2010-06-22(火) [長年日記]
■ アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風(神林 長平)
SFマガジン連載時に(これだけはちゃんと)読んでいたので、単行本はのんびり。雑誌でぶつ切りに読んでいた時はもう、わけわからなかったけど、単行本でまとめて読むと、だいぶすんなり読める気がした(たぶん気のせい)。
当初、戦闘機と戦闘機乗りの話で、リアルでクールな戦闘シーンの描写が魅力だった雪風シリーズも、三作目にして戦闘機によるリアル空中戦はほぼ皆無に。代わって全編を埋め尽くすのは、人類と機械知性と異星体による形而の上空でのヴァーチャルな空中戦だ。
きわめて不可解な状態におかれた登場人物たちが、延々と仮説に仮説を重ねて世界を構築していく。ほんの数秒の出来事を何ページもかけて登場人物みずからが言語化して解説するのだから、神林作品が好きならたまらんね。そうでない人はカンペキに置いてけぼりだろうけど(笑)。
それだけに、ラストシーンがもたらす爽快感が、実に気持ちがいいのだけど。梅雨時のジメジメした空気を、南極の冷気が吹き飛ばしてくれたような気分だ。
そうそう、言われるまで気付かなかったけど、前の二作目からは10年ブランクがあったそうだ。そうだったかねぇ。じゃあ、次は2019年だな。楽しみだ。