ただのにっき
2010-07-07(水) [長年日記]
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科学との正しい付き合い方 (DIS+COVERサイエンス)(内田 麻理香)
先月あったWikiばなVol.10の課題図書だったので今ごろ読んでみたのだった(何をするにもトロい)。
本書に書かれている各論はどれももっともで、まったくそのとおりなのだけど、最後まで読み終わって「はて、これは誰に向けて書かれた本?」という疑問が。
前書きには「少し変わった新しい科学の世界に、お付き合いください」と書いてある。直後の初級編では生活の中に散見されるさまざまな科学ネタの紹介が多くて、ここまではまさに前書きにあったように、科学アレルギーを持ってる人たちに向けて書かれているように思える。
しかし中級・上級編になると、こんどは科学リテラシーをどう育てるかとか、サイエンスコミュニケーションがどうあるべきかとか、上の対象者とはぜんぜん違う人たちを相手にしはじめる。あれれ、「少し変わった新しい科学の世界」はどこへ?
だいたい、書名に「科学」が入っている時点で、最初のターゲットだったはずの科学アレルギーを持ってる人たちはまず手に取らないだろう。
著者の内田さんの講演を聴いたり、直接本人と話をしていると、彼女の「戦略」は生活の中に隠れている科学を掘り起こして、そこから科学の面白さを知ってもらう活動にあるようだ。科学に興味のない層が確実に見そうなところにさりげなく出没し、一撃を与えて引っ込むような、いわばゲリラ戦だろう(料理コーナーに置いてもらえるような科学本を書いた話を聞いた思えがある)。
だとすると、こういう「科学」を集めた上で書名にまで「科学」を入れちゃった本は、その戦術にそぐわない。実際、本書の主要な読者は科学のシンパやサイエンスコミュニケータ仲間なんじゃあるまいか。だからなんだかぼやけたような読後感になっちゃうんじゃないかなぁ。