2010-05-31(月) [長年日記]
■ HTML5&API入門(白石 俊平)
泥縄読書終了。
最近、Webアクセシビリティがらみで人さまのサイトのHTMLソースを見ることが増えたんだけど、特に見出し要素の使い方が難しいというか、サイトオーナーの「個性」が発揮されてしまうのね。ようするに今のHTML/XHTMLでは構造化された文書なんて書けやしないということなんだけど、HTML5から導入された「セクション」の概念のおかげで、だいぶそのあたりがいい感じに表現できそうな感じ。
……というのが(個人的には)HTML5最大のメリットかも知れないとすら思うわけだけど、本書ではそういう文書的な側面は表面的に触れるにとどまり、HTML5周辺のAPIを中心に解説している。といってもそれらも通りいっぺんであることに違いはなくて、HTML5をとりまく技術の概観をざっくり把握できるほどほどの分量で、とっかかりとしては適度で良いと思う。「HTML5で夢がひろがりんぐ!」と鼻息が荒くなるくらいにはエキサイティングな未来が感じられる。
まぁ、API的にはJavaScriptからネットワークやストレージへのアクセスが拡大しているのが大きな変化だけど、それとて、やっとプログラミング言語としてアタリマエのことができるようになっただけではある。で、ためしに実装して、Chrome5あたりで動くことを確認して「わーい」と喜んでから、Android 2.1のブラウザで試すと動かなかったりして凹むわけです。同じWebkitなのに(「Webkitの悪夢」と呼ぶらしい)。
けっきょくHTML5が十分に普及するまでは、今と変わらずブラウザ間の非互換に頭を悩ませることになるんだろうなぁ(というかしばらくは今よりひどくなるかも知れない)。ブラウザ間非互換をがんばって吸収できる体力のあるサービスのような例外を除けば、あとはWidgetのような単体アプリのランタイムとして特定のブラウザを指定できる場合だけが、HTML5の恩恵を受けられる、そんな状況がしばらく続くだろう。
とは言ってもわれわれ技術者は(いつかやってくる)HTML5時代に備えて準備しておかなくてはいけないわけだ。これだけ色々盛り込まれていれば、あと数年は楽しみが尽きることはなさそうだねぇ。