスが入ると思うので、当面PDFのみということで納得でしょう。複数フォーマットを低コストでサポートするには、オーム社みたいな先進的な仕組みを入れないといけないだろうし、けっこう大変だろうなーと思う。まぁ、オライリーは著者のリテラシも高いから、そういうことをやれる下地は十分にあると思うけど。
ところで今回の措置には、購入済みの(DRM付き)Ebookも近い将来アップデートしてくれるという太っ腹なおまけがついてくるわけだけど、気になるのは全ページに挿入されている購入者のメールアドレスである。あれも「(心理的)DRM」の一種なんだけど、「DRMフリー」というからにはこれもなくすんだろうか。個人的には別にあってもいいんだけど(どうせKindlizeするときに削っちゃうし)、アップデートのためにまたあの膨大な処理をやり直すのはアホらしい(し、電力のムダである)から、いっそやめた方がいいと思うんだけど。(追記: インサイダー情報によれば、メールアドレス埋め込みも撤廃だそうだ。Great!)