ただのにっき
2010-07-31(土) [長年日記]
■ Lightweight Language Tigerに行ってきた(午前中だけ)
去年のには行けなかったので、個人的には2年ぶりになるLLイベント、「LL Tiger」に行ってきた。主な目的は午前ラストのプログラムである「開発ライセンスとプログラマの自由」。おれは小山さんからたぶん最初に打診をうけて(言うまでもなくこの記事「iPhoneを捨ててAndroidにするよ」が発端)、パネルディスカッションの参加者として出席するはずだったのが、その他の参加者が集まらず、けっきょく会場相手にディスカッションという、なんとも危ういプログラムに。
蓋をあけてみればそれは杞憂に終わり、けっこう途切れることなく活発な意見が出たので、嬉しい誤算だったと思う。なんといっても、こんなシビアなネタを一人で切り盛りした小山さんを労いたい。
さて、会場で発言したことについて、こっちにも書いておく。プログラミング言語のイベントで、ベンダー(この場合Apple)が開発言語を縛るようなライセンスを課すことについて賛同する人が大勢いるわけがないので、そこについては言うまでもないだろうな、とは思ったので、アプリ上にプログラミング言語を搭載することに制約を課すことについてのみ懸念を表明することにした。
いまの10代、20代のプログラマは、物心ついたときに自宅にコンピュータがあった人が多いと思う。そこでコンピューティングに触れて、プログラミングを始めた人も多いだろう。いま、プログラミング言語の有料イベントに1000人、2000人の規模で人が集まるような日本・東京という土地のもつある種の「奇跡」は、そんな環境も大きく影響しているに違いない。
今回のAppleのライセンス変更で影響を受ける人は、それによってよけいな投資を強いられる現役のプログラマだけではない。自宅にプログラマブルなデバイスがなくなってしまうことで、プログラミングに触れることを妨げられた「未来のプログラマ」の誕生をも阻害するのだ*1。
これは大げさで悲観的すぎる予想だろうか。そうかも知れない。だが実際、iPadを入手して「これでもう自宅にパソコンいらないや」などと言っている人をたくさん目にしている。近い将来、家庭や初等学校にはプログラマブルなデバイスが置かれることがなく、プログラムという行為がふたたびごく一部の人たちの特殊な仕事になってしまう可能性はとても高い。アラン・ケイの描いた未来は、Appleによってさらに遠くに押しやられてしまいかねないのだ。
われわれ現役のプログラマにできることは「プロならどんな言語でも仕事ができるべき」などとうそぶくことではない。将来のプログラマと、豊穣なコミュニティのために、Appleに「No」を突きつけることではないだろうか。
自分の場合、それはAndroidへの転向だった。会場でogijunが言っていたように、ふたたび自由を勝ちとるためにAppleに働きかけるのもいいだろう*2。Appleが課した制約を「今の自分が」乗り越えられるから何もしない、というのは、将来自分の首を締めることになるよ。
というわけで、Androidプログラミングを始めたいんだけど、いまさら素のJavaを使うのも面白くないよなーと思わなくもないので、やはりここはClojureだよね。Language Updateの紹介も面白かったし。これがいい本なら買いたいんだけど、どうなんですかね(ほしい物リストにいれっぱなしで買ってない):
ってコレ、もしかしてLL Tigerの会場で売ってた? 買えばよかった!